22
Moto Guzzi Poice 1000は、
YAMAHA TR1を停めたNaomiの後ろに
静かに停止。
ヘルメットにバイザー。
警官は、にっこり笑って
ヘルメットを取る。
ふつう、警官はヘルメットを取らないけど。
「めぐ!Naomi!、久しぶりーぃ。元気?」と。
「Reimy!」「れーみぃ!」と、めぐとNaomiは
クラスメートの名前を呼ぶ。
れーみぃは、おとなしくて
物静かな小柄な子だったけど。
まさか、ハイウェイパトロールの隊員になってるなんて。
めぐは驚く。
どっちかって言うと、めぐみたいな
文系の感じだった。
ベレー帽子が似合う、長い黒髪を
まっすぐにした、お嬢さんだった。
「びっくりしたー、交通違反?」と
Naomiはにこにこ。
エンジンを停めた。
Moto Guzziのエンジンは、もう止まっていて。
路肩に止まった2台のオートバイを、午後の陽射しが包む。
れーみぃは、どことなくアジアンな風貌で
可愛らしいから、ハードな警官の制服を纏うと
より、フェミニン。
その、ルージュの唇から「ううん、懐かしくって。停めたの。」って
ちょっと可愛らしい口調で言われると
なんとなく許しちゃう(笑)と
思えるめぐだったり。
「どこ行くの?」と
れーみぃは聞くので、Naomiは
「リサのお悩みをね、解決しに行くの」と。
Naomiは、親友リサが
電車の免許試験を受けるので
失敗したくない、って
おじいちゃんへの贖罪の思いを持ってしまって
辛い気持で、夜眠れない。
そんな話を、れーみぃにした。
れーみぃは、ふくよかな顔を綻ばせて。
Lotus Blossomの開花のように。
「わかるなぁ。わたしもそうだったもの。
ハイウェイパトロールの試験のとき」と。
警察官になったのも、なんとなく
正義を守りたかったから。
そういうれーみぃは、柔和に正義に燃える子だ。
声高に議論したりはしないが、法律を学んで
法に外れた人たちの、その、外れたところだけを
元に戻す。
人を憎むわけでもなく。
そういう気持でいる子。
いつかは、司法警察官になるのが夢、だと
れーみぃは言う。
「じゃ、急ごう?わたしも夕方までなの。ハイウェイパトロール。
夜はバイクは走らないから。」と、れーみぃは
Moto Guzzi Police1000に跨る。
すると、ハンドルの所のモトローラの無線機が
鳴った。
「Mary-Seven #3、こちらは本部。」
れーみぃは、無線のマイクを取って「本部、こちらはMary-Seven #3、どうぞ。」
無線の声は部長らしい。「現在地は?」
れーみぃは、楽しげな声で「本部、こちらはMary-Seven #3、これから、
交通誘導を行います。どうぞ。」と、ユーモラスな声で言うと
本部の声は「了解。安全に誘導されたし。あー、れーみぃ?
遅くならないようにな。」と
部長さんは、温かい声で。
みんなが、やさしい。
めぐは、そう思った。
れーみぃは、無線のマイクを戻して
「さー、いこ?」と、MotoGuzziのエンジンを掛けた。
低い、爆発音のような排気音は、独特だけれども
規則的で、スムーズな感じで
TR1とはちょっと違う、とめぐは思う。
れーみぃはヘルメットをかぶって「ついてきて?」と
青い回転灯をつけて、走り出した。
Naomiも、TR1のエンジンを掛けて。
こちらは、すこしラフな感じの排気音。
それが、至って楽しげな感じ。
ギアを1速に入れて、れーみぃの後を追う。
めぐは、友人ふたりの背中を追いながら「免許とろうかなぁ」なんて思う。
オートバイ、楽しいかも。(w)
リサ、練習中。
Moto Guzziは、重厚な乗り味だけど
重心が低いので、安定している。
タイアが滑ったりしても、車体が姿勢を維持するので
乗り易い。
そのあたりは、最新のバイクより
優れた概念で
たとえば、最新のレーサーのように
エンジンを高く吊って、人間の位置に近づけた
バイクは
重心が高い代わりに、カーブで
バイクを傾け易いし
傾いたままの状態では安定している。
