3
「たいへんね、おかーさんって。」と、わたし。
「キミだって、おかーさんになるんじゃない」と、ルーフィがヘンな事を言うので
わたしは、ちょっとほっぺが熱くなった(2w)。
こどもって、自由な時間軸で動いている。
分類すれば4次元、って言える。
それは、イメージの中、思うままに動いているから。
それで、しあわせそうなのは
3次元的な、世の中のタイムスケールを無視(笑)しているから。
オトナの多くが不幸っぽく見えるのは、無理やりタイムスケールに
合わせていて、その見積もりが下手だから、だろうと
わたしなども思う(2w)。
よく、仕事の都合に間に合わなかったりする事もあったりして。
こどもみたいに、自由なタイムスケールで
伸び縮みできれば、便利なのになー。
そう思った。
「時間の伸び縮みができれば、みんな幸せになれるのにね」と
わたしは、ルーフィに言った。
「いつか、できるかもしれないね」と、ルーフィ。
「僕らは魔法使いだから、時間を飛び越えたりできるけど。
今は、空間まで飛び越えちゃったりして。
情報だけが飛び越えるのは、今でも出来るね。
通信は光の速度だし。過去には戻れないけど」と、ルーフィは言った。
「光の速度?」と、わたしは聞き返した。
「うん、電気通信だから、インターネットって。」と、ルーフィ。
「光を超えたら、時間が逆転するんでしょ?」と、ルーフィに前聞いた
相対性理論のことをわたしは思い出した。
「うん...。あ、それで過去に通信するの?」と、ルーフィ。
「あーなるほど。おもしろいねそれ。」と、言って、ルーフィは
空中に魔方陣を描いて、指で文字を書いて。
ひょい、と
その魔方陣を窄めた。
「なにしたの?」と、わたしは??(3w)。
「キミの過去に、通信したのさ。Eメールで」と。
ルーフィは楽しそうに話した。
「向うの世界に戻ったら、君のコンピュータに着いてる、かな?」
なーんて、おもしろいことを言った。
時間・逆転
「めぐちゃんは、魔法を使えるようになるのかしら」と
わたしは、少し空席が見えてきたスカイレストランに
ルーフィと一緒に、窓際の展望席を見つけて、座った。
暮れかけた空は、スカイブルー、インディゴ、オレンジ・ヴァーミリオン。
とてもきれい。
ルーフィは「うん..あの子に天使さんが宿ってるとしたら、もう使ってる
かもしれないけど....。よくわかんないな。そういう感じじゃないし」と
楽しそうにウェイトレスをしているめぐ、を
とおくからわたしたちは、眺めながら。
「天使さんには、魔法とは違った能力があるから。
特別にしなくても、それを使える...と思う。」と、ルーフィは付け足した。
「じゃ、こんなお盆で運ばなくても
魔法ですーって飛ばせば」なーんて、わたしはマンガみたいな事を言った。
ルーフィは楽しそうに「それは、お客さんが驚いちゃうね。」
大きなパノラマ・ウィンドウ。
その向うはテラスふうのスペースになっているけれど
こどもが落ちたら危ないので、鍵が掛けられている。
F=mgh
鍵は、ふつうのドアと一緒で
捻ると開いてしまうから、すこし知恵のある子だったら
開けてしまう、なんて事もあった。
それほど、みんな気にしていなかったのは
建物の外周には柵がついていたから、落ちないだろうと
安心していたのもあって。
きょうは、こどもが特に多かった。
誰かが、鍵を開けて、そのままにしていたらしくて
かわいい坊やが、開いていたドアから
テラスに出てしまっていた。
それに、おかあさんも気づかなかった。
とことこと.....と、柵に近づいていく坊やは、まだ小さい。
ひょっとすると、柵のすきまから落ちてしまうかもしれない、と
わたしは「あ!」と思った。
柵の間に、あたま入れた坊やは、風があたるので
にこにこしながら、しゃがんで。
ゆっくりと、テラスから落下しそうに....。
「あぶない!」と、わたしが叫び、ルーフィは振り返り
魔法を使おうとした。
あれ?
なぜか、坊やは柵から、逆さあがりをするみたいに
テラスに戻って、楽しそうに笑っていた。
赤いほっぺが、りんごちゃんみたいにふわふわ。
「ルーフィ?いま、魔法使った?」
「いや...?キミかと思ったけど。そんな力があったの?」
わたしじゃあない。
わたしは、めぐの姿を目で追うと
彼女は、テラスに出ていて
坊やを抱き上げて、おかあさんに預けていた。
どうも、ありがとうございました、って
おかあさんは、幾度も礼を言っていた...。
若いお母さんみたいで、他に赤ちゃんがいて
そのお世話をしているうちに、坊やが遊んでしまっていた、らしい。
「めぐ.....。」わたしは、めぐの背中に
透明な翼があるような、そんな気がした。
「魔法の気配は感じなかったな」と、ルーフィはそう言う。
「たぶん、めぐ、に宿っている天使さんが、飛んでいったんだわ」と
わたしは翼を見たような...と、ルーフィに伝えた。
「人命救助ね。」と、わたしは笑顔で。
でも、みんなの目にはそれは見えないけど
わたしには、時間を一瞬逆転させたように見えた。
めぐ、がしたようには見えないから
喫茶のお客さんには、運良く落ちなかっただけ、に見えたのだろう。
そういう事故は結構、あるらしいけど
子供だから無傷だった、なんてお話は
わりと、天使さんが助けてるのかも、しれないわ....。って
わたしは、夢想した。
ほんとにそうだったら、楽しいけど(3w)。
「そっか、めぐちゃんに天使さんが....。」ルーフィは、ライム・ロックを
ストローで吸いながら、のんびり。
「うん...なんとなくね。そう見えたの。」と、わたしはアイス・ミルクティ。
夕陽がきれいなスカイレストラン。
「能力に、めぐちゃんは気づいていないみたいだね」と、ルーフィは言った。
気づいていない、って言えば
天使さんが宿ってる事にも気づいていないみたい。
でも、天使さんが宿れる人、は
あたりまえだけど、悪い人ではない(3w)。
もし悪い人だったら、天使さんが疲れてしまうだろうし。
正義と悪
やっぱり、悪魔くんが憑くひとは
悪魔くんの好みな人だし(w)
天使さんが宿るような子は
天使さんの好みなんだろうな、と
めぐを見ていて、そう思った。
「そうだね。天使さんって大胆だけど....。悪魔くんみたいに
細心でないから、災難に遭う事もあったり。」と、ルーフィは
気になる事を言う。
「どういう事?いい事してるのにー」と、わたしが思っていると
レストランの中にいた、母親たちの間にも、ひそひそ声が。
「あぶないわねぇ。もし、子供が落ちてたらどう責任を取るつもりかしら..。」とか。
「鍵掛けとくのは図書館の責任」
なんて言う事を言う、人もいて。
ちら、と見ると。彼女たちの背中で悪魔くんが微笑んでいるような
そんな気がした。
「もし、坊やが落ちてたら、そこに居ためぐちゃんが
[図書館の職員]って事になって管理責任を問われたりすることもある」と
ルーフィ。
「そんなぁ。だって、助けてあげたのに...。」と、わたしは不条理な思いを
言葉にした。
「そう思うけどね。だから、人命救助には関わらない、なんて
オトナも多いのさ」と、ルーフィ。「それは、悪魔くんの入れ知恵だね」と。
悪魔的に細心、っていうのはそういう事なのね。
善意でしてあげた事にも、責任、とか言う人たちって、やっぱり.....。
「そう、そのひとたちも悪魔くんが宿ってるかもしれない。
悪魔くん同士で、果し合い、出世競争みたいな事をしてるのさ
悪い事をすれば、悪魔くんの食べるエネルギーが増えるもの」と
ルーフィは、悲しい彼らの現実、を語った。
「そういう世界だもの、魔界って。人間界で、悪魔くんに憑かれた人は
最後に、行き着くところさ」と、ルーフィは言う。
ここは異世界だから、そんなこともあるのね。
わたしたちの住む、あの町には、そんなことはないのかしら?と
ちょっと不安になった。
「それは、わからないけど.....。僕のご主人様がね、未来を悲観して
眠ってしまったのは、そんな理由かもしれないね」と、ルーフィは
窓の外の夕焼けを、瞳に写してそう言った。
「なんとかしよーよ!絶対。そんなの嫌よ」と、わたし。
「うん。キミがそういうと思った」と、ルーフィはうなづく。
お客さんが減ってきたので、めぐは
1階のカウンターに戻る事にして。
スカイレストランの入り口から、エレベーター・ホールに出てきて。
「びっくりしちゃいましたー。坊や、なんにもわからないで
にこにこしてるんだもの。あたしも、にこにこしちゃって。」と
めぐは、いつもの笑顔でそう言う。
「よかったね」と、ルーフィが言い
「うん。あなたはAngelよ」と、わたしが言うと
「そんな...Angelなんて...」と、さっぱりとした
短めの髪を撫でて、白い頬を赤らめて
めぐは、とってもかわいい。
あなたは、ほんとうに天使さんかも。
エレベータが5階について、ドアが開く。
ダークスーツの、細身の青年が降りてきて
レストランの厨房の方に駆けていった。
「なんだろうね....。」と、わたしたちはエレベータに乗って
1階に下りた。
めぐ、が第一図書室のカウンターに戻って
貸し出し係りに戻った頃、さっきのダークスーツ青年が
司書主任さんを呼びとめて、話をしていた。
司書主任さんは、ちょっと困った顔。
めぐちゃんを呼んで、3人で話。
なんだろう、と、会話を聞いて見ると....。
「管理責任を、問いたいと言って来ています、さっきの
転落事故について。」
ダークスーツ青年は、市役所の係員らしい。
さっきの母親たちが市役所に「子供が落ちないように管理して」と
