12
Mission impossible
「あら、さむ。おもちゃにしないでー。」
と、お母さんは、にこにこ。
コンビニ袋を、回収(笑)。
それで、作戦は失敗(笑)。
かわいい、わんこのする事は
ほんとは、こんな理由があったり。
家族の靴下や、靴をコレクションしたりするのも
ひょっとして、そこに
こびとさんが、くっついているのを
わんこが発見して、助けたり。
そういう理由だったり。
したりすると、楽しい(笑)。
それはともかく。
さむは、作戦に失敗。
それを、ルーフィ司令(笑)に
伝えに行った。
ルーフィは、岬の松林の
公園で、冷たい珈琲などを
楽しんでいた。
ルーフィの足元にくる
犬の影が、少し足長に見えている。
気づくと、午後の陽射しは
柔らかく傾いて。
「どうでした?」と、ルーフィは
穏やかに微笑みながら。
失敗したのは、見れば分かるけれど
そんな時こそ、苦労を労うのが
イギリス流である。
感情的にならず、冷静なのが
ジェントルマンである。
007もそうだ(笑)。
さむは言う。
「本を運ぶのは、結構難しいです。たまぁが運ぼうとしても、重いので
本に噛み付いてしまう。
それでは、大切な本が
傷つけてしまうでしょう?」
ルーフィは考え「そうですね。
手を使えるといいんですけど」と
想像する。
さむが、手を使ってリュックサックに
本を詰めて。
背負って。
とっとこ、とっとこ。
それは、かわいいかも(笑)。
ルーフィは、さむに尋ねた。
「立てますか?」
さむは「はい。大丈夫です」と言うので
ルーフィは、「それじゃ、手が使える魔法を掛けましょう」
天を仰いで。
魔法陣を、すい、と書くと
さむは、前足を自由に使えるようんなった。
よく、かわいいわんこが
立って、握手したりする事があるけれど
それは、ひょっとすると
立って歩ける魔法を、掛けてほしいと
そんなふうに、言っているのかも。
誰か、わんこの仲間が
そういう魔法を掛けてもらったのかも。(笑)。
「それで」ルーフィは言った。
もう一冊の「ゆきのひとひら」を
さむに手渡して
「これと取り替えてきてください。
そうすれば、本を無くした事にならないし。
いたずら、とも
思われないでしょう。
それから、立って手を使っているところを
誰かに見られないようにね。
見つかると、魔法は消えちゃうから。」
なるほど。
と、さむは思った。
それで、魔法が消えちゃった犬が
立ち歩きをしたりして。
それを芸、なんて思われてるのか。
・・・・・結構、犬族にとっても
2足歩行は、憧れなんだろうな。
それは、進化生物学的に見ても正解である。
人間の祖先が、立ち上がり
2足歩行になったせいで
手を自由に使えるようになり
文字を想像したり、工作をするようになったり。
その、文化を得て
頭が大きくなった。
だが、そのせいで
早産で生まれてしまい
お母さんの負担が増えたから
ストレスが、母子ともどもに
影響を落とす。
そんな、精神分析学の研究も
あったりもするくらいで
つまり、進化のせいで
自然のなかで、のんびり生きる事が
結構、大変になっている生物に
なってしまった、などと
生物社会学では、言われていたりする。
なので、犬がもし
2足歩行するようになれば・・・・
人間界と似たような事になるかもしれない。
そんなふうに、さむは思った。
たぶん、さむは
生まれ変わって、人間界に
行くこともあるだろう。
そんなとき、ふとしたことで
この事を思い出したりすると
それを、心理学では
既視感、なんて言ったりする。
記憶の時間・記憶の空間
そんなふうに、前世の記憶を
思い出したりする動物さんが
たとえば、あしかさんが書道をしたり。
ぞうさんが絵を書いたり。
ひょっとすると、それは
人間界から生まれ変わって。
ひとに喜んでもらって。
また、ひとに生まれ変わってゆくのかもしれなかったりする。
老犬、さむは
いつか、生まれ変わってまた
この家にもどってくるかもしれない。
そう思うと、ひと時のお別れ。
そんなふうに思ったりする。
その時のために、いっぱい
思い出を作ろう・・・・・なんて
さむが思っているはずもない(笑)。
犬は、いつも
目の前の事をひたむきに追うものだ。
人間も、ほんとうはそうだったけれど
いろいろ、生活が複雑になって
変わってしまった。
目の前の出来事とは違う事を「希望」「欲望」なんて言うけれど
ほんとうは、おかしなことだ。
目の前の出来事は、何も変わっていない。
自分の頭の中で、イメージした状態に
現実を合わせたいと思うのが
希望や欲望である。