軽快なハンドリング。でも
タイアが滑った時には、急激にバイクが
動こうとする。
重心位置からの重力加速度は
言うまでもなく、F=mghsinθだから
hで決まるし
遠心力も当然、その重心高に掛かり、
それがタイアに横圧として掛かる。
つまり、重心位置は低い方が
タイアを滑らせるのには向いている。
それは、TR1も同じで
クラシックな領域のオートバイ、でも
技術のあるライダーなら、扱い易い愛機になるので
根強く好まれている。
Naomiのおじいちゃんが、TR1を乗り続けたのは
そんな理由もあるかもしれない。
Reimyは、素晴らしいスピードで
Moto Guzziを運転する。
カーブでは、やっぱりエンジンの力を使って
タイアを滑らせる技術で
空を飛ぶように、すいすいとカーブを回って行く。
Naomiも、楽しそうに
カーブを泳ぐ魚のように
抜けてゆく。
そんなスピードで、電車車庫には
すぐに着いた。
警官の誘導だもの。(笑)。
車庫の前の、線路が一杯敷かれている林の横に
ふたりは、オートバイを止めて。
でも、れーみぃは警官の制服のままなので(笑)。
電車の整備士さんたちは、訝しげに眺めている。
ヘルメットを取って、れーみぃが
長い髪を解くと
整備士さんたちも、意味が分かったのか
にっこりとした。
れーみぃも、白い手袋を取りながら
手を振る。
陽気な、整備士さんたちは、なぜか
拍手と口笛で。
めぐたちを迎えた(笑)。
めぐの顔を覚えていたのか、「あ、リサは
構内訓練。
向こうから戻ってくる、あれがそうさ。」と
若い整備士さんは、青い整備服で
にっこり、そう指した。
構内の外れに、緑の
古いタイプの電車が一台。
ゆっくり加速して、信号の所で停める。
バックして、また戻る。
それを繰り返している。
なかなか、同じ場所で止まれない。
速度を変えて、何度も。
その都度、停まる場所が変わる。
厳しい表情で、ブレーキハンドルを握っているリサ。
後ろで、古参の教官が
静かに見守っている。
Phisical Model of motorcar
その、電車の停止訓練を見てた
めぐは、魔法で
物理モデル式を思考した。
つまり、難しいと思ってるリサは
未経験な事、重い電車の慣性、それと
ブレーキを操作してから、効き始めるまでの
タイムラグが掴めない、そういう事なのだろう。
ブレーキ総力をFとして
質量m、マイナスの加速度をaであれば
概算でF=maである。
停止距離をs、初速をv1、終速をv0とすると
(v2)2ー(v1)2=2asである。
v2は0である。
その結果得られるFに見合う減速度aを得た時の
F、それをブレーキ操作で得るために
操作してから、効き始める時間を逆算。
そして、ブレーキ力も一定ではないため
残り距離を見ながら目算でFを加減する、
それが修練である。
つまり、記憶の中にある減速パターンを
ブレーキハンドルの操作で作り出す、そういう作業で
記憶になければフィードフォワードで
見込み制御をする。
意識する減速力の変化を、統計モデルとして
物理モデル式にあるFに代入すればいい。
それだけの事だが、リサは
経験がない上、おじいちゃんへの贖罪の思いから
試験に落ちたくない。
おじいちゃんの喜ぶような、結果が欲しいと
言う、ちょっとした強迫観念に苛まされていて
そのせいで、夜も眠れない。
それが、判断を誤らせるし
感覚も鈍らせる。
「やっぱ、おじいちゃんに
会ってもらうといいのかな」と
つぶやいてしまっためぐ。
Naomiは「そうだね。おじいちゃん国鉄だったもん。教えてくれるよね、きっと」と
空想の事、と思って
めぐに返事。
れーみぃも「うん。リサ、おじいちゃんに
鉄道なんか嫌い、って言った事を
とても悔やんでたもの。おじいちゃんは
それで、気を落として
早く死んじゃった、って。
そう思い込んでたもの。」
「そんなことない、って
おじいちゃんに言って貰えればいいけど。」と
Naomiは言う。
「ほんと、そうだね」と