そういう電話をした、との事。
坊やを助けてもらったお母さん、ではなくて。
野次馬たちがそう言っているらしい。
「なんて人たちなの」と、わたしは憤慨した。
「悪魔くんの仲間だしなー。」と、ルーフィは半ば、諦め顔。
「そうやって、悪い気持ちを増やすと、悪魔くんのおやつが増えるんだもの」
悪魔くんも生きるためにやってる、って訳。と
ルーフィは客観的にそういう。
でも...。それ、わたしたちが困るもの。
「なんとかならないかなあ」と、わたし。
ダークスーツ青年は、困惑顔で「現場のスカイレストランで、鍵が
掛かってる事を確認しなかった人にも責任がある、との
主張もありましてね」と、言いにくそうに。
めぐが、テラスに出て坊やを助けたから
一番近くに居たので、責任が重い、と
母親たちが言っている、と。
「まあ、市役所としては、そこまでは言いませんけど。
鍵の管理をきちんとしてほしい、との事でした」と
青年は、伝令だけを言い、帰った。
「なんて人たちかなぁ、まったく」と、ルーフィ。
「悪魔くんのせいっっていうより、自分たちが悪魔じゃない」と
わたしも、ちょっと怒った(2w)。
「そーやって怒ると、悪魔くんが憑くよ。それも、彼らの狙いなんだから」と、ルーフィ
。
仲間を増やしているのだ、そう。
魔法と時
とりあえず、ルーフィは
司書主任さんに助言をした。
法律的に、管理責任は
建物の施錠管理だけですから
開けてはいけない、とドアに書いてあったので
それを誰かが開けたとしても、管理責任までは問えないし
大人なら落ちないフェンスが設置されているので
十分、管理責任は果たしている。
それに、アルバイトのめぐちゃんは
たまたまそこに居ただけ、で
管理責任は、その場所の責任者になるはず。
だし、図書館は市の施設なので
管理は市の仕事であるはず、では?と
ルーフィは、これが問題になったら
市役所に対して、法的根拠を求めると投書する事を
司書さんに伝えた。
司書さんは、困惑していた。
「まあ、おっしゃることは正しいです。役所なので
とにかく、事が収まればそれが一番で....。」
クレームをしてきた連中が、これ以上騒がなければ
それでまるく収まる、のだそうだ。
「なーるほど.....。お役所も大変だなぁ」と、ルーフィ。
「あの、女どもが悪いのよ。」と、わたし。
めぐは「坊やが助かって、ほんとによかったですー」と、
にこにこしている。
責任を取らされる、かもしれないって。と、わたしが言うと、
「責任、ってなんですかー?アルバイト辞めるの?」と
ふつうの顔で。
そんなに、気になっていないようにも見えるけど。
「図書館のお仕事、楽しいですけれど....。アルバイトですから。
それで、まるく収まれば。それでもいいです」と、めぐ。
司書の資格は、大学に入ってから取ればいい、と
のんびりとしているところは、超然としていて
神様みたいにも思えた(3w)。
損得とか、勝ち負けとか。
そういう事よりも、ふんわりとして、しあわせでいたい....。
そんな感じで、やきもきしてた
わたしよりもずっと、おとな(w)みたいな感じもして。
「そういえば、天使さんのエネルギーってなにかしら?」と
ルーフィに言うと
「エネルギーを人から取ってはいないけど」と、ルーフィは笑って
「めぐちゃんがしあわせでないと、やっぱり天使さんも心配なのかな」と。
「ちょっと、考えがある」と
ルーフィは、エレベータに乗って、屋上に行って来ると言った。
数分すると、戻ってきて。
にこにこしている。
「何したの?」と、わたしが尋ねると、
「うん。市役所のね、苦情窓口の記録をね。
時間を巻き戻して、全部消してきた。」と、笑って。
「これで、その事故の記録も無くなったから、市役所としては
消したい記録がそもそも無くなったんだから、何も無かった事に
するだろう。但し、鍵はしっかりと、って言われるだろうけど」
「なーるほど、ルーフィ、さすが。」って、わたしは思った。
「その間に、その、悪魔くんに憑かれた連中に
[対策]しないとね。」と、ルーフィは何か企画したようだった。
ルーフィは、メモランダム・ペーパーをひらひらさせて
「ちょっと、過去へ飛んでみよう。4次元移動だから
ここの時間は変わらないさ。」と、ルーフィ。
時間が伸び縮みする、と言う4次元の空間を使って
ここでは一瞬の間に、過去でひと仕事してくる、と言う
以前に使った魔法だ。
あの時は、遠い過去で数日、過ごしたのに
現実の世界では、ほんの数分、だったっけ。
「そういう魔法をみんなが知ってれば、いらいらなんてしないのに」と
わたしが言うと、ルーフィは楽しそうに笑った。
「そうだね。僕は、そこにあるDSM-4TRの説に沿って
過去に飛んで、さっきのクレーマーたちの心が穏やかになるように
仕掛けをしてくるつもり、さ。」と、ルーフィはすごい事を言った。
「過去を変えるの?」と、わたしはちょっと心配。
「大丈夫。ここは異世界だし。クレーマーが減ったら
返って住みやすくなるさ。それに....。」と、ルーフィは言葉を濁す。
「どうしたの?」
「悪魔くんに憑かれた人、って言うのは、つまり次元の歪みに落ちてる。
心のイメージに、魔界からの悪魔くんがくっついているから。
地球の磁場が狂うのは、彼ら、次元の歪みのせい、なんだ」と
理論物理学の話、また出てきたけど
わかんなーい(4w)。
「じゃね」と、ルーフィは踵を返して
エレベータ・ホールの隣の階段を下りていったけれど
途中で足音が消えた。
空間を飛び越える魔法を使ったのだろう。
どこへいったのかな.....。
ルーフィは、時空間を飛び越えて
レストランで、市役所にクレームをつけていた
母親たちのひとり、の20年前にタイム・トラベル。
住宅団地のようなアパートメントで
こどもたちが遊んでいる、のどか場所。
開発もまだ途中で、緑深い山々に
赤茶けた土が見え隠れするニュータウン。
そんな空き地で、遊んでいた女の子は
泥だらけになって、母親に叱られている。
だが、母親は鬼のような形相。
子供のため、と言うより
洗濯の手間が増えるので、怒っている。
そんな感じだ。
「....よくある事だよな」と、ルーフィは苦笑い。
高い樅の木の上から、俯瞰していた。
母親が怒るのは、無理も無いけれど
でも、子供は、訳分からずに怒られても
怖いだけだし、不条理に不満を感じるだけだ。
心の中に「お母さんが嫌いな事すると、怖い」なーんて
怖い、みたくないものが出来てしまう。
と、その後大人になっても
「お母さんが嫌いな事」に過敏になって
怒ってしまう。
つまり、スカイレストランのテラスの鍵、が開いていて
子供がテラスから落ちそうになった。
そんな怖い事、と(冒険して怒られた記憶)を連想してしまって
過去の、不条理な事への怒りを
転換させてしまって、市役所にクレームしていたのだろう。
「なーるほど...ねぇ。負の連鎖、とは言うけれど」と、ルーフィは驚く。
そんな母親って、ほんとうにいるんだなぁ。
でも、大抵その母親も、子供の頃に同じ目に遭ってるらしいから。
どうして母親ばかりなのか?と言うと
父親は大抵、外に仕事に出てるから、らしい(笑)。
「とにかく」呆れてばかりもいられないので
その、叱られている子の心、と
通信をする事にした。
もちろん、言葉はわからないし
理屈も理解できないから、イメージで伝える。
「お母さんは、怖くないんだよ。
いつか、おとなになってから
このメッセージを、開けてみてね。」と
記憶の中に、時限爆弾(w)。
悪い記憶を、消してしまうようなイメージを
伝えた。
アミタール麻酔などで
精神科医師が、面接療法して
直す、その記憶である。
「これで、直ればいいけど」と、ルーフィは
樅の木の上から、瞬間に時空を飛び越えて
また、図書館に戻った。
こちら時間で、数秒の後----
エレベータ・ホールの隣の階段を
昇って来る足音。
ルーフィ。
「ただいま」と
エレベータ・ホールに戻ってきたルーフィ。
「どうだった」と、わたしは尋ねる。
「うまく行ったかどうか、は
分からないけど....。とりあえず試してみたよ。図書館の本を
見てね。」と、ルーフィが言うので
「図書館に魔法の本があるの?」と、わたしはびっくりした。
「うん、あるよー。」と、ルーフィはちょっと、いたずらっぽく応えた。
クレーム記録を消したのと、ルーフィの工作(笑)のせいか
その事件の事は、みんな忘れてしまったようだった。
ルーフィとしては、その、工作の相手から
悪魔くんがいなくなった、か、が
気になるところだけど.....。
ひとりと、みんな
ほんの一瞬の、ルーフィのお手柄(w)も
「でも、この世界のひと全部に、この手は使えないね」と言うお話。
めぐは「あ、ルーフィさん、すこしお疲れですね」と
穏やかな笑顔。
ロビーで、お休みになって、と
エルゴノミクスデザインの、おもしろいソファーに
ルーフィを薦めた。
イタリアンテイストだろうか、こういう
優雅な雰囲気のものが、図書館にあるのは
ちょっと楽しげで、いい感じ。
ベージュの、カーブしたバックレストに、リアル・ウッドのシート。
ソファースタイルで、重厚感があって。
デザインで、人の心を和ませるのも
またいいものね。
そんな風に、わたしは思う。
この、デザイナーさんも、そういう気持ちで
作ったのかな....。
ベリーニさん、と言うサインがソファーに入っていたので
いつか、どこかで会えるといいな...なんて
その名前を記憶した。
わたしも、ルーフィの近く、そのソファーに腰掛けた。
