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その、心のバランスを失って
しまったカレンさんの歌声は
なんとなく、リサの心に
特別な感慨を持って響く。
歌唱はなんとなく几帳面で、それだけに
音楽と言うものを、楽しんでいるというか
生きている楽器のように演奏している、そんな感じ。
優等生であり続けるのは、辛かったのかもしれない。
歌声だけでも分かるのは、やっぱり感性で
リサ自身も、幼い頃から
鉄道員の祖父の期待を持って育てられていたし
父が、鉄道員にならなかったせいで
そのぶん、リサに期待が掛かってしまって。
それは、カレンさんの人生に
少し、似ているような
そんな風な印象もあって。
生真面目な唄い方のカレンさんが
愛するべき
と
べき
と言う言い方をする辺りに
心の軋み、不自由さを感じたりするのも
また、リサ自身の共感、なのだろう。
ラジオDJは、曲を変える。
同じカレンさんの歌で、ソリティア、と言う
カードゲームに喩えて
孤独な、愛に恵まれなかった男の人生を歌った曲。
最後は、煙になって天に召される、と言う表現で
後々のカレンさんが、やはり
愛を求めて、叶わず
天に召されてしまう事に、リサは
重ね合わせてイメージを持ってしまって。
「これを唄ってる時、どんな気持だったのだろう」と
思ってメロディする。
そこはかとなく、浮遊する感じの声は
ほんとうに、天に召される魂のようにも感じられて。
辛かったんでしょうね?
と、語りかけてしまいそうになる、リサだった。
リサ自身、心の軋みを持って
旅に出たのだから。




