04 笑顔のお兄さん
04 笑顔のお兄さん
最近、新しく来てくれるようになった人がいます。
それは子供じゃなくて、私より年上そうな男の人です。
といっても塔の近くにまで来てくれるんじゃなくて、少しはなれたところから目が合うくらいです。だけれども、その人はいつもにこりと笑ってくれます。
ある日、村を上げてのお祭りがありました。一年に一回しかやらなくて、村の広場に木を集め、それを燃やしその周りでにぎやかに踊ります。最後には空にとても大きな花がさくのです。楽器の音が風に乗って流れてくるのを合図に、私は毎年高い塔からお祭りを見ていました。
毎年のことだから、今日は誰もここに顔を出しません。少しだけ身を出して広場のほうを覗いていると、
「そんなところから顔を出してると危ない」
と声がかけられました。
私はとてもびっくりしました。
何にびっくりしたのかといわれると、その声が下からしたのではなく、後ろからしたからです。
「きゃぁ!?」
びっくりして、窓のヘリから手をずるりと滑らせました。
「きゃあぁぁっ!」
ふわりと体が窓からすべるのがわかって、思わず甲高い声が出ました。
「危ないっ!」
声は滑りそうになった私の手を掴み、部屋に引き戻してくれました。
「大丈夫か?」
「え。ええ。ありがとう」
声の主を見ると、声の主はいつも笑いかけてくる男の人でした。
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