18
「これもかわいいねー」と、めぐは
おばあちゃんの水着を選んでいる。
「わたしのはいいから、めぐ、自分のを選んで?」と
おばあちゃんは、紺色の、しかしサテンのように
光沢のある生地の水着、水玉模様のそれを見ていたりする。
本来のサテンは、水に濡らす事のない生地であるが
科学合成によって作られた新素材であろう。
半光沢で、光の当たり方で虹色に見えたりするのは
素材の糸に細かい起伏があるから、だろう。
光の屈折は面白いもので
それが色彩に見えたりするのは
光そのものが、複数のスペクトル、いろいろな色の光を含んでいるからで
それを分散させると、いろいろな色に見えたりする。
色、と言う概念も
科学の進歩でいろいろな形に変化している。
人間は、進化のスピードが遅い。
1世代、せいぜい早くても20年くらい。
その単位でしか変化しないので
今すぐに、人の心は変化しないけれど....。
環境の変化は、20年、1単位くらいで人間に影響する。
「あたし?迷うな。」と、めぐは
あざやかなレモンイエローの、蛍光色の縁取りのある水着を手に取った。
いかにも布地が少なくて、派手。
かわいいけれど。
おばあちゃんは「そういうのだと、おなか壊すわよ」と
一体式のもの(笑)を薦めた。
こういう方が可愛いし、安全。
そういう考えはオーソドックスである。
実際、世の人間の多くは愛よりも生物的な反応で生きている。
古典の美術でも、絵画、彫塑の多くに裸婦像が多い事でもそれと分かる。
それは古今東西問わず変わらない。
何か、人の心に訴えるものを作るには、誰もが知っている、感じられる物を
表現するのが簡単である。
美、と言って裸婦を描くのは
それを美と思う心の構造が、生命を尊重するようにできているため、である。
その曲線を美、と思い
尊重するようにプログラムされている。
進化の過程で、そうプログラムされた人々が生き延びた(つまり、発情を起こすサインであるので生き延びた)。
それを大切にする心も愛である。
愛しいと思う気持は恋である。
然るに、若い男の目前にめぐ、のような子が
水着で出現するのは危険である(笑)。
なので、おばあちゃんはそれを避けるように考える。
真っ当である。
そういった生物的なサインではなく、人間として尊重してくれる「愛」を持った
人の目前でだけ、その「美」を開示する。
それだから、貴重なのである。
と、昔の人々は考えていたから
例えば、極端な宗教的戒律のある地域では
女性は顔を出してはいけない、等。
そういう形で、争いを避けるように社会が作られたりもした。
人が根底に生物である限り、社会においてそれを隠蔽しないと
争いが起こってしまう。
そんなわけで、賢明なおばあちゃんは
めぐに地味な水着を薦めた(笑)と言う訳で
実は、そういう女の子の方が注目を得るのであるが。
それは真理である。
男の子としても、自分だけを愛してほしいと
ふつうは思うものであるが
それは、前述の通り
家族、と言うドメインが排他的に他の遺伝子を
内包しないもの、であるからだったりもする。
競い合って残る為には、選択した相手の遺伝情報だけを
残すのが論理的で
そうするようにプログラムされている訳、である。
生物的には、と言う事だけれども。
「着てみて?」と、めぐはおばあちゃんに薦める。
「あたしはいいの。」と、おばあちゃんはめぐに
試着を薦める。
えー、はずかしいよぉ、とめぐは
どうせ、プールで開示するのに(笑)。
そんなものだけれども。
水着を何着か選んで、リゾートホテルの408号室に
持っていって試着していいですか?と
お店の方に尋ねる。
こういう時はホテルのお店は便利だ。
アパレルの試着室は、ちょっと狭いし
着替えた後の水着姿を、他の人に見られたくない、そう
思う事もあったりするし(笑)。
何着も試着するのに、自分の部屋なら
オールヌードで(笑)できたりする。
そんな時も、ここなら安心である。
どこのお部屋に持って行ったかも、コンピュータが覚えていてくれるから
無くなる事もない。
そんなふうに、自由になっていくのが
科学の進歩である。
終わった恋
めぐは、おばあちゃんと一緒に
408号室まで
戻る。
ホテルのエントランスが、おおきな
アパレルのお店になっているので
いくつか、水着を持って。
エレベーターに乗れば、そこは
見慣れたホテルの景色。
ちょっと不思議な不連続感。
そこが楽しいのか、このリゾートの
周囲の別荘地から
お買い物に来る人達も多かった。
エレベーターは、でも
泊まり客しか乗れないので
そこまで来ると、静寂が
安心な気持ちを誘う。
めぐは、賑やかなのが
ちょっと苦手だったりもして。
本が好きな人達は、だいたいそうで
本のイメージする世界を楽しむには
3次元の現実は、ちょっとノイズにしか感じられなかったりもした。
おしゃべりな女の子も多いけど
めぐは、そういうタイプでもないから
静かな環境は有り難かった。
408号室に入って、ふたつあるお部屋の、ベッドルームのほうで
めぐは、水着を着てみようとした。
大きな鏡もあるし、和室のほうで
おばあちゃんが生着替え(笑)なので
こっちがいいかな、と
そう思った。
もちろん、4階だから、外からは見えない。
でも、窓にはカーテンを掛けて(笑)
鍵掛けて。
なんとなく、ね。(笑)。
それで、ベッドに着たものを脱いで。
ドレッサーの大きな鏡に
自分の全身を映してみる。
髪は、少し伸びたけど
まだ、短く揃ってて。
首筋もほっそり、撫で肩で
すらりとしているけれど
でも、起伏の少ない(笑)
どっちかと言うと、少女体型。
脚はすらりと、若いお魚のように。
清々しい、と言うに相応しいスタイル。
その、均整の取れたスタイルを
自分で見て、めぐは思う。
.....ルーフィさんは。
こんなわたしを愛せない、のでしょうか?
