14
あの、電車さんは
シーケンシャルプログラムだから
直接、翻訳さんが乗ってるのね。
だから、シーケンシャルな、ラダー・ニモニックて言葉で
話しかけると、たぶん、通じるわ。
001 LOAD
010 M02 on
020 Tm01 on
みたいな。
ふつうにパソコンのプログラムは
翻訳した、ものを読み込ませてるから
そのまま語りかけてもダメ、かしら。
もう、
機械の言葉、0、1だけに
なっちゃってるから。
# include
{ echo sub1
}
みたいに。
翻訳さんを、持ってないとダメ、だわ。
」
と、めぐはプログラムの、学校で習った知識で
そう言った。。
「ふうん。メカニカルなんだね。
それを使えば、21世紀の
コンピューターさんとも、話が出来そうだね。」と
ルーフィは、楽しそうにそういう。
めぐちゃんは、僕らよりも
未来を生きてるんだね、と
思ったりしながら。
魔法使いの未来と過去
でも、魔法使いルーフィにとって
どこが未来なのか、過去なのか、は
ちょっと難しい(笑)。
どんな世界でも行けるし
どんな時代でも行けるから。
生物的な限界は、あるのだろうけれど
今のルーフィに、そんな雰囲気はなかったりする。
生き物なのかどうかも、ひょっとすると
わからないのだ。
例えばクリスタさんが、天使でもなくて人でもない、そんな存在だと
誰も信じないように
ルーフィは、誰が見ても人間なのだけど。
何が人間か、と言うと
それは、心である。
生物社会学、と言う
京都大学の今西錦司教授が定められたジャンルでは
人間とは、家族を持っており
食料を分配しているのが条件になっている。
つまり、形ではなくて
行動や心が、人間とそうでない生物を
分類しているのだ。
にゃごの前々生、悪魔くんになる前の彼は
母親、父親と離別してしまった為に
家族を失い、人間としての心を失ってしまって。
その淋しさが、彼を暴走させた。
生物学的に、彼を産んだ母親が居ても
食物の分配もなく、家族としての心の交流もない。
それは、母親とは呼べなかったりする。
そのせいで、彼は悪魔になってしまったが、そんな風に家族は大切なのである。
彼が、猫に生まれ変わってまで
クリスタさんと共に生きる事を望んだのも
それが、家族のような幻影を
彼に与える為だろう。
もちろん、魔法使いルーフィも
どこかに家族があったのだろうけれど。
今は青年なので、新しい家族を作る。
そんな季節だ。
「さ、じゃ、あたしのおうちへ。」と
路面電車を見送って。
石畳の軌
道敷を渡って。
安全地帯から、歩道に渡って。
路地の、坂道へと登る。
見慣れた坂道が、めぐにはとっても
有り難く思えた。
なんたって、絵本の中に旅してしまったのだから。
路地のお隣りさんや、ご近所さんも
心配してないといいけど。
はじめての外泊だもん(笑)なんて
めぐは、ちょっと、スターみたいな
気持ちで戻ってきたけど。
誰も、気にしてないみたいなので
ちょっとがっかり。
そうそう、にゃごにお礼言わなきゃ。
「あ、そうだ。クリスタさん?にゃごにお願いして下さったんですか?
あたしの捜索(笑)」
クリスタさんは、穏やかにかぶりを振って。
「いいえ・・・・。」と、だけ。
「そっか、にゃごにごちそうしないと。」
と、スキップするみたいに
めぐは、楽しげに、おうちの門を開けて。
「ただいまー。」と。
いつもと同じように、お母さんもお父さんもにこにこ。
おばあちゃんも。
だーれも心配してない事に、ちょっと残念な(笑)気もしたけど
でも、叱られるよりはいいかな。
でも、思い出を振り返っても
あんまり、叱られた記憶ってなかったりする。
いい子だったもん(笑)なんて
自分では思ってたり。
「おかえりめぐ。疲れたでしょ?
お風呂入ったら?」と、お母さん。
「うん。おばあちゃん、にゃごは?」
と、めぐは、夕べ出掛けてからそのままだった事を思い出す。
おばあちゃんは、いつも通りで
「にゃごは、ごはんじゃない?」と
ダイニングルームの角、にゃんこのご飯のところにいるのかしら、と
言った。
「にゃごー、にゃごー。」と
めぐは、とことことダイニングルームへ。
クリスタさんとルーフィも、お母さんに招かれて。
「ただいま、戻りました。」
「すみません、ごやっかいを」
と、それぞれにご挨拶。
お母さんは、とりあえずお風呂でも、と
言ったので
それじゃあまた、ニアミスしちゃうな、とルーフィが言ったので
そうですね、とクリスタさんも
みんなも楽しく笑った。
和やかだった。
にゃごは、極上鯖の缶詰を
おいしそうに食べていた。
めぐは「ただいまー、にゃご。
ありがとね。おかげさまで
帰ってこれたのー。」と言うと
ごはんを食べながら、にゃごは
ふにゃくにゃむにゃふにゃご、と
にゃんこ語で語った(笑)。
遠い記憶
めぐの見ている、にゃごは
ごくふつうの、とらとらにゃんこ。
でも、魂は・・・・前々生は人間だった。
そんなことは、わからない。
ふつうのかわいいにゃんこ。
でも、美人猫さんとカップルになって。
子猫がいたりする(笑)。
そんなもので、ひとつの見方では見えない、その人(にゃご?)の
いろんな側面があるんだろう。
めぐだって、ふつうの女の子なのに
魔法が使えたり。
それは、ルーフィに出会う前から、そうだったのかもしれないけれど・・・。
リビングで、ディナーを頂きながら。
きょうは、イタリアンかしら。
ほうれん草とベーコンのキッシュ。
舌平目のソテー・パルミジャーノ風味。パセリかけ。
モッツァレラのデザート。
などなど。
ルーフィは、優雅に、のんびりと頂きながら。
おばあちゃん、お父さん、お母さん。
クリスタさんも。
白ワインなど傾けながら。
お父さんは、白ワインの代わりに日本の純米酒を。
辛口ワインよりも、更に辛いとお好みだ。
つまり・・・・アルコールに近いと言う事なので(笑)
それならエチルアルコール(C2H5OH)を飲むともっと辛いだろう(笑)。
OH、水酸基があるので刺激的なはずだ。
めぐは、まだお酒は飲めない。体質に合わない、と言うのもあるだろう。
アルコールの芳香で酔ってしまうので
めぐと、みんなでお食事を済ませてから
お酒を好む人達だけで(笑)こうして頂いている。
優雅な夜だ。
「おばあちゃんは、昔から魔法が使えたんですか。」と
ルーフィは、なんとなく予想していた事を、おばあちゃんに聞いてみた。
はっきりとは言わないけれど、そういう事。
そんな雰囲気で、おばあちゃんは答えた。
どうやって覚えたか?なんて事をルーフィは聞かない。
素質と言うか、魔法は血統なのだ。
使える人は、使える。
そういうものだ。
そして・・・・たぶん。ルーフィの魔法とそっくりの使い方が出来るなら
遠い祖先のどこかで、ルーフィの一族と、めぐの一族はつながっている。
そんな感じだろうとルーフィは思った。
たぶん、めぐが、ルーフィに親しみを感じるのは
ひょっとすると、おじいちゃんが好きだっためぐ、が
おじいちゃんと似た感じを、ルーフィに感じたから、かもしれない。
そう、ルーフィは青年だけれども
魔法使いで、いろいろな記憶を持っているし
その、過ごした年代がおじいちゃんの年代だったりすると
文化の影響で、おじいちゃんたちの年代の男、そのダンディズムに
似ているところがあるのかもしれないから。
ルーフィの国、イギリスに
近い、この国だから
どこかで、そういう交流が
ひょっとして、あったのかもしれない。
見た目の感じ