反対側からも座れるようになっているのが、図書館用、っぽくて
おもしろい作り。
ふにゃふにゃとカーブしているバックレストの、それぞれに
ひとりひとりが優美に座れるように考えられていて。
「作り手の心、だね。」と、ルーフィ。
「デザインで、心に訴えるのってステキ。デザイナーさんも
天のお使いかしら。」と、わたし。
「そうかもしれないね。作り手の気持ちが作品に出るものだ、って
言われてるし。」と、ルーフィ。
仕事もそうで、楽して儲けよう、ってスタイルもあるし
このデザインみたいに、心を込めてする仕事もあって。
めぐ、は
これからどんな仕事をしていくのかなー。
カウンターにいる彼女は、耳の遠いおばあちゃんに
本のご案内をしている。
手話を使おうと思ったらしいけど、おばあちゃんが手話を
知らないので(3w)
本のある書架まで、ご案内することに。
公共の施設なので、そんな時も
他の司書さんが、カウンターの仕事を
代わってくれたりしているけれど
忙しい場所だったら、カウンターに
人が並んでしまったり
そんなこともあるかもしれない。
カウンターで待っている人も、耳の遠いおばあちゃんも
おなじ、サービスを受けている人。
そんなふうに考えて、サービスをお金で売るお店なら
わりと、めぐ、みたいな丁寧な対応を
喜ばない、そんなお店もあったりもする...。
そんな事を、わたしは取材の経験から思い起こした。
そこにある「心」ってなんだろう?。
そんなお店に勤めていたりすると、時間に追われて
セカセカしたりするのかな....。なんて。
昨日の、あの
本を借りに来たおじさんの事を思い出した。
「ねえ、ルーフィ? 悪魔くんの憑いている心って
結局、その人の想像を、悪魔くんが歪めちゃう、って事?」
と、わたしはなーんとなく。
「そうだね。昨日のイライラおじさんで言えば、物理的な時間の経過を
見ないで、ひたすら急いでるって感じで。感覚は4次元だから。」と、ルーフィ。
「3次元の感覚に合わせればいいのね」と、わたし。
「そう。目の前にある時間の流れと環境に合わせる、って事。
なんだけどね。自分の意思を弱める事だから.....。神経の昂奮を
少し抑える薬、そんなものとか....。それか。
針治療みたいなもので、昂奮する気持ちを抑える、とか...。」
隣町で会った、気術使いの人だったら
そんな薬を知っているかもしれないし、針治療も詳しいかな....。
偶然が、ほんとは必然だったりする。
そんなこともあるけれど、あの人もそうかもしれない....。?
めぐ、は
静かに書架から戻ってきて「歴史小説って、いっぱいあるんですね。」
と、楽しげに感想。
「文学は幅広いもん」と、ルーフィ。
どちらかと言うと、魔法使いは理系なのかしら...。
ルーフィの魔法は、そんな感じだ。
「コンピュータで見出し作るといいわね」と、わたしは思いつき。
「はい、そういうのあるみたいです。」って
めぐは、第一図書室の真ん中にあるパソコン数台の事を
見た。
「それでも、おばあちゃんでパソコン使うのって、結構大変らしくって。
いろんな言葉で本、書かれてるので。
原語で検索ってできないらしくて。」
それで、人の手でご案内するのも、とってもいいことね。
コンピューターの都合に、人が合わせるのも
なんとなくヘンな感じもするし。
忘れてたけど、そういう事って多くて
なーんとなく悪魔くん的な考えっぽいような気も....(2w)した。
カウンターで、本を貸し出しする人、返すひと。
いろんな人たちが、川のように流れていくけれど
楽しそうに、嬉しそうに
帰って行く人の表情を眺めているのは、ちょっとしあわせな感じ。
コメディ
アルバイト、いろいろあった
その日の仕事を終えて、昨日みたいに
めぐと、わたし、ルーフィは
図書館の前から、路面電車の通りまで
歩きながら、お話をした。
ルーフィは、過去へ旅して
悪魔くんが憑いていた人の、悲しい過去を
克服できるように、お薬をあげてきた、と
そんな風に伝えた。
「よかったですね。その方が、しあわせになってくだされば。
赤ちゃんもしあわせになるでしょう」と、めぐは
ハイスクールの生徒にしては、落着いた言葉を発した。
たぶん....それは、宿っている天使さんの言葉かな....。
なんて、わたしは想像した。
時々、台風娘になる時のめぐは
とってもかわいいけど、あっちが17歳の彼女らしい、そんな感じもする。
わたしは、悪魔くんたちからの防御だけ考えていたのに
めぐは、その、クレームを付ける人がお母さんで
その人の赤ちゃんのしあわせを考えていたり。
そういう、深い広い考えも、なーんとなく。天使さんっぽいなぁ、
そんな風にも思った。
でも。
天使さんは、なーんの為にめぐに宿ったのだろう?
めぐは、ちょっと窮屈なんじゃないかしら....?
一度、天使さんに会って話をしたい(3w)そんな気もして。
ちょっと複雑な夕暮れだった。
「ねえ、めぐ」と、わたしはその事を、本人に聞いてみようと思った。
「はい....?..。」めぐは、歩きながらわたしの方を見たので
舗道のタイルにつまづいて、転びそうになった。
「あぶないっ!」と、ルーフィが
支えようと、手をさしのべた。
ところが。
ルーフィの手の高さは、ちょうど、めぐのかわいいバスとのあたりだった(8w)
「あ....。」と、ルーフィはめぐを起こしてから
すぐに手を引っ込めて「pardon,me」
「い、いいえ...。」めぐは、両腕で
ひとり抱きしめ(3w)ポーズで、
でも、真っ赤になって俯いちゃって。
かわいいスカートからのぞく、すらっとした脚まで
真っ赤に染まってた。
男の子に触れられた事、なんて無いんだろうし(アタリマエ)。
わたしだってないわよ....(4w)。ルーフィに触れられたの、なんて。
そりゃ、事故だけど....なんかもやもやするっ(笑)。
めぐが黙っちゃったので、わたしたちも静かに
路面電車に乗って、おうちに帰った。
昨日みたいに、ディナーを頂いて
わたしたちは、それでもふつーに過ごしたつもりだったけど
めぐがおとなしいので、お母さんが心配してた。
「学校で、何かあったの?」と、尋ねても
めぐは、俯いてかぶりを振るだけで
まだ、すこし頬が赤かったり....。
きょうは、温泉には行かないで
お家のお風呂に入った、と言っても
お家のお風呂も、温泉が引いてあるので
お湯の感じは似ている。
離れの、おばあちゃんのトマト畑のあたりに
新しく、温泉を引いて。
お父さんが、お風呂を建てたのは
最近のことだったと思う。
ログハウスを作って。
檜で、バスタブ。
アジアふう、らしくて
とってもいい香り。
....でも....わたし...は。
あんな事件ってなかったなー。
クラスメートの男の子に、ムネさわられた、なんてないし
だいたい女子高だもん...。
思い起こすと、お医者さんしか触ってない(4w)。
おのれーめぐぅー、わたしのルーフィーにぃ!(笑)なーんて。
ルーフィにだって、触られてないのにぃ、あーん
かわいそうなわたしのおムネさん(99w)。
なにいってんだろ、あたし....(^^)。
ま、めぐはわたしだから、いいのか......(?)
「一緒にいこっか」と、わたしは
めぐを、お風呂に誘った。
奇妙におとなしくなっちゃった、めぐを誘って
わたしは、裏庭から
おばあちゃんのひろーい畑を歩いて。
離れにある、ログハウスのお風呂に。
自分の家とおんなじだから、なんか不思議。
でも、一人用のお風呂だから、ふたりで入ると
ちょっと、狭いかしら。
ほいほい、と
女同士で気楽なので、わたしはおーるぬーど(笑)。
めぐ、は
うつむいたまま、背中に手を回して。
ゆっくりと。
ちょっと、まだ素肌はピンクに染まってるみたい。
まーだ、どきどきしてるのかな....。
無理も無いわ。初めてのことじゃ....。
でも、わたしはつとめて明るく「さ、はいろーよぉ。昨日みたく、背中
ながしっこしよっか」と、言うと、めぐは
俯いていた顔をあげて。
「Megさん」と、真面目な顔で言うので
わたしは、どっきりした。
しっかりとした表情をすると、かなり美人だ。
そりゃそうだ、わたしだもん...(88w)なんて、ヘンなことを
わたしは思った。
「.....。」めぐは、黙ってわたしを見ている。
朝露に綻ぶ蕾のように、その瞳は潤み
かたちのいい唇は、きゅ、っとしてて弓みたい。
キスしたくなっちゃう(笑)。
わたしは、そういう趣味はないけれど(3w)
そのくらい魅力的。
「どうしたの?」って、わたしは
めぐの雰囲気で、なーんとなく応えた。
「あたし....ルーフィさん、好きになっちゃった!」
と、おっきな声で言って、泣き出しためぐは
素肌のまま、わたしに抱きついてきた。
若鮎みたいなボディは、ほんとに
わたしの3年まえかしら、って思うくらいに
凛々しくて。
ルーフィも、こっちに転ぶかなぁ(88w)なんて
不埒な想像をしながら、わたしは
めぐを慰めた。
「うんうん....そっか。」そうは言ったけど
ルーフィは、わたしの...。あ、でも
めぐは、わたしだから。
どっちでもいいのか(笑)。
「.....でも.......るーふぃーさん..は...Megさん..の...。」と
めぐは、しゃくりながら絶え絶えに、わたしを気遣う。
「でもね....。いいの。『あなたはわたし』だもん。それに....。
決めるのは彼だし。」
わたしもそう言った。いつか、わたしたちは
じぶんたちの世界に帰る事になるんだもん。
それとも、こっちの世界からルーフィーは戻らないって
そういうかしら?