そういう事で、ひとは争ったりする。
動物さんから見ると、変な生き物だと
そう、思うかもしれない。
ルーフィは、ただ
めぐを助けたいために、想像を
働かせている。
それも希望だけれども。
誰かのために希望するのは
それは、良い事である(笑)。
さむは絵本「ゆきのひとひら」を
袋に入れて。
それを首から下げた。
手が使えるので、ひょい、と
袋の手提げを首に掛けようとした。
けれど、犬の前足は
ひとの手とは構造が違うので
やや、ぎこちない。
元々は、人間も
猿と同じ4足歩行だったのだから
いずれ、犬がもし
2足歩行になれば
人間のように、手を自由自在に使い
そして、文化を持っのかもしれない。。
さむは、誰も見ていないので
ドアを手で開いた。
それは、いつもしているのだけれど。
廊下を歩くのは、やっぱり
4本足の方が早い。
あの子の部屋の、扉は開いている。
夏なので、風が爽やかに吹き抜けて。
めざす、机に
「ゆきのひとひら」は、まだそのまま。
本の好きな子は、部屋にはいないらしい。
「いまのうち・・・・・。」と
さむは、魔法で
自由になった前足を
手のように使って
「ゆきのひとひら」を
取り替えようとした。
首から下げた手提げ袋に
手を入れて。
絵本を取り出そうと思っても
手のながさが、ちょっと短い。
関節は、走るために
できているので
前後には良く動くけれど
左右には、人間よりは上手く動かない。
その代わり、早く走れるのだけれど。
仕方ないので、袋を首から下ろして
中の本を、取り出して
入れ替えようとした。
けれども、犬の前足は
人間のように掴む事ができない。
人なら、片手で掴んで
もう片手で袋を持って。
そんな事が普通にできるけれど
犬なので、そこは難しい。
ーーー2冊ある事を、気づかれると面倒だ。
そう、さむは思う。
手早くしなくては、と思うと
上手くいかないが
それも、そういうものだ。
「完成イメージ」を頭に浮かべて
それに近づける。
うまくいかないと、焦る。
そうではなくて、手続きを
ひとつひとつ、間違えずに
進めていけば、いつかは終わるので
完成だけを思って、失敗すると
かえって遅くなるのだ。
わんこさーん!
当の本人、めぐはと言うと
とりあえず危機は去って、にゃんこもわんこも
優しい気持を持っている、って分かったので
(どうしてわかったか、と言うと
2次元の平面でも音は聞こえるから。
それはもちろん、めぐが3次元の人だからで
音波、音の波は3次元的なもの。
だけれども、平面の2次元に波が当たると
それはエネルギーとして強く感じられる。
それを集音マイクに使うくらいだ。)
それで、のんびりお昼寝をするにしても
いいかげん飽きてしまう。
人間の知性は面白い。
それは、もともと進化の過程で得た性質(生得的、と言う)なので
簡単に言うと、ジャングルのようなところで
襲ってくる敵を見つけるには
その場所のノイズや、見た目の風景、匂い
そんなものに慣れてしまって、敵が来たらその変化を
鋭敏に見つけて、逃げたり戦ったり。
そういう感覚がある生物が、生き延びた。
そんな風に進化生物学では教える。
チャールズ・ダーウィンの言うような比較進化論である。
それなので、平和な時は飽きてしまう。
そういうものだけれども。
自然界の音や風の動き、陽射しなどは
刺激に飽きないような法則性がある
いわゆる1/fゆらぎ理論であるが、比較進化論的には
その刺激を得ると飽きがこない、つまり
敵の侵入に備えていられたので、それに適応した者が
生き延びた、と言う事になるらしい。
ただ、2次元の平面に自然がある筈もないから
めぐは飽きてしまっていた。
それは仕方ない。
どうにか、抜け出したいと思っているところに
老犬さむがやってきて、なにやら作戦を企てているらしい事は
めぐにもわかった。
「わんこさーん!こっちよー!」と言って、めぐは
絵本の中で声を立てたけれど
それを、さむが聞き取ったかどうか・・・・。
さむとたまぁ
さむは、絵本を入れ替えて
めぐの乗っている絵本を、袋に入れた。
でも、首から掛けたので
絵本は、ぐらぐら揺れた。
2次元の世界では、なんでもない事でも
3次元の人間界にいる、めぐには
ちょっと大変。
おまけに、ちいさくなってるから
余計大きな揺れに感じる。
立っている位置や、傾き等の状態を知るのは
専ら、人間では流体の流れに依って
それを知っている。
つまり、慣性と重力がそれを司っているので
体が小さくなると、感受性が大きい。
そういう仕組みがどうして必要だったのだろう?
