10
なので、映写技師さんが想ってしまうと
永遠に実らない恋、いえいえ。転生して、天国に一緒に行けたら
実るかもしれない恋。
そういう恋もいいかもしれない。
ステキかしら。
天国に行くために、いい事を一杯して。
いい人で過ごす事。
それは、難しいかもしれないけれど
恋のためなら、できるかもしれない・・・・なんて思うわたし(笑)。
天使さん、ひとやすみ
「そうそう、休憩時間だわ」とめぐは気づく。
適当に、暇になった時間に
それぞれに、休み時間を取っていたけど
だいたい、午後3時くらいになったりするので
あの、3階のカフェに行って
一休みしたり。
事務所のとなりにある休憩室に入ったりして。
休んでいた。
ほとんど、立ったままの仕事なので
事務系の職種としては、割とハードな
仕事だったりもした。
もっとも、司書になれば
カウンター業務より、管理業務が
増えるので
デスクワークも出てくるのだけど。
めぐは、カウンター業務が好きだったから
このままでもいいと思ってたり
するんだけど。
カウンターに戻ると
主任さんと、あの、親戚の
映写技師さんが、なにか
お話をしていて
「やあ、おつかれさま。
クリスタさん、子供達、喜んでたね。
きれいな歌声だったもんね。」と
主任さんは、まるいお顔でにこにこ。
おはずかしい・・・と
クリスタさんが、俯いて。
「これからも、よろしくね。
めぐちゃんの旅行が済んでも、時々来てね。子供達喜ぶよ」と
司書主任さんは、その先の事まで
考えていて。
すごいな。と
めぐは思ったり。
そんな、先の先まで
考えていなかった(笑)。
「上のね、スカイレストランに
席をとってあるから、休憩をどうぞ。
ふたりで、行ってきて。
それと、あの・・・・こいつがね。
お話したいって言うけど、いいかなぁ」と、司書主任さんは言いにくそうに。
休憩にならないかな(笑)。でも、めぐは元気だ。
そんなの気にしてない。
「サンドイッチもいいですか?」(笑)
主任さんはにこにこして「いいよいいよ、こいつに払わせるから。」と言って
映写技師さんを見た。
映画作家と言っても、あまり
主張の強そうな感じでもない。
どちらかと言えば、地味な感じ、でも
深く考えるタイプみたいで。
ジャズコンボのライブで見た
マリンバのプレイヤーに似ていた。
繊細そうで、あまり
多くを語らないような。
ことばの代わりに、マレットを持って
メロディーを奏でると
それが、彼のことばのような。
そんなプレイヤーだった。
映写技師さんも、そういう人なのだろう。
ことばは、誰もが持っている。
でも、文化がいろいろあって
音楽や映像、お料理でもいいし。
いろんなものに、心を乗せて作る。
それも、ことばの代わり。
そんなふうに、めぐは思っていたりもした。
そういう事を発見して
なにか、知的になったような、そんな気にもなって(笑)。
楽しく思った。
「はい、わかりました」と、クリスタさんはお返事をして。
めぐと一緒に、上のスカイレストランに。
一番上の階は、展望レストラン。
カフェより、ちょっと高級なんだけど
昼間は、ふつうにコーヒーとか
ココア、とかを頂いたり。
静かなので、のんびりしたい時に
いい感じだったりもした。
アイスココア
フランスのスキーリゾートとか
スイスのお山、あたりでは
ココアは夏の飲み物だとか。
スカイレストランのシェフは、ヨーロッパが好きで
若い頃、フランスで修業してきたので
今でも、休暇の度にフランスへ出かけたりして
それで、こんな
楽しい話を聞かせてくれる。
お店を出そうかと思っていた時に
この、図書館が建て直されて。
レストランのシェフに採用された、と
笑う。
「この年でね、公務員なんだもの」って
日焼けしたお顔で、白い歯を見せて
笑う。