ちょっと不安に思ったけど、それでも
めぐの気持ちも大切にしてあげたかったし....。
ちょっと狭いかな、って思ったけど
それでも、ふたり並んで洗うには十分な広さ。
なんたって、ログハウスだもん。
「2階つけて、お洗濯物干せるといいわね」なーんて
わたしはちょっと主婦っぽい(2w)あーあ、年かしら。
気持ちを打ち明けて、すっきりしたのか
めぐは、すこし元気になった。
笑顔が戻ってくると、わたしも安心する。
「何も、言わなくていいの....?ルーフィに。」と、わたしが言うと
めぐは、はい、とだけ。
静かに、シャボンを泡立てながら。
ふたりっきりで、こうしてると
清楚で、不思議に魅惑的。
大人っぽいボディと違って、惹かれる感じじゃなくって
大切にしてあげたい、って。
そんな感じに見えて。
....これは、強敵だわ(66w)。
ルーフィめぇ。オトメふたりを惑わせて。
悪いやっちゃ。
そんな風に思ってたら、ログハウスの入り口に
人の気配。
だーれも来ないと思って。鍵は掛けてなかった(笑)。
扉の立て付けが少し悪いので、思いっきり引っ張らないと
開かない。
ばん!
扉が開かれて、わたしはめぐを守ろうと
お風呂の入り口の硝子戸、すりガラスだけど
そこに立ちはだかった。
「あれ...なんだ、ルーフィじゃ....キャー、出てけ、ばかーーー。」と
叫んだので、ルーフィはびっくりして瞬間移動。
手に持ってたわたしの、シャボンがついた海綿は、宙を舞って
ルーフィの居た空間を超えて、ドアに当たって落ちた(笑)。
すりガラスだから、よく考えたら首から上しか見えないのに(33w)
硝子扉開けて、スポンジぶつけなきゃよかった(笑)。
「まったくもぅ。スケベ魔法使いめ!」と、わたしは
すこーし、めぐの気持ちを気にして。
たぶん、わたしたちが入ってるのを知らないで来たのね。
お風呂セット(w)落ちてたもん。
「だいじょぶよ、めぐちゃんの方は見えないから、入り口から。」と
わたしは言った。
「はい.....。」と、そうは言いながらも
めぐは、なーんとなく恥ずかしそう。
だって、ねぇ。なーんとなく....。
着てたものもかごに入ってたし(笑)まあ、見えないようになってるけど。
お風呂上りに、トマト畑でルーフィが待ってて
「ごめんなさいっ!知らなかったの」と、ルーフィは
長身を折るように謝るので、わたしたちも
すぐに、許してあげた。
でも、めぐはやっぱり恥ずかしいのか、俯いて
とっとこと.....。って
お部屋に帰っちゃった。
「どうしたんだろ、めぐちゃん。さっきから.....あ、やっぱ
さわっちゃったのがまずかったかなー。」と、ルーフィは
どーんかん(w)魔法使いくん。
「さわっちゃったって、わざとでしょ、このスケベ!」と
わたしは、肩をはたいた。
「ちがうって、もう。そんなことしないよ。」と、ルーフィは腕で
自分をかばって。
その手のひらを見た。
「あ、感触を思い出してるなー、この、H!本国へ送り返すぞー!」って
わたしは、じぶんでさわっためぐの、かわいらしいバスとを思い出して。
あんな、無垢で初々しいものに、ルーフィが触れたなんて
なんかムカムカ来て。
ルーフィの足を踏んずけちゃった(2w)。
ひそむ力
そのあと、めぐとふたりで
ルーフィのお風呂をノゾイテあげようかと(9w)
思ったけど、めぐがたぶん、しないだろうから。
止めて(笑)
お部屋に戻って「復讐したからねー」と
めぐに言ったら「わは。」って
めぐは、17才らしい声で笑ったので
わたし、少し安心。
「でもねー、知らなかったってのも
なんか怪しいよー。って」、わたし(w)。
「.....。ルーフィさん...あたしに興味を持ってくれたのかしら...?」
それは、まあ、わたしと同じで
ちょっと若い子(笑)なんて
刺激的かもしんないけどさー。
めぐのオトメココロは、千々に迷うわね(3w)。
それはひとまず、置いといて。
「めぐは、天使さんが宿ってるって意識、ないの?」と
わたしは気になってる事を、尋ねてみた。
ゆっくり、かぶりを振るめぐ、は
静かな表情。
ひょっとすると、天使さん....?かしら。
自然に、入れ替わったりしてるのかな....。
そのあと、ルーフィの部屋に行って
尋ねてみた。
「うーん....もともと、天使さんって
地上では生きていけないから。
それで、めぐちゃんに宿ってるんだろうけど。
いつかは帰るって約束なんだろうと思うな。
ここのお父さん、お母さんも
なーんとなく天使さんっぽいし。
ひょっとしたら、生まれた時から
天使さんと一緒なのかもね。」なんて。
....それだと、意識ないのも
なんとなく分かる。
ずーっとそうだったら。
「そういえば、わたしも
時間旅行ができるなんて、知らなかったし。
たぶん、これって、生まれつき....。かな」
それで、ルーフィに出会って
潜んでいた力が、思い出されるみたいに目覚めた。
わたしは、めぐのお部屋に戻って。
昨日みたいに、おやすみのしたくをしようとして。
そしたら、めぐが「おばあちゃんに縫ってもらったの!」って
かわいらしい、白、とももいろ、それと
そらいろの。
ふんわりとした生地の、浴衣。それを
肩のところに当てて。にこにこしてた。
「ねね、着てみてー。」って。わたし。
かわいいめぐを、見てみたくて。
帯の締め方がわからない、って言うから
わたしが締めてあげた。
西洋人が着ると、帯をベルトみたいに締めて
ヘンなんだけど、わたしはトラベル・ライターだから
日本ふうに、かわいらしく着付けてあげた。
細くて、かよわい感じのめぐ、女の子だなー、って
ちょっと、ささえてあげたくなるみたいな。
そんなめぐ、にぴったりの浴衣姿。
写真、とっておこ。
って、わたしは、バッグに入れたままの
仕事用のカメラを取り出した。
西ドイツの、有名なレンズ・メーカーの。
とてもきれいに写る、チタン・ボディのカメラ。
フィルムを使う、アナログのカメラなので
電池が無くても写る。だから
異世界に来ても、たぶん写る。
そこがすてき。
時間旅行をするわたしには、丁度いい。
ピントも手動、距離感は
二重に写るイメージが重なるようにする、って
いたって簡単。
それで、ひょい、と
数枚、スナップした。
「どんな?見たいなー」と、めぐが言うので
「これは、現像しないとダメなの」って。
なので、ケータイ電話で何枚か取った。
電池がなくなっちゃうから、電源を落としておいたんで
まだ、大丈夫。
その、写真を見せる。
めぐは「んー、斜め向いた方がスマートに見えるかな」なんて
写真写りを気にしてて。
そんなとこも、とてもかわいらしい。
「Megさんのもあるんですよー」って、めぐはにこにこ。
「ほら、ルーフィさんのも」
おばあちゃん、大変だったかな、ごめんなさい。
そう、思わず言ってしまう。
めぐは「ううん、おばあちゃんもうれしいの。孫が増えたみたいだ、って。」
そんな言葉を聞くと、いつか来る別れの日をイメージして
ちょっと、淋しくなっちゃうな.....。
そういえば、めぐに宿ってる天使さんも、ご用が済んだら
天界へ戻るんでしょうに....。
そのご用がなんなのか、わたしはまだ知らないけど
いっぺんに、みんなが居なくなっちゃわないと、いいな。
そんな風に思った。
せめても、と思って
「浴衣で、みんなで温泉に行って、花火したいねー。」
なんて言って。
わたしに誂えてもらった、浴衣を着て
めぐと一緒に写真を撮った。
ケータイのカメラでも撮って。
それは、ルーフィにあとでプリントしてもらおう。
機械、得意だもん。
わたしの浴衣は、水色、それと
シャガール・ブルーみたいな藍色が
模様になった、すてきなものだった。
こんなに、ステキな思い出が残っても
いつか、旅立ってしまうトラベラーって
せつないな、なんだか....。
旅愁
めぐが寝ちゃったのは、10時くらいだった。
いろいろあって、きょうは疲れちゃったのかな。
なんていったって、初めてのボインタッチ(笑)なんて
女の子にとっては、ちょっとショックがーん(3w)って感じだと思うけど。
でも、それがルーフィだったら、まだいっか。
事故だし(w)。
でも、そーしてみるとわたしの方がかわいそうかも。
だーってぇ。お医者さんに、それも女よぉ。
身体検査で触られたくらいだし(笑)。
ここはめぐのウチだけど、わたしの家、向こうの世界のと
つくりはそっくりだから、ちょっと、お屋根にのぼってみよっかな。
いつか、ルーフィと見たみたいに、お星さまを眺めたりって
ちょっとステキかも....。
なんて、静かーにお部屋を出て。
廊下から階段を昇って。
ルーフィの居る屋根裏部屋の脇をかすめ(3w)。
お屋根に昇って見ると...。
「あ、ルーフィ」
「やぁ」
どんかん魔法使いさんは(w)のんきに夕涼み。
「おばあちゃんが、作ってくれたのよ」わたしは、ルーフィの浴衣を
渡した。
「申し訳ないな、こんなに親切にしてもらって....。僕ら、いつか
いなくなるのに」と、ルーフィはわたしと同じ事を考えてた。
「.....ルーフィ、こっちに残るつもりはない?」と、わたしは
ちょっと気になってた事を聞いてみた。
夜空がきれいで、お星様がきらきら....。その、星座のきらめきは
わたしたちの世界とまったく、変わらないのに。
「天の川もおんなじ。」と、わたしはつぶやくと....。
「そっか。星空はおんなじなんだね。どっちの世界も。
時空が歪んでいない、たとえば月に行って時間軸を進めれば....