回想するめぐは、あの時
上空の11次元世界で
心だけになって、この全身を晒した。
なのに、彼は
あたしを愛してくれなかった。
と、めぐは、ふと終わった恋を思うのだった。
あたしって魅力ないのかな?(笑)と
めぐは、人間の女の子らしい気持ちで
そう思う。
でも、それはそうでもなくて。
大切に思うからこそ、保護してあげたいと
魔法使いルーフィは、そう思ったので
めぐが、魅力ない訳ではないのだけれども。
めぐは、まだ少女なので
3つ年上の自分、Megが
大人びて見えて。
その彼女より、自分が幼く思えて
それで、ルーフィが相手にしてくれないのかと
そんなふうに思ったりもした。
でも、それも人間故の事で
生き物として、遺伝子継承をする機能が
そういう焦燥感を生んでいる。
論理的に言うと、内分泌、といって
機能的に、体を調節する働きは
化学物質で情報を伝えている。
その量が、閾値に達すると
機能が動作する。
そんな単純な仕組みなのだけれど
魔法使いは、そういう仕組みによって
恋していない。
遺伝子が必要性ないから、である。
その仕組みの違いのせいなので、めぐが
魅力ない訳では、全くないのだけれども
その、めぐ自身の体の中、記憶の中で起こっている事を
めぐが認識できないだけ、である。
もちろん、ほとんどの人類は
それを認識せず、ただ
心が動くから、行動しているだけ、なので
めぐが劣っている訳では
、全くないのだけれども。
若草の君
めぐは、おばあちゃんの言うように
一体型(笑)の
若草いろのスイムスーツを着てみた。
それも、光学的な変化で
水に濡れたり、光の当たる角度で
虹の七色がきらきらと輝く、不思議なものだった。
微細な化学繊維が、空気のプリズムを
作って
反射させる、そういうものだった。
シンプルな色合いが、それを
彩りに沿える。
さらりとスリムなめぐが
それを
着ると、早春の芽吹きのように
清々しい。
「おばあちゃん?もういい?」
と、めぐは
和室のほうで
、ファッションショー(笑)をしているおばあちゃんに声を掛けた。
おばあちゃんは、のんびりしてるので
着替えに時間かかるんだっけ。
と、めぐは
おばあちゃんのベースを気遣った。
ひとには、それぞれのペースがあるから
めいめいに、好きなペースで生きるのが
いちばんしあわせだ、と
めぐは思う。
めぐ自身も、のんびりしているほうだから
せわしいペースは苦手だった。
誰にも、自分のペースがあって、
心臓の鼓動も、それに沿っている。
たとえばネズミさんは、すごく早いペースで心臓が拍動するし
象さんは、とてもゆっくり。
想像できる通り、ネズミさんの寿命は
象さんよりずっと短い。
その心臓の拍動を決めているのみ
じつは内分泌の化学物質で
その活性を決めているのが
遺伝情報、つまり進化の過程で得られた性質である。
それを生得的性質と言うけれど
つまり、ネズミは体が小さいので、それだけ
沢山の熱が環境に奪われてしまう。
そのせいで代謝が早く、
故に寿命も短い。
象さんはその反対で、温暖なところで
巨体を遊ばせているから
寿命も長い。
環境と、構造への適応なのである。
人間も、おばあちゃんくらいになると
のんびりと
、代謝もゆっくりになるから
時間もゆっくり進んでいるのだろう。
おばあちゃんが、のーんびり着替え済ませたのは、その10分後(笑)だった。
時間の単位
おばあちゃんも、楽しそうに
水玉のドレス(笑)を纏って。
「わ!ステキ。おばあちゃん」と、めぐはにこにこ。
そうかしら、と
おばあちゃんは微笑む。「めぐ、似合うわね。とっても」と
おばあちゃんは、めぐのスイム・スーツを褒めた。
「流れるプールがあるのよ、ここ。」と、おばあちゃんは
楽しそう。
少女のような表情で。
めぐは、うんうん、とうなづいて「じゃ、いこっか!」と
スイム・スーツのまま部屋を出ようとして、気づく。
この格好だと、ちょっと魅力的すぎる(笑)。
めんどくさいなぁ、と思いながら
ふつうの服に着替えて。
おばあちゃんも、またまたのんびりお支度をして(笑)。
山の上温泉にある、流れるプールと言う
不思議な施設へ。
水が豊富なこの地らしい。
水もまた、時を旅している。
ずっと前に山に降った雨が、斜面を渡り
地面に染み込み、疎水層の上に滞留して
地下水になる。
地球の自転に即した、時間の単位とは
また違った、水にとってのゆったりとした時間である。
温泉にもそうした鉱物的なものもあり
例えばこの山の上温泉は、黒いお湯で
古生代の海水であると言われている。
海草などが溶解し、沃土質を含有する。
同じ水にも、そんなに大きな時間単位のものもある。
人間は、そんなに大きな時間単位では生きていないけれど
思っている事は、次世代に受け継がれる。
遺伝情報に文化的継承が見られるのは解析結果から明らかだが
それは、脳細胞などの形成要素によって得られる。
より単純には、人は文化的活動をして
物を書き残す、考え方を構築する。
そんなものが、書物などによって受け継がれる。
読んだ人が共感すれば、考え方に。
遺伝とは違い、知的選択があるので
自由で良い。
生き物はいつか寿命が来る。
その時までに、何かを残す、大抵。
そんなものである。
めぐのような女の子は、男の子にとって魅力的な存在だが
それもまた、生き物の行動、それと
愛、と言う文化的行動の
二通りの魅力による行動がある。
なので、とりあえず生き物としての魅力だけで
追われては適わない(笑)ので
危険は避けるのが賢明(w)と
おばあちゃんも言っていた。
魔法使いルーフィは、もちろんめぐを大切に思っている。
愛である。
でもそれは、生物的な愛ではない。
e=mc2
のんびりと、リゾートを楽しむつもりで
流れるプールに来て見ると......!?