めぐ。
でも、めぐは空想ではなく
魔法で、そうしようと思って
ここに来たのだけれど。
その事は、誰にも解らない。
夕方で訓練が終わって、リサは
少し疲れた顔で、電車を車庫に仕舞った。
ゆっくり止めるのは、もう慣れて来たみたいで
止める少し前に、ブレーキを緩めて
惰性で転がし、止まったところで
ブレーキを掛ける。
そうすると衝撃がない。
そのために、転がる距離Sを
正しく見積もる必要がある。
S=v1t+1/2a(t)2 である。
初速に対して、減速度が適当な位置で
ブレーキを解放してもSの位置で止まるだろう、そういう物理モデル式である。
減速度は、F=μmgtanθだが
電車のそれは、とても小さい。
距離が短く、速度が
遅いと
見積もり誤差が少ないので、失敗しにくいのだ。
driver,Lissa
電車を止めると、リサは重そうな鞄を持って
ブレーキハンドルを外し、鍵を抜いた。
金色に輝く鍵は、教官が持って行った。
そして、ビューゲルを下ろすと
電車は眠りに付く。
乗務員室の扉を開いて、運転手の制服を
着た
リサは、階段を降りて来る。
路面電車なので、地面は近い。
「それならスカートでも見えないよー」なんて
Naomiがおどけると、リサはやっと笑顔を見せたけど
少し、表情が硬い。
もちろん、制服はスラックスである。(笑)
レールが敷かれている車庫は、足元が危ないので
少し、よろけて歩くめぐたちと、しっかり
平らなところを歩いてるリサ。
慣れはそんなとこに出る。
「上手じゃない」と、れーみぃが言うと
リサは、かぶりを振って「ぜんぜんダメ。でも
試験は受かりたいし」と。
「落ちたら、どうなるの?」と
めぐが聞くと
リサは「また、試験を受けるんだけど。
1年後にね。でも、受けられるかどうか」と。
車掌の仕事をその間はするらしい。
「かわいいからいいのに。車掌さん」と
れーみぃが言うと。
リサは「うん、でも。
おじいちゃんとね、小さい頃約束したの。
運転手になるって。
だけど。わたし.....。」
リサは、視線を落とす。
Naomiは「ねえリサ、おじいちゃんは
悲しんでたの?そんなそぶりしてた?」と
言うと、リサはどっきりとしたらしく
表情が硬直した。でも、かぶりを振って。
「そんな事ない、いつものおじいちゃんだったけど。定年で国鉄を退職してから
淋しそうだったもの。それで....。」
早く、天国に行っちゃった。
リサは、それで進路を変えた。
ユニバーシティに入ってから、就職をしようと
思っていたし、国鉄に入るつもりもなかった。
でも、おじいちゃんが死んじゃってから
リサは、淋しそうなおじいちゃんの背中を
思い出して。
おじいちゃんに会えそうな、そんな気持ちで
路面電車の運転手を目指した。
その時、ハイスクールから
国鉄を受験できる
学校の推薦枠は、もう
他の生徒で埋まってしまっていて。
リサが受験しても、推薦は受けられないし
無理に割り込めば、誰かが泣く事になる。
「女の子だから、国鉄は厳しいんじゃないかって、先生も」
リサは回想した。
それで、路面電車職員へ。
「おじいちゃんの事を思うと、なんだか
緊張しちゃって。」と、リサは厳しい顔で。
「とにかくさ、お茶しよっか」と
れーみぃは言う。
「そうね。」と、Naomiも明るく。
いこいこ?って。
「白バイで行く?」ってれーみぃは
笑顔。
やっと、リサも笑顔になった。
Mini cooper S
歩きながら、バイクのところに行った
めぐたちを待っていたのは、モトローラ無線の
FMノイズだった。
ーーーーMary-Seven #3,聞こえるか、本部。
と、部長さんの声。
れーみぃは、あわててマイクを取る。
「はい、こちらMary-Seven #3、本部どうぞ。」
「れーみぃ、心配したぞ。無事か?
勤務時間は終わりだ。安全運転で戻ってこい。
部長さんの優しげな声に、れーみぃは喜ぶ。
「リサは、もう終わり?」と
れーみぃ。
リサ、頷く。
「じゃ、待ってる。一緒に帰ろう?