元の世界に戻れるかもしれないね。」
意外な発想に、わたしは驚いた。
「こっちの世界に残る...ってキミが言うのは、めぐちゃんのこと?」
と、どんかん魔法使いルーフィは、肝心な事に気づいた。
そして。
「こっちに戻るなんて、許されないよ。それは。」と
悲しい現実をルーフィは告げた。
「戻れなかったら、それは別だけどさ」とも言い
複雑な気持ちを、ルーフィは表現した。
あんなに可愛くて、初々しい子に愛されたら
それは、心穏やかでいられないだろうな.....。
なんたって、わたしと同じ子なんだもん(笑)
それで3つ若い。これは強力なライバル...(w)
でも、わたしとルーフィは気づいてなかった。
ここがお屋根の上で、静かな夜。
めぐのお部屋から、わたしたちの会話も
聞こえちゃったりする、って事...に。
キッチン・カー
わたしたちのおはなしを、めぐちゃんは
眠りながら、なんとなく聞こえていたらしくって。
夢を、みました。
ぼんやりと、お花畑みたいな
すてきなところで、楽しくしていて。
ふんわりとした、気持ちで
にこにことしている、そんな夢ーーー。
だったのですけど、その、お花畑から
おうちに帰って来ると。
もう、その道が
なくなってしまっていて。
それで、地図をさがしているーーー。
そんな、夢。
なんとなく、めぐちゃんは感じます。
.....そう、いつか、ルーフィさんは
戻ることに、なるのね.....。
旅人って、いつかは去ってしまう。
でも。好きになったり、いいなぁ、って思う気持ちは
自分では、どうしようもないもの。
かわいらしい、めぐちゃんの想いは...どうなるのでしょう?
次の朝、わたしは少しお寝坊して(w)。
目覚めたら、めぐちゃんはお部屋にいませんでした。
「あら」と、時計をみたら8時半。
ルーフィのお部屋を訪ねてみたら、彼もまだ寝てて(w)
わたしは、階段を下ってダイニングに行くと
おかあさん(ここでは、めぐの)は、「めぐは、学校へ行きました」って
にこにこしてたので(ちょち恥)。
すみません、とだけ挨拶して。
ルーフィは起きたかなー、って。
ねぼすけ魔法使いは、ようやく起きてきて「あーあ、おはようMeg。いい朝だ」(w)
「めぐちゃん、もう学校だって。」と、わたしが言うと
「...そうだろうね、もう9時近いし。キミの学校、朝早いね」なーんて。
のんきなイギリス人め(4w)。
「ちゃんと着替えて、顔洗っといでルーフィ」と、わたしが言うと
「あーい、ママ」なーんて、ルーフィはまだ寝ぼけてる(3w)。
わたしはママじゃない!っ。(6w)。
....でも、ルーフィのママってどんな人かしら。(?)。
そーぞーだと、ルーフィーに似てて、背が高くて
すらっとしてて。
お鼻が高くて。
ユーモアたっぷりの、ほがらかな人かな?
なーんて。
どこの時代の人かなぁ。そういえばルーフィーも魔法使いだから....。
......ルーフィも、あたしの時代の人じゃないから。
他の時代に、いつか、帰るかもしれないんだ.....。
ここは異世界、だけど。
めぐ、も、わたしも。
ルーフィから見ると、旅先の人....。なんだ。
ちょっと、わたしは胸騒ぎ。
ルーフィは、わたしのことを好きって言ってくれたけど
それは、ずっと前の事。
本当の、ルーフィが生まれ育った時代に
いつか帰るのかしら....。
そう考えると、めぐちゃんの気持が
なんとなく分かったような、そんな気もした。
.....めぐ.....せつないよね、さびしいよね.....。
「あーあ、これでいい、ママ」と、ルーフィはユーモアたっぷりで
にこにこしてるので。
そんな、シーリアスな気持も
吹っ飛んじゃうけど(4w)。
それでいいのかもね....。
いつか、別れる時が訪れるとしても。
その時までは、楽しくしていたいもの。
わたしたちだけで、ダイニングに行くと
お茶帽子をかぶった、ティー・ポットと
クロワッサンド。
クロワッサン、20cmくらいの大きいものだけど
三日月型の、甘くないほう。
三角のは、甘いの。
切れ目を入れて、レタスと、ハム。お好みでベーコンをローストしたもの。
それに、マスタードとか、オランデーズ。
オランデーズって言うくらいだから、オランダのソースなんだろうけど。
オランダで食べたことないもん(笑)。今度、行ってみよう。
それは、なかなかの美味。
サラダにトマトジュース、オレンジ。
「豪華なブレックファーストだね」と、ルーフィ。
「もう、ランチじゃない?これ。」と、わたし。
10時半だもん(笑)。
寝坊しちゃた。めぐは、もう学校で2時間目かなー。
「ハイスクールって、もいちど行ってみたいなー。」とわたし。
夢だけど。
「遅刻だね、これじゃ」と、ルーフィ(w)。
「うるさいわね、遅刻なんてしなかったわよ。なによ、寝てたくせに」と、わたし。
ほんとは、時々してたけど(笑)。
「んー、ここ、静かでよく寝られるし。ゆうべ、ちょっと夜更かしだったし、」
と、ルーフィ。
わたしは、ゆうべ、お屋根で話してた内容を思い出してた。
めぐちゃんの気持ち。わたしの気持ち。
ルーフィの気持ち。
みんな、しあわせになれる方法ってないのかなー。
時間と空間が、違うんだし。
ま、いま考えてもしかたないか....。
それで、ルーフィに渡した浴衣のことを思い出して
「あ、そうだ。おばあちゃんにお礼、言わないと」
「そうだね。」
ゆうべは遅くに、プレゼントしていただいたから。
お休みになられてると思って、ごあいさつは控えて...。
わたしは、クロワッサンドを、オーブントースターですこし
温めた。
なんたって、自分の家(笑)だから勝手が分かってて
B&Bに泊まるより楽。
ちょこっと塩味、バターの風味がふんわりして。
焦げないくらいに温めると、おいしい。
お弁当に持ってったりしたっけ、ハイスクールに。
冬、石炭のストーブであっためると、バターの香りで
おいしそう、って。
クラスメートのみんなも、喜んでたっけ。
女子高って、そういう時はいいな。
目玉焼き、フライド・エッグとは微妙に違う日本風。
油少なめ、ふわふわ。
これを、イギリスパンにはさんで、クロック・ムッシュ。
ハムといっしょに。
それも、おいしいね....。
ルーフィは、紅茶にミルクをいっぱい入れて。
冷たいミルクに、紅茶を入れると
ミルクっぽくならなくて、クリーミー。
紅茶好きっぽい頂き方、よく知ってるのはイギリスの人らしい。
「これ、図書館の5階で作ったら受けそうだね」と、ルーフィ。
あ、そっか。こういう家庭料理っぽいの、好き嫌いないし。
軽いし。
「キッチンカー、なんてのも楽しいかな」って、ルーフィが言うので
ちょっと、夢が広がっちゃう。
そういえば、サンジェルマンのホットドッグも
時々、キッチンカーで来てたっけ。
シトローエンで。
フランスだもんね....。
めぐとわたしと、ルーフィと。
そんな暮らしができたら、しあわせかしら...。なんて
夢がひろがっちゃった。
守護する者
「のんびりしていていいね」と、ルーフィ。
「田舎だもん。」と、わたし。
畑耕して、温泉行って。
ごはん食べて、寝て。
そんな暮らしだと、いらいらしないから
悪魔くんがくる、なんて気にしなくてもいいね。
「まあ、やっぱり都市生活って少しヘンなんだよ」と、ルーフィ。
「そうかも」と、わたし。
狭いところに、人がいっぱい。
そういうのが都市、だと思っていたから
それは、たしかにイライラするかもね。
おうちのそばに、畑があって。
ごはんたべて、畑行って。
帰って来て、寝て。
そんな生活だったら、ひとに会うこともないから
ぜーんぶ、思い通り。
しあわせかもしれないわ...。なーんて、思ったりもするのは
わたしが、カレッヂに行って、それから
お仕事してるから、かもしれない。
ハイスクールの頃なんて、そんな事思いもしなかったもん。
ブレックファースト・ランチ(3w)を楽しんで。
それから、わたしとルーフィは
おばあちゃんに、浴衣のお礼をしなきゃ、って
畑へ行ってみた。
正直、わたしにとっては
長く一緒に住んでいるおばあちゃん(と、おんなじだけど
ここは異世界なので、違うひと)なんだけど。
お庭から、サンダルで
とっとこと...と、わたしはトマト畑の方へ歩いた。
ルーフィには、ちょっとちいちゃいサンダルで
かかとが出ちゃって、なんとなくユーモラス。
「ガールフレンドのとこに泊まった男の子、みたい」と
わたしが笑うと、ルーフィは涼しい顔で
「その通りじゃない」と、言う。
「そうだけど、そうじゃなくて....。」と、わたしは笑いの意味を説明
するのも変なので、黙っていた。
「ああ、女の子とね。夜、愛し合うってこと?」と
あけすけにルーフィが言うので、わたしは恥ずかしくなった(*^。^*)
