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スノー・フレイクと、スノー・ウィは



透明な水玉になって、小川から


大きな川を流れていきます。





絵本は、そんなシーンになっていて



めぐも、その深淵を眺めています・・・・。






海と少女




絵本では、ふたりは

海まで流れ


航海して、南の海まで向かいます。


珊瑚の渚、青い空。



白い雲。






めぐは「素敵ね」と


ためいき(笑)。



そんなふうに、旅ができたら

どんなにすてきだろう・・・・。



想像する時の、パートナーは


やっぱりルーフィかしら(笑)。








みずたまだった、スノー・フレイクたちは



南の海で、やがて

蒸発して、空に昇って。





その絵を見ていて、めぐは

なんとなく、哀しくなってしまいます。





それが、人生を終えることを

イメージさせてしまって。




スノー・フレイクさんは

しあわせだったから・・・・



それでいいのかな、なんて

ふうにも思いました。







絵本は、さらに続きます。




雲になった、スノー・フレイクは


やがて、北へと昇り


雪雲になって。



あの、なつかしい丘へと向かいます。




青い空を。

緑の牧場や、深淵を越えて。




ふるさとの丘に、また

冬が来て。




また、スノー・フレイクになって



さらさらと舞い降りるのです・・・。





と、絵本はそこで終わり。


めぐは、また、感動してしまいます。




絵本の中で、一緒に

物語を経験するって。



ひょっとしたら映画に出るのと

似てるのかしら・・・・・。



と、めぐは、あの映写技師のことを

思い出したりしながら。




この「ゆきのひとひら」が

人生と、転生も描いていることに

気づきます。





クリスタさんは、転生をするために

天使さんをお辞めになって。



すごいこと。



そんなふうに思ったら


急に、元の3次元世界に

戻りたくなっちゃったけど。


でも、絵本の裏表紙まで来てしまったので


ちょっと息苦しい(笑)。



どうやって表紙に戻ろう?



それ以前に、床に絵本を置いたまま



閉館しちゃダメ(笑)。



なんて、司書めぐに戻っちゃって(笑)。



でも、帰り方がわかりません。




「あーん、帰りたいよー」(笑)。







まだまだ夜中です。






仕方ないので、地道にめぐは

ページをたどって。


表紙のところまで戻った。



開館まで、待ってれば

クリスタさんが見つけてくれるかしら・・・。



そんな、僅かな希望を持って。



天使さんなら、帰り方をごぞんじかもしれない。





もう、夜遅くて眠くなってきたので


表紙の、白い雪雲さんに乗って

おやすみなさーい・・・・・。(笑)。


ゆき雲さんは、思いのほか快適で


ふんわり、ゆらゆら。




寒いかとおもったけど

そこは絵本なので(笑)あったかい。



どこへいくのかな・・・・。と、思いながら

めぐは、眠った。


のどかな子である(笑)。




一方のルーフィは、その事情をしらないので

図書館の屋上にとりあえず降りた。


セキュリティが、やっぱりあって。

侵入したら警察が来てしまう。



それはちょっと厄介だ。


住民登録もしていない。当然だけれど

異世界から来て住民票を取る魔法使いは居ない。


市民税取られちゃうもの(笑)。




それでも、お買い物すると消費税は掛かるのだけれど。(w)



この国では、その消費税を廃止する事が決まったばかりだった。


まあ、それはいいとして(笑)。



セキュリティがあるので、とりあえず

重力場が歪んでいる場所を、コンピュータに頼って探ると

1階の、小部屋。



「ここなら、窓から覗けるかな」


とは思ったが、窓の外にセキュリティ・カメラがあると

やっぱり映像を取られてしまい、不審者、なんて言われて

交番に連れて行かれると・・・・・。



身元不明のイギリス人タイホ!


なんて事になる(笑)。





どうしようか、と思って


最初にめぐに会った日に使った魔法で


空間に円を描き、そこに、見たい場所の映像を出した。



小部屋。



薄暗くてよく分からない。



クッションフロアに、絵本が一冊。



「ゆきのひとひら」






そこまでしか、ルーフィには見えない。









機械と人間



でも、ルーフィのコンピュータには

その場所が、示されている。

重力場が違っている。との情報。



「だとすると・・・。」


それが、やはり・・・・。




ルーフィは、空間移動を試みた。



座標を、きちんと定めないと

物体の中に、入り込んでしまう。




空間座標・・・・。



結構、大雑把な魔法陣なので


狭い空間に合わせるのは、難しかった。



世界地図で旅行をするようなものである。



時空間を旅するには、そのくらいの

ものでないとダメだったりして。



「改良の余地はあるな・・・・。」




と、運任せで(笑)