リサは、車?」と、れーみぃはにこにこ。
笑っているところは、やわらかな宝石のように
可愛らしい。
リサは、じゃ、待ってて、と言って
軽やかに駆けてった。
友達が待ってるって、素敵。
なんとなく、めぐは思う。
リサは、10分くらいで戻ってきて。
鉄道の制服じゃないと、とっても可愛らしい
女の子。
車は?と、Naomiが聞くと
リサは、フェンスの向こうにある
アーモンド・グリーンの
オースティン・ミニ・クーパー1275Sを
視線で追った。
「かーわいいっこい!」と
めぐは喜ぶ。
変かな?と言ったので
みんな笑った。
かわいい、とカッコイイが
くっついちゃったらしい(笑)。
四隅に小さなタイアが付いていて、
やわらかな曲線のボディ。
低くて、小さくて。
まるいヘッドライト。
かわいい小犬みたいなスタイルは
人気な、イギリスのラリーカー。
「じゃ、付いてきて?先に本部に戻らないと。」と、れーみぃはヘルメットを被って、エンジンを掛けた。
セルフスタートモータの、重々しい響きがして
MotoGuzzi1000は、爆発音を響かせる。
TR1は、軽快なエンジン音。
Justice
意外に勇ましい排気音は、Mini Cooper S。
作られた年代が旧いので、機械っぽい荒々しさのあるサウンドで
そのあたりは、MotoGuzziと良く似ている。
あまり、ノイズに気を使わない時代の車。ギアや、エンジンの音も
機械そのまま。
そこが、機械好きには好まれる。
「さ、行くよ。」と、れーみぃは、にこにこしながら
ヘルメットのバイザーを下ろし、電車車庫から
街路に出た。
曲がりくねった山沿いの道は、さっき来たとおり。
木が生い茂っていて、少し薄暗い。
ゆっくりと、40km/h程度でMotoGuzziを走らせる、れーみぃ。
背筋もしゃん、と伸ばして、凛々しいハイウェイ・パトロール。
目前の交差点。
真っ直ぐ昇って丘を越えて、いつもの街に戻る。
と.....。
左側の海沿いから。
ダッヂ・チャレンジャーSが、太いサウンドを響かせて
いきなり一時停止せずに、飛び込んできたので
丘から降りてきた、対向車線のフィアット500は
急ブレーキ。
衝突は避けられた。
ダッヂは、そのまま交差点を通過して、右手へ。
れーみぃは、勤務時間外だけど
青色回転灯を付け、サイレンを鳴らす。
ギアを3速に落とし、急加速。
トルクのあるMotoGuzzi 1000は、それでもリア・タイヤをスライドさせて
交差点を右に。
無線で、周囲のパトロールカーに連絡する、れーみぃ。
「こちら、Mary-Seven#3、逃走車両を追跡中。車両は黒のダッヂ・チャレンジャーS。
市交通局電車車庫横交差点を、海側より山の手の住宅街へ逃走。
付近のAdam-Seven、応答願います!。」
モトローラ無線から、FMのノイズが流れ、次いで、応答。
「Mary-Seven#3,こちらはAdam-Seven#30。 住宅街に居る。
中央街路で封鎖する。応援願う。」
と、パトロールカーから連絡。
れーみぃは「こちら、Mary-Seven#3、了解。追跡を続ける。」
追って、本部から「あ、本部だ。れーみぃ?勤務時間は過ぎている。
深追いはするな。以上。」と、部長の優しい声。
れーみぃは、追跡を続けながらヘルメットの下で微笑む。
「こちら、Mary-Seven#3、本部了解。部長、ありがと。」と。
余裕のあるれーみぃは、MotoGuzziのスロットルを開き
逃走車両を見失わないように追尾。
その様子を、NaomiはTR1と一緒に。追いかけながら。
「かーっこいい。映画みたい!。」と。
めぐは、リアシートで「ほんと。」
お巡りさんって、危ないけど、かっこいい....。
リサは、ミニ・クーパーをドライブして
友人れーみぃの、勇姿に感激していた。
「わたしも、あんなふうに。」
みんなのために役立ちたい。
そう、おじいちゃんはそれで、国鉄の仕事に一生を捧げて
定年になったら、すぐ天国にいっちゃったけど。
その気持を、わたしも受け継がなくっちゃ。
そんな風に、考えていた。
ダッヂ・チャレンジャーのドライバーも
別に、逃げなくても良かった。
でも、なんとなく追われてしまうと、逃げたくなる(笑)。
そんなものだし、ドライバーって
腕試しに、白バイを振り切った、なんて
自慢のひとつもしたくなる事も、たまにはある。
そんな理由で、曲がりくねった道を
飛ばして、逃げていた。
けれど......。
目の前の住宅街、並木道の真ん中に
横向きに見えるのは、パトロールカーだった。
ちらりと、バックミラーを見ると
白バイは、付かず離れずで付いてきていた。
「goddem!!!」
パトロールカーのドライバー、Steveは、アメリカン。
ブロンド、ブルー・アイの大男。
無線で、れーみぃに連絡「れーみぃ、こちらはスティーヴ。目標発見。
道路は封鎖中だ。念のため離れていてくれ。銃を構える。」
「了解」れーみぃは、エンジンを低く抑えて距離を取る。
銃弾が当たらないように。
Steveは、腰のホルスターからリボルバー銃を取り出す。
S&W357マグナム、ハイウェイ・パトロールマン。
文字通り、この仕事の為に作られた銃だ。
それを取り出し、ドアを開いて車の反対側から来る
ダッヂに向けて銃口。
マイクで叫ぶ。
「停まれ! 停まらんと撃つぞ!」
そこまで言われると、ダッヂの男も
逆らいたくなる(笑)。
不条理だが、そんなものだ。
パトカーの手前に路地を見つけて、いきなり右折して後退。
スイッチ・バックして
元来た道を戻り始めた。
つまり、Naomiやめぐ、リサの方向へ突っ込んでくる訳だ。
その前に、白バイのれーみぃと鉢合わせ!