めぐのお父さんくらいの年齢だけれども
いいなぁ、と
おもってしまうめぐである。
どうも、めぐは若い男の子が苦手だった。
なんというか、動物的、って言うのか
粗暴な感じがして。
エレベーターに乗って、めぐとクリスタさんは
5階を目指した。
きょうは、割と図書館は空いている。
夏休みなので、海や山へ出掛けたのだろうか。
エレベーターホールは、やや暗くてメタリックな装い。
新しい感じがして、そのあたりも
めぐは気に入っている。
エレベーターホールから、東側の奥手に
スカイレストランはある。
屋上の、太陽のようなモニュメントの
中側が、展望室になっていて
景色が良いし、上品なので
人気のある場所だった。
もちろん、カジュアルでは
本当はダメなのだけれども
女の子は、気品のある服装なら
通された。
もちろん、男の子は正装である(笑)。
めぐは職員なので、もちろん通れる。
クリスタさんも。
簡素であったが、清楚な服装だった。
レストランに入ると、「こんにちは」と
時々、ロッカールームで見かける
ウェイトレスさんがにこやかに
ご挨拶。
「こんにちは」と、めぐが言うと、
「あら、お姉さん?そっくりね。
双子みたい」と、ウェイトレスさんは
短く揃えた髪で、まるく微笑んだ。
天使さんです(笑)。
そう、本当の事を言いたいめぐだけど。
それは言えない(笑)。
従姉妹のクリスタです、と言うと
いいお名前ね。と彼女はにこにこ。
年齢はめぐとそう変わらないはずだけども
ウェイトレスさんは、なんというか
大人、レディーね、と
めぐはおもってしまう。
クリスタさんの事を「お姉さん」と見るウェイトレスさんは
めぐとクリスタさんをそっくり、と
言いながら
微妙に、クリスタさんのステキなとこを見て
「お姉さん」と言うのかな。
そんなふうに、めぐは
ちょっと思ったりもした。
でも、それは思い過ごし。
いつかはレディーになるのだけれども
今のままのめぐは、かけがえのない
ステキな時間を過ごしている。
後になって気づくものだけど。
「奥で、お待ちよ。ボーイフレンド」と
ウェイトレスさんは言う(笑)。
もちろん、ユーモア。
めぐは、かぶりを振って「お目当ては、こちら。」と
言うと、ウエイトレスさんは
「そか、ざーんねんでした。」
と、ユーモラスに首を振った。
クリスタさんは、なんのことか
わからない
(笑)。
天使だもん。
レストランのエントランスから、同じフロアーのテーブルでも
海が見えたり、山が見えたり。
でも、展望室は
そこから、短い階段を昇ったところにある。
ステップは3つ。
音のしない靴なので、めぐと
クリスタさんが昇っていっても
彼は、気づかなかった。
図書館に行く時に、唯一
気にする事、それは
音がしない靴で行く事だった。
本を読むのに、邪魔にならないように、と言う
心遣い。
さりげなく。
遠くに山の見えるこの町は、海に面している。
観光地に程近い中核都市なので
比較的、商業も盛ん、そのせいで
文化的雰囲気にはやや薄いところもある。
面白いもので、商工業の盛んなところは
だいたい、どこでも文化的ムードに薄い。
そんなところなので、図書館を綺麗にしようと
考えたらしい。
それで、レストランに居る映写技師さんも
大学を出てから映画を作っていると言う、面白い人。
本当に商業映画を撮るなら、芸術学部の映画学科を出て
映画会社に入る、なんていうのが順当な人生。
でも、個人映画を作っていたいというその人は
そんなに、お金儲けには興味がないのだろうし
もの作りに信念のある人、なのだろう。
商業的に作品を作るのは、人によっては辛い時もあるからだ。
そういう、主張のある人生を送っている人は
好みもあるけれど、いまのめぐ、には
ちょっと重い、と思わせるだけの雰囲気があって。