屋上から1階へ、移動を試みた。








軽い衝撃を感じ、天井に頭を当てたものの


めぐのいる小部屋に、移動する事は成功した。



「しかし・・・・でもなぁ」


絨毯に転がっている絵本。


「ゆきのひとひら」と言う


確か、昨日クリスタさんが

子供達に読み聞かせていた、絵本。





ルーフィは、絵本を手に取って。


「どこにも変わりないけれど・・・。」



と、よく見ると。



白い綿雲に、くるまって

眠っている2次元のめぐを見、驚いた。




「なんと。」



状況は、なんとなく理解できた。


魔法の使い方を間違えてしまったのだろう。



でも、あまりに快さげに

眠っているめぐを見たルーフィは



「朝まで、寝かせとくか・・・・。」



どの道、開館は9時なのだ。





と、ルーフィも少し疲れて


その場所で、横になった。



朝はすぐにやってくるだろう。









めぐは、夢を見ていた。



遠い、南の島に旅をして。


ハンモックで寝ていると、その

ハンモックを、風が揺らす。


その風は、なんとなく愛おしむような

優しさに満ちていて。



めぐは、その風が

好きになってしまう、そんな

不思議な夢。




「ゆきのひとひら」を

ルーフィが持ち上げたので


そんなふうに思ったのかも(笑)。



すやすやと、眠ってためぐだった。







ルーフィが、気づいた時は

もう朝だった。



「しまった」と思う間もなく


このお部屋の窓のそばを

ガードマンのおじさんが、制服に

身を包んで。


巡回しているのが見えた。



もし、この部屋の

鍵を開けに来たら、見つかってしまう。




どうする・・・?




廊下に靴音。




しかたないので、ルーフィは

「ゆきのひとひら」を

そのままにして。

元々居た、屋上に戻った。



元の座標に戻るのは、それほど難しくない。




「絵本を書庫に帰しておけば

よかったかな?」


でも、その余裕はなかった。





ガードマンのおじさんは、小部屋の鍵を開けて・・・・。



「ゆきのひとひら」が

床においてあるのに気づいた。



にこにこしながら「子供達が忘れていったんかの」と


つぶやいて。



でも、返すとこがわかりません(笑)。




「あとで、司書さんに言っておこう」



本を手にとって、綿雲にめぐが

寝ているのに気づいた。



けど、おじさんは


そういう絵本だろう。(笑)




そう思って、絵本を

部屋の隅にある机に置いて。



お部屋を出た。



「はて、どこかで見たような・・・女の子じゃな」とめぐの事を(笑)。




思ったけれど、ふつう、それが

2Dになってしまっためぐだとは、思わない(笑)。


それはそうだ。



その日、クリスタさんは初出勤。

すこし早めに、お家を出て


路面電車に乗って、図書館に行った。




入り口で、ガードマンのおじさんが


「ああ、読書コーナーの小部屋に

絵本があったよ」と

にこにこ。


クリスタさんは「あ、すみません」と。


にこやかに礼を述べ、ロッカーに行く前に


小部屋に向かった。




めざめ



クリスタさんは、静かに

昨日の記憶を反芻した。


「たしか・・・・ご本を読んでいるうちに。


お歌を歌っていて。」



それでも、絵本を床に置いた事はなかった。



床と言っても、靴を脱いで上がる

ところなので、本が汚れる事は

ないのだけれども。



その、めぐが寝ている(笑)小部屋に

クリスタさんは。


ドアを開け、絵本が

デスクにある事に、なんとなく安堵。



「ゆきのひとひら」ね。



そうそう、児童文学っぽい

結構、芯のあるお話だったわ。



何気なく、表紙を見ると・・・



「あれ?めぐちゃんじゃ・・・・。」と


白い綿雲にくるまって、すやすや眠っている。




こんな絵柄だったかしら(笑)。




と、クリスタさんは

それを、不思議な偶然だと思ってしまった。



素直な人である。(笑)