「危ない!れーみぃ、避けろ!」スティーヴは、無線で叫ぶ。
れーみぃは、落ち着き払っていた。
スティーブと同じ、S&Wマグナムを腰から抜き、MotoGuzziのハンドルを支えにして
照準を構える。
マイクで叫ぶ。「停まりなさい!」
ダッヂは、そのままMotoGuzziを避けて通過しようとした。
カーブを曲がって、めぐたちの乗ったTR1はちょうど、ダッヂの目前!
「危ない!」
れーみぃは、ダッヂの後輪にマグナム弾を撃ち込む。
命中!
コントロールを失ったダッヂは、カーブでスピン。
めぐたちのTR1のすぐそばへ。
「いやっ!」
Naomiは、ブレーキを掛けて、路側へ避けた。
でも、後ろにめぐが乗っていたので、動きが間に合わない。
「あぶない!」と、めぐは思った瞬間.....。
TR1とNaomi、それとめぐは
瞬間、宙を舞って歩道へと軟着陸(笑)。
もちろん、めぐの魔法である。
後ろにいたリサにも、理由が分からない。
ダッヂは、並木にぶつかって停止した.....。
「こちら、Mary-Seven#3、逃走車両は停止、ドライバーに怪我はなし。
後輪パンクの為レッカー願います、本部どうぞ。」
れーみぃは、無線で本部に報告。
「本部、了解。れーみぃ、お疲れ様。」と、部長の声。
れーみぃに安堵の表情。
TR1を歩道から出して、Naomiはゆっくりとれーみぃに近づいた。
「すごいねー。かっこいい。」
れーみぃは、柔らかな表情。
さっきの凛々しいポリスの顔とは違って。
「ううん、でも、どうやって空飛んだの?」と、れーみぃは
見ていた。
「わかんないの。」と、Naomiもその理由には気づかない。
めぐ自身も(笑)。
咄嗟だもん。
HighwayPatrol
れーみぃは、「とりあえず帰還しろー。」と言う
とぼけた部長の無線声に従って(笑)
現場をスティーヴに任せ、めぐ、リサ、Naomiと一緒に
ハイウェイパトロールの本部へ。
本部もまた、町外れにあるハイウェイのインターチェンヂの近く。
さっきの交差点へ戻って、丘を下ったあたりにある。
ハイウェイはたいてい、山の方にあるので
どこの街でもそんな場所。
広い敷地に、白い大きな建物が建っている。
青い回転灯を点けたまま、れーみぃのMotoGuzziは
ヘッドライトを付けて。
ふつう、白バイは夜は走らないから
結構目立ったりするし
後ろのTR1と、MiniCooperも
あまり見かけない車種で、女の子ばかりなので
それも、目立つ理由だったりする。
本部に着いて、MotoGuzziを車庫に格納し
「じゃ、やっとお茶できるね。」と笑うれーみぃ。
「どこで?」と、言問い顔のめぐ。
「警察カフェ」と、れーみぃは笑う。
「えー?」とリサも笑う。こんな瞬間、悩みは忘れてる顔に戻ってるから
友達は有難い(笑)。
「ハイウェイパトロールも24時間営業なの。郵便局みたいに。」と
れーみぃ。
めぐは連想する。「ここにも温泉とかあるのかな?」(笑)。
点呼があるから、一緒に来ていいよ、と
れーみぃ。
「あたしたち、お巡りさんじゃないもの。」とNaomiが言うと
「大丈夫、市民に開かれた警察だから、うちは。部長も
女の子大好きだから(w)。」と、れーみぃはにこにこWink。
いいのかなぁ...。と、
車庫からの通用口を歩いていこうとすると
TR1とMiniCooperSには、人だかりが出来ていた。
バイク好きのハイウェイパトロールマンだから。
みんな、気のいい連中だ。
クラシックの名車だもの。
白い廊下は、明るい雰囲気で
警察署、と言う厳しい雰囲気は全然なくて。
指令所に居た部長は、優しげな感じの管理職、と言う雰囲気。
アメリカンだろうか、ちょっと髪の毛が軽くなっている
50歳くらいのひと。
「Reimy、待ってたぞ。無事だったか。
後で報告書。その前に終了点呼。」と、部長。
れーみぃは、「はい部長。この人たちは、クラスメート。無線でお話した。」
部長は「ようこそ。わたしはここの管理者、ギトレアです。」と
にこやかに、ご挨拶。
とーっても怖いのよ、と、れーみぃ(w)。
よせよせ、と、部長は手を振りながら「ごゆっくり。二階にカフェがあります。