樹木の上で暮らしていた人間の祖先が
必然性に沿って得たのだろう。
そんなふうに考えられている。
それはともかく(笑)
とにかく揺れるのは大変だった。
「いやぁ、助けて、ルーフィ、ルーフィさーん!」と、めぐは
ルーフィの名前を呼んだ。
そこに来ている事を、めぐは知らない。
さむは、絵本の入った袋を背負って
廊下を走った。
それでも揺れたので、めぐは耐えられなくなって。
「ここからでたーい!」と
強く思った瞬間。
魔法の封印が解けた。(笑)。
ぽん。
衝撃音は、次元が歪んだ結果。
めぐは、さむの背中に乗っていた(笑)
「あ、あれ?」
さすがに重たいので、さむも
寝転がってしまった。
「あ、ごめんね、わんこさん。」
めぐは立ち上がって。「ゆきのひとひら」を見て
状況を察した。
廊下の向こうから、あの、本の好きな子、「ゆきのひとひら」を借りた子が
びっくりしてめぐを見ている。
「あ!絵本の子!」
表紙で、わたくもにくるまって
眠ってためぐを、覚えていたのだろう。
めぐはどっきりして「ごめんね、またね」と。
「ゆきのひとひら」を
袋に抱えて。
めぐは、松林の木戸を開けて。
とっとこ、とっとこ。
再会
松林で、ルーフィは
モペッドに乗っていた。
作戦(笑)が上手く行ったかどうか
わからないけど。
でも、待っていたら
めぐが出てきて「ルーフィさん!」
その、元気な声に
ルーフィもびっくりして、笑った。
不思議に笑顔になった。
かわいい声ってそんな効果があるのかな。
ルーフィは、ふと
そんな事を思う。
ひよこの、おかあさんは
ひよこのかわいい声で、子供を
可愛がる。
そんな、動物行動学者の説明を
思い出す。
高い、愛らしい声には
そんな効果があるらしい。
「人間もそうかな」なんて
ルーフィはひとりごと。
「戻ってきてたんですね。」と
めぐは、びっくりして、喜んだ。
ルーフィがいなくなっちゃうと
思って。
それで、あわてて飛び立ったせいで
絵本に、閉じ込められちゃったり。
修業中の魔法使いって、そんなもの。
さむが、とことこ、と歩いて来て。
「ああ、ありがとうさむ。おかげさまで助かった」と
ルーフィはにこにこ。
さむも、笑っているかのように
しっぽを1回振った。
「さむさん、さっきはごめんねえ」と
めぐが乗っかっちゃったので。
そういうと、ルーフィは
「何があったの?」と。
そういえば、3次元に実体化して
出て来た事をすっかり忘れていた。
自然だったから。
「どうやって戻ったの?」と
ルーフィは爽やかな海風に
髪をなびかせて。
もう、そろそろ夕方だ。
「絵本がね、ゆれたの。すごく。
それで怖くなって。出たい、って思ったら」
と、めぐは、なんとなく
思い出すとすごい事だった、みたいな表情で。
「それで?魔法が。すごい才能だね。
魔法って言うより超能力かも」
と、ルーフィは笑った。
でも、その魔法を使えるのは、
まだ自由じゃなくて。
「ルーフィさんのところへ行こうと
思ったんだけど、上手くいかなくて。」
と、めぐはちょっと恥ずかしそうに。
「それは大丈夫。魔法陣を書いて
ゆきさきを決めれば。」と、ルーフィ。
もともと、魔法使いと言っても
誰でもが使えるものでもなくて。
もともと持っている才能を、魔法が
伸ばしてくれる。
そんな感じのものなのだ。
歴史のある国には、大抵
そういう魔法の類が幾つか、あったりする。
そんな中で、イギリス人のルーフィと
違う国のめぐが、同じ魔法を使えるのは
よく考えると、ちょっと不思議だと
ルーフィは思う。
「でも、わんこさんのおかげで
ほんとにたすかった」と
めぐが、にこにこして
さむを撫でなで。
すると、さむは立ち上がって
握手をしたので、めぐはびっくり
喜んだ(笑)。
だって、立ち上がると
めぐより大きいし、握手のポーズは
まるで「お手」をするみたいだったので。
「僕の魔法」と、ルーフィ。
でも、人に見られても魔法が消えないのは
やっぱりめぐは魔法使いなんだな。
そう、ルーフィは思ったり。
魔法と魔術
魔法を使えない人に見られると
魔法が消えてしまう理由は、よく分からない。
たぶん、その存在を知られると
お金儲けに使おう、などと(笑)。
そういう理由かもしれない。
前近代では、錬金術、などと言って。
似非魔法のようなものがあったりした。
金、ゴールドを作る。
それが貴金属で、お金になるからと言う
理由だと、そもそも魔法にはならない。
魔法と言うのは、気高いもの。
崇高なことに使わないと、それは黒魔術、などと
言われたりもする。
魔法、とはちょっと違うもので
それを使うと、だんだん憔悴してしまう。
例えばお金の為に、近代ではいろいろな術を使うが
コンピュータにしても、現代の魔法のようなものだ。
だけど、崇高な目的に使わなければ憔悴してしまう。
使うと、魂が穢れてゆく。
そういうものだ。
人が喜んでくれる時、ひとの魂は磨かれてゆき
人を悲しませる時は、それと相反する。
そういう目的に、魔法は使われるべきで
近代の魔法、コンピュータ・テクノロジもそうだろう。