清らかな湧き水が、流水のプールになっていて
それはとっても清々しくて
めぐは、にっこりする。
一番上から滑ろう。
スロープになっている、その頂上に昇ってみれば
ひざし、きらきら。
結構高くて、怖かったり。
レモン・イエローのスイム・スーツは、お日さまの光で
きらきら。
いろんな色のプリズムみたい。
白い素足は、すらりとスレンダー。
そう見えるデザイン(笑)
けっこう、お気に入りかも。
そう思っていると、頂上は目立つのか
まわりの人々が、めぐを指差して。
「あ、あの子。」
「マジシャンの。」
「パフォーマンスかな?」
人々がめぐを見る視線は、ちょっと怖い(笑)。
そのことをすっかり忘れていた、めぐ。
階段を昇ってくる男たちの好奇の視線は
いかにも生物的で。
それも、ちょっと怖い(笑)。「やっぱり、ルーフィさんって紳士だったのね」と
めぐは、モノ・ローグ。
それはそうで、魔法使いルーフィは人間とは違う。
人間って、やっぱり生物なのだ。
「えい!」
めぐは、一気にスロープを飛び降りるように滑った。
水が大量に流れ落ちていて、滝のようだ。
すごいスピード。
滝つぼのような、プールの降りる下にも....男たちが待ち構えていたので
めぐは、反射的に嫌だ、と思った。
flash!!!
瞬間的に超弦0次元モデルに転換し、空中へ逃れる。
滝の流れる中だったので、誰も気づきはしない。
文字通り、微細な点のように変化し
瞬間、重力の影響から逃れる。
F=mgh m=0
∴F=0
風のように舞い、雲のように漂う。
1700km/hで自転、110km/hで公転する地球。
瞬間的に慣性の影響を逃れる。
∵m=0である。
その時、光子の波動に同調すれば
急加速して、光速を越えると
時間が逆転する。
どこかへ飛んでいってしまいたければ、そうしただろう。
構造的解析
思いのほか、魔法が上手くなっている事に
めぐは驚く。
地上で、それを見ていたおばあちゃんも。
雑念...と言っては悪いが、ルーフィへの思慕が
それまでの魔法使いめぐの集中を妨げていたようだった。
まだ、18歳の女の子の初めての恋である。
そういう事もあるだろうけれど....。
ふつうの女の子でも、恋愛すると勉強がダメになったり
スポーツで失敗したりする。
それと似ている。
思考集中、それよりも恋愛は大きな存在で
解剖学的に見ても、恋愛に関する思考は生物的なものだから
辺縁系、基底核などの神経が昂奮する。
それに比べて思考は、皮質で起こる。
支配的なのは辺縁の方で、構造的に
進化の過程で古生代からのものであるから、当然。
生命維持に重要な部分だからである。
対して思考は、生命維持にはあまり関連性が無かった部分なので
動作としては従属的、故に
思考が恋愛で乱されるのだ。
視点を変えれば、愛は皮質、恋は辺縁である。
特に、魔方陣に頼らなくても
座標を見失わなくなったのは、とても良い事。
ただ、才能を認めてもらいたいと思っても....もう、ルーフィは
めぐの恋人にはなれないと
めぐ自身が思っていた。
ふつうの恋をして、愛しあって生きたい。
魔法は、あってもなくても。
そういうめぐの、今の気持だった。
だから、やっぱり自分を愛してくれる人を愛したい。
ふつうの女の子の気持だと思う。
魔法使いになるからと言って、人間の幸せを捨ててしまうのは
やっぱりつまらないと
少女、めぐは今はそう思う。
そのままに生きよう。そう念じる。
魔法の鏡
でも、やっぱり18歳なりの
幼いところもあったりする。
上空に漂っているめぐは「プールも泳げないなんて、困っちゃう。
どうしてあたしを追うの?」と
思う。
おばあちゃんは、めぐの後を追いかけてきて。
一緒に、雲の揺り椅子でふわふわ。
「それは、ほとんどの人って見た目で判断してるから」と。
微笑みながら。
えい!とめぐに魔法を掛けた。
めぐのお顔。
目が吊り上がって、口が大きく。牙が剥き出し。
お鼻は上向いた(笑)。
全身、毛むくじゃらになって。
割と簡単な魔法で、心、つまり内包されるイメージ、4次元のそれを
3次元モデルにしてくっつけるだけだ。
その姿をおばあちゃんは、空中に円を書いて鏡にして見せた。
「ナニこれ!」と、めぐは笑ってしまった。
おばあちゃんは、すこし真面目な顔をして「誰の心にもある醜い部分をね
形にしたの。いつも、醜い事を考えていると
そんな顔になっちゃうのよ。
目が吊り上がるのは、攻撃の心。
鼻が上向くのは、欲望の心。
口が大きくなって、牙が出るのはね、なんでも食べちゃうぞー、って
人のものまで頂いちゃうって気持ね。
それで、体も毛が生える。
いろんな、恵まれている事をアタリマエ、って思う気持がね
今のめぐにあるの。それを形にしただけよ」
と、おばあちゃんは言う。
「その姿なら誰も寄ってこないわ。プールも泳げるわよ」と。
「あたしの醜いところ?」と、めぐは少し反省。
急に有名になって、ちょっと人気を鬱陶しく思ったりした。
でも、誰かが愛でてくれるって、本当は有難い事なんだ。
まあ、外見だけで心までは見えない(笑)って
自分がかわいいって、自惚れてた。
女の子は誰でもあるけど。
それは、人間だから。
より、良い種を残す為に選択される。
その為に綺麗になろう、それは正しいけど
外見だけじゃ駄目。
それは、真理。
人を作るのは心だもの。
おばあちゃんは言う。「でも、わかる人は少ないわ。
アイドルスターだって、よく見ると怖い顔をしてるもの。
綺麗な顔してる人は少ない。
心って顔に出るの。」
そうか、と
めぐは思った。
そう思った瞬間、醜い特殊メイク(笑)
は、なくなっていった。
でも、めぐ自身には
まだ、目が吊りあがっていて
牙が出ている顔みたいに見えた。
「その鏡には見えるの。」と、おばあちゃんは言う。
時々見直すといいわ、とも。
生物の限界
めぐは、自身の心の歪み
(笑)を
目の当たりにして、恥ずかしく思った。
そして、魔法使いルーフィに
愛されていながら、自分勝手な思い込みで
彼を独占しようと思った事を後悔するのだった。
.....ルーフィさんは、愛してくれていたのに。
めぐの
思い通りに愛してくれないからと言って
恋が終わった、そう思うのは
子供っぽい思い込みだったんだ。
実際のところはわからないけれど
そう、内省しているあたりは
普段のめぐに戻った、そんな感じもある。
恋は、開拓的な行為なので
若い人にとって、すこし常軌を外してしまう
事もあったりするのであるけれど
それは、もちろん
生き物として生き延びる為の、有史以来の
経験がそこに反映されているからだと
進化生物学者は述べるように。
めぐ自身の気持ちではなく、生物として
動かされてしまっているので、それは
仕方ない部分でもある。
振り返ると、坊やの事を
ルーフィに任せて、帰ると言うのも
ちょっと、自分勝手かな?