個室が宜しかったら取り調べ室も空いてますし。」と
ユニークなジョークも忘れないところは、明るいアメリカンらしい。
留置場にも泊まれますよ、と言うあたりはブラック(w)。
「留置場なんてあるの?」とNaomi。
「うそうそ」と、れーみぃ。
交通警察だもの、と。
部長さんのお勧めに従い(w)2階のカフェ、と言うか
レストラン、みたいなところで
れーみぃの登場を待つ、みんな。
friends
「おまたせー」と
れーみぃは、私服で戻ってきた。
涼しそうな夏服、
真っすぐの黒髪は、斜めにまとめて。
ハイスクールの頃と、変わらないように見えて
その事が、めぐを微笑ませた。
もちろん、めぐはタイムスリップしてるので
そのままハイスクール・スチューデントなんだけど
その事は誰も知らない。
警察カフェ(笑)は、コーヒーの類は
好きに飲める。
でも、外から人が入ってこないのは
「なーんとなく警察って怖いって思われてるのかしら」と、れーみぃは言った。
「それは.....そうかもね」と、Naomiは笑う。
そうよね、と
れーみぃも笑う。
みんなも笑った。
そこに、パトカー、
Adam-Seven#30のスティーヴが戻ってきて。
「楽しそうだね」と。
「けーさつは怖いとこ、って話してたの」と
れーみぃはユーモアたっぷりに。
紹介してよ、と言うスティーヴと、となりのフランク。
フランクは、メキシカンらしく
縮れ髪、色浅黒く。
敏捷で、親しみのある青年。
れーみぃは「ああ、パトロールの先輩のスティーヴとフランクね。さっき会ったでしょ?
こっちは、ハイスクールの仲間。
めぐは図書館司書、だっけ?(笑)
リサは路面電車の運転手さん。
Naomiは郵便屋さん。
」
それぞれに、宜しくご挨拶。
フランクもスティーヴも、青年なのに
ハイスクールくらいの男の子とちかって
あんまり怖い感じがしないと
めぐは不思議に思った。
それとも、それが本当は怖い恋の罠なのだろうか(笑)などとも思った。
「女子高なの」と、れーみぃは続ける。
「へー、女子高!いいなぁ、なんか。
学園祭とか楽しそう。」と、フランクは
気さくに話す。
気取ったところのない彼は
誰にも好かれそうで。
親しみのあるお巡りさん、そういうイメージ。
町の中で困っている人を見つけたら
親切に、力になってあげる。
そんな感じの人。
リサは、おじいちゃんたち
国鉄の人たちと同じ雰囲気を
フランクや、スティーヴに感じた。
それで、心温まる思いがした。
それで、試験のプレッシャーも思い出した(笑)。
フランクは、リサの表情を見つけて
「どうしたの?お嬢さーん。」と
おどけたので、リサも、心和む。
Naomiは「この子、こんど試験なの。それでね。
みんなで励ましてたのよ。」と。
スティーヴは「やっぱりいいなぁ、高校の
友達って」と、明るく笑うので
Naomiも、ちょっとその直裁さに
心惹かれた。
ひろーい平原で、羊飼いでもしていそうな
彼の朴訥さに。
dejavu
「俺も、試験は緊張したっけなー。」と
フランクは、ひとなつっこい笑顔で。
「ここの?」と
れーみぃは言う。
うんうん、とフランクは笑い、
「だって、住所不定だもんなぁ。」と。
れーみぃは「フランクはね、モーターホームに住んでたから」と。
そんな、ユニークなフランクを
採用する警察って
面白いところだ、なんて
リサは思う。
新しい友達の、優しい気持ちに
思い詰めてた心が、緩んだような
そんな気がする。
「リサちゃんも、試験、きっと大丈夫だよ。」と
スティーブが言うと
、フランクは
「あ、それ俺の台詞だって。
台本通りにしてよー」なんて言うので
みんな、笑った。
軽快な、フランクの雰囲気に
みんな、笑顔になった。
その後、フランクは
「めぐちゃんは図書館かー。カウンターに行くと会える?」と。
めぐは、ちょっと困った。
今、フランクが会ってるのは
タイムスリップしてる自分。
18歳の自分で
もし、図書館に行ったら、そこにいるのは
21歳の自分。
記憶に今日の事はあるだろうけれど。
覚えていなかったら
フランクの事を、デジャヴュみたいに
思うのだろうか??
