05 しろくてふわふわのあまいくも
05 しろくてふわふわのあまいくも
「こんばんは」
男はにっこりと笑って言いました。
「こ、こんばんは」
私といえば、この部屋に誰かが着てくれるのなんて夢でしかなかったから、とても現実のように思えません。
しかも来てくれたのが、最近笑顔をくれる人だったのですから。
「……」
「……」
「あ、あのどうして」
静かなのにたえられなくなった私はたずねます。
そうすると彼はにっこりと笑って、
「一度、君とちゃんと話してみたかったんだ」
といいました。
きれいな笑顔に、ほっぺがあったかくなります。
「はい」
差し出してくれたのは、木にささっている白っぽいほわほなもの。
「こ、これは」
「ん?」
「雲ですかっ!?」
空に浮かんでいる雲にそっくりなそれ、少しつっついてみると、ふわりとかんしょくがあってないような不思議な感覚です。
ちょっとこうふん気味に彼をみると、きょとんとしていました。
あっと、自分が恥ずかしくなって、こんどこそ顔が赤くなるのがわかりました。
「あは、あはははは」
低く、もらして閉まったかのような笑い声に、私は耳まで熱を持ちました。
「ごめんね、そんな反応初めてで。これ、わたあめって言うの」
食べてごらん? そういわれて、こうきしんに負けた私はぱくりと食べます。
「くもっ、甘い!?」
「わたあめだって。どんな味だと思ってたの?」
「え? なんかこう、渋い味みたいなのかと思ってました」
そんな風に言ってはみるけど、本当は予想なんて出来ませんでした。だってわたあめと呼ばれる雲が食べられるなんて知らなかったのですから。
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