「そんなにはっきりいわないの!」と、わたしが言うと
ルーフィは「キミが言ったんじゃん」と、平気な顔。
まあ、イギリス人ってそうなのかなぁ。ルーフィは魔法使いだし。
見た目青年っぽいけど、ほんとの年齢はおじーさんかも(笑)。
でも。
そんなことを連想すると、めぐ、とわたしと、ルーフィ。
3人でなかよく暮らすなんて、夢っぽいなぁ、とわたしは思ったり。
ふつう、おとうさんとおかあさんになって。こどもが生まれて。
おかあさんふたり、って、ちょっと不思議だもん(8w)。
まあ、めぐ、とわたし、は、生きてる時空が違う
同じひと。
でも、めぐ、は嫌だろな、そんなの。
わたしも嫌(笑)。
でもそれは、わたしたちがそういう家族、に慣れているからで
アラブに行けば、お父さんがひとりでお母さん数人、なんてのも自然だから
たぶん、慣れ、なのかな。
不思議。
生まれつきそういうものだと思っていた家族の形が
地域で違う、とか.....。
歩きながら、そんなことを考えてたら、ルーフィが「静かだね」と言うので
「わたしは、いつもうるさいみたいね」と、言うと
「そうそう、Megらしいね。生き生きしてて。」と、ルーフィはにこにこ。
「家族、ってものを文化的に考えてたの」と、わたしが言うと
「うん、さすがは作家さんだなー。次のレポートに書いてみたら」と
ルーフィは軽快でたのしげ。
おばあちゃんは、さて、どこかな.....。
トマト畑に、麦畑。
きゅうりに、とうもろこし、スイカ。
西洋種のウォーター・メロンより大きい、アジア種のスイカは
おばあちゃんの夏の楽しみ。
農機具小屋も、ログハウス仕上げだけど
温泉のお風呂よりは、かなり旧い。
年季が入っていて、煤けているけれど
そこが、なんとなくわたしは、気に入っている。
おじいちゃんが建てた、ので
思い出もいっぱいの、農機具小屋には
トラクターもあったりするけれど
今は、乗る人もいない。
「おばあちゃん!」と、小屋で
収穫したきゅうりをまとめていたおばあちゃんを
わたしは見つけて。
思わず、そう言って。 あ、このおばあちゃんは
めぐのおばあちゃんだった(5w)と
気がついて「ごめんなさい、お世話になっています。
浴衣をありがとうございました」と言うと
おばあちゃんは、にっこりして「いいの。あなたは、めぐ、の
お姉さんだと思ってるから」と。
ルーフィは「僕にまで、ありがとうございます」と。
おばあちゃんは「うんうん、ルーフィさんね。めぐ、を
可愛がってあげてね。お兄ちゃんの代わりが出来て
喜んでるわ。甘えん坊だもの。あの子」
....ちょっと、お兄ちゃんとは違うけど(w)甘えっ子は、そうかも。
わたしは、甘えん坊だったのかしら(3w)。
そうかもしれないわ。
「それにしても、和裁、お達者なんですね」と、ルーフィが尋ねると
おばあちゃんは、晴れた空と白い雲を見上げて
「はい。わたしは、旅人でしたから」と、意外な事をおばあちゃんは
告げた。
.....旅人。
わたしたちみたいに、時間旅行をするのかしら....。と
一瞬思ったけど。
まさか、ね.....。
「どちらに旅をなさったんですか?」と
ルーフィが言うと
おばあちゃんは「いろいろ、行きました。遠いところ、近いところ....。
高いところも」と、おもしろい表現をした。
高いところ.....。
エベレストかな?(w)とか。
登山家だったのかしら。なんて思ったけど
「めぐは、とってもデリケートな子だから。
幼い頃から、怖いこと、とか、
あぶないこと、とかを
先まわりして避けてるような、おもしろい子だったの。
あの子が、家に人を呼ぶ、って
よっぽど気に入ったのね、あなたたちが.....。」
おばあちゃんは、作業の手を休めて
わたしたちにガーデン・チェアを薦め
クワス、と言う
北欧に伝わる炭酸のお茶で、おもてなし。
すこし甘めの紅茶、スパークリングして
刺激が心地よかった。
「おいしいです」と、ルーフィが言うと
「イギリスにもあるでしょう」と。
「はい、よくご存知ですね」と、ルーフィはにこにこ。
ヨーグルトもあるのよ、と
農機具小屋の隣にある、離れで
作っているヨーグルト、それとチーズを
もってきたり(笑)。
「そうそう、めぐの話だと
悪魔が憑きにくいように、お考えのようですね。」と
おばあちゃんは、穏やかな語り口のまま、ハードな話を
いきなり始めた。
ルーフィは、すこし真面目顔で「はい。」
おばあちゃんも、ちょっとシーリアスなかんじで
「すこし、難しいわね....。めぐ、のRularも
それを望んでいるのでしょうけれど」と、わからない言葉で
おばあちゃんは語った。
「rularってなに?」と、わたしは聞くと
ルーフィが「守護する者、つまり、めぐちゃんに宿ってる天使さんのこと」
おばあちゃんは、天使さんを知っていた.....!?
善悪・基準
おばあちゃんは、かわらない、おだやかな語り口で
「ヨーグルトもね、クワスもね。
細菌が、牛乳やお砂糖を食べて
酸や、炭酸を作るのね。
それが、人間が食べて平気だから
重宝されているのね。
ヨーグルトを作る時に、入れ物を殺菌、するのね。
腐ってしまうから。
それで、ヨーグルトの菌を入れる。
おもしろいわね、どちらも細菌なのに...。」と
おばあちゃんは、意外に客観的で
ルーフィみたいな、科学者っぽい事を言った。
「はい、生物ですね、どちらも。」と、ルーフィは言った。
おばあちゃんは、頷いて
「そう。ひとに悪魔くんが憑く、と言うのと
天使さんが宿る、と言うのと
似てるわね....。それが、ひとにとって
良いか、そうでないか。
それだけ。
天使さんも、悪魔くんも
生きるために、そうしているのね。」と、
おばあちゃんは、ふんわりと、そんなことを言った。
「悪魔くんは、ひとのエネルギーを食べている、って...。」
わたしは、事実を反芻した。
している事が、人間にとって良くないと言うだけで
魔界では、それが普通なこと、なんでしょうね...。
「そう、ひとの良くないエネルギーを食べてくれるだけなら
いいのね。
そのために、ひとを争わせるのは、良くない事だけど。」と
おばあちゃんは、そう言って
「でも、それを止めさせるのは、難しいの。
人間も、争うのがもともと好きな人もいるのね。
そういう人に憑いて、エネルギーを食べるだけにして、と
願っているんだけど....。」と、おばあちゃんは言う。
不思議に達観した言葉。
魔界と天界に通じているような経験から来ていて。
おばあちゃん、は....。お使い様なのかしら。
神様の。
「お隣町に住む、気術使いの方もね、
東洋からいらして、この世界を守ろうと
なさっているの。」と、おばあちゃんは
わたしとルーフィが、昨日会ってきた
あの人の事、を言った。
「....それで、めぐちゃんにも天使さんが....。」と、ルーフィがつぶやく。
おばあちゃんは、黙っていたけれど....。そうなんだろう。
たぶん、わたしが
過去に呼ばれたような気がして、いつものカフェテラスから
飛ばされてきてしまったのも、偶然じゃなかった、のね...。
「ルーフィさん」と、おばあちゃんは彼の名を呼び
「はい」と、彼は答える。
「あなたは、魔法使いだから、魔界の人にも通用する
魔力を持っているわ。
魔界を司る者に、いまの、わたしたちの意思を
伝えてほしいの。
わたしたちは、魔界の人と直接会う事ができないから...。」
「...それで、彼らはわかってくれるでしょうか?」と、ルーフィは
真面目な表情で。
おばあちゃんは、すこし考えて「わたしにも、それは分からないわ。
でも、魔界を司る人は、天界を司る者と
同じくらい、魔界を大切に思ってるはず。
これまで長い間、3つの世界が蟠りなかったのは
彼らのおかげ、だもの。
今、どうしてこの世界が乱れてるのか....。それだけでも、分かれば。」
と、重い命題をルーフィに伝えた。
おばあちゃんの小屋から戻る、畑の中でルーフィは
「どーしよっかなー。」なんて
いつもの、軽い感じに戻って(笑)。
わたしは、ちょっとずっこけて(2w)
「なーによ、ヒーローみたいでかっこいいかと思えばぁ」と
ルーフィに向き直って。
見上げたルーフィの顔は、ちょっと緊張っぽい。
「ルーフィ?」疑問をわたしは感じる。
「...うん...。魔界を司る、って。魔王じゃない。
東洋で言えば閻魔大王だよね。
そんな人のところなんて、行きたくないよ。
帰ってこれないかもしれないし。」と、
ルーフィにしては、弱気な言葉が聞こえた。
「僕のご主人様なら、別だけど......。」
正直な気持
「ルーフィのご主人様って、そんなにすごい人なの?」
と、わたしは驚きを隠せなかった。
そういえば、絶海の古城に一人で篭っていて
長く、眠りについたまま。
そんな魔法を自ら掛けられる人、は
かなりの魔力を持っているのだろう。