そんな風にめぐは思い、おばあちゃんに
そう言う。
おばあちゃんは「それは、別にいいのよ。
めぐは、出来る事はしたんだし。
こちらの世界の事は、こちらの世界の人が
調べた方がいい、そんな事もあるの。」
と。
それに....。
ルーフィとMegが、恋人同士だったら
めぐがそこに居ると、かえって気を使わせてしまうし。
そんな風に、めぐも思う。
いままでは、自分が好き、って気持だけで
そんな気遣いはできなかったけど。
そんな訳で、おばあちゃん考案の変装(笑)は
結構便利だった。
顔の形に、3Dの特殊メイクをするようなもの、つまり
いつも0次元モデルにするところを、3次元モデルにする。
そうすると、モデリング時間の間で形が崩れる(w)と言うわけ。
S=v1t+at2/2で得られるSの距離ぶん、ずれるので
つまり、地球の自転速度1700km/hと
公転速度110km/hのベクトル和のぶん、形が崩れて
元の顔とは似なくなる。
そんな、特殊メイクをしても
水着だと結局、生物的なひとの視線は避けられないので
思いっきりスタイルも変形させようか(w)と、めぐは思ったけれど
そこまでして泳ぎたくもないので、結局止めて。
温泉に行ってのんびりする事にして。
「おばあちゃん、一緒に行こうよ」と、今度は邪魔も入らないので
のーんびりできそう。
おばあちゃんも楽しめる。「はいはい」と
にこにこしながら。
おばあちゃんは温泉好きだもの。
丘の上温泉のお風呂は、日替わりなので
きょうは岩風呂。
造形した湯船に自然岩をセメントで止めたものだけれど
それだけでも結構雰囲気は出る。
ふつうのお風呂より、人気があった。
もちろん、混浴じゃないので(w)、こんどは
マジシャン、めぐのファンに煩わされる事もない。
のーんびり、温泉につかっていると
蝉の声、ひぐらし、かな?
高く遠く響く鳴き声は、どこか淋しい響きで
秋が来るのかなぁ、なんて
めぐは思った。
おばあちゃんは、のんびり
湯船につかって、眠っているみたいだ。
のんびりお風呂につかっていると、ちいさな子を連れた
若いお母さんが、めぐを
マジシャン、と発見したらしく
意味ありげな視線で見ているので
「おばあちゃん、出るね」と
めぐは、ちょっと有名税を払わされた気分(笑)
....好きで、イベントに出たんじゃないのに。
坊やのお母さんを探したかっただけなのに。
有名になんかなりたくない。
そんな気持は、以前から一緒で
目立ちたい、そんな気持など
微塵もなかった。
もちろん、人間だから賞賛されるのは嬉しいけど
のんびり休める場所もないのでは、ちょっと疲れる。
....もう、向こうへ帰ろう!。
そう思って、めぐはさっさと服を着て408号室へ戻った。
おばあちゃんが出てきたら、もう帰ろ。
若々しいめぐは、それ故短気なところもある(笑)。
生きる次元
その頃、ルーフィは
もうひとりのめぐ、Megと一緒に
坊やの行方を探っていた。
しかし、見つからない。
「だいたい、なんだってわたしたちが迷子
探しなんて」と、Megは言いかけて
坊やが聞いたらかわいそうだから、と
口をつぐんだ。
「まあ、それも縁だよ」と、ルーフィは
いつものように楽天的だ。
その気楽さ、たぶん
魔法使いだから仕事に困る事もないし(笑)
困窮もない。
そんなあたりから来るのかな、と
Megは思ったりする。
それだけに、困らせてやりたいなんて(笑)
思ったりもするのは、女、21歳。
そういう感情もある。
仏様じゃないもの、生きてるんだもの。
「ねえルーフィ、
めぐちゃんはなんで坊やを置いてまで
帰るなんて言い出したのかしら。」と。
それは関心事。
彼は平然と「うん、なんか
恋人が欲しいみたいでね。」と
言う。
なので、Megはちょっと腹立たしい(笑)
もちろん、愛憎入り混じり。
自身は恋人でありながら、魔法使い故に
淡泊な関係で。
ちょっと不満もある(笑)人間である。
そういうところが言葉に出てしまうのも
女21歳だ。(笑)でも、根っこは優しい。
「ルーフィに恋人になって欲しかったんでしょ」と、優しい声で。
「優しい声だとかえって不気味だ」と
ルーフィは(笑)。
「そうね。わたしだって女だもん。いかに
わたしの3年前と似て非なめぐ、とは言え
面白くないわよ。それは」と。
女だもん。恋人って言うなら
自分だけを見て欲しい。
それは、自然な感情。
既に説明したように、生き物としての
排他性だ。
他の個体と競い合って生き残る為んい
美しくなりたい、強くなりたい。
そう思うのが生き物。
もともと、魔法使いルーフィとは
生きる次元が違う。
別れ道
「ルーフィ、あなた自身はどうなの?