絵本を、書架に帰そうとして

ひょいと持ち上げて。



その加速度で、めぐは目覚めた。





「あれ・・・・・?」


気づくと、めぐは

クリスタさんに運ばれて。


絵本コーナーに運ばれてて。




クリスタさんは、気づいていない。



「クリスタさーん」と、めぐは

大きな声を上げて。


でも、こちらは2Dの世界。

向こう側の3Dの世界とは、つながっていないから


音は聞こえない。




どうしよう、と思っている間もなく


児童図書館の書架に、収納されてしまった。



背表紙しか見えないので

めぐの事を発見してもらえる可能性は、あとはルーフィ頼みだ。



きっと、開館したら

助けに来てくれる。



そう、めぐは信じて待つしかなかった。



開館まで、あと少し。






ルーフィは、めぐの想像通り

図書館が開くのを、エントランスで待っていた。



あと5分、・・・3分。



時間旅行で進んでしまおうと思ったくらいだった。



そして、9時。



エントランスが開くと共に、ルーフィはカウンターに。


そこには、クリスタさんが

めぐの代わりに、受付をしている。




「あら、ルーフィさん。もう、お帰りですか?」




のどかな天使さんである(笑)。




「クリスタさん、めぐちゃんは?」





その雰囲気を察し、「いえ・・・ご一緒でなかったのですか?」不安顔。




カウンターなので、魔法の事は言えない(笑)。




「あの・・・絵本に・・・めぐちゃんが」と

そこまで言うと、クリスタさんは


「はい、絵柄に描かれていました。気づきませんでしたけど。」と


にこやかに、クリスタさん。




「その本、どこにありますか?」

と、ルーフィは尋ねる。



書架に戻しましたと、クリスタさんが

言うので「どこの?どこですか?」と


ちょっと慌て気味ルーフィ。



場所を案内してください、と

クリスタさんの手を取って、


カウンターを離れた。



「いかがなさったのですか?」と

クリスタさんは不思議に思って。




ルーフィは、歩きながら小さな声で


「その絵は、めぐちゃんなんです。」





みどりの森とたまごさん。


【前書き】

http://ncode.syosetu.com/n2191bp/

みどりの森とたまごさん。



クリスタさんは、天使さんなので

その言葉で、察した。


のんびりさんだけれども、そこはやっぱり天使さん。


「すぐに回収しないと・・・・・。」

と、絵本のコーナーに向かう。



すると・・・・・。


もう、子供たちが絵本を手に取っていたりして

ルーフィは焦る。



もし、床に絵本を落としたり、叩きつけたりしたら

めぐへの衝撃は相当なものだ。


F=mghである。


本の重さ×重力加速度×高さだが

小さな2次元平面にいるので、耐えうる圧力は小さい。




「ゆきのひとひら」のあるあたりの書架を調べる。



「どのあたりですか?」と、ルーフィは少し焦ってクリスタさんに尋ねる。




そのあたり・・・・と、コーナーの奥の書架のあたりに

返却した「ゆきのひとひら」を見る・・・・。



が。



すっぽりと抜け落ちたように、一冊分のスペースが空いている。





「ない。」どこへ行ったんだろう?と、ルーフィはあたりを見回した。



「まだ、開館したばかりですから、貸し出しカウンターに行っていなければ・・・・。」

クリスタさんは、カウンターの方を振り返るけれど


人影はない。





いったい、誰が・・・・。?




児童図書館の貸し出しカウンターは、まだ開いていない。






「読書コーナーかしら。」と、クリスタさんは、オープンスペースの

子供たちが本を読んで、遊べるコーナーになっているところを

思い出した。



エントランスのそばの一角。




そこには、子供たちが何人か。


絵本を持っている子もいる。






嬌声をあげて、転がっている子も居る。




もし、あの子たちが本を踏みつけでもすれば・・・・・。





すると。




絵本を持って、よちよちにこにこ歩いているちいさな子。


今にも、絵本を落としそう。




「大変だ!」



ルーフィは、そこに駆け寄り、スライディングして絵本を支えた。



タイトルは・・・・「みどりの森とたまごさん」





よかった。安堵するのも束の間である。



「ゆきのひとひら」は?どこだ?