「ご主人様は、来てくれるかしら。」と
わたしはちょっと心配した。
「そっか....。じゃ、とりあえず
魔王に手紙でも書いてみるか。」と
ルーフィは軽く言ったので、
わたしは、サンダルのまま転びそうになった(w)。
でも、めぐの時とちがって
ルーフィはわたしの肩を支えたので
ボインタッチ事故(2w)は、なかった。
「なーによぉ、ルーフィ、やっぱ、めぐのバスと、
わざとさわったんでしょう!」と、わたし。
「違うちがう、キミの方が背が高いし。
僕のそばにいたから」と、ルーフィは自己弁護する(w)
そのくらい、真面目に戦ってよ、ヒーロー(笑)。
めぐの学校が終わるくらいの時間になったので
わたしたちは、図書館に行った。
何もかわっていないような、第一図書室のカウンターで
めぐは、にこやかに貸し出し係をしていた。
わたしたちの姿を見つけて、にっこりと目礼。
言葉を交わさないのは、静かにしなくてはいけない
図書館だから。
それもあるけど、「ルーフィが好き」なんて
わたしに言っちゃって。
それで、ルーフィも一緒だもん。
ちょっと、ぎこちないよね、それは。
さらりの前髪に隠れた瞳は、ちょっと熱っぽく潤んでるみたい。
ほっぺも赤くて、かわいらしい。
うーん、強敵め(5w)。
吹き抜けのホールから、斜めのお日さまが射しこんで
ステンドグラスがきれい。
図書館っていいな、なんとなく好き。
インクの匂いとか、おちついた雰囲気とか。
カウンターに並んでいるひとに、見覚えのある後姿を見かけた。
あの、イライラおじさんだった。
よーく、集中してみると
頭の上に、悪魔くんの駆け出しくん(w)が
憑こうかなー、なんて、ゆらゆらしてるのが見えた。
ルーフィは、いつかの茶色の小瓶を出して
ひょい、とコルク栓を開けて
幽霊みたいな悪魔くんを、吸い込んだ。
そのまま、3階のシアターへ。
吹き抜けにある階段で昇って
開いていた小ホールに入った。
入り口のドアを閉じ、空中に魔方陣を書いて
その真ん中に、サンスクリット文字のような
メッセージらしきものを書いた。
それから、茶色の小瓶の栓を抜き
「こいつを、魔王に届けてくれ」と、ひとこと。
幽霊みたいな悪魔くんは、おばあちゃんの言葉の後だと
不気味ではあるけれど、怖い、とは感じなかった。
「お手紙?」と、わたしが尋ねると
ルーフィは「うん」と言って....。
「なーんとなく、予感だけど。
めぐちゃんに天使さんが宿ったのって、偶然なのかなぁ....。」
と、ちょっと気になる事を、彼は述べて
コルク栓を閉じた。
そのあとは、何も起こらずに
めぐのアルバイトは、順調に進んだ。
わたしたちが3階に来たので、めぐ、も
3階の音楽ルームに来て、CDやDVDを整理した。
手際よく分類ができるのは、図書と違って
コード番号が無くて、アーチスト名の順番で
並べられてるから。
誰にでも分かるアルファベットだから、簡単に
並べ替えが出来るの。
本だって、そんなに厳密じゃなくって
だいたい、分類で書架が決まるけど
その後は、著者名・本の題名で並べる。
分類コードを暗記しちゃえばいいのだけど
それは、なかなか難しい。
書架と、分類コードが一致してればね...。と
わたしは、前からそう思っていたけど
なかなか、蔵書の数と書架の分類が合わないし
良く、貸し出される本は、低書架と言って
入り口に近いところに置かれるのが普通。
「本も、見出しを書架に貼っておけばいいのにね。
イライラおじさんもひと目で分かるように」と、わたしが言うと
「あ、そうですね!こんど、作ってみますー。」と、めぐ。
そんな時は元気なんだけど、ちょっと表情は沈みがち....。
わたしは、ちょっと気になった。
ルーフィを好き、って思う気持ちは、たぶん、めぐ本人の気持ちだと
思うけど....。
宿ってる天使さんは、どう感じてるのだろう。
魔法使い、って
魔界に近いひと、に恋する、のを....。
恋って理屈じゃない。
だから、心配してもしょうがないけど、さ....。
どんかん魔法使いさんが、気を使って
あげるといいんだけどなー。
でも、わたしが居るとそうもできないか、と思って
わたしは、ちょっと、CDを聞きたい、とか言って
アーマッド・ジャマールの「Wish Upon a star」とかを
見かけたので、それを持って
ひとり用カプセルで、音楽を聴くふりをして
席を外した。
めぐが、壁一面に並んでいるCDラックに
カートから、CDを並べていく。
ばらばらになっていたCDを、最初にアルファベット順にして。
そうすると楽だ、と
覚えたみたい。
ひと気の少ないウィークディの図書館、視聴覚ルームは
格別、静かだ。
ひとの流れが途切れた。
ルーフィは、ミニシアターで上映されている
アニメ映画(笑)をひとりで見てくるって
とっとこ、ミニシアターへ。
10人くらいしか入れない、小部屋が
このフロアにいくつもあり、そのひとつへ。
CDの整理をしていた、めぐは
手を止めて、その、ルーフィのいる
部屋、へ....。
わたしは、ちょっと気になったけど。
でも、ふたりっきりで話す機会を作ったんだから、と
見守る事にした。
少しして、めぐが部屋から出てきた。
遠くて、表情はわからないけど
特に、変わった様子もない。
わたしは、やっぱり気になって(笑)
カプセルから出た。
アーマッド・ジャマールが「Dejavu」を
弾いていた。
ミニ・シアターの防音ドアを開けると
大きな音で、「トムとジェリー」の吹き替え盤を
ルーフィはひとりで見て、笑っていた。
?(2w)
わたしに気づいて、ルーフィは「あ、ああ、これおもしろいね。」
「さっき、めぐちゃん来たでしょ。何話したの?」と、わたし。
ルーフィは、画面を見たまま「うん、好きだって言われた。」
ちょっと、想像してたけど「それで?」と、わたしは
ちょっとイライラした(笑)
悪魔くんが憑いたのかしら。こんな時の女って悪魔にもなるかも(笑)。
「それでって?」と、ルーフィは
わたしの方を見た。
ちょっと、シーリアスな顔だったので、そのことに
わたしは安堵した。
真面目に考えてあげてたのね。
「めぐへの答え。」って、焦燥感に駆られて、わたし。
少し声が大きかったけど、トムとジェリーが大きな音だったから
良かった。
外に聞こえなくて。
「そんな事、決められないもの....。めぐちゃんは、かわいいけど。
キミの3年前、だし。こんなヘンテコな恋って、方程式なんて無いよ。
だから....。」
「だから?」
「めぐちゃんを大切に、思ってるよ、でも、もうひとりのね、Megも
大切さ。だって、同じ人なんだもん。」って、そう言ったとルーフィ。
「.....。」わたしも、返す言葉が見つからなかった。
こういうお話、聞いたことないもの(笑)。
「それに、いつか、僕らは帰らなくちゃいけない、って
お屋根で話してたのを、めぐちゃんは知ってたみたいで。
それでも、好きって気持ちはどうしようもなかったんだろうな。」
って、ルーフィは少し、複雑な気持を告げた。
素直な気持
めぐは、思い出していた。
はじめての、恋。
きもちを、伝えたい....。
それだけで、ルーフィさんに。
でも、いわない方がよかった....。
かえって、彼を困惑させてしまったような
そんな気、もする。
でも、言ってしまいたかった。
巻き戻し再生のように、情景を思い出す。
きのう、から?、ううん、ずっと前から。
夢見てたような、そんな気がするの。
遠くから、あたしの理想の人が
空駆けて、来てくれる。
そんな夢、ずっと見てた。
それが、ルーフィさん...?
恥ずかしくって、顔、見られないよ....。
お家であってても、苦しくて....。
気持だけでも、お話して。
楽になりたかったの。
なので、図書館にルーフィさんが来た時に
おはなしできないかな、と、思って。
偶然、シアターにルーフィさんがひとりで入って。
わたし、シアターへ。
ドアを開いて。
静かに閉じて。
ルーフィさんは「トムとジェリー」を見て
楽しそうだった。
でも、わたしが来た事に気づいて。
「やあ、すこし、見てく?」
なんて、やさしく言ってくれて。
ちかくに行くだけでも、どきどきして。
恥ずかしくって。
こわれそうになっちゃう....。
言うんだ、言うんだ....。って、心の中で言葉が踊ってて。
一番後ろの席、左の角のルーフィさん。
ひとりだけ。だーれもいないシアター。
お部屋は明るいけど。
ひとことだけでいい。
そう思っても、ひざがふるえて....。
言葉にならない。
「....どうしたの、めぐちゃん....。」と、ルーフィさんは
やさしく、わたしに声を掛けてくれて。
なにかに、気づかれたみたい....。
「あ、あの...ルーフィさん?」声、ふるえてる。
でも、言わないと....!