ふたりを恋人にする、って
魔法使いには出来る事?」と
Megは、問う。
魔法使いの感覚が、人間には
想像できないので、そう言ったのだった。
ルーフィは、軽快に「そんな事できる訳
ないけど」と答え
でも、その感覚も人間だから、って事だねと
付け加えた。
生きてきた人類としての経験が、遺伝子に
蓄積されている。
人類以前、生物として
優性生殖をする理由は、選択によって
環境適応した種が生き残るため。
なので、人間でも
自分が選んだ相手、それ以外の遺伝子が
家族に混在する事に違和感を感じる。
それが排他。
でも、人間は知性があるから
他の遺伝子を持った人を家族とする事も
できたりする。
おばあちゃんが、坊やを慈しむように。
そう、文化である。
同じ霊長類ひと科の隣人でも、家族は持たない。
群れがあるだけだが、父子関係は不明確である。
人間だけが家族を持ち、父子関係を明確にする
理由は
発情期がないからだと生態学的に類推できる。
農耕、牧畜、の末
貯蓄、経済を持った人類は
その、家族の経済力によって生きている。
食物を得るためなので当然だが.....
しかし、女の子が恋人に
浮気を許さないのは
必然性は無く、彼女自身の排他性である。
生物行動学的には、不都合は何もない。
それをルーフィはわかっているし
彼自身は、魔法使いなので
遺伝子を残す必要がない。
自身が永遠に生きられるからである。
なので、ルーフィから見ると
めぐたち女の子の感覚は、不条理なのである(笑)が
感覚は不条理なものだし、生物的な
必然でそう動かされているので
仕方ない、と考えてもいる。
めぐたちが、人間として生き続けるならば
ルーフィも人間になるか、
それか、別れが訪れる。
そのどちらかだろうとルーフィは思った。
もうひとりのルーフィ
でも、ひとは理屈で生きてはいない。
気持ちが納得する時、快いと思う。
その気持ちは、生命として生きて来た記憶が
積み重なって出来ている。
「じゃあ、ルーフィはどうしてあたしを
恋人だなんて言ったの?」と
Megは言う。
それは、ルーフィにもよくわからない気持ちだ。
彼自身が元々人間だった頃の記憶がそうした、としか言いようがないが
「でも、好きって思うのに理屈なんてないんじゃない?
後で、その言葉に責任を持とうとして
頑張るのも愛である。
「それで、めぐちゃんがルーフィを好きになってくれて。
返事できない。
それはそうよね。」と、納得の声のMeg。
「でも、生き物ってそうだもの。
めぐちゃんのために、君を嫌いになるなんて
できない。
だって、僕は魔法使いだもの。
心だけでひとを好きになって。愛する。
それは、人間の恋愛とは違うけど
でも、愛したいもの。」と
ルーフィは言った。
ふたり、同じくひとなのに
どっちかを選べ、なんて無理だよ、とも。
Megは、ふと思う。
「めぐちゃんの世界には、どうしてルーフィの代わりがいないの?」
そう言われれば、そうかもしれない。
並列世界。
理論的には、もうひとりの彼がいるはずなのだ。
自由・平等・博愛
しかし、その連想は
悲劇的な帰結をも類推させる。
ルーフィ自身は、ミュータントなので
どちらの世界にとっても異物である、と言う類推。
たまたま、Megの世界に原点があって、めぐの世界に旅した。
つまり、ルーフィの本当の原点は、どこか別の所にあるのだ。
例えば、(元)天使クリスタが、天界からめぐの世界に舞い降りていても
こちらの世界には、天使の存在が見られないように。
魔法使いルーフィは、過去から未来へと旅する存在。
定点に留まる事のない存在なので、向こうの並列世界には
存在がない、らしいと言う
そんな推論も成立する。
「僕は、どちらにとっても異なる者なのさ」と、ルーフィ。
いつかは、出て行く存在の旅人。
その言葉は、言わなかったけれど。
「Meg、キミは魔法を使えるんだから
この時空に定着する必要はないのさ。一緒に旅しよう?」と
ルーフィは言う。
それは結構危険な誘い。
人間として定住の必要が無くなれば、自由に飛翔して暮らす事が出来る。
....けど、それは何の為?
ひとは、生きて、死すまでに証を残す為に生きる。
ひとを愛し、子を愛し、孫を愛し。
家族を愛し、社会に生きる。
マイ・ドメインを守る。
それが無くなったら、一体なんのために生きる?
何を愛す?
子孫を残す必然が無ければ、博愛しかなくなる。
天使、クリスタのように。
それは幸せなのだろうか?とMegは考える。
めぐよりも少しだけオトナなので(笑)。
truelove
「人間だって、恋する時間って短くて。
あとは、ずっと慈しみ、愛してあげる時間だもの。
それってさ、生物的な遺伝情報の共有は関係ないものね。
夫婦なんかそうでしょ?