めぐの行方



「どこに行ったんだろう?と

ルーフィは、あたりを見回した。


クリスタさんは、児童図書館のコンピューターで

貸出されているか、調べた。


「ゆきのひとひら」は人気がある本で


3冊、蔵書がある。


「どれかわからないわ」



と、思い、貸出日付を見た。


今日は、貸し出されていない。



「それなら、あるはずね」


ゆうべ、この図書館にあったのだから。




「ルーフィさん、貸し出されてはいないみたいです」と、クリスタさん。




その言葉を聞き、ルーフィは思うl。



それならどこへ行ったんだろう。





そこへ、司書主任さん到着。。



「やあ、おはようクリスタさん。・・・・ルーフィさん。早くから、ご来館ありがとうございます。・・・どうかしました?」





「あの・・・・・ゆきのひとひらと言う

絵本を探しているのです」と、ルーフィは言う。



「ああ、それなら・・・検索コンピューターで調べれば」




と、クリスタさんがしたように

コンピューターを検索。



「1冊はあるはずなので、どこかにあるはず・・・だけど。」と、司書主任さんは書架を見て。



「ないですね。巡回図書館に載せる準備をしているか、それか・・・

古くなったんで、廃棄か、古本市場へだすか」



と、主任さんは怖い事を言った。



「廃棄って、どうするんです?」と

ルーフィは、どきどきしながら。



主任さんは、にこにこと

「リサイクル、ちり紙交換に出すんです(笑)」と、事情を知らないので、にこにこ。




それは大変!と、ルーフィは思った。


ゴミに混ざってしまえば、そのまま

溶かされてしまう。




「それは、どこで処理するんです?」と

焦って、ルーフィは聞く。



変な事を聞く人だな、と

それでも、主任さんはにこにこして


「地下で、古本にするか、廃棄するかを選別するんですけど・・・・

その本は、ほかにもあるんで。

それでもいいでしょう?」



と、事情がわからない司書主任さんに


めぐが、2次元になって

本についている、とも言えない(笑)。



言っても、理解されないだろう。



そういう事はよくあるのかもしれない。


なので、古い本には、なんとなく

愛着を感じたりして。

捨てたり、燃やしたりするのは

なんとなく、ルーフィは嫌だった。



その古い本に、2Dになった人や

動物が、いるかもしれないのだった。


いきなり3Dに実体化して、驚くかも。



そう、めぐに3D化を教えて

元に戻さないと。



「ありがとうございます。地下ですね。」と、ルーフィが言うので


主任さんは、「あ、そこはふつうの方は入れないところなので

クリスタさんに、行ってもらいましょう。」と、クリスタさんに、場所を


主任さんは示した。



リミット



図書館は、静かにしないといけない場所だけど。



でも、めぐの命に関わる事だ。


ルーフィは、場所にあたりをつけると


部屋を、風のように吹き抜けて行った。



その様子に、司書主任さんは驚いた。


けれど、クリスタさんも後を追っているので


その理由を、尋ねる事もできなかった。


ただ、不思議そうに「へそくりでも挟んであったのかな(笑)」


もちろん、図書館の本に

へそくりする人はいない。


大切な証明書とか、カードとか。


思い出のある写真とか。



そんなところかな?と

のんびりと司書主任さんは、想像した。






ルーフィは、地下への階段を下りて。

メタリックな、パーキングのドアを押して



パーキングの、まだ、がらんどうの


コンクリートの床を走り、反対側にある職員用入り口の

クリーム色の扉を押した。


特に、鍵が掛かっているでもない。



その扉の向こう側も、広いスペースになっている。


正面が、返却ポストから

おりてくる図書倉庫。




クリスタさんがついて来て。



その向こう側みたいです、と

廊下の向こうの部屋を示した。





扉の向こうには、果たして古本の

山。



ちょっとした市場のようだ。




「どうやってさがそう・・・。」


と、ルーフィは思い。量子コンピューターの

存在を思い出す。




なんで、最初から気付かなかったのだろう。




そう思ったが、仮に気づいていても

司書主任さんのいるところで、

未来のコンピューターを見せる訳にもいかない。




見せたところで、コンピューターの外観は似たり寄ったりだけど。


20年後に、新発売された時に


見たことのある新製品(笑)


なんてのも、困るかもしれない。




量子コンピューターの電源を入れて。


データを拾う。



「・・・・。」


難しい表情のルーフィに、クリスタさんは声をかける。




「いないですか?」




ルーフィは頷き、「もう、捨てられてしまったのだろうか」と。



いや、そんなはずはない。


さっきまで一緒で、書架に返却したのは


ほんの少し前なのだ。



とりあえず、捨てられていない事は

解って、やや安心。




「・・・・・移動図書館でしょうか。」と

クリスタさん。





「それはなんですか?」と、ルーフィは尋ねる。




「バスに本を積んで、図書館から遠いところへ、本を貸したり、返して貰ったり。・・・。そんなサービスです。」


と、クリスタさん。





捨てられる事はないだろうけれど。

ここに戻ってくるまで、相当あるだろうから・・・・・。





もし、巡回先で貸し出されてしまえば

戻ってくるまでは手が出せない。




「どうしよう・・・・。」と、ルーフィは考えた。






移動文庫



「もし、移動図書になっていたら、別の本と取り替えるってこと

できるだろうか?」とルーフィは考える。


クリスタさんは「・・・そうですね。3冊あるうちの

どれが貸し出しされているかは分からないですね。」



個々に識別はされておらず、同じ本が複数あっても「冊数」が変わるだけ。

この図書館はそういう管理になっている。


ただ、館内にあるか、移動文庫になっているか

どこかの図書館に貸しているかは、分かるらしい。





「ゆきのひとひら、みたいな本が

ほかの町の図書館に貸し出されるのは

あまりないみたいですね。」



めずらしい絵本でもないので、どこの街にも

複数ある、と

検索コンピュータには表示されているそうだ。



「移動文庫に乗せるなら、[移動]って

コンピュータに表示されるんです。」と


クリスタさん。





「本だけ、持って行ってしまったのかしら。」とも。




これだけ本があると、中には

行方不明の本もある。



コンピュータ管理をしても、最後は

データと本が合っていないと、誤差もある。

コンピュータは万能マシンじゃない。


結局人なのだ。管理は。




もし、本に心があったり

ルーフィの思いみたいに

何かが宿っていたり。


めぐみたいに、魔法を間違えて(笑)