21歳のあたしは、恋人がいるのだろうか?
もちろんそんな事を、言える訳もない(笑)
「はい、いますよー。」って
フランクの口調を真似て
おどけるだけだった。
Dream on
ふたりの青年がいなくなってから、女子会の続き。
「おじいちゃんに、もう一度会えるといいのにね。」と
れーみぃが言う。
幻想的な意味で、と言う事ね。
「夢で会えるよ、きっと。」と、めぐ。
もちろん、めぐはその夜、魔法を掛けるつもりで。
「会えるかなぁ」と、リサは心なしか元気になって。
「うん、きっと。」と、めぐは真面目な顔になって。
ポリスマンカフェ(笑)は、結構ごはんも美味しいので
そこで、夕食を済ませて、女子会はお開き。
もちろん、ノンアルコールである(笑)。
Naomiは、TR1でお家に帰る。
めぐは、タイムスリップしてきたので
自分の家に帰ってしまうと、3年後の自分に出会ってしまう(笑)。
それはちょっとマズイ。
でも、女子会が盛り上がって、すこーし、リサも元気になってきて
「めぐ、ひさしぶりに泊まってく?」と
そういう話になった。
リサは、実家に住んでいるらしい。
電車の仕事は結構時間が不規則なので、身の回りの事とかを
自分でするひとり暮らしは、事実上無理。
そんな訳で、ハイスクールの頃と同じに
お父さん、お母さんと一緒に暮らしている。
そのあたりの事情はNaomiも、れーみぃも一緒らしくて。
公共の仕事って、どうしてもそういう傾向にあるらしい。
「福祉主義、って言うけれど、職員にも福祉してほしーわぁ」
なんて、みんな言ってて。
めぐはその点、恵まれてるなぁ、と思ったりもした。
図書館って時間は定まってるし。
でもまあ、日曜は休めないんだけど、たいてい。
リサのMiniCooperにふたり乗りして。
ちいさい車だけど、乗ると案外広い。
リサのおうちはハイスクールに近い。
何度か、お泊まりした事があるのでだいたい分かってるけど、でも
ちょっと心配なのは、お母さんがめぐを見て
「妙に若い」とか思わないかな?と言うあたりと
家に電話しないかな?なんてあたり。
でもまあ、その時はその時。
なんとかなるだろうと、めぐはのんき(w)。
夜、一緒にお風呂に入って。
めぐは、18才のまんま(笑)なので
「肌きれい。ティーンズで通用するわ」と、リサが言うけれど
そのままだもん(笑)と思うめぐ。
3年経つと、そんなに違うかなぁ、と思って
リサを見ると、別に変わってないように見える。
それより、オトナっぽくなってて。
そっちの方が気になる(笑)。
めぐの3年後は、どうなのか...見てみたい自分自身だったけど
まさか、自分の入浴シーンをのぞくのもヘンだし(笑)。
そんな訳で、おとなしくリサと一緒に、お部屋で眠る事にした。
もちろん、近くにいる方が、魔法を掛けるには便利なので。
リサが、夢を見て。
眠ってる時に、記憶細胞のどこかが電気的に動いてて
おじいちゃんの事を考えてれば。