そういえば、クリスタさんの風貌は
どちらかと言えば、北の方、アイルランドふう、と言う感じ。
柔らかいウェーブの短い髪、まるいかんじの顔だち。
クリスタさん、と言うお名前も
そんな感じ。
まあ、この国がイギリスに近い海沿いだから、そういう人は多いんだけ(笑)。
共和国ふう、と言うのか
いろんな人が、この国には住んでいる。
隣街の、あの坂道の
東洋気術さんは、アジアふう。
中国語を知っているけど、イギリスの、ルーフィと魔法がつながっている感じからすると香港あたりの
出身だろうか。
いろんなひとたちが、住んでいる街。
それだけに、ひとびとの生活習慣もいろいろ。
文化もいろいろで、そこが楽しいと
めぐも思っていたり。
ダイニングルームで、まだ大人たちは
お酒を楽しんでいる。
それも不思議な習慣だけれど
これは、万国共通。
べつにアジア系でないお父さんも
日本のお酒を楽しんだり。
「お父さんは、魔法をつかわないのですね。」と、ルーフィは尋ねる。
「どうやら、女の子に才能が出るようですね。」と
お父さんは穏やかに述べた。
研究者だという、おとうさんは
それらしい見識を持っているが、謙虚だ。
そうでないと、一流の研究者にはなれないから
それは、自然にそう身についたものであろう。
客観的に見ると、そういう才能は
遺伝的に、男女どちらも持っているはず、だけれども
男の子の方が、割と知識に沿った考え、つまり
生まれた後に学んだものに沿って
考える事が多い傾向にある・・・
割と女の子は感覚的に捉えるから
生まれる前から持っていたものが
出やすいのだろうと、お父さんは
そんなふうに考えていたり。
そのあたりも、論理的で
研究者、男らしいさっぱりとした
切り口だ。
そうすると、めぐが
生まれた後に魔物に襲われたと言うのも
偶然ではないかもしれない、と
ルーフィは思った。
代々、魔法使いの血統だと言う事を
めぐ自身が意識していないだけで。
それで、不慮の事故を装い
めぐを、魔法使いの血統を
絶やしたかったのではないだろうか。
誰かの意図で。
もし、そうならば。
神様がめぐを特別に計らった理由もなんとなくわかる。
それは、魔王の手下の仕事でもないだろう。
魔王が、それを知っていれば
ルーフィと契約するはずはないからだ。
いったい、誰か?
ルーフィは、新たな疑問を推理した。
魔法が邪魔、魔法使いを嫌ってて
血統を絶やしたい者・・・魔物を使ってめぐを襲って。
なぜか、魔王に退治された理由も
それで成立する。
ルーフィにもちょっと、見当がつかなかった。
「でもまあ、今は平和なのだから」
そうは思った。
そこで、連想する。
「にゃごは、魔界の出だから・・・。
その事を知っているのかもしれない。」
そう思うと、なんとなく
クリスタさんへの接近や、めぐ、そしてルーフィの危機を救った理由が
あるようにも思えてきたり。
考えすぎかもしれないけれど。
「にゃご、にゃごにゃごなー。」
と、めぐは、にゃごと遊んでいた。
ねこじゃらしを、おもちゃにして。
そんな時のにゃごは、子猫みたい。
でも、にゃごはそれでいて
子猫がいたりして。
ころころの子猫は、時々めぐの家にもやってくる。
「み」 「み」
と、小さく鳴きながら。
ふわふわの子猫は、とってもかわいい。
ねこじゃらしは、そんな子猫の
おきにいり。
ねころがって、ねこじゃらしに
ごろごろ、なついている。
そんな様子も、とてもかわいい。
「あ。そうだ。」
めぐは、ルーフィが言った
プログラムの魔法(笑)の事を
少し思い出して。
「そうそう。翻訳さんはコンパイラー、って言って。お約束の通りに
コンピューターさんに言葉をつたえるのね。
{
}
の中に書けば。
その時に、どこから読むか、のサインが
Main()
{
}
で。
カッコの中に、計算結果の形を書くんだったっけ。
Main(void)
{
}
みたいに。
ちゅうかっこの中が、プログラムで。
Main(void)
{ printf(ssub1) ;
}
みたいに。最後を;で区切るんだっけ。
学校の授業を思い出しながら。
ふだんは、コピーで張り付けなので
こんなのを思い出す事も無かった。
でも、魔法にするならちゃんと
覚えないと。
そんなふうに、めぐは思った。
#include
Main(void)
{ printf(ssub1) ;
}
って。どうやってデータを出し入れするか、を#のあとの、この呪文(笑)で
キメるんだったっけ。
<>で。
ヘッダファイルって言ってた。
結構覚えてるな、って
めぐは、1年生の頃の授業を思い出したり。
友達
にゃごは、もちろん
魂胆があってクリスタさんに近づいた訳ではなかった。
図書館で、偶然
天使だったクリスタさんの優しい雰囲気に触れて
心の、どこかに
とても、惹かれるものを感じて。
それで、悪魔だった自分を悔い
生まれ変わって天使さんと一緒になる事を望んだのだった。
でも、その道のりは遠い。
今は猫で、この先生まれ変わって
人に為れるかどうか・・・・・。
それにしても、この猫の一生を
終えてからの話だし
今、猫としての生を
美人猫さんと子猫、それが
しっかりと握っていて離れられない。
そういう感じだったし、
猫としての生を、疎かにすれば
その後、人に生まれ変わるなど
水泡に帰してしまう。
今、猫としてにゃごは生きているので
そういう時間を、クリスタさんと
幸せにくらしていく事も、また
大切な記憶である。
それも、幸せなのかもしれないと
にゃごは、子猫のあどけない仕草を見て
そう思うのだった。
人には、人、
猫には猫。
魔法使いには、魔法使いの。
それぞれの幸せがあるのだろう。
クリスタさんは、もともとめぐを
魔物から守る為に、めぐに宿っていた。
とりあえず、神様とルーフィの活躍で
この世界に魔物は来なくなったし
命の危険もなくなった。
それで、天界に戻るべきだったところ・・・・。
悪魔くんが、猫に生まれ変わって
にゃご、になった。
それで、めぐに宿ったまま
天使に戻れなくなった。
にゃごが、天使さんと
幸せでいたい、そう心して来たら
天使としては、それを無下にする事もできない。
その頃、めぐに魔法使いの
能力が萌芽し
魔法のエネルギーは、天界のそれと
相容れなくて。
天使さんは、ちょっと困ってしまって。
めぐは、それを知り
魔法を封印した。
魔法使いとしての能力を封じれば
天使さんを宿したまま、生きられる。
そう思っていた。
でも、魔法使いルーフィに恋しているめぐ、は
ルーフィの世界に旅する為に、魔法が必要で・・・・。
それを諦めためぐ。
でも、その時既に
天使を辞めて(笑)。
クリスタさんは、人間の世界に
人間でもなく、天使でもない者として
降り立った。
そんな、3人の関係・・・・・。
それぞれに、思って。
なので、めぐの危機を
にゃごは、猫として救ったのだった。
クリスタさんは、めぐの危機を
身を呈して守ったし、めぐは
能力で、クリスタさんを救った。
友達っていいな。と
めぐは、思ったりする。
ケルト・クロッシング
#include <stdio.h>
int main()
{
double date = 10; /* 日 */
double keisu = 4.5; /* 係数 */
double locus; /* 軌跡 */
double pointa; /* 場所*/
keisu = locus * 2 + pointa;
date = keisu / pointa * locus;
printf(" 日 = %f\n", date); /* double を表示するには %f */
return 0;
}
なんて、めぐは星占いプログラムの一部を思い浮かべる。
これって、ほとんど魔法みたいに見える(笑)。
めぐから見ると、18世紀の魔法の方が難しいんだけど。
文化ってそんなものだ。
慣れていると、なんとも思わないけど
馴染みの無いものは、難しく思う。
馴染んでしまえば、なんでも出来る。
そんなものだと、めぐは
若々しくそう思った。
心は年を取らない。
自分でダメ、と思わなければどんなことだってできるんだ。
そう、めぐは思った。
「これを魔法にすると・・・・。」めぐは考えた。
コンパイラーさんが、機械の言葉に置き換えたものを
ふつう、パソコンは読んでいる。
なので、同時通訳(realtime/compile)ができるものが
魔法で呼べればいいんだ。
そうして、このプログラムを人間の言葉で置き換えれば・・・。
コンピュータとお話もできるのね。
すごい発明(笑)。
「ルーフィさんに聞いてみようっと。」と
めぐはにこにこした。
一方のルーフィは、まだ
お父さんとお話をしていた。
おばあちゃんと、お母さんと。
話をしながら、考えていた。
最初に、向こうの世界で出逢ったMegは、たぶん、この世界のめぐと
同じような家系である筈だ。
別の時空だとは言え、そこまで異なるとは思えない。
だとすると・・・・。
「お父さん、何か、古文書とか、家系図とかで
海の向こうのイギリスや、アイルランドとか・・・・関係ありませんか?」
と、ルーフィは尋ねる。
そういえば、女の子にマーガレット、と名づけるセンスも
どちらかと言うとイギリスの田舎ふう、だと思ったので
ひょっとしたら、移民なのではないかと思ったのだ。
「さあ・・・・とても昔の事だと思います。
わたしたちは、ずっとこの国で生まれ育ったので。
戦争が起こった時、敵国だった筈ですから
そのずっと前の事でしょう。」
「なるほど・・・・・。」ルーフィは納得した。
その時移民だったなら、迫害されていただろう事は
想像できる。
同じく合衆国のアメリカで、移民はかなり辛い生活を強いられたりした。
レッド・ゼペリンの「移民の歌」が、アメリカで人気を博した理由のひとつでもある。
それを唄ったのがイギリスのバンドだったのだが、おおらかなアメリカンは
そんなことを気にしなかった。
それは単なる移民だったからで、外国人とのハーフ、と言うと
また別だ。
ジョセフ・レスリー・サンプル、アメリカ南部の、クルセダーズでピアノを担当していた
彼は、ハーフだったので
そのサウンドも、どこか憂いのある趣深いものが多かったりする。
そんな事を連想するルーフィだった。
なので、めぐ一家が移民だったとしても
それはかなり旧い話。
だとすると、ルーフィ一族と
18世紀あたりにイギリスで遭遇していた可能性もある。
「そう・・・・でも、引っ越しちゃったから。」と、おばあちゃんは
穏やかに微笑みながら。
引っ越す前の家は、公園のそばだったと
聞いた。
そこから引っ越す時に、もし、どこかに古文書があっても
置き忘れてきたかもしれない・・・・と。
おばあちゃんは、なぜかタロット・カードを持っているが
エジプシャンではなく、ケルト十字法を用いる。
ケルト、つまりアイルランド・ブリテンへの大陸からの移民である。
考えすぎだろうか?と
ルーフィは思い、でも
どこか、確かめたい気持もあったり。
探偵魔法使いさん
それなので、ルーフィは
もとの世界に戻るのを、少し遅らせて(笑)。
お酒飲んじゃったのもあるけど。
夜遅くになって、屋根の上、いつものように
お空を見てて。
星の綺麗な夜。
微かに、潮風が香る山の手の
この家。
空中に、すぅ、と円を描いて
この家を、サーチした。
どこかに魔法の雰囲気がないかな。
古文書の置き忘れとか(笑)。
残念だけど、見つからない。
屋根の上、三角の稜線に
にゃごが、ひょい、と。
「いい夜だね。」と、ルーフィは言う。
にゃごは、黙して語らないのか・・
それとも、ルーフィの言葉がわからないのか。
こころで語ってみたが。
そのあたりはわからないけど
でも、にゃごはいい奴だと言う事は解った。
クリスタさんや、めぐの為に
尽力した。
それでも、別にそれを誇るでもなく。
平然としている大物だ(笑)
いや、猫なので
そう見えるのかもしれないけれど。
もともとは人間で、悪魔になった経歴を持つ彼は
落ち着き払っていた。
そのあたりが、美人猫さんに限らず
若い雌猫さんに、人気の理由でもある。
にゃごは、静かにルーフィを見守っていた。
ルーフィは語る。
「なぜ、めぐは魔物に狙われたんだろうね。」
独り言でもなく。
にゃごは、黙していた。
時系列で言うと、彼が前々生、人間をしていた頃の話だから
知らないかもしれないのだけれど。
ただ言えるのは、言い訳のように
めぐを助けた訳ではないのだろう、と
言う事なんだけど。
迷探偵ルーフィ(笑)
その、かつてめぐの
家があったところ。
大きな屋敷だったので
今は、いくつかに分けられて
家が、建っていたりする。
それは、時代の流れで
仕方ないのだけど
土地、と言うものは
元々、誰のものでもないのに
それを、売買の対象にしたりするので
ギャンブルの対象になって。
借金をして土地や建物を買って
値上がりしてから売って。
借金を返しても儲かる。
それで、買う人がいなくなって
売れなくなって、みんな損した(笑)。
そんな時代もあった。
アメリカでは、それで証券会社が潰れたりしたが
なぜか、日本の大物政治家の孫が
アメリカの、その証券会社に居たりして
話題になったりしたものだった。
どうして話題か、と言うと
政策が、そういうギャンブラーに
流れてしまうと、お金儲けも可能。
でも、相場には勝てなかったりする。
それは、アメリカと日本の間の事で
この国には関係ないけれど。
真似してお金儲けしようとして
この家のあった土地、さほど広くは無かったが
その土地は、4つに分けないと買えない程
土地の値段が高くなった。
どうしてそうなったか、と言うと
ギャンブラーたちが、この国にも
アメリカや日本と同じ事を起こそうと
そう企んだ。
それは、欲望を煽る魔物が
人の心に憑依していたから。
そしてそれは・・・魔王の手下の
者では、無かったらしい。
なぜなら、悪魔でさえ辟易として
食あたりするような、人間の欲だった(笑)。
そんな事を思いながら、ルーフィは
公園通りにある、古い家の敷地を
スコープして、探してはみた。
でも、古文書の忘れ物なんて
土の中に埋まってるはずはないし(笑)。
少し、時間を逆戻りしてみる事にした。
相対性理論と魔法
場所、つまり座標が
変わらないなら
時間を巻き戻すのは、そんなに
難しい話ではない。
v2=v1+atと言う
一般的な物理、運動法則そのものだ。
もともと、地球の自転に沿って
地上のものは皆、動いている。
その速度から、加速を行い
光の速度を超えれば、時間はマイナスになる。
自分自身が動いているから、時は
相対的なものだ、と言う
アルバート・アインシュタインの説は、そんなものだ。
動いているもの、例えば
近づいているパトロールカーのサイレンの音は、高い音に聞こえ
遠ざかるそれは、低い音に聞こえる
ドプラ効果、それは音が波なので
近づきながら波が発すると、波が縮んで高い音になる。
それと同じで、光も波であるから
空間上のふたつの点の距離を
光で測定し、その間を移動する時間を光速度で設定した時の
時間は、光速を超えれば縮んでゆくし
その2点が、正しく1次元的である保障はなにもない。
アインシュタイン自身も、重力場付近では光は直進しない事を認めている。
つまり、宇宙は必ず複数の重力場があるので
光は曲がっている。
その歪みを捉えると、時間も空間も4次元的に変形するのだ。
それで、距離と時間を設定した場合、そうなる。
それを設定すればいいのだ。
探偵ルーフィは(笑)そうして
計測した数値を魔法陣に書き込んだ。
歪んだ空間を利用して、時間が逆転する加速を得る。
すう、と空間が歪み
一瞬にして4次元的に、時刻が戻る。
それは成功した。
・・・・・しかし、目前に出現した
かつてのめぐの家屋敷、それをサーチしてみても、過去に纏わる
古文書のようなものは発見できず(笑)。
「エネルギーの無駄だったか。」
と、ルーフィは思う。
考えてみると、移民であったら
そのような文書を持って移動せずに
母国のどこかに置いてくるか、信頼できる所に預けてくる、かもしれない。
「荷物、あるだろうしなぁ」(笑)。
徒労であった。
推理は足だね、迷探偵(笑)。
むだ足もあるが。
夏休み
その次の朝、ルーフィはすこし寝坊をして。
探偵さんが疲れたのかな(笑)。
もう、おひさまが高くのぼって
せみの声が聞こえる頃、
のこのこと、猫のように起きてきた。
それで、遅いブランチをとって。
お母さんと、お話。
「めぐちゃんは、どうしてますか?」
お母さんは、さあ、と、にこにこひとこと。
キッチンを片付けながら。
そんな様子も、どことなくのんびり。
「図書館に行ったのかしら。」と。
そうか。
クリスタさんと一緒にね。
今日、向こうの世界に行くとは
行ってなかったから。
本、好きだもんね。めぐちゃん。
ーーーー
めぐは、その頃
クリスタさんと一緒に図書館。
カウンターで、本を返す人、借りる人。
朝のうちは、なぜか多いので
クリスタさんのお手伝いをして。
その後、こども達へ
絵本を読んであげる、そんなコーナーへ。
クリスタさんが、お歌を歌ってあげて
こども達が喜んでた、あのコーナー。
「ゆきのひとひら」も、もちろんある。
あの、岬の家で
取り替えてきた(笑)あの本だ。
それを手にとって見ると、めぐは
懐かしくなった。
絵本の角は、少し擦れていたりして。
そのあたりも、どことなく思い出。
「いかがなさったの?」と
クリスタさんは、絵本を見ているめぐの背中から。
「いろいろあったな、って。」と
めぐは振り向いて、絵本を手に。
クリスタさんに微笑む。
クリスタさんは「そうですね」、と
微笑んで。
「岬で、どんな事があったのですか?」
と。
詳しく話していなかった。
その時、ちいさな子が「ご本、読んでー。」と
めぐのエプロンをつかむ(笑)ので
めぐは、「ゆきのひとひら」を
読んであげた。
ふかふかのクッションのある
こないだのコーナーで。
「ゆきの、ひとひらさんはね、
おそらから、舞い降りるの。
雲のあいだで、生まれるの。」
と、めぐは、絵本と一緒に
めぐ自身が、絵本の中で見た景色も一緒に。
「おそらの、どのあたり?」と
ちいさな子は、夢見るように。
「ずっと、たかいあたり。」
窓の外の、夏雲さんを見て
「あのくらいかしら。」と
お日さまに照らされて真っ白な
雲へ。
めぐの気持ちも広がる。
絵本の中の、雲のお昼寝は
ふかふかで、のんびりで。
また、行ってみたいな(笑)なんて。
それから
ちいさな子は、めぐが
お空を見ているので
一緒に、見上げてた。
「あの、お空から来るの?」と
思ってるのかしら。
まるい目で。
「そう、今は夏だから、ひとひらさんは雲の中。
降りて来る時に、雨になってしまうのね。」と、めぐは
溶けてしまう、雪のひとひらの
お話の先を思い出して。
「どうして?あついから?」と
その子は、たずねる。
めぐは「そうね。寒くなると
溶けちゃうのね。かき氷みたいに。
かき氷、好き?」と、めぐは
微笑みながら。
その、ちいさな子は、うなづいて。
そっか、そうなんだ、と
めぐは、その子を撫でなでして。
「お空の、高いところは寒いの。
あの、白い雲さんは、みんな氷の粒なのよー。真っ白でしょ?」と。
その子は、不思議そうに
「こんなにあついのに?溶けないの?」
そう問われて、0/6t/1000m、と言う
物理の気温・標高関係式を
思い出しためぐ、だったけど(笑)
ちいさな子にそれを言っても(笑)。
なので、「高いところはだんだん、涼しくなるのね。お山、登った事ある?」と、めぐはその子に聞く。
その子は、こっくり、と、うなづく。
「涼しかった?」と聞くと
その子は、うんうん。と、にこにこして「どうして涼しいの?」と。
めぐは、PV=nRT
の気体状態物理式を連想したが(笑)
子供に解るはずもない(笑)。
なので「高いところはね、宇宙に近いから。」と言って置いた(笑)。
すると、その子は
「うちゅうって、どうしてすずしいの?」
(笑)
子供の知識は旺盛である。(笑)。
曖昧にできない、めぐ(笑)。
そこで「おひさまの光がね、暖かいって思う時、どんな時?」と、その子に尋ねる。
その子は、うーん、って考えて。
「当たってる時。」と、にこにこ。
めぐも、にこにこして「そう。宇宙には、おひさまの光があたるものがないのね。真っ暗でしょ?宇宙って。」と、宇宙中継の画像を思い出して(笑)。
その子は、しばらーく考えて「ここには、何かあるの?」と。
めぐは「そう、みんなが吸ってる空気があるのね。それに、おひさまが当たって、あたたまるの。
海もあって、山もあって。
海が温まると、お水が、だんだん・・・・。」
と、言って。「ゆきのひとひら」の
後ろのほうのページ、水蒸気になって空に昇り、雲になる絵を見せた。
その、ちいさな子は、不思議そうに
そのページを見ていた。
「ごほんのつづき、よんで」と
絵本の間のページが、気になった(笑)。
瑞々しい気持ち
「ゆきのひとひら」のつぎのページは
スノー・フレイクさんが、雪の原へ舞い降りて
ゆきうさぎさんに出会うところ。
めぐは、クッション・フロアにあるソファーに腰掛けて。
絵本をひろげて。
ちいさなその子は、いつもそうしてるのか
絵本の前に立って。
そうすると、ちょうど絵本が目の高さくらい。
めぐは、その子をおひざに乗せて絵本を読もうかな、と
乗っけてみたら結構重い(笑)ので、おひざの隣のソファーに、下ろして。
・・・・・おかあさんって、頑丈なのね(笑)
なんて、めぐは思った。
それは、自然と丈夫になるんだけど。
「ゆきの、ひとひらさんは・・・まっしろな、ゆきのはらに
まいおりました。
あたり、いちめん・・・・・まっしろです。」と、めぐが言うと
ちいさな子は「みんな、ひとひらさんといっしょなの?」と聞きます。
「そうね、みんないっしょね。」と、めぐは、微笑みながら。
ちいさな子は、めぐを見て、にこにこします。「いっぱい、おともだち。」と。
おかあさんがそう言ってるのかな・・・・?なんて、めぐは思いながら。
「ゆきのはらの、むこうから。
ゆきうさぎさんが、さく、さく・・・・・って。
丘の向こうから、やってきます・・・。」と、めぐが言うと
その子は、悲しそうな顔をして。
「どうしたの?」と、めぐが言うと
ちいさな子は、涙ぐみました。
どこか、具合でも悪いのかな・・・?と、めぐが思って
おでこに手を触れると「かわいそう・・・・ゆきうさぎさん。
ゆきの、ひとひらさんのおともだち、ふんじゃって。」と、ちいさな子は
泣きそうです。
ああ、そうか。と。
めぐは気づきませんでしたけど、お話だから、と
ゆきの、ひとひらさんと一緒の雪だったら。
うさぎさんに踏まれたら、それは痛いでしょう。
ちいさな子に、学んだ気がしました。
よしよし、と
めぐは、ちいさな子を撫でなでしました。
優しい、いい子ね・・・・・。そう思いながら。
でも、その子の瑞々しい感性を、壊さないように
理由を考えなくては(笑)。とも、思いました。
魔法使いさんの気持
でも、その方法は見つかりません。
ちいさな子に、物語、お話だからって言っても
たぶん、分かってくれない。
そんなふうに、めぐは思いました。
童話を、やっぱり
幼い頃、めぐは読んでいて
不思議に思ったりした事があったりしました。
硝子の靴は、重くて割れなかったのかしら(笑)とか。
かぼちゃの馬車って、重そう(笑)とか。
そういうところは、夢のあるお話なのですけれど。
思い出すと、不思議に微笑んでしまう、めぐ、でした。
幼かった頃、絵本の世界に入り込んだ夢を見たりした事を
思い出して。
「そうだ!」と、めぐは思いつきました。
昨日、絵本の世界に二次元になって、行ったんだもの。
この子と一緒に、行けないかしら?
同じ気持になれば・・・・。
めぐは、「ゆきのひとひら」の、絵本の次のページを
見て。
一緒に絵本を見ている、ちいさな子を連れて行きたいっ、って
思いました。
まだ、涙ぐんでいるその子を、撫でたまま。
flash!!
ゆらり、と
地面が揺れたような、いつもの感じで
陽炎を見ているように、周りが揺れ・・・いいえ、揺れているのは
めぐ自身でした。
一瞬の間に、めぐは
その、ちいさな子と一緒に。
「ゆきのひとひら」の
2ページ目に、2次元モデルになって入り込みました。
めぐは、2回目なので
どうってことないけれど。
その子は、ちょっとびっくり。目を丸くして
雪の原に、立っています。
でも、少しも寒くないんです。
絵だもの(笑)。
ゆきのひとひら、スノー・フレイクさんは
「いらっしゃい、めぐさん。おかえりですね」と。
ちいさな子は、びっくりしてあたりを見回しています。
そして、自分が靴下のまま、雪の原に立っているのに
足が冷たくないし、雪もぜんぜん、へこんでもいないのです。
なんたって2次元モデルなので(笑)。
それを見て、ちいさな子は、ちょっと不思議な顔で
足元の雪に触れました。
「だいじょうぶ?」と尋ねるように。
雪の、さらさらした結晶たちは
何もかたりませんけれど
つぶれてもいないし、砕けてもいないのです。
それが不思議、だったけれど
ちいさな子は、とりあえず
悲しい事は、ここでは起こらない。
そういう事が分かりました。
「ゆきのひとひら」の中の世界は、本当の、雪山とは違う。
その事に気づいて、悲しくはなくなりました。
そう思うと、雪の原に寝転んだりしました。
「遊んでみたかったのね」と、めぐもにこにこして
一緒に、寝転んだりしました(笑)。
ゆきうさぎさんは、丘の向こうに
おミミだけをのぞかせています・・・・。
いつも、慣れている世界。
それが、想像と違う事は結構あったりします。
めぐは、その事に気づきました。
絵本を見ていても、いろんな感じ方があるんだな、って。
物語を読むのに慣れていると、リアル・ワールドと違う事を
いつの間にか忘れていたりもして。
それで、ふと思ったりするのは「ルーフィさんは、魔法使いさんだから
いろんな世界を、それぞれに知っていて。
ルーフィさんの世界って、どんなところなんだろう?」
物語を書く人は、物語の。
音楽を作る人は、音楽の。
料理を作る人は、料理の。
その人の「この世界でなくちゃ」って基準があるんだろう。
そんなふうにめぐは思います。
それは、ひとそれぞれ。
「たぶん、ルーフィさんの・・・魔法使いさんの気持は
魔法使いにならないと、分からない。」
そんな風に、めぐは思って。
その世界への憧れを思います。
ちいさな子
「でも、ほんとだったら。」
寝転がって、お空を仰いで
ちいさな子は、言いました。
「お友達は、助けてあげないと。」
と、ちいさな子は言いました。
めぐは、にこにこして
「うん。そうだよね。」
そう言って、一緒に空を仰いで見ても
本物の空とは違ってて。
舞台の背景みたいで。
・・・・・あたしたちの世界も
時間旅行ができるようになったら
こんな風に見えるのかしら・・・・。
ふと、めぐは
そんな風に思いました。
もっと広い世界を知ったら、
今の世界が、狭く見えてしまうのかも・・・・。
めぐの世界は、3次元の時空なので
4次元の感覚を知ると、確かに
狭く感じるかもしれない。
「でも。」
ここ、今居る2次元も
そこから出なければ、それなりに
幸せなのかしら。
そんなふうにも、思う。
お友達が困る事もない、悪い事も起こらない。
物語の中の世界に住むのも・・・・
それは、それで悪くないのかしら。
めぐは、昔読んだお話を思い出しました。
お話が好きで、いつもお話を読んでいる女の子が居て。
なぜか、本を取り上げられてしまいます。
女の子は、目を錘って
夢を見る事で
想像の世界を楽しむのです・・・・。
それは、想像だから4次元。
「たぶん、ルーフィさんたちの世界はそういう・・・・。」
世界なのね。
そう、めぐは思いました。
現実の、3次元時空。
お話の、世界。
それは、めぐも知っている。
「ルーフィさんたちは、3次元時空を
飛び越えて4次元の旅ができるのね。」
それは、たぶん自由な事なんだろうな、と
めぐは思いました。
ふと、となりでお空を見ている
ちいさな子の気持ちを連想しました。
・・・・お友達が困ってたら、助けなきゃ。
自然な気持ちで、そう思うでしょう。
それで、ゆきうさぎさんに踏まれちゃう雪、が
かわいそう、って思ってる。
優しい子。
ずっと、そんなふうに
優しくね。
ホントの世界は
いろんなひとが、それぞれに。
生きてるから。
・・・・たとえば、同じひとを
好きになったりして。
つらい事もあったりするけれど。
そんな時、優しい君は
心のささえになってあげてね。
そういうひとがいると、助かるひとも
いるから。
ふと、めぐはリクルートさんを
思い出します。
・・・・どうしてるのかしら・・・・。
なんて。
ふたりの記憶
めぐは、そこで気づく。
「リクルートさんは、幸せにしてるはず・・・・。」
その、リクルートさんとは
神様が、この世界、めぐのいる時空の
粛正をなさる前。
人々が、欲望の為に争っていて。
それで、学校を卒業しても
働く事ができなくて、途方に暮れていた。
そんなひと。
でも、ルーフィと神様が
そういう、必要のない争いを起こす
心を、お掃除((笑))してくれて。
リクルートさんは、リクルートに困る事なく(笑)
「そう、そんなふうに・・・・。」
ルーフィさんは、いくつもの世界の
記憶を持ってしまうのね。
そう、めぐは思った。
そういう記憶が、ひとの性格を作るなら
ルーフィは、けっこう複雑な性格なのね((笑))と
めぐは思ったりする。
「恋人も、あちこちにいるんじゃないかしら」なーんて。
めぐが、そんな事を考えていると
となりのちいさな子は、ゆきのひとひらさんと、お話をしている。
「これから、どうなっちゃうの?」と。
ひとひらさんは、やわらかいことばで「春になってね、みんなと一緒に
雪とけして。
川になって、海に行くの。」
ちいさな子は「みんな、いっしょに?」
ひとひらさんは「そう。さっき、ゆきうさぎさんが踏んじゃった子も。
ごらんなさい?踏まれても、ふわふわだから。また、雪の原に戻ってる。」
と、ひとひらさんは
元通りになっていて、足跡がなくなってる雪の原を振り返って。
ちいさな子は、にっこり。
「ほかの、ゆきちゃんたちと
お話できるかなー。」と。
ひとひらさんは、にこにこして
「はい。そばに言って、お話すれば、お返事するわ、きっと。」
ちいさな子は、雪の原で
寝転んで。
なにか、お話しているみたいですーー。
take on me
その本「ゆきのひとひら」は
めぐが、ちいさな子に読んであげていた
ソファに、横になったまま(笑)
読んでいためぐと、ちいさな子が
いなくなって。
本の中に入ってしまったので、それは当然。
クリスタさんは、その本を見つけ・・・・
「ひょっとして?」と思って。
本を見開き、2ページ目を見ると
やっぱり。
めぐと、ちいさな子が一緒に
雪の原に寝転んでました(^^)。
「あらあら・・・。」天使さんだった、クリスタさんは
事情をすぐ理解しました。でも。
ちいさな子のお母さんが、探してるかもしれません。
本の中に入っちゃった、なんて言える訳もないので(笑)。
2ページ目で、寝転んでいるめぐに「めぐさーん、出てきてくださーい」と
小さな声でささやきました。
まわりにいる誰かに、気づかれると困ってしまうし。
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めぐは、気づいたみたい。
「あ、そうね。」と
こっちに、ちいさな子を誘拐してきたのは(笑)
ちょっと失敗だったかしら、って。
そう、思いました。でも。
「どうやってここに来たんだっけ?」
はた、と
振り返っても、よくわかりません。
・・・・・・この子に、物語を見せてあげたいって。
そう思って。
その一心で、「ここに来たい」と思ったから
こっちに来れた。
帰らなきゃ。
そう思うだけだと、ダメなのかしら・・・・・。
絵本の世界を、ちいさな子は気に入ってるみたいだし・・・・。
困ったなぁ。めぐは思いました。
「ルーフィさぁーん、助けてくださーい」(笑)。
クリスタさんも、絵本を持ってそう思ってました。
「ルーフィさーん」(笑)。
でも、こっちは3次元の世界なので
電話もあります。歩く事もできます。
「ゆきのひとひら」が、ひと目に触れないように(笑)
胸に抱えて。
児童図書館の、読み聞かせコーナーの角から
ロッカールームの方へ行って。
めぐのお家へ、電話を掛けました。
ルーフィが、まだ家に居れば・・・・。と。
E=mc2
めぐの家、片付けちゃった屋根裏の
もと、自分の部屋でごろごろしていたルーフィ(笑)は
クリスタさんからの電話を受けて。
お昼寝してた、にゃごも
起きてきて。
背中を反らして、伸びひとつ。
あーあ、とあくび(笑)。
そんな様子は、ふつうの猫だけど。
にゃごは、元々人間だったし
元は、悪魔くんだった。
そんな前世は、どこにも感じさせない。
でも、何かあると途端に素早かったり。
今回は、ほとんど何も感じていない(笑)。
あんたの出番さ、とでも言いそうな
そんな顔つきで、ルーフィを見るが
元々、猫ってそんな顔つきなのだ(笑)。
敵意がある訳でもない。
ルーフィも、話を聞いて
「こんどは、こっちから行くかな」と
絵本のある場所を教わったので
とりあえず、図書館の屋上に
瞬間移動した。
距離Sを算出。加速度aは容易に求められるので
S=V1t+1/2at2より変形し。
座標を設定した。
びゅん、と一瞬で図書館の屋上に
移動できるのは
4次元空間を辿って進むから、だ。
見かけ、この3次元空間は
一様にあるようで
ところどころ、4次元の時空間が存在している。
そこは、時間軸が伸縮するし
光の速度を超えれば、同じ効果も得られる。
しかし、図書館の屋上から
館内に入る扉は、鍵が掛かっていて
入れなかった(笑)。
「まいったなぁ」。
と、ルーフィは言いながらも。
どこか入口がないか、探した。
「やれやれ」と、
ルーフィの様子を案じた、にゃごは
クリスタさんに、気配を伝えた。
クリスタさんは、さすがに
元天使さんなので
のんびりしていても、気配には敏感。
「ゆきのひとひら」を抱えて。
屋上へと向かった。
地震かしら
本が、とつぜん!
揺れはじめたので。
本の中のみんなは、驚いた。
ゆきうさぎさんも、ひとひらさんも
この感じには、慣れてるみたい。
それはそうかな(笑)。
本って、たいてい
誰かが持ってるものね。
でも、めぐと、ちいさな子は
地面が揺れるのには慣れていない。
もともと、人間だから。
木の上で暮らしていた、遠い祖先が
平衡を感じ取れるように、と
持っていた感覚器官のおかげで
水平、と言う感覚がよくわかる。
代わりに、地面の揺れには
敏感になってしまう。
こういう時、本の中に住んでいると
便利かもしれない。
そういう事には、あまり関せずに住む。
本を持ったクリスタさんは、エレベーターに乗って。
屋上へ登る、階段へ立った。
「どこかしら・・・・・。」
とりあえず、一番近い鉄の扉、オリーブに塗られたその扉は
普段、お客さんがこない場所なので
とても簡素だ。
ステンレスの握り手は、ややひんやり。
真っ暗な踊り場から、扉を開くと
まばゆい夏の陽射しが、クリスタさんと
「ゆきのひとひら」に
降り注ぐように。
「ルーフィさん、どこかしら」
開いた扉の音を聞いて
ルーフィは、エレベーター・ホールの
機械室の上から、降りた。
舞い降りた、と言う方がいいかもしれない。
瞬間移動のように、座標を変えているので
ふんわりと、3次元的な物理の法則には沿わずに
降りていく。
つまり、重力加速度には沿わない
無重力っぽい感じで。
クリスタさんは、舞い降りる
ルーフィを見つけ「ルーフィさん!」
「やあ、おはよう」と、ルーフィは
のんびり。
それもイギリス流ウイットだろうか。
「ゆきのひとひら」を見て・・・・。
「この本好きだなぁ、めぐちゃん」と
言いながら、空中に魔法陣を書いて。
自分も、本の中に入った。
2次元モデルではなく、3次元のまま、小さくなって。
そうすれば、本の平面に囚われず動けるのだ。
いきなり、空から現れたルーフィに
ちいさな子は、びっくり。
めぐは、喜んで。「ルーフィーさーん!。」
でも、2Dのままのめぐは、空中のルーフィーには届かない。
「さあ、出よう」と、ルーフィーは
手を差し延べて、元来た空中へと後退した。羽根が生えてるみたいな、空中エレベーターみたいな
不思議な動きだ。
手をつないだ、ちいさな子と
めぐ。
ルーフィーに引かれて空中へ。
本の2次元平面を出る時、3次元になる衝撃が少しあるのだけれど
それも、ちょっと不思議な感覚。
自分が、空気の入りはじめた風船みたいに、すー、って。
ふくらんでいくのは、おもしろい感じで
たぶん、魔法使いさんしか知らない
感覚だろうか。
屋上のクリスタさんは、その様子を
楽しそうに眺めていた。
天使さんでも、2次元モデルの3次元実体化は、見た事がない。
絵が、ふわふわ
実体になっていって。
ゆらゆら、ルーフィーに引かれて
屋上に舞い降りる。
描かれた魔法陣が、消える。
ルーフィーさん!
「ルーフィーさん!」とめぐは
涙ぐみそう。
いつもいつも、助けてもらってる。
なんだか、迷惑ばっかりで。
あたしだって、ルーフィーさんに
なにか、してあげたいのに。
そんな気持ちは、気持ちだけで(笑)。
ぜんぜん、ちがう事してて・・・・。
そう思ってる間もなく「めぐちゃん、この坊や、お母さんが探してるんじゃ・・・・。」
と、ルーフィー。
「あ!そっか。」
それに、靴下のまま。
抱っこするには、ちょっと重い(笑)。
「僕が」と、ルーフィーが坊やをだっこ。
「よーし、肩にのっけちゃうぞー。」って
坊やも楽しそう。
「無事で良かった・・・・。」って、クリスタさん。
「とつぜん、いなくなってしまったから。」と、そこまで言って、クリスタさんも
「あ、坊やのお母さん。きっと、探してる・・・。」
そう言って、ルーフィーの肩で
にこにこしてる坊やと一緒に。
階段への扉「頭、気をつけてー。」
と、ルーフィーは背が高いから。
坊やの頭のあたりは2m以上(笑)。
あぶなく壁にぶつかるとこだった。
「でも、坊やに魔法を見られちゃって大丈夫かしら?」と
クリスタさんは、思う。
ルーフィーもめぐも、それは気にしていないみたい。
本当は、誰かに見られちゃうと
魔法ってダメ。
効き目がなくなっちゃう。
「ちいさな子なら、平気なのかしら・・・・・。」
めぐは、さっきから
少し気になってた事がある。
ひとりで、絵本コーナーにいた
この子。
お母さんは、気にしていないの?
けっこう時間経ってたから。
こんなにかわいい子が、いなくなってたら
心配・・・・なんじゃないかしら。
エレベーターで、みんないっしょにに
1階、児童図書館に降りたけど
お母さんっぽいひとは、見当たらなくて。
でも、この子も平気みたい。
ひとりで楽しそう。
ガードマンのおじさんが、巡回に来た。
紺色の制服、帽子もしっかり。
日焼けしてがっしり。頼りになりそう。
ルーフィーを見て「やあ、今度は子守・・・・?」と、にこにこ。
日焼けしてるから、白い歯が際立つ。
ルーフィーも「昨日はお騒がせしました。モペッドも、ありがとうございます。」と
おじさんは、いえいえ、と笑顔。
「この子のお母さんは、探してませんでした?」と
ルーフィー。
おじさんは、不思議そうにかぶりを振る。
君の子じゃなかったのと、笑いながら
ガードマンのおじさんが言うので
めぐは、なんとなく恥ずかしくなった。
いえ、ガードマンのおじさんは
めぐの事は何も言ってない(笑)。
めぐが、勝手に恥ずかしいと思ってるだけ(笑)。
・・・・・こんなふうに、坊やと一緒に
ルーフィーさんとお散歩、なんて・・・・。
そんな事があったら、いいのにな。
想像して、恥ずかしい(笑)
ルーフィーは不思議そうに
「なに赤くなってんの?」(笑)
坊やを、児童図書館の
絵本コーナーに下ろして。
「やれやれ、重かった」と(笑)。
「でも、お母さんどこ?」
と、ルーフィーが言うと
めぐは、恥ずかしくてふわふわしてた気持ちが
急に醒めたりして。
「心配ね」と。
恋はみづいろ・リクルートさん
しばらく、そのまま
坊やと一緒に、児童図書館にいた
ルーフィと、めぐだった。
クリスタさんは、お仕事、お仕事(笑)。
貸し出しカウンターの仕事をしたり。
返却カウンターの仕事をしたり。
お昼近くになっても、坊やのお母さんは来なかった。
絵本を見て、おとなしくしてる坊やは、にこにこ。
「本が好きなんだね。」と、ルーフィは、のんびり。
めぐはちょっと心配。「このまま、お母さんが来なかったら・・・・。」
ルーフィは楽観的に「そんなことないさ。坊やが、にこにこしてるもの。
いつも、絵本を読んでくれる人がいて。
たまたま、調べ物でもしてるんじゃない?」
そう、めぐの
心配も、根拠のないものだから。
ルーフィみたいに、のんびりと構えていても
結果は同じかもしれない。
お昼のチャイムが、響く。
図書館の、ではなくて
街の、ところどころにある
市民放送のチャイム。
その日は「恋はみづいろ」が
流れていた。
ポール・モーリアさんが
軽音楽にアレンジして、さわやかなサウンドで
ヒットした曲だった。
それは1960年代の話で、ルーフィとMeg、もうひとりのMegは
ここに来る前、向こうの世界で
タイム・スリップ、ほんとうにスリップして(笑)
1977年の、ポール・モーリアさんに出逢ってしまって。
その曲のリプロダクション「恋はみづいろ’77」のアレンジ・デモセッションに
参加したのだった。
そんな事を、ふと、ルーフィは思い出す。
けれども彼の記憶は、断片的なので
そう、4次元の旅を繰り返していると
どこの記憶で、誰の記憶が曖昧になってしまう。
もうひとつ、「どこの時空」と言う座標が加わるから
ふつうの人は「自分の居る世界、記憶の空間、記憶の時間」が
一直線に並んでいるのに
魔法使いは、そういう不思議な記憶を持っているのだ。
ふとした事で、記憶が蘇ったりするけれど、この時みたいに。
結構フクザツで(笑)。魔法使い同士が結婚して
その性質を遺伝的に継承したら
面白い、物語が書けそうな気もする(笑)なんて
ルーフィは思ったりもした。
「紙の本じゃむりかなー」なんて(笑)。
恋はみづいろ、のチャイムは
結構長い。
それが流れている間に、めぐも
いろんなことを思った。
この曲って、もともとは歌だった。
歌詞がついてて。
みづいろの、
空と海みたいな恋人、だけれども
愛し合っても水平線で分かれてて。
それは、越えられない・・・・。そんな歌詞。
なんて、めぐは、ルーフィと自分の
隔たりみたいに思うのだった。
「歌詞がない楽曲だから、ヒットしたのかしら。」なんて
たおやかなメロディだけを聞いて、そう思うめぐ。
その視線の端に・・・・・・どこかで見かけた若い女の子。
「あ、あなたは・・・・!。」と、言い掛けて言葉を収めた。
それは、いつかのリクルートさんだった。
ふたつの人生
リクルートさんは、かつて
ここの屋上で、めぐに出逢ったひと。
初夏のことだったろうか。
その時の彼女は、学校を卒業しても
仕事がなく、それを悲観していて。
それは、当時の世界を
過剰に欲望を持った人達が動かしていたから。
お金もない、純真な彼女を雇うより
その場限りの間に合わせで済まそう、そういうふうに、会社を経営する方針が決まってしまっていて。
それは、世界中そんなかんじだったから、リクルートさんは
前途を悲観してしまって。
でも、神様は人々の欲望が
魔物のせいでひきおこされている事を知って。
魔物のエネルギーは、人々の欲望。
悪魔のエネルギーは、人々の悪意。
人々の欲望や悪意を煽る事で
それらをエネルギー源にしている
彼らが、人間界を乱している事を
ルーフィーたちが突き止め。
神様とルーフィーは、その状況を粛正する。
その時、時間軸を18年逆転させたので
リクルートさんが就職に困るような
状況は、最初からなかった事になった。
なので、
前途を悲観することがないので
最初から、リクルートさんは
屋上に行く事もなかったから
めぐに、出逢ってはいないはず。
・・・・なんだけど(笑)。
そういう事はよくあるので
たとえば、心理学のコトバで言う
既視感覚、なんて言う感じと間違えられていて(笑)
本当は逢っているのだけど、
記憶を上書きされたので(笑)
なーんとなく、見たことある人だな(笑)
ってな感じで、リクルートさんは
めぐの事を見ていた。
もちろん、めぐは
時間旅行をする人だから(笑)
その記憶は、忘れていない。
忘れたのは、魔物に襲われた記憶だけだ。
「あ、あの・・・・。」なんて言ったらいいのか、めぐは困った。
魔法使いのたまごの、めぐは
記憶が複数ある事に、なんとなく
慣れているけれど
ふつうの人、リクルートさんは
そんな事は思いもよらないだろう。
そんな事があれば、刑事ドラマでよくあるように
アリバイ、なんてものは
なくなってしまう
(笑)。
同じ時間に、複数の行動ができてしまうから・・(笑)。
そんな、複雑な思いで
めぐは、リクルートさんに声をかける事を躊躇っていた。
その思いは、ルーフィーには理解できる。
クリスタさんも。
とてとてとて・・・・・・。
絵本を読んでた坊やは、にこにこして
リクルートさんに、抱きついた。
「・・・・・・!」
それで、きっかけができた、と言うか(笑)
ちいさな子のパワーは、いつも
自由だ。
坊やは、にこにこ。
めぐが、躊躇っているあいだに
気持ちを案じ、ルーフィーが話し掛ける。
「失礼、この子をお探しではありませんでしたか?」と
イギリス流、クイーンズイングリッシュのルーフィーは
端正だ。
おかあさーん!
リクルーターだった、彼女は
「いえ、わたしは・・・・・2階の資料室で、調べものをしていたのです。」
ルーフィーもめぐも、彼女がお母さんなのかと思ってしまった(笑)。
でも、よく考えると
こんな坊やのお母さんにしては若すぎる。
めぐと、そんなに歳は変わらないのだから。
「じゃあ・・ひと違いか。」
ちいさな坊やなので、誰でも
懐いてしまったのだろう。
でも、めぐは
お母さん、って自分は思われてないのね(笑)と
ちょっと、にこにこ(笑)。
若すぎるお母さんには、ちょっとまだ・・。
お姉さんでいいの、まだまだ(笑)。
そうは思ったけど、リクルートさんは
それだけ、落ち着いてるのかしら?
なんて、すこい複雑だったりもする。
ほんの少しの歳の違い、なんだけど。
久しぶりにあった、お友達。
そんな気持ちになった。
でも、相手は覚えていないって
ちょっと、それは淋しいかも。
それで、めぐは連想する。
・・・・ルーフィーさんは、時々
そんな思いをしているのね。
異なる時空間を旅して。
記憶の中にあるはずの人に
出逢っても。
その人が自分を覚えていない。
出逢っていなかったりする。
それ以前に、自分の住む時空間が決まっていないのかもしれないし・・・・。
いまは、ここにいるけれど。
「どこで生まれて、いつ生まれたとか・・・。」
めぐは、何も知らないのだった。
その反動ではないけれど、リクルートさんに話し掛けた。
「よく、ご利用ですか?」と
めぐは、一応ここの臨時職員なので(笑)。
無難に。
ルーフィーも、その、めぐの気持ちは
なんとなく分かった。
「はい。蔵書が綺麗で、嬉しくなります。」と、リクルートさんは、無難に答えた。
朗らかな表情には、あの、前途を
悲観していた女の子の雰囲気は無かった。
いまは、世の中が安定しているのだ。
元々、若い人々に仕事が無くなったのは
この国の人々の欲望というよりは
外国の、たとえばアメリカのような国で
お金を会社に貸して、儲けを上げようとする人々の欲望であったりしたので
魔法の成果(笑)で
この国の国会は、外国の
そうした人々の
会社への経営参加を禁じた。
もともと、禁止されていたところを
この20年ほど、人々の心が
魔物によって欲望を煽られていたので
政治をしている人々が、お金儲けのために開放したのだった。
そのせいで、お金儲けにならない
新人の女の子の就職などは
「仕事教えても、すぐに結婚して
辞めてしまうから、教育はむだ」
と、判断されて
それでリクルートさんたちは
前途を悲観していたのだった。
でも、いまの彼女はそうではなくて。
調べ物をして、没頭できると言うような
恵まれた仕事を得たようだった。
「それだけでも、よかったな」と
ルーフィーは、魔法改革(笑)の苦労を思い出した。
めぐと、天使さんの命を救う為、とは言え
大胆な魔法だった。
政府高官や、大物政治家たちが
欲望に駆られないよう、神経回路を
磁気で遮断したのだった。
攻撃を司る神経、そのスイッチになる
神経内分泌物質を止め、代わりに
慈愛を司るホルモン、オキシトシンが
満たされるようにしたのだった。
磁界を持続させるのは、大変だった・・・・・。
いまは、もう必要がなくなったけれど。
「坊や、お昼ごはんね。」と
めぐが言う。
ルーフィーは、そのコトバで
我にかえった。
坊やのお母さんは、見つかってない・・・・・・。
魔法使いさんの心
「なにを食べるのかしら?」と、めぐは
坊やのお昼ごはん(笑)。のメニューを考えたり。
でも、図書館で食べられるもの?
「おかあさんなら、分かるだろうなぁ」とルーフィは言う。
でも、おかあさんは見つからない。
「どこ、いっちゃったのかなぁ。」と、リクルートさんも。
いまは、幸せなのだろう。見ず知らずの子供の事を
思いやるゆとりが、ことばに表れている。
無造作なようだけど。
自分が苦しんでいたら、ひとを思いやるゆとりの気持など
起こらないものだ。
それだけでも、ルーフィと神のした事は
よかったのだろう。
「朝から・・・いらしたのかしら。」と、クリスタさんは
大切な事に気づく。
「そういえば・・・・・あたしが絵本コーナーに行った時
もう、いたのよね・・・・。」
と、めぐは記憶を紐解く。
「それより、ごはん食べないと。」と、ルーフィ。