子供もそうだと思うんだ。
自分の遺伝子を持ってる子供もいいけどさ、
その子が、自分を愛してくれるか否か、は別だし。」
と、ルーフィは、そんな事を言いながら
だから、と言う訳でもないけれど
見ず知らずの坊やの、落ち着く先を捜索していた。
Megは、まだ21歳だし、恋の経験もほとんどない。
なので、恋や愛が自分の中にある、と言う感覚も
はっきりとは分からず、希望も少しは含めて
考えている。
そこが、女の子っぽい愛らしさでもあるけれど。
恋も、愛も、自分の頭の中のhappy感覚で
恋人は、それを投影する為のもの。
もちろん、それが必要だから進化の過程で
得たのである。
すこし、ほんの少しずつ
環境の影響を受けて来たから
18世紀、ルーフィの居た頃なら
見ず知らずの子でも、幼い子なら
年上の子が面倒見るのはふつうだった。
生物はみんなそうで
霊長類ひと科の隣人、ゴリラなどは
年長のオスが年少のオスを教育したり、面倒をみたりすると
1980年代の観察結果、これも日本の京都大学霊長類研究所の
フィールドワークにある。
排他的な遺伝子、と言われる性質がもし真ならば
これは遺伝子ではなく、文化的な性質であろう。
年少のオスは、成長すれば年長のオスのライバルなので
それを育てるのはヘン、だと思うのが
排他的遺伝子仮説(たとえば、リチャード・ドーキンスのような)であるが
しかし、知性の高い生物、ゴリラくんたちは
助け合う事を知っている。
年少のオスたちが、群れの中で
やがてリーダーになっていき
そんな頃、年老いたオスを追い出したりはしないのが
高等類人猿あたりの知性。
同じ高等類人猿でも、ハヌマンラングールやチンパンジーの類とは
違う、と言うあたりも興味深いが
つまり、共助と謙譲は、隣人も知る文化なのである。
ひと科、ホモ・サピエンスも基本的にそうなのだが.....。
ここ数十年程、経済、と言う妙なものに影響されて
共助と謙譲より、闘争と排他、と言う地域的傾向もあったりする。
それはおかしなことで、文化的には退化を意味するが
生物的攻撃性を刺激する、経済活動の欲求が
人間の愛を、どこかに置き去りにさせてしまうようだ。
めぐとMegが、ルーフィにどこか惹かれる理由は
そんな、忘れ去られた愛を彼が、18世紀から連れてきたから。
めぐが「おじいちゃん」好きな子だったように
旧来はそうした男が多かったのである。
ひとの愛、神の愛。魔法使いの愛
そう、神様の愛も、魔法使いルーフィの愛も
人間の愛も、本質的にはあまり違いはないのだ。
慈しみあって、愛しあって生きる事は
複数の個体の間では基本である。
人間以外の生物でも、テリトリー、つまり
自分の生活を脅かさないなら、無用に
攻撃をしないものである。
つまり、農耕や牧畜などによって
社会、テリトリーのない生活をしている
人間なので
自らのテリトリーを守ろうとして
争いが起きたりする。
ルーフィと、ふたりのめぐ、Megとの間に
起きている事も、同様な理由で
偶然、時空間の歪みで
3人が出合ってしまったので
テリトリーが重複してしまった(笑)。
でも、年月が経てば
いずれ、テリトリーを共有して
社会のように生きられる。
ルーフィはそう思っている。
思いながら、坊やの行く先を探した。
坊やの体内にある、放射性同位体を探し
年代の特徴と照合して、地域性をも探し当てようとした。
例えば、兵器として放出された放射性物質や
原子力発電所の事故での同様な物質。
それらの崩壊過程は時系列に沿っているし
地域的な座標を推定できる。
ルーフィはそう思って、量子コンピュータの
放射能検出プローブを使おうと
考えた。
radioactive sense
難しい技術ではなく、
工作キットは高校生レベルのものだったりする。
原理は単純で、放射性物質は
崩壊しながら変化して、長い時間を
掛けエネルギーを失って行くので
常に、地球上のどこかで放射能汚染が起きている。
それが、農畜産物を経て、人間の体内に滞留する。
つまり、それがマーカーになるのだ。
例えば、チェルノブイリで放出された
放射性物質を持っていれば
その付近、少なくとも
その時代より前の人ではないと分かる。
それから、どの程度時間が経っているマーカーを持っていて
もし、別のマーカーを持っていれば
その時系列、座標の関係性で
住んでいた場所などが推定できる、
そんな技術である。
魔法ではない、科学技術なので
ルーフィも存分に使い切れる(笑)。
そのまま、魔法が再生しなくても
科学者で生きていけそうな(笑)
ルーフィは、プローブをコンピュータにつないで
電源を入れた。
最初に、自身の測定をしてみると......
当然だが、いろいろな時代を旅しているので
時系列が推定できない。
アメリカ、ネバダ地下核実験の時から
数年後のマーカーと
スリーマイルの原発事故のマーカーが
似た時系列であったりする(笑)。
理論的にはありえない事だ。
それは、ルーフィがいろいろな時代を
飛んでいるので
それぞれの時代で、放射性物質を
拾ってしまっているから、である。
本当は、ふたつの事象が
20年離れていれば
最初のマーカーと、ふたつめのマーカーは
正確に20年、崩壊の進行が
ずれていないと変、なのだ。
それにより、魔法使いルーフィは
どの年代を飛んだか、も
わかってしまうのだけれど(笑)。
Make Up
しかし.......。
坊やにプローブを当ててみても
坊やは、にこにこと怖がる様子もなかった。
おもちゃかな、と
プローブを見て、不思議そうにしているだけ。
コンピュータに検出されるのは、周囲の自然放射線だけだった。
この国もフランスに近いので。
「おかしいなぁ」と、ルーフィは検索結果に納得ができない。
どこにも属さない、と言う事か?
または、原子力が開発される前の時代から来た、とか....?