2次元モデルになってしまった魔法使いさんが


くっついている事も、ひょっとしたらあるかも。





そんな風にルーフィは思い



「移動文庫のバスは、いまどこにあるのですか?」と

言いかけて。



図書館脇の道路沿い、車庫に止まっていた

水色のバスか、と


何気なく眺めていた風景を思い出した。





振り向いて、地下のパーキングから

坂道を駆け上がり



ルーフィは、バスの止まっているあたりを見た。




いない。




「やっぱり・・・・移動文庫に乗ってしまったのかな。」




確証はない。けれど、リスクの高い方から探していくのが

鉄則だ。




バスの巡回ルートは決まっているはず。




思い返し、ルーフィは図書館の中に引き返す。





1階の貸し出しカウンターには、クリスタさんが戻っていて

絵本の行方を捜していた。



児童図書館の方でなくて、一般図書の書架に

1冊あった。



そうすると、残りは2冊、そのうち1冊が

めぐが乗っているかもしれない。



その、書架にあった1冊を、内緒で持ち出して

移動文庫にもし、めぐが乗っていたら


その「ゆきのひとひら」と取り替えて

持って帰ってくれば、いい。



そんなふうにルーフィは考えた。



貸し出しリクエスト処理を3冊とも、掛ければ

誰かが移動文庫で借りようとしても、エラーになって

貸し出しができない筈だから


めぐの身は安全だ。




だけど、同じ絵本に3冊、貸し出しリクエストをするのは

ヘンだ(笑)。




ひとりひとりにID、識別番号がついているので

ひとりで同じ本3冊にリクエストするのは無理。





しかたないので

とりあえずバスの巡回ルートを調べ、貸し出しをクリスタさんの名前でしてもらい

1冊の「ゆきのひとひら」を持って


ルーフィは、バスの後を追った。




夜ならともかく、昼間から空を飛ぶのは・・・ちょっとダメ。










On the road



なので、ルーフィは

図書館のおじさんが使うモペッドを

貸してもらう事にした。


この国では、14歳になると

50ccの、ペダル付きモペッドは

免許不要で乗る事ができる。


そうして、交通ルールを覚えてから

社会に参加すると、無謀な事はしなくなる、そういう考えである。

イタリアと同じで、交通ルールも適当に守られ、いい制度である。




そんな訳なので、ルーフィの

魔法の絨毯とは違うけど

それは結構、面白い乗り物。



「乗り方はわかりますか」と

主任さん。


事情は知らないけど、ルーフィが

その「ゆきのひとひら」を

探しているって聞いて。


助けてくれるこの人も、いい人。




「なんとなく・・・・。」と、

ルーフィはイギリス人なので


イギリスの免許は持っている。



イギリスでは、簡単な試験で

250ccまで乗ることができて。


それなので、オートバイは

割と親しまれている乗り物だった。




もちろん、ルーフィも

オートバイは大好きだ。。


風に乗って走るのは、魔法のように

素晴らしいと思う。


ハンドル伝わるエンジンの鼓動も

生き物のようで。



ルーフィは、キースイッチを入れた。


ハンドルの右についているそれは

小さな鍵。



かちりと、節度のある感じは

どことなく好ましい。



「では、お借りします。」




ペダルを踏みながら、まずは

自転車として走る。


勢いがついてから、クラッチをつなぐ。



その時、エンジンの圧縮を少し、抜くのは


デコンプレッションと言って

スムーズに走り出すための気配り。



タイヤの回る力が、チェーンを通して


エンジンに伝わり、空気を圧縮。



すると、温度が上がる。

PV=nRTである。


容積が減れば、同じ量の気体は

温度と圧力が上がる。



そういう物理法則である、


そこに、燃料を噴射すると

爆発が起き、今度は

容積が増えていく。



燃料は、なぜか

空気との混ざり具合が理論的に決まっている。


空気の分子と、燃料の分子が

酸化反応と言って、いわゆる燃焼をするので

適当な量の酸素と、炭化水素の

組み合わせが必要なので


それはまあ、相性、の

ようなものだ。





例えば、酸素が少なければ

炭素が残る。


ストーブが、煤を残して燃えるような、暖炉のまきが黒くなるような、そんな状態である。



反対に、酸素が多いと、これは

温度が高くなるが、圧力が上がらない。



そんな、精密な燃焼を

エンジンは続ける。



それで、ピストンを下げて

勢いでクランクを回し、タイヤを回して走るのだ。



機械と言うものは、かくも

愛らしい代物である。


愛らしく、単純なものであって


それは、魔法のようなものとは

また違った興味をそそるものである。



ピストンとシリンダーの潤滑、と言って

滑りをよくするために、オイルを混ぜて燃焼させて。


その燃える香りが、いかにも馨しいので


少年たちは、オレンジのオイルや

ひまし油などを混ぜ、その匂いを

楽しんだり。


そういう不思議な事を喜ぶのも

趣味の面白さである。









ペダルを踏んだモペッドは、爽やかに風を切る。



それが夏であっても。






オイルの香り



風の中を駆け抜けると

よく表現されるけれど

オートバイが動いているので

風のような存在であるだけ、だ。


と、ルーフィはしばし目的を忘れるほどに

モペッドを楽しんでいた。


それがちいさな車体であると

親しみやすいのもあるだろう。




移動図書館のバス、そのルートを追って


海岸の方へ、モペッドは走る。


メガネ橋を越えて、海の方へ。


青い煙を吐いて、かわいい音を立て。



最初の巡回地点は、海に近い

山裾にある村らしい。



追い掛けて、村の広場で

バスのタイア跡を発見した。



「もう、貸し出されてしまったのだろうか?」



ルーフィは少しどきどきしながら、

図書館の蔵書を検索。



あまり当てにはならないものの、

貸出中にはなっていない。



次いで、重力場を測定してみても


付近に、めぐはいない模様。





「遅かったかな。」


少し焦りを覚えるルーフィであったが



地道に探るしか、ない。




「つぎの巡回ルートは・・・。」

海岸に沿って南下した、岬。



すこし距離がある。


人目がなければ空を飛んで行きたいが


モペッドを置いていく訳にもいかない。



アクセルを開いても、ハミングする

くらいの速度なので、それが