例えば軽妙洒脱なルーフィの自由さとは
対極をなすものだった。
もちろん、それは感覚。
でも、恋って感覚。それでいいのだ。
そういう「今」のめぐと、最初の人生のめぐとは
同じ人。
でも、人から見る彼女の雰囲気が、今は自由闊達で
生き生き、やや奔放に見えたりするあたり(笑)
とってもステキなのだけど。
かつての人生では、魔物に追われたせいで
慎重になってしまっていて。
そこが、映写技師さんに好まれて。
今は、そうではなくて。
「ようこそ、いらっしゃい。」と、映写技師さんは
展望席の椅子から立ち上がり、ふたりに椅子を勧めた。
スカイレストラン
夏休みなので、お客さんは
そこそこ入っていた。
ちょっと、高級感があるし
カジュアルな服装では入れない。
そんなところもあって、静か。
そのあたりも、レストランを好む人たちには
好評で
景色を眺めながら、美味しいものを静かに頂きたいと言う、穏やかな趣味のひとお
賑やかに談笑しながら、会食をしたいと言う人達とは
相容れないのも、仕方ないところ。
なかなか、このあたりは
事前に判るものでもないので
入ってから、しまった、と
思わないように。
入り口に看板でも立てればいい、と
思ったり(笑)。
このお店は、公共の施設にあって
静かに、料理を楽しむところだった。
それなので、めぐたち若者には
あまり縁のないところだったりもする。
「はじめまして」と映写技師さんは
クリスタさんに挨拶。
クリスタさんもご挨拶をして。
「僕は、映画を作っている者なのですけれど。映画、と言っても
ほんの趣味程度のもので。
時々、ここのシアターで
上映させてもらっています。」
この町は、割と文化的に
すこし遅れてる(笑)と市長さんが
思ったのか
文化事業に力を入れていて。
彼のような創作をする人達に
シアターを貸してあげたり。
演劇を、シティホールで行ったり。
そんなわけで、この町にも
作家志望の人達が、少しづつ
集まってきたり、していた。
「それで、御呼び立てした理由は・・簡単に言うと、お二人に
出演して頂けたら、と思って。
お願いに上がった訳です。」
めぐは、ちょっと勘違いしていた
自分が可笑しくて
笑いだしたくなった。
クリスタさんを、デートに誘ったのかと
思ったので(笑)。
それは、そうなのかもしれないけど(笑)
でも、さりげない誘いかたで
女の子としては、映画に出て、と
言われると
ちょっと、嬉しいかもしれなかった。
めぐは「ヌードはないですね」と
ユーモアたっぷりに言うので
映写技師さんは、笑ってしまった。
「もちろん、ないです。いや、
おのぞみならば・・・・」と
にっこり。
「まあ」と、その大人っぽい
ユーモアに
めぐは、少しどっきり(笑)。
めぐよりも、年上の映写技師さんは結構、大人なんだ。
そんな事を、その会話の中で
めぐは、感じた。
そういうふうに、少しづつ
おとな、になっていくのかしら。
そんなことを、めぐは思った。
クリスタさんは、のんびりと
話を聞いてる。
別に、ヌードの話にも
何も感じる事もないのは
元々、天使って
セミヌード(笑)みたいな格好
だからか。
クリスタさんは、ふつうに
服を着ているけど。
「ありがとうございます、これから
夏休みで旅行に行く予定なので・・」
スケジュールが合えば、別に
出てあげてもいいわ(笑)。
女優さんみたいな気分を
めぐは楽しんで。
クリスタさんは、黙って聞いてて
「わたしは・・・そうですね。
めぐさんと一緒なら・・・・」と
そんなに、興味がある感じでも
なさそう。
女優、めぐ
それは、ちょっと意外な言葉だったけれども
映画好き青年が、自分の作品に
出てほしい、と言うなら
憎からず思っているのであろう。
悪役でない限り(笑)。