「そっか、じゃ、にゃんこさんは・・・・がんばってくれたんだね。」と
めぐは、にこにこしながらそう言った。
たまぁは、めぐが喜んでくれたので
なんとなく、嬉しくなった。
さむも、嬉しい。
ルーフィも、もちろん嬉しい。
誰かに、喜んでもらえると
魔法って、生き生きとするものだ。
それも修行のうち。
「さ、じゃ、帰らないと、そろそろ。
図書館にモペッドを返さないと」
と、ルーフィは言う。
「そうだね....。あ、今日はそっか。普通の日だから。」
図書館は夕方で閉館なんだった。
と、めぐは思い出した。
閉館のあとも、しばらく司書は残って仕事をするんだけど。
それがまた、楽しい。
がらんとして静かな図書館で、本を扱っているのは
なんとなく。
本が好きなめぐには、嬉しい時間だった。
モペッド
過ぎてしまうと、楽しかった。
そんなふうに、めぐは思ったりして。
大変な事もあったのに(笑)。
楽しく思えてしまうのは、若さ故。
新たな事、それが刺激となって
日々が、楽しい。
類型的に、ものを考えるようになると
そういう感動を、自ら無くしてしまうのだけれども
めぐは、まだ、それほど長く生きてもいないし
ものの見方が、固まってしまっている
訳でもなかったから
毎日、楽しい(笑)。
生き生きとした表情のひと、と
ふれあうのは、それだけで楽しい。
ルーフィは、そう思う。
そういうひとの、笑顔を守ってあげたいとも思う。
「じゃ、帰ろうか」と、ルーフィは言い
モペッドのイグニッションキーを入れた。
小さな、丸い速度計に
緑のランプが点いて。
「これで帰るの?」と、めぐ。
「うん」と、ルーフィ。
この国のモペッドは、自転車のようなものだから
ふたりのりしてもいいし、ヘルメット、なんて無粋なものも
べつに、かぶらなくてもよかった。
「あたし、運転したい」と、めぐは言ったり。
ちょっと、はにかむような笑顔は
ルーフィでなくても、すてきだな、と
思うかもしれない。
綺麗に揃えられた前髪に、すこしだけ
俯き加減の視線は、それでも
なんとなくルーフィへの思慕を
思わせるものだった。
叶わないって解ってても。
気持ちって、そういうもの。
「いいよ」ってルーフィは
モペッドの後ろに、ズレて。
自転車ふうのサドルに、めぐは
座った。
ひざ丈のスカートが、かわいらしいひざのところまで、
かわいらしい脚は、あちこち、転んだり、体育の授業で擦りむいたりした
傷があったりするけれど(笑)
それも、また
元気な少年みたいで、かわいらしい。
「じゃ、ペダル踏んで」と、ルーフィは言う。
でも、後ろにルーフィが乗っていたから重い。
それで、ルーフィは足で地面を押して。
モペッドは進み始める。
タイヤが回ると、地面が動いて。
そんな錯覚をおぼえる。
でも、ほんとうは自分が動いている。
相対性理論が示すように、宇宙での我が身の位置は相対的なものだ。
アルバート・アインシュタインも
そう証明している。
止まっているものはないのだ。
自転車のある地上も、動いている星の上にあるのだ。
その相対性の中で、ちょっと相関を変えるのは
魔法なら容易い事だけど。
いまは、地上のモペッドで移動する。
それはそれで、楽しい事。
18世紀に自転車が発明された頃は
それが魔法のように持て囃された事だろう。
タイヤが回って、地面が進む。
地上の空気は、風のように頬をかすめる。
でも、動いているのは自分だ。
速度計の針が動く頃、ルーフィは
「クラッチをつないで?」と
ハンドルのところのレバーを離すように、めぐに言った。
「こうですか?」
クロームメッキの小さいレバーは
ブレーキのそばについていて。
握ったままになるように、ストッパーがついている。
それを、深く握ると
バネ仕掛けで、ストッパーが
外れて。
クラッチレバーが、離れる。
そうすると、デコンプと言って
エンジン・シリンダの圧縮が
少し抜かれて。
エンジンが周り始めると
しっかりと圧縮される。
精密な仕掛けである。
「こうですか?」
めぐは、クラッチを離した。
チェーン連結の、駆動ギアに
力が加わって
エンジンが、ぽん、ぽん。
爆発しはじめると、青い煙が
排気されて。
タイアが、エンジンで駆動されはじめる。
モペッドの横を、たまぁと、さむは
とことこ。
歩きながら、お見送り。
そのくらいの速度だ。
「わんこさーん、にゃんこさーん。
ありがとう。またくるね。」と
めぐは、にこにこしながら。
でも、アクセルを回してないので
ずっとゆっくり。
ルーフィは、「グリップを回して?」と
。
エンジンが吸い込む空気を、加減する
バルブをそれで開閉する弁を
開くように言った。
「こうですか?」と
めぐは、いきなりグリップを回したので
エンジンは急加速!。
「きゃぁ」と、めぐはのけぞり
ハンドルから手が離れそう。
後ろのルーフィが、ハンドルを
咄嗟に支えたので
ピッタリと、抱きついてしまうような
(笑)。
背中に感じる、ルーフィの身体。
それと、お尻もぴったりと触れてしまって(笑)。
「いやっ!と」ハンドルから手を離した(笑)。
「あぶない!」と