かえってのんびりできていいのだけれど。


海沿いの林には、もう、秋の気配も

感じられるような


ひぐらしの声が響いていたり。




「いいところだなぁ」と


ルーフィは、のんびりツアーの

ような気持ちにもなってきて。



すなまじりのコンクリート道路を

右左。


海岸に沿ってカーブする道路を

走っていくと、岬が見える。



岬への、ビーチのところは


林になっていて。


そこに、巡回バスは止まっていた。



エンジンを止めて、自転車のように

静かに坂道を下り、バスのとなりに

モペッドを止めた。




バスの中扉は開いている。



追いついたとの実感で、ルーフィは満足していた。


けれど、めぐが見つかったわけではなかったので


安心するのは早計だ。



モペッドのイグニッションを切り、キーを抜く。



スタンド、と言う自立型の支えを立てて、後輪を浮かせた。


自転車とほとんど同じだ。





この国ではモペッドに乗る時ヘルメットは要らないので



さわやかな風が、短い髪を靡かせて快かった。



自転車並みの速度、25km/hしか出せないが

それでいいのである。




はやる気持を抑えて、ルーフィは巡回バスの中に入る。


中はクーラーが利いていて涼しいが、それは本を守るためである。


同じ理由で窓は日光を遮るようになっている。



クーラーの電源は屋根についているソーラーパネルが担っており

エンジンを切ったままでも電源が確保できるようになっている。




「旧いバスでも、工夫次第だな」と、ルーフィは感心しながら


絵本の行方を探る。




・・・・・しかし、見当たらない。




「どこにいったのだろう?」




安心しかけた背中に、冷たいものが走るような気がする。



巡回バスに乗っていた、見覚えのある顔の司書に尋ねる。


めぐのバイト仲間らしい司書は「その本は.....。貸し出されたようですね。」と


巡回バスの中にある貸し出しデータを見た。



バスの中にある巡回文庫の本は、図書館に戻ってから

データをコンピュータに移すらしい。




「しまった....。」と、ルーフィはつぶやく。




「その絵本なら、さっき、小さな子が借りていったみたいです。」と

その司書は言った。



「さっき....。」一足遅かった。



住所や名前を聞いても、教えてはくれないだろう。



いくら知り合いだと言っても。




ルーフィは落胆して、バスを降り


まだ、遠くに行っていないかもしれない。




そう思い直し、量子コンピュータで

重力場の測定を始めた。




どこか次元が歪んでいれば、そこにめぐの存在があるはず。




サーチ範囲を広げ、軍事衛星の座標電波も拾い

付近を隈なく調べる。




捜索にゃんこ



その頃、めぐは

自分が、どこにいるのか

よくわからなかった。

2次元の平面に自分が立っている。


そこが全てなはずで、しかし

めぐは3次元からのひとだから、その外も見回せる。



でも、その視界は限定的で


絵本の平面から見えるものが全て。


それはもちろん、地球の上から裏側が見えないのと同じである。



昔の天文学者が、地球を平面だと

思っていた頃の宇宙と

同じような、そんな感じであるけれど。


後に、ガリレオ・ガリレイが

望遠鏡を発明して


地球が球体であり、自転しながら

太陽の周りを公転していると


発見するのであるが



もしかすると、彼は

地球の外からの生物だったのではないか?などと

思いを巡らすのも楽しい。




この時のめぐに、そんな余裕が

あったかどうかは、ちょっとわからなかった(笑)。



そろそろご飯も食べたいし、もとの世界に戻りたいとも思ったけど


絵本の外の世界はなぜか揺れている。



規則的なので、誰かが本を持って歩いているのだろうかと

めぐは思った。



時々、見回してみると

野原や海、空が見えるので



海沿いにいるのかしら、と


めぐは思った。



絵本を持っているのは

幼い子供のようで、それとなく

地面が近く見える。


時折、立ち止まって

絵本の表紙を眺めて、にこにこしているので


本の好きな子みたい。



立ち止まった子に、歩み寄って


声を掛けているのは、お母さんらしい。


優しげに、微笑んでいたりする。



その様子を垣間見て、めぐは


懐かしくなった。



朧げに、そんな事があったような

気もして。




ほんとにあったか、は

わからないけれど



なんとなく、それで

ほのぼのとした気持ちになれると


それはそれで、いいものだ。


今は、結構大変なときだったりするのだけど。


でも、そういう時に


ほのぼのとしていられれば


それはいい事だ。



助けを待つより、他にないのだから。






絵本は、その子の手から離れて


どこか、平面に置かれた。



天井が見えるところを見ると、その子のお家のどこかのお部屋らしい。


机の上らしいところに、静かに置かれたので

めぐは安堵した。



放り投げられたりしたらどうしようか、と



思ってもいたのだ。





「にゅあーごぉ」


声がする。




しなやかに、机に飛び乗ったのは



茶トラ猫だった。




絵本から見ると、結構大きくて

ほんもののトラみたい。



そう、めぐは思ったけれど



絵本の中に隠れていれば・・・・



爪を立てられたりしなければ、大丈夫。



爪!(笑)。




それに気づいて、めぐは

表紙から、中のページに移ろうとした。




それがまずかったのか、猫は


絵本の中に動いているものを

見つけ、不思議そうに覗き込んだ。



鋭い爪が、ちょっと怖い(笑)。



「なやぁーーごおおぅぅう。」



猫の声が、大きく聞こえて


めぐは、急いで3ぺーじめあたりまで逃げた。







猫はお友達



そのちゃとら猫は

よく見ると、にゃごと

同じくらいの大きさで、年回りかな、

なんて、巨大な猫を


めぐはそんな風に思った。


めぐの事が見える訳でもないのだけれど


なんとなく、感じるところがあるのか


絵本を、ナメようとしたり。





めぐは、いつバレテしまって

猫に食われてしまうかと

ちょっと、不安だった。




「たまぁ、だめよ、いたずらしちゃ。」



さっきの声がして。


この、にゃんこの飼い主なのだろうか。




猫は、おとなしく去ってくれたので

めぐは安堵。





その頃、ルーフィはその様子を




海沿いの林から伺っていた。

 