「クリスタさんは、いかがですか」と
彼は誘う。
それは、やはり好意を持っているのであろう。
見た目、結構カッコイイ感じの
映写技師さんではある。
しかし、慎重な誘いかたに
めぐは、彼の優しい人柄を思った。
そうは言っても、好きな人とは
ちょっと違ってる(笑)。
それはそうかもしれない(笑)。
それで
「旅行に行っている間は、すみません、ちょっと無理です・・。」と、めぐは告げた。
クリスタさんも「ひとりでは少し・・・・。」
と、言う。
映写技師さんは、それを残念がるでもなく。にこにこと微笑んで。
その笑顔を、めぐは
アメリカの映画作家の、・・・誰だったか。
有名なひと。
その人が、おひげを剃って
若くなったら、こんな感じかしら。
そんなふうに、空想したりして
映画がヒットして、あたしは
女優になれるのかなー(笑)。
なんて、楽しい空想をしたり。
お芝居なんてしたことないのに(笑)。
「それじゃ、秋になったら。
いつでもいいです、教えてください。
」
と、彼は、男らしくさっぱりと告げた。
そして「なにか、ご馳走しましょう」と。
でも、そんなに休憩時間はないので
とりあえず、めぐはレモネード・スパーリング。
クリスタさんは天使なので、何も摂らなくていいのだけど
いまは、人間でもなく
天使でもない、なんて
説明するのも変、なので
とりあえず、めぐと同じものを頼んだ。
元々実体がない天使さんだったので
つまり、理論物理学的に言えば
それは、4次元以上の存在だと
言う事になるので
たぶん、食べたり飲んだりしたものは
そのまま異次元の空間に消えるはずで
とても小さな点、0次元に凝縮されて
無限大のエネルギーに転換できるはず、であるから
それを転用して、時空間を旅行する事も
あるいはできるかもしれなかった。
レモネード・スパーリングは
爽やかで、刺激的。
夏に似合いだね、と
レストランのシェフも言っていたっけ。
そんな事を思いながら
めぐは、短い休憩時間を
楽しんだ。
まあ、若いし、プランが一杯あるから
休んでるなんて、もったいないって
思ったりしちゃうんだけど、
それでも、地上の時間は3次元的に刻々と進む。
いつか、4次元の時間の流れに慣れてしまうと
それが鬱陶しいと思うようになるかもしれないけれど.....。
時間旅行もそうだし、通信、例えばインターネットなどは
電気通信の場合、音の速さで進む。 340m/sである。
その上、話題の「量子テレポーティング」のように
波の概念で通信しているから
見かけ上、一瞬で通信できてしまうし
情報そのものは、記憶されたものである。
つまり、時間の概念が無い。
リアルタイムの通信以外は、の話だが。
従って擬似4次元とも言えるので
その、偽時空に慣れてしまっていると
ほんものの、3次元の時空は、まどろっこしく感じる人も居る。
その上、自分の好みの情報だけと遊んでいるので
そうでない時、それは楽しくない気分になる。
禁断症状、などとオーバーに表現する医師もいるが
人によるけれど、そういう事も起こり得る。
それはもちろん、時間旅行のように
自分の体がどこかへ行ってしまうような事は、もちろんないのだけれど。
映画作家にも、その映画の世界に耽溺してしまうタイプもいて
そういう人は、現実の世界ではしばし怒りっぽかったりする。
それは、なんでも思い通りになる世界から、外に出てしまったから、で
小説家にもそういう人も多い(笑)。
ニンゲンのアタマは、そのくらい柔軟に環境に合わせてしまうのである。
映画も
小説も
インターネットも
ニンゲンの作り出したもの、それがニンゲンのアタマを変えてしまうのは
不思議な事。
そうはなっていないめぐ、も映写技師さんも
幸せだ。
ただ、めぐの場合
これから時間