「......す....き........。」
手紙
そんな、めぐの気持ちも
どう解決のしようも、ない。
それは、恋、って
時空を飛び越えた別次元から来た
3年後の自分がライバル(笑)
なんて、めんどくさい話には
対応できないから、で
だから、ルーフィにも
どうしようも無かった。
シアターで、トムとジェリーの映画が終わって
静かになった空間で
「それ、どうしようもないもの。
いつか、僕は帰って行かないとならないんだし」と
ルーフィ。
「どこへ帰るの?ご主人様のところ?」と
わたしは、気になっていた事を聞いた。
「いや、それは別にいいのさ。第一200年眠ったまま
なんだから、そこに行っても仕方ないし。
それより、今居るここは異空間だから、元の
空間に戻るべき、だと思う」と、ルーフィ。
「それじゃ、めぐちゃんの気持ちは...」
「どうしようもないね。最初からそうだもの。
それをめぐちゃんも知ってて、それでも
気持ちを伝えたかったんだろう。
そういうのって、理屈じゃないから」とルーフィ。
そっかぁ...めぐちゃんも、せつないね.....。
ふと、わたしはさっきの魔王への手紙を
思い出し
「あれ、なんて書いたの?」と聞いたので
「いきなり飛ぶなぁ(笑)まったく」と、ルーフィは
笑った。
それから
「魔界の住宅事情はお察し致します。悪魔くんの中から、
動物界へ戻らせるものを増やす為に、提案がございます。」と、ルーフィ。
「なんか、営業マンみたいね」と、わたし。
「元、営業マン、。」と、ルーフィは
テレビで見た台詞を真似していうので、わたしは笑った。
どんな時でも、ユーモアを忘れないね。
「御配下の悪魔くんたちと同様、人間界も
住宅事情が悪く、人が増えすぎたので
争いが絶えないのです。魔界の方々に
ご協力をお願いして、闘争エネルギーを
全部食べちゃってほしいのです。
闘争を煽らなくても、十分食べ物はある筈ですから。」と、ルーフィは楽しそうに言った。
「それで?」
「つきましては、人間界の闘争的なエネルギーを
食べてくれた悪魔様方々を、優先的に
動物界に転生して頂き、魔界、人間界
双方の共存を図りたく思う所存であります」と、ルーフィ。
「なんだか、数合わせの連立与党みたい」と
わたしは笑った。
「そういうなって。面白いアイデアだと思わない?」と
ルーフィ。
それで、政権奪取(笑)したら
金融緩和して消費税上げる政治家、みたいな(笑)
へんてこな手紙、まじめに読むだろうかなぁ、魔王って
アジアじゃ閻魔大王って言われてる、こわーいお方じゃぁ...
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閻魔様の手紙
「おばあちゃんの言ったみたいな話ね、ヨーグルト菌も
細菌の一種で、善悪じゃない、役に立ってるだけで
邪魔者にされない、って。」
わたしは、そう思った。
ルーフィの言うように、人が争いたがる性質が
悪魔くんのエネルギーなら、みんな
食べて貰ってしまえば、争いは無くなって
平和になるの.... かな?。
わたしは、そんな風に思い
名案に思った。
ただ、魔王がどう思うかしら?
次の日、悪魔くんが
メール(?)を持ってきた。
ルーフィーは「変だけど、こんな話。」
魔王@mail>
ルーフィー殿
貴殿の提案、お受け致したい。
魔界でも、人間界や天界に出入りする事は
禁じてある所存。
禁則破りで人間界に悪魔共が向かうのは
人間界に降臨している天界の方に
目的を持っている為と思ふ。
経緯は別にし、人間界に滞在する悪魔共に
人間の悪意を食べ尽くせと命令す。
然る後、魔界より所払いさせ
動物界に転生、を命ず。 以上。
「なーに、これ?」と、わたしは内容を
ルーフィに尋ねた。
「うーん、一応、僕のアイデアに乗るって。
でも、魔界の人は別に、悪魔でいるのは
嫌じゃないらしい、って事と
どうやら、天の使い、つまり
めぐちゃんに宿ってる、天使さんに
なんか用があって、こっちに来てる、って事らしい。」
それで、めぐちゃんの周囲に
悪魔くんがよく来るのかー。
って、わたしは思ったけど
めぐちゃんのルーラーの、天使さんって
見たことないし、話してもいないから
いまいち、フィーリングが来ないなー。
って、わたしは思った。
それから、魔界の盟主の言うように
人間界に居る、悪魔くんたちは
人間の悪意を、食べ続けたらしい。
争いは減ったように見えた。
それでも、欲に囚われる人たちの
悪意は根深くて。
見せかけの好景気を演出して
消費税を上げようと企んだり(笑)
悪魔くんでも、食べきれないらしい(笑)
欲に絡む悪意、は。
「うーむ。もともとは悪魔の作った欲、だと言うのに。って
閻魔様もあきれてるかな」と、ルーフィ。
笑い事じゃないわよ、まったく(笑)。
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欲望
悪魔くんたちも食あたりするような(笑)欲。
攻撃心はエネルギーになっても
欲の皮は、煮ても焼いても食えないと(笑)
悪魔くんたちですら、敬遠した。
魔王も、さぞかし呆れている事だろう。
魔界ですら、魔王は配下の者の為に
掟を破った者を追放する事で
秩序を保つのに。
「この世界は、魔界より混沌としているって事か。
それはそうか、異世界だ」と、ルーフィ。
整然とすれば、異次元の世界ではなくなる。
......でも.....?
「欲ってことは、その人たちが想像上の世界を
持っている、って事よね。
時間と空間が、目の前の3次元じゃない、4次元の」と
わたしは気付く。
「そうか。その4次元に、悪魔くんがいなくたって、
3次元に近づけるように、魔法を掛ければいい。
政治家さん数人くらいなら、できるかも知れない。」と
ルーフィは、その方法を探した。
神経回路のうち、興奮する10回路、その9番目の
働きを少し弱めるような薬品を探す。
隣町の、あの気術使いさんは
漢方にも詳しい筈なので、それを処方してもらって
連中の脳に、時間軸を逆転させて
過去に遡り、転送する。
それで、うまくいくかもしれない。
ルーフィは、そんな
科学と魔法の狭間にたち、アイデアを考えていた。
そんな仕事の傍ら、わたしは
めぐちゃんに宿る天使さんが、どうして
地上に降りてきたのか、それが気になっていた。
気になったのは、どちらかというと
天使さん自身より、めぐちゃんが
この先どうなってしまうのか、が
気になったので。
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sent from W-ZERO3
願い
わたしは、過去の記憶を思い出してみたけれど
天使さん、なんて会った事もないから
たぶん、この異なる世界だけのお話なんだ、と
思った。
めぐ、は
わたしに似てるけど、そこは違うのね。
天使さんと、お話してみれば、わかるかな....って
わたしは、おばあちゃんに聞いてみれば
なにか分かるかな、と。
次の朝、めざめてすぐに
おばあちゃんのお部屋に行ってみた。
お部屋は、わたしが覚えてる
わたしの世界のおへや、と
同じように見えたけど
少しだけ、なにか
雰囲気が違うように見えた。
どこが、違うのかしら.....
見回してみるけど、よくわからない。
窓際に、ステンドグラスと燭台、それと聖書があるくらい。
わたしの知っているおばあちゃんは
お祈りしたりするような
そんな感じじゃなかった。
畑にいったのかな?
って、わたしは
サンダルで
また、トマト畑の方へ。
ルーフィが、履いてたサンダルは
まだ、そこにある。
いつだったか、転びそうになって
助けてくれたっけ。
なんて、遠い記憶みたいな気がする。
おばあちゃんは、トマトをもいでいた。
おはようございます、ってごあいさつ。
おばあちゃんはにこにこして「おはよ、お姉ちゃん」なんて言うので
わたしも、にこにこ。
和やかな感じで
ちょっと、シリアスな話は
しにくいかなー。なんて思った。
トマト畑の草を、抜いたりして。
「いつまで、続くのかしら」なんて、おばあちゃんは
話を切り出した。
何の話かしら、と
思っていたけれど
今の、この世界で
人知れず、戦っている
悪魔くんと、人間の欲望の話だった。
「ずっとずっと昔から、そうだったの。」
昔は、魔物がいて
よく、人間を浚って食べ足りした、らしい。
その頃は、魔法使いも
居なかったから
天にお祈りして、天使様に助けてもらっていたのだ、とか。
「わたしは、神様とお話ができたので、お祈りして、ずいぶん子供達を助けてもらっていました。」
「でも。」
その魔物たちは、魔王に退治された、と
おばあちゃんは言った。
不思議な事だけれど、
魔界から人間界へ行く禁則破り、として。
「魔物たちは、めぐを、生まれたばかりの赤ちゃんを連れ去ろうとして・・」
おばあちゃんは、天使さんにお願いして。
その、魔物は
とても強くて。
天使さんも傷ついてしまって。
めぐも、息絶えかけて。
でも、魔王が
追いかけて来てくれて
その魔物を退治してくれた。
「けれどもね、めぐも、天使さんも。傷ついて。ひとりでは生きられなくなってしまったの」
と。
おばあちゃんは悲しそうに
空を仰いだ。
魔王は、「いつか、魔法使いが現れて、乱れを正すだろう」 と予言して
魔界に帰って。