「どうしよう・・・あの中に

忍び込んで、本を取り替えてくれば

いいけれど。」


猫がくっついていると厄介だ。



家のひとに見つかってしまっては

新聞種である。



「身元不明のイギリス人逮捕。不法入国か?」



なんて(笑)。




冗談ではなく、捕まればそうなる。


別の時空間から来たと言って、誰が信じるだろう。


量子コンピューターを持っているなどと


見つかろうものなら、宇宙人のように

アメリカ軍に連れ去られて解剖されてしまうかもしれない(笑)。




想像するだに恐ろしい(笑)。




それは冗談にしても、とりあえず

めぐに3次元、つまり元に戻ってもらうには・・・・。



その魔法を教えるか、時間を逆転させて戻らせるか。


いずれにせよ、めぐに

その方法を教えるのは


ここからでは無理だ。









めぐが乗っている「ゆきのひとひら」は


結構人気のある本らしくて

よく、貸し出されていた。





きょう、借りた子も


幾度も借りて、物語を覚えてしまって

いるのだけれど。




それでも、この本を・・・楽しみにしている。



なにか、おとなにはわからない

魅力があるのだろう。。







たまぁ



この家のにゃんこ「たまぁ」は 

「ゆきのひとひら」の絵本を借りた子に


拾われて、ここでしあわせにくらしているにゃんこ。



ちょうど、にゃごと同じくらいの猫。



そろそろお昼なので


海岸沿いに出て、お散歩をしようかと....。



とっとこ、とっとこ。



浜辺の松林で、近所のにゃんこたちが

おはなしをしていた。




「こないだの、図書館で溺れてた子を助けた猫。

『にゃご』って名前の。


あれって、元々は人間だったんだそうな。

それで、悪魔に生まれ変わったけど

魔力を捨ててまで、猫に生まれ変わったんだと」



と、このあたりの野良猫らしい、ハチ、と言うはちわれ猫が言っている。


白と黒、ちゃいろが混じった面白い模様のぶち猫だ。




一同が聞いていて、めいめいにうなづいている。



のらねこたちの行動は、なんとなく人間に似ていて楽しい(笑)。



もちろん、人間界から生まれ変わって猫になった者も居るし


これから人間に生まれ変わる者もいるだろう。



虫だったのに、良い行いをして猫に転生した者も居る。





「その『にゃご』がさ、絵本を探してるんだと。なんでも『ゆきのひとひら』と言う

絵本で。」と、ハチが言うと



まっくろの大柄な猫、クマが「へぇ、なんでまた?」




ハチは「理由はわかんないけどね。『にゃご』の飼い主が

その本と関係があるらしいんだとさ。」





たまぁは気づく。


その本は、うちにある絵本かな?




猫の情報は、早い(笑)。





たまぁは、来た道を引き返して


家に戻った。




 にゃご・たまぁ



にゃごのことを、もちろんたまぁは知らない。

でも、どこか前世で知り合いだったかもしれない。


以前、人間界に出ていって

魔界を追放された連中は

多くが、動物界に行っただろうから。


そのことを、

覚えていないだけの事である。



それなので、猫たちは

なんとなく共同体っぽい感覚だった。


どこかで、いつか

忘れていた記憶を思い出すかもしれないし。






にゃごが、どうしてめぐを助けようと

頑張っているのか?



一応飼い主だし(笑)。



クリスタさんの様子を気に掛けて

いたにゃご。


それで、猫のことばで

猫社会に協力を求めた。


猫は、気ままなようでも

本当に困っている仲間は助ける。



そういうものだ。


同じ猫同士、損得などないからで

そのあたりは、人間界より高級だ(笑)。






たまぁは、家にもどって


その、探していると言う絵本が

今、どうなっているのだろうと

興味を持って、行方を追った。



すると。






老犬



絵本、「ゆきのひとひら」に

めぐが乗っている事などは


もちろん、たまぁの知るところではないけれど。


それだけ、探すには

なんだか理由があるんだろう。



そんなふうに、たまぁは思って



部屋に戻って。


ベッドで、寝転がりながら

「ゆきのひとひら」を開いて

絵を見ている、たまぁの飼い主の子を見て。



ぴょん、と

ベッドに飛び乗って。


めぐのいる絵本と、飼い主さんの間に

割って入った。



「あ、だめえたまぁ。」と、その子は

猫がじゃれて来たとしか思わない(笑)。



ふだんも、じゃれているように見えて


猫は、何か意味があって

邪魔をしているのかもしれなかったりする(笑)。



猫のことばは、ひとには

わからない。



魔法使いなら、わかるのだろうけど。







一方のルーフィは、魔法使いだから

猫や犬の言葉を使って

絵本を取り戻せないかな、と

考えていた。



この考えは科学的で



1980年代、日本の京都大学

霊長類研究所の観察グループが

ゴリラや、ハヌマンラングールの

言葉を覚えて、群れと共に

行動し、観察をして

成果を得た事もあった。


言葉を覚えられない事

が口惜しい研究者は

その成果を快く認めなかった。



だが、今では

それが正しかった事は

明らかだ。


彼らには、彼らの言葉がある。



それと同じように、猫や犬の言葉を

覚え、使う事は

覚えられるひとには、覚えられる

ものであったりもする。




ルーフィは、その家の周りを歩いて

見回して。



一匹の老犬が、とっこ、とこ。

ドアを開けて出てくるのに出くわして。


声を掛けてみた。



犬なら解ってくれるかもしれない。

そう思ったのは、生まれ変わって

動物界にいるなら、以前は

人間界にいたかもしれないし

人間界にめぐの事が広まってしまう

事もない、そんな風にも

考えたから。


「犬がそう言っていた」と

誰か、犬の言葉が分かる人が

言っても



京都大学の研究者みたいに

周りに理解されないのがオチ(笑)