ルーフィは左手でハンドルを支えて。
右手でめぐを抱き抱えた。
足を地面に踏み。
でも、その右手は・・・・。
ちょうど、めぐのかわいいバストのあたり(笑)。
いつかと同じ(笑)。
転倒は免れたものの。
しばらく、めぐはどきどき。
そのままの状態だった。
でも、ひだり胸にルーフィの手(笑)。
お尻にルーフィの腰(笑)。
「いやっ!!」と、身体をよじって
モペッドを降りた(笑)。
好き
飛び降りるように、モペッドを下車した
めぐを、びっくりして
さむとたまぁは見ている。
「どうしたの?」とでも
言っているように。
その言葉は、ルーフィには聞こえるけれど
めぐは、まだその言葉を知らない。。
フィーリングで、そんなふうに
言ってるように聞こえるだけ。。
「なんでもないの。ちょっと、恥ずかしかっただけ」と、
さむに、めぐは答えた。
さむは、その言葉をたぶん理解していて。
めぐのそばで、舌を出して
息をしながら。
おすわりをしている。
「ごめんなさい、でも、突然だったから。」と
ルーフィは言う。
めぐは、そのルーフィの優しさが
うれしい。けれども・・・・。
なんというか、触れられると
ちょっと、驚いてしまう。
今まで、感じたことのない気持ちに
ちょっと。
ルーフィさんは好きだけど・・・・。。
そう思い、ふと、めぐは
もうひとりの自分、その3年後の人。
ルーフィのパートナーのことを
思ったり。(笑)。
Megさんとは、時々
あんなふうにしてるのかしら。
なんて、めぐは
追いつく事のない3年、と言う時間と
先に巡り会えなかった運命を
ちょっとだけ寂しく思うのだった。。
「ううん、あたしが悪いの。
びっくりしたから。」と
めぐは、まださっきの衝撃を忘れられないで。
頬を染めて俯いてしまう。
「じゃ、運転はやめる?」と
ルーフィは尋ねる。
でも、そこはやっぱりめぐなので(笑)。
「いいえ。こんどは失敗しません!
頑張って覚えます。運転。」と。
その言葉で、ルーフィは
めぐがモペッドの運転をしたことない事を
初めて知るのだった。(笑)。
無鉄砲で、元気で、明るくて。
とってもかわいいよな。
なんて、ルーフィは思う。
それで、今度は
ひとりで、ちょっと乗ってみようかな?
そんなふうにめぐが言うので、
「それって危ないんじゃない?」と
ルーフィは言い「大丈夫、今度は
上手くするから」と言って
めぐの後ろにまた乗った。
「アクセルを急に回さなければいいのさ」と言って。
精密なものだけれども、
アクセルを回すと、ワイアが巻き取られる。
グリップに、巻き取りボビンがついていて
ワイアの先に、スロットルバルブが
ある。
エンジンが吸い込む空気を、それで加減するのであるが
空気だけでは、爆発して
タイアを回す力は起きない。
燃料を、適当に混ぜて
燃えやすくするようにしないといけない。
エンジンの回転数、空気の量・密度に沿っての制御だ。
その、燃料と空気の比率を
ストイキミクスチャー、またはラムダと言う。
ラムダはストイキミクスチャーの逆数である。と
これは現代でもある科学技術の
ほんの初歩だが
興味のない人には、呪文のように
聞こえるかもしれない。
だが、それが理論的な体系を持って
使われる時、魔法のように
作用するのだ。
ルーフィの魔法は、それと似ている。
実は、18世紀の科学であったのかもしれない。
稠密なもの
「こんどはだいじょーぶ」と、めぐは
また、ペダルを漕いで。
少し、勢いをつけてからクラッチを離す。
デ・コンプレッションが働いて、シリンダーの中で
ピストンが下がる。
そして、昇る時に圧縮が掛かり、空気は圧縮される。
PV=nRTである。
nモルの空気に適当な燃料を、エンジンは吸い込むが
それは、自然にエンジンが吸い込む量を
ちいさなジェットが通すのだ。
概ね13:1。
圧力Pが上がり、容積Vが減っていけば
Rは一定なので、Tが上昇する。
Tは温度である。
そこで、発火点を越えれば爆発する。
精密な仕組み、だが
外からは分からない。
ひとの気持も、それに似ているのかもしれない。
めぐは、気丈に振舞っているが
本当は、恋の行方に悲観的であった。
なにせ、相手が3年後の自分、と言うのでは
戦いようもない(笑)。
それでも、好きな気持には変わりない。
なので、はじけそうな気持は
エンジンの爆発のように元気な振る舞いとなって。
でも、心の中は
精密なエンジンの制御のように繊細だった。
それがないと、エンジンが動かないように
めぐの気持の繊細さが、はじける若さのエネルギーのもと、だったり。
風
こんどは、アクセルをゆっくりと開いた。
ワイヤーが引かれ、エンジンは
ピストンが下降するに従って
できる隙間に、空気を吸い込むが
その時、吸入管の途中にある
スロットルバルブを、このワイヤーで
開くのだ。
バルブの下には針状の、ニードルがあり
スロットルが上がると、燃料が
ジェット、と言われる穴から吸われる。
ニードルは加減するのである。
空気と油の機械は、生き物のように
熱を発して動くのである。
エンジンの回転が上がる。
ふたりのりだと、重いので
ゆっくりとしか、加速できないが
F=maである。
運動エネルギー=質量×加速度。
つまり、一人乗りより
ふたりになると、重いぶん
加速はゆったりになる。
それでも、モペッドは
心地好い風のように、走る事ができる。
めぐにとっても、ルーフィと一緒に
ドライブできるなんて
それは楽しいことだろう。
お見送りしてくれているたまぁ、それと
さむに
今度こそ、お別れ(笑)
「ありがとー、またくるね」
めぐは、夏休みの
いい思い出ができた。
バックミラー、まるい、ちいさなものが
ひとつだけついているけれど。
それに、たまぁとさむが小さく映ると
なんとなく、淋しくなって
涙ぐんでしまいそうな、めぐだった。
海風
でもすぐに、快い海風、頬を撫で
めぐは、楽しくなる。
モペッドが、岬の道を登り
渚に沿って、愛らしいエンジン音を響かせて走ると
なぜか、心躍る。
乗り物は、不思議だ。
カーブが来ると、車体を傾けて。
魔法の絨毯みたい。
そう、めぐは思ったり。
魔法の絨毯だって、3次元空間を
浮いているなら、物理法則に沿っている。
カーブでは、遠心力と言って
当たり前だけど、曲がる方向の外側に向かおうとするから
内側に傾いて、それに耐える力を
重力によって得る訳である。
モペッドも同じで、傾くところが
なんとなく、楽しいと
めぐは思った。
その、カーブを曲がる力は
後ろのタイヤが地面を蹴る力で、得ている。
タイヤの断面が丸いから、傾いたままエンジンが駆動すると
斜めに力が加わる。
それで、曲がったまま進める。
時折、砂混じりのコンクリート道路は
タイヤを滑らせようとする。
「きゃあ」
「おっと」
と、モペッドのふたりは前輪が滑って驚くけれど
そんな時、慌てないでいれば大丈夫。
ずっと前輪が滑り続ける事はそんなにないし
そこでアクセルを戻すと、慣性で
前輪に力が加わる。
そのままアクセルを開き続ければ、
後ろのタイヤが地面を蹴って
前のタイヤを持ち上げるように、斜め方向に力が加わる。
モペッドは、楽しい乗り物だ。
気づかずに、いつもタイアは滑っているのだ。
そして、ゴムがよじれながら
カーブを曲がっている。
F=mghcosθ
タイアのゴムは、人知れず
身をよじり、擦り減らしながら
モペッドを、走らせてくれている。
ありがたい。魔法のようだと
ルーフィは思ったりもする(笑)。
その実、ルーフィは魔法によって存在している訳だし
そのご主人様にしても、魔法でもう
200年も眠っている。
魔法のエネルギーは相当なものだ。
モペッドが、右カーブからひだりカーブへ。
傾いているめぐ、ルーフィ。
その質量が、モペッドのタイアに与える位置エネルギー、それが
カーブを曲がるエネルギーになる。
たとえば、質量mの物体が
重力g、高さhで得るエネルギーFは
F=mghである。
傾いている場合、傾きθとの関数で表されるので
この場合、F=mghsinθである。
その力が、モペッドのタイアを傾け
地面に押し付ける。
斜め向きの力は、反対にタイアを
外に押し出そうとする。
エンジンは、前にタイアを回そうとするので
その合力で、モペッドは曲がる。
カーブを右左。
その中立点では、ゼロになる。
グラフを書いたら、魔法陣のようだろうと
ルーフィは思う。
ルーフィの魔法も、そうした
物理法則に大方沿っている。
たとえば、さっきの式は3次元空間の話なので
4次元や、0次元に
モデル展開すると
Fや、mは如何様にも作れる。
そうして物体を移動させたりもできるし
たとえば、3次元空間の
相対性理論、アルバート・アインシュタインの唱えたそれは
光の速度で、ふたつの座標を決めているので
そのふたつの距離を、光の速度を
超えて進めば、時間が逆戻りするとか
あるいは、空間が歪むと
数学的に言われている。
それは、光が真っすぐ、3次元空間を進む場合であるし
光の速度で距離を定義したから、そうなる訳だ。
実際には、短い距離では
測定できないし
光の速度で指定できる座標なら
真っ直ぐに進もうとしても、必ず歪む。
重力場が複数あるし、3次元だけの
宇宙はありえないからである。
つまり、マイケルソン・モーレーの
実験くらいの距離でも
空間は歪んでいるし
地球上くらいの距離で、時間を
3次元的に戻そうとしても
実用にはならないのだ。
ルーフィたちのしているように、4次元や2次元、0次元の時空間に
モデル展開して、エネルギー変換する方が簡単なのである。
18世紀からあった魔法、ではあるが
継承されることなく、現代に至っている。
弛みなく、地球が回るのも
実はそうした、超次元エネルギーが
源である。
それを知ることなく、人々は生きていても
一向に構わない(笑)。
そういうものだ。
ルーフィとめぐが、物理法則や
科学技術を知る事なく
モペッドのドライブを楽しむように。
CH3COOH
海沿いの風は、夕暮れになると
少し涼しく感じられて。
秋を思わせる香りがする、と
めぐは思った。
不思議なこと。
秋特有の香りって・・・・?
おそらく、空気の中に何か
秋に咲く花とか・・・。植物の放つ物質?
香りは、化学物質なので
その何かを感じるのだろう。
渚を渡ってくる風には、潮の香りがする。
それも海そのもの、と言うよりは
そこに棲んでいる生物の放つ化学的物質と言えるだろう。
大抵は植物なのだけれど。
生き物はエネルギー代謝をするので、何かを取り入れて、出す。
それが営みである。
波打ち際をモペッドは走る。冷えた風は、エンジンの吸い込む空気密度を上げるので
必然的に、燃料も濃くするべきである。
さきの、PV=nRTで言えば、nが増えるので
全体の数値が変わる。
空気・燃料比率をA/Fと言うが、それをストイキミクスチャにするためには
燃料を増やす訳だ。
燃料は炭化水素なので、それと化合する酸素を増やすのである。
x(C3H12O6):x(O2)=x(CO2):x(H2O)
であり、これは酸化反応である。
実際には空気は酸素だけではないし、完全に燃焼しないので
それが、例えばエンジンが放つ匂いであり
秋の香りのように、人によってはエンジンの香りを好む人も居る。
それは、大方炭素と炭化水素の燃焼する時の匂い、焦げたような香気である。
本田宗一郎は少年期に、自動車の後を追いかけてこの匂いを楽しんだと言う。
後日、モペッドを自作する訳なのだが、彼にとっては
秋の香りのように芳しいものであったろう。
カルボン系の香りは、例えばパンの焼ける香り、ご飯のお焦げ、
ステーキ、などのように食欲をそそるサインでもあるが
それは、長い人類の食の歴史の中で、「それが美味なもの」と言う
認識で積み上げられた記憶の一部である。
化学的に見れば、ただの気体である。
好悪の感情と結びつくのは、ひとそれぞれだ。
それは、恋愛も同じ。
好きな人のタイプなども、記憶とパターン認識であり
似たような環境で育つと、似たようなものを好む傾向もあるから
同じ人に恋してしまうのも、仕方ない。
いつか、解決できるといいのだが・・・・。
恋愛と次元
そう、重大な事にめぐも
ルーフィも気づいていない。
ルーフィは、魔法使い。
生きている次元がちがう。
でも、恋は不条理なものだから
理屈で恋したりしない。
もっとも、めぐが
この先、魔法使いとしての人生を選ぶなら
ルーフィのような魔法使いになれる、のだけれども。
ひとの記憶は、3次元時空間に沿っているものだ。
生まれてからの時系列に沿って、記憶が積み重なって行く。
赤ちゃんの頃、快かった経験が
無意識に、同じ経験を好んだり。
木漏れ日の散歩道を、お母さんと
一緒にあるいて
きらきらする光、風の爽やかさが
好きになったりすると
お散歩すると、その時を思い出して
いい気持ちになったり。
そこが、海辺だったりすると
潮の香りが好きになったり。
そんなふうに、嗜好は作られて行く。
恋愛も同じで
めぐのように、お父さん、おじいちゃんが優しかった人は
そういう、庇護的な彼氏を好きになったりする。
ルーフィが、そうだったかどうかは
めぐにしかわからない(笑)。
めぐにしても、理屈で選ぶのではなくて
快かった記憶が、それを選択させるのである。と
ジグムント・フロイドなどは
類推的に持論を述べていたりする。
モペッドが、カーブの連続した
ワインディング・ロードを離れ
町に、少し近づいた直線道路を
走る。
スロットルを、めぐは少し開く。
ワイヤーに引かれたスロットルバルブが開かれると
エンジンにつながる空気管の遮断が開かれる。
同時に、バルブの底にあるニードル、円錐の針が引き上げられる。
空気は、管の内径に沿って流れ
ニードルは、先が細くなっているので
ジェットと呼ばれる燃料噴射穴からの
燃料が増える。
即ち、空気量に見合った燃料を
エンジンは、吸い込めるようになる。
本来の、シリンダ容量を100%とすると
その時の吸い込み量、それを
充填効率、と呼ぶが
それに依って、爆発力、エンジンの力は変化する。
PV=nRTなので
nが増えれば、Tも上がるし
Pも上がる。
P、つまりシリンダ圧力が上がれば
ピストンを下げる力も増える。
出力制御である。
それを加減する事が、楽しい運転になるのだけれど
たとえば、めぐのようにバイタリティーあふれる人々は
出力過多(笑)だったり。
そんなふうに、エンジンは生物的だ。
その制御を楽しんでいると、めぐの右手、アクセルグリップの加減で
後輪の回転に変化がある。
「なにかしら??」
速度を上げて行くと、エンジン回転が高くなり、すこしショックがあって
スピードは上がっていくのに、エンジンの回転は下がる。
そしてまた、速度は上がっていく。
「ああ、ギアが変わったんだね」と
ルーフィは言った。
このモペッドは自動変速である。
エンジンの回転が上がっていくと、
自動的に歯車が切り換えられて
速度が上がるようになっているのだ。
精密な仕掛けだけれども、機械動作だ。
すり鉢のような物体が、エンジンの出力軸についていて
一緒に回転している。
そこに、錘になる金属球が
幾つか、置かれていて
落とし蓋に抑えられている。
そうすると、エンジンの回転が上がって
遠心力が高まると、球は外に出ていこうとするので
押さえ蓋は、上がっていく。
その、蓋の位置変化で
ギアを押し引き。
後輪に対するエンジンの回転を変えるのだ。
たとえば、発進する時は
力が必要なので
後輪1回転に対して、エンジン4回転とすれば
爆発は4回。それだけの力が出る。
この時、減速比1:4と言う。
モペッドがスピードに乗ったら、そんなに力は要らないから
後輪1回転に、エンジン1回転でも
走れる。
つまり、発進の時、押さえ蓋をバネで下げておいて
その時、歯車比率がエンジン側4、タイア側1のギアにつないでおけば
発進の時は力が出るのである。
その、ギア切り換えの時に
めぐは、ショックを感じた。
ギアを切り替える時に、アクセルを
緩めるような
仕組むがついているから、なのだけれど
その仕組みがわかっていれば
それほど気にする事もない。
けれど、知らないうちは
ちょっと怖かったりもする(笑)。
そんなものだけれど、それは
経験をして、覚えていくもので
魔法や、恋愛を
めぐが、経験して覚えていくような
毎日、
それに似ているかもしれない。
機械と人間
その、切替歯車は
常に噛み合っていて
歯車軸との間を、鍵状の楔で
止めたり、離したり。
歯車軸が中空のパイプになっていて、
そこにスリットが切ってある。
隣り合った歯車を、パイプの真ん中から
棒についた楔で、軸方向にスライドさせて
歯車と軸を、固定したり離したり。
それで、ギアを変える仕組みは
犬が噛むようなので、ドッグ・クラッチと呼ばれていたりする。
その棒を、シフトセレクターと呼ぶが
このモペッドでは、それが
さっきの落とし蓋につながっている。
落とし蓋が、軸方向にズレると
シフトセレクターを押し、歯車を変えるのだ。
機械的な仕掛けに、犬、と言う言葉が
ついていると
その動作が犬の動きを思わせて
犬好きなら楽しいかもしれない。
そんな、精緻なメカニズムを
考えた人々は、すごいと思ったりもする。
もちろん、ふだん
モペッドに乗る時、そんなことを
思う必要もない(笑)。
でも、めぐはプログラムも作れるから
その、仕組みにちょっと、興味を
持ったりもした。
女の子だけど、べつに機械に
興味を持ってもいい、と思うし
魔法も、ルーフィのものは
18世紀の科学、だったりするから
構造を覚える事で、魔法を使いこなせるようになるのも
早い、かもしれない(笑)。
そんなふうに、ルーフィも思った。
モペッドは、ゆっくりと
町に近づいて。
松林のカーブを抜けると、夕暮れが近づいたのか
町明かりが点る。
「ライトつけようか?」と、ルーフィ。
はい、と、めぐは
キー・シリンダを回した。
教わっていないのに。
「よくわかったね」と、ルーフィは驚く。
勘のいい子だ。
あいらしいヘッドライト、まるいそれは
スピードメーターのボディも兼ねて、ハンドルについている。
豆電球のような明かりが、ぽつ、と
点るのは
いかにも詩的で、好ましい。
「明かりがゆらゆら揺れて、素敵」と、めぐはにこにこした。
「ああ、それは回転が低いから」とルーフィ。
この、小さなモペッドは、勿論発電もしている。
それでないと、エンジンに点火できない(笑)のもあるし
ヘッドライトも点かない。
エンジン、シリンダの中で
燃料が爆発し、ピストンを押し下げるには
火花が、このエンジンでは必要だ。
ピストンが上がり切る、その少し前に
燃料の燃える速度を見越して、火花を飛ばすのだが
その火花も、電気である。
ピストンにつながった、連結棒が
エンジンの、クランク状の
出力軸を、押し下げる。
反動で戻る。ピストンが押される。
その軸に、磁石がついていて
ぐるぐる回っている。
エンジン側には電線が巻いてあり、
糸巻きのようになっていて(コイルと言う)
そこを磁石が通ると、電気が起こる。
その電気は、E=IRで関係づけられる。
電圧は、コイルの抵抗と
電流を掛けた値になる。
つまり、磁石発電なら
磁石の力は同じなので
コイルの抵抗、電気の流れ易さが低ければ
電圧は高いが、電流は大きくなる。
つまり、総エネルギーは変わらないが
バランスが変わる。
それは、磁石の回る速度で決まるので
つまり、めぐの言うように
低い速度だと、電力がゆらゆらと
磁石が通った時明るく、離れると暗く、と
おもしろい明かりになるわけだ。