もし、そうなら
ルーフィ自身が魔法を修復しても、連れて行くのは不可能だ。
坊やに目隠しでもしないと(笑)。見られた瞬間魔法は
効き目を失ってしまう。
それか......。異空間の魔法使い、めぐに連れて行ってもらうか。
その、何れかしか方法はない。
めぐは、有名人から脱却したくて(笑)早く帰りたくて。
「おばあちゃん、もう帰ろうか」と。
ちょっと、わがまま娘っぽく(笑)。
はいはい、と
おばあちゃんも、かわいいめぐには甘い。
でもまあ、めぐのせいでもない。
スターになりたがる娘のような、タイプとは
めぐは違うのだし。
本好きで、イメージのなかで遊ぶのが好き。
物語のような、かたちの無い世界が楽しい。
そういうめぐは、アイドルになって、自分が注目されて楽しい、と
言うような感覚はなかったりした。
思い返すと、物語を読んで見ても
楽しむのは自分の外にある物語世界。
美しく装って、自分が真ん中にあるような世界は
ちょっと、めぐには疲れてしまったりして。
めぐが、連想するのは
自分の世界で、クリスタさんと自分を誘った映画作家の、
あの、司書主任さんの甥だった。
「映画に出てください」と、言われて悪い気はしなかったけど
その映画を公開されたら.....。
いまさっきみたいな事になるのなら、絶対に断ろう(笑)。
と、めぐは決意したりして。
このあたり、オトメ心は秋の空(笑)といわれそうだけれども
ちゃーんとリクツになっているのである。
大抵、ね。(笑)。
のんびりおばあちゃんが「おいしいもの食べて行きたかったね」とつぶやくので
めぐも、ちょっと気が変わって「そうしよっか」(笑)。
変装して行こうっと(笑)。
と、めぐは、スターみたいに
おおきなサングラスしてご飯は食べにくいなぁ、なんて思って。
「そーだ、おばあちゃん、お化粧教えて?変装用に。」と
面白い思いつき。
そういう事に興味のある年頃、だけど
メイクなんてしたことなかった。
いい機会だから、変わった顔にしてもらおっかな(笑)と
なんでも楽しんでしまうのも、めぐ、18才。
おばあちゃんは、ひょいひょい、と
道具を取り出して、楽しそうにめぐの顔を塗ったりして。
白塗り、厚塗り。ほっぺはピンク。おてもやん(笑)。
べたべたにすると、本当に誰だか分からない。
「すごいねー。」と、めぐは驚く。
つけまつげ、アイボールシャドー。
アイライン。
「なんか、でも顔が突っ張ってて
ご飯食べにくそう」
正直な感想。
オトナってメンドクサイんだなぁ、とも(笑)
a little viking
「さあ、食べるぞー」と
めぐは、おばあちゃんと一緒に、ランチバイキングへ。
泊まり客はいつでも出入り自由と言う、おおらかな
このレストランは、いかにもリゾートらしい楽しさである。
泊まって行くひとは、それほどでもないので
2階のランチバイキングは、空いていた。
同じく施設が1階にもあって、そこは日帰り客用。
そちらを泊まり客が使ってもいいのだけれど
2階のほうは、入口で部屋番号を言わないと入れない、そんな仕組みになっていた。
なので、ほとんど貸し切り(笑)。
食べ放題とか、結構頑張っちゃうめぐ、だったりする。
「得だもん!」 とか、庶民らしい感覚は
楽しい。
でも、ちょっとおばさんぽいかな(笑)。
「食べ過ぎないでね」と、おばあちゃんは
景色のいい窓際の席、白いテーブルクロスが掛かってレースのカーテン、お花が添えてある
高級レストランみたいな雰囲気の席に、掛けて。
柔らかい味のスパークリングを召し上がって。
ちょっと、遅い時間のランチだけれども
時間の制限、なんて
せせこましいものは、リゾートには似つかわしくないので
泊まり客フロアには、そういうものは無かったりして。
いかにも楽しそうな、あの館長さんらしい
演出だったりもした。
おおきなトレイを持って、めぐは
お皿をいくつか。
バイキング、取り放題のこと。
なぜか、伝説の武将の名前が付いている。
「海賊さんは、パーティーが好きだったのかな」なんて
めぐは思いつつ。
まずはスパゲティー。
ゴルゴンゾーラ、カルボナーラ、ミートソース、ナポリタン、ペペロンチーノ、クリームソース。
それだけでも食べ切れない(笑)。
つづいて中華。
芝麻球、八宝菜、太平燕、回鍋肉、ふつうの炒飯、ラーメン。
ふつうの、ラーメンとかあるのは
庶民にはうれしい(笑)。
本格的中華ってじつは庶民には馴染みがないので
メニューも、中国人には馴染みが無かったりする(笑)。
それが、おもてなしなんだろうけれど。
ここの国に、中国人はあんまりいなかった。
中国のひとは、じつはフランス料理とかを
好きだったりするし。(笑)。
その他、フレンチ、ドイツ料理、ロシア料理。
などなど。
だいたいが、その国ふうのお料理を
この国のひと向きにアレンジしたものだった。
地域性ってそういうもので
そこの場所に合っている味、ってある。
有名なのは、カレーライスみたいに
気候温暖で、食べ物が傷み易いから
スパイスが流行して、ああなった、などなど。
そういう気候の影響もある。
イギリス人がインドに移住した時、スパイスを
輸入して
それでカレーライスが出来た、なんて説明もあったり。
そんなふうに、歴史と気候が
その地域の味を作る。
それなので、世界の味めぐりも
じつは、こういうおもてなしバイキング(笑)だと
アレンジが入って、おいしくなっていたり。
心遣い。
うれしい、そんなものを
知らず知らずに、楽しんで
くつろぐのもリゾート、である。
一生懸命に食べると、デザートバイキングが待っていたり。
(笑)。
viking again
どちらかと言うと、デザートバイキングのほうが
めぐにとっては楽しいものだったりするけれど
でも、甘いものばかり食べる事もできない。
人間の体は微妙なバランスで成立しているので
甘いもの、つまり糖分だけを摂取しすぎないようにと
検出する仕組みを、進化の過程で
身につけてきている、そういう事。
でも、自然な環境で甘いものは少ないので
人工的な甘いものは、お菓子のように
人の嗜好になる訳である。
元々は、エネルギー源として
それを好むような傾向を身につけて来たと
進化生物学の論者たちはそう言う。
自然に、野原にある果実であるとか
そういうものを、好んで食べるように、
そういう生物は、エネルギーを多く得て、生き延びた。
そして、甘い果実は
それほど頻繁に見つかる訳でもないので
甘いものを食べると、体にエネルギーを備蓄する訳(笑)。
デザートバイキングを頑張っちゃうのもいいけれど
あとで、スタイルが気になる人も多いのはそんな理由である。
食べ過ぎて、あとで、痩せたいと言うのは
いかにも背反する、奇妙な行動であるが
それは、甘いものをどのくらい食べると過剰なのか?
と、それを知るセンサーの感度が鈍いせいであったりもする。
取り込まれた糖分が、吸収されてから
センサーが反応するまで
数時間を要する。
その間に、食べ物はどんどん
入ってきてしまう。
美味しく、美しく。
魅力的な食物は、つまり
作り手の技術的、経済的理由に
従う例が多い。
それを作る事で、作り手が
満足したり、生活の糧を得たり。
そんな理由で、人々の欲求を刺激する
危険な存在である(笑)。
食べ物はまだ罪が少ないが。
大方の経済活動は
そんなふうに、売手の理由で
作られているが
刺激的な半面、欲求を発生する
悩ましい存在でもある(笑)。
生き物である以上、欲求があるのは必然であるが。
欲求があって充足する。
そこに喜びがある。
原始的には、衣食住のようなものがあり
それを
転換して、誰かの為に尽くす事、なども
つまりは、マイ・ドメインの誰かを
助けて
結果としてマイ・ドメインの
、例えば社会のようなものもの存続を
計る行為なので
それを美徳と思う事が
べつに、高尚である訳でもない。
人の喜びは、生物的である。
それでいいのである。
神や天使が高尚、そう思うのは自由だが
人の喜びが低俗な訳でもない。
人間型の心を持っているとすれば
高尚な喜びも、そうでない喜びも
心で起こっているいちばん原始的な喜びは
報酬を得られた、と言う
喜び、
だ。
めぐは、そんな理屈を考えるでもなく(笑)
美味しいものを喜んで食べている。
メロン、オレンジ、くわい、グレープ。
マスカット。
チーズケーキ、レア、ベークト。
ショートケーキ、モンブラン、エクレア。
シュークリーム。
ヨーグルト、アップルパイ。
いろいろ(笑)。
おばあちゃんも、ミルフィーユとかを
頂いていたり(笑)。
楽しいリゾート、そろそろ夕方になって来た。
telephone line
「もう少し遊んでいこうかな」なんて
めぐは、おなかいっぱいになって、幸せだ(笑)。
「そうね、ここの館長さんも
ずっと居ていい、って言ってるし。」とは、おばあちゃん。
夏休みのリゾートって、そんなに暇なんだろうか(笑)と
思うけれど
国の施設だったこういうところは、突然、偉い人が
泊まりに来ても良いように、いくつか部屋が空けてあるのだそうだ。
もっとも、本当に来る事は稀なので
本当に来た時に、部屋を空けてくれるような
知り合いの人とかなら、泊めてもらえたりする。
そういうお部屋なので、408号室は特別らしい。
ホテルだけじゃなくて、鉄道や飛行機なんかに
混んでいても空席があったりするのと同じ理由、らしい。
「それだけ、めぐのマジックが面白そうだったって事ね」とおばあちゃんは
にこにこ。
魔術じゃなくて、魔法なんだから当然なんだけど(笑)。
お部屋に戻って寛いでるおばあちゃんとめぐに、外線からお電話ですと
フロントからの連絡。
電話の相手は、Megのおばあちゃん。
めぐのおばあちゃんに、お話。
例によって、JKみたいに賑やかなの(笑)。
年を取ると、だんだん無邪気になってかわいい会話になるのは
家族ももう手を離れて、母でも主婦でもなくなって
社会・家族、なんて言うドメインから解放されて
ひとりの人間に戻っていくから、なんだろうか。
でも、電話の内容は割りとシーリアスで
「そう....それは...困ったわねぇ。もう、本当なら帰っていたとこだったの。」と
おばあちゃんの言葉の切れ端に、めぐは、ちょっと緊張を覚えた。
ことばとキモチ
おばあちゃんは、受話器を手で押さえて
「ルーフィさんがね、坊やの事で
めぐの力を借りたいんですって。」と。
ルーフィさんが、あたしを呼んでる。
坊やの事でも、あたしを必要としてる。
それだけでも、めぐは
なんとなく、嬉しい。
理不尽に、どきどきしたりするのは
想いを断ち切った、としても
恋しい心は、生物的な記憶のせいなので
それは、仕方ない。
人間として、魔法使いと恋しても
不毛だ。
そう思うのは、理論的。
でも、恋心って情緒なので
それは仕方ない。
恋心と言うよりも、もっと根本的な
引き合う何かがあるようだ、と
めぐは、なんとなく思う。
おばあちゃんの世代と、ルーフィたち
イギリスの魔法使いとは、なにか
交流があったみたいなので
遠い過去に、引き合う原因が
あるのかな、なんて
めぐは回想する。
魔法の練習をしているとき、
無意味にイギリスに飛んでしまった事、とか。
それも、偶然じゃなかったのかもしれない、などと。
kindness,joy,love and happiness
時として、そういう情緒は
身を滅ぼす事もある。
それは、社会が人工環境であって
様々な人の意思が混在している
言ってみれば多次元空間だから。
人の意思は、それぞれが4次元の空間である。
客観的に、目前の3次元時空間に
自らの意思を合わせようとする人はいない。
それを意思とは呼ばない。
つまり、人がふたり居れば
その意思を適合させる作業が無ければ、社会は争いの場。
もともとある情緒、例えば愛のようなものは
それをソフトに適合させる幻想である。
愛を持って、ひとつの方向性に沿わせる事が
複数の意思をひとつに適合させる作業なのである。
みんなが愛を持っていれば、適合は成功する。
そうでない時、愛を持っている人が困難に出会う事も
しばし。
つまり、情緒と言う生物的なものは、過去の体験に沿って
得られた性質(生得的性質と呼ばれる)。
現在、未来に向かっての環境が
過去と違っていれば、それは
これからの環境に適合させる事、それを後世に残す事が
進化、と呼ばれる作業になるはずである。
めぐにとって、坊やのために
過去に飛ぶ、そんな行為は
損得で言えば、損である。
しかし、年少の者を庇護する行動は
どんな生物にもある性質である。
同じ種の生物を守る事で、種は生き延びてきたので。