だから。





犬は、毛並みの良いレトリバーで

人の言う言葉が分かるなどと

言われている種。



それは、人にこれから生まれ変わるか

人から生まれ変わった犬が多いからなのかもしれなかった。




盲導犬や介護犬で、良い事をして

心優しい人に、生まれ変わる犬も

あったりもした。






その犬は、静かにルーフィの言う事を理解した。



「ああ、それじゃ・・・・。」と


ドアを開け、部屋に戻っていく。




誰も見ていないけれど、ドアを

閉じて(笑)。



ルーフィは、、不可思議な気持ちで

それを見ていて「犬にもいろいろいるんだな」と。





さむくん



外から帰ってきた老犬に、お母さんは「さむ?おかえり。早かったのね」


と、にこにこ。老犬のあたまを撫でた。



さむ、と言う名前の老犬は、朴訥に

のこのことあるいて。




その後ろ姿を、愛おしむように

眺めているお母さん。



優しい気持ちを保つために


何か、象徴が必要。



それで、ずっと一緒に暮らしている。



愛ってそういうもの。




ずっと、一緒にいようね・・・・。

老犬には時間が余り残されていないけれど


その間、ずっと一緒にいたいと

彼女は思う。



子供のためにも。





さむは、廊下を歩いて

絵本のある部屋に向かう。



「さあ、どうしよう・・・・・。」




部屋のドアを開くと、絵本と、子供。

それとたまぁが、じゃれていた(笑)。



たまぁは、理由があってじゃれていたのだけど。







さむとたまぁ



「さむぅ」


絵本を読んでいた子は

ベッドを下りて

さむのところへ。


さむの方が大きい(笑)


でも、愛おしむように

さむに、すりすりする。


さむに、寄ってきたたまぁは


「おかえり」と言う。


犬と猫は、言葉は違うけど

なんとなく、ふたりは通じる言葉があった。



いつかどこかで、遠い前世で

友達だったかもしれなかった。



犬と猫、仲悪かったりするけど

こういう例もある。




「ただいま」と、さむは言い


「あの絵本を、探している人がいるんだ」と。



たまぁは、うなづき「ああ、さっき聞いたよ。横町のハチが言ってた。」


って。



さむは「そうなんだ。表に魔法使いのイギリス人が来ていて。絵本を取り替えてくれ、と。

その絵本の中に、めぐって女の子がいるそうだ。」と。



たまぁは、おどろいて「めぐって名前は聞いたことあるな。その、捜索願いを出した猫の飼い主。

その中にいるのか・・・。」



たまぁは、捜索の理由が解った。


飼い主の行方を追ってたのか。



でもまさか、その中に・・・・・。





さむは、言った。

「この子とわたしがじゃれている間に、その絵本を持って

表にいる魔法使いに渡してくれないか。


かわりの絵本を持っているそうだから。」



そう、さむはたまぁに言った。




たまぁは、「わかった」とうなづいた。。





作戦・



でも、猫なので

手で運ぶ訳にもいかない。


口でくわえて運ぶにしては

「ゆきのひとひら」は

ちょっと重い。


それに躊躇している間に

飼い主の子に気づかれてしまって


「あ、たまぁ、大事なご本、だめよ」



と、取り上げられてしまう(笑)。




猫になった身がもどかしいとは

特に思ってはいないだろうけれど

たまぁは、ちょっと不自由に感じる。



猫が、いたずらする。

そんな理由は、ひょっとすると

こんなことかもしれない。


人間にはわからない理由。





「仕方ないな」さむは、犬だし

体も大きい。



自分で運ぼうと考えた。


台所にある、コンビニでくれる

白い袋を思い浮かべ「あれなら、くわえて運べるだろう」と。



台所の、冷蔵庫の横にぶら下がっているケースに


畳まれて、いくつもそれは

保存されている。



ゴミを出したり、ちょっとしたものを

入れるのに便利なのだ。




さむは、とっとこ、とっとこ、と

台所に行って。



幸い、誰もいないので


やや、大きめのその袋を


ひとつ拝借。



もとの部屋に戻る。




遊ぶのに飽きたのか

飼い主の子は、ベッドで

眠ってしまった。





いまのうち・・・・と

思ったかどうか(笑)。


でも、犬とて手があるわけでもない。




絵本を、袋に入れるのは結構難しい。



それに、コンビニの袋は

がさがさごそと音がするので


眠っている子が起きないか?



それも心配だった。




静かに袋を広げて。



その中に、本を押し込もうとした。


けれども、つるつるとすべるし

袋の持ち手がじゃまして、入っていかない。



「ふつうのビニール袋にすればよかったな」


と、さむは

ちょっと後悔した。



でも、これでとりあえずやってみよう。



がさがさ、ごそ。


絵本は、苦労の甲斐あって

袋の中に少し、入りかけた。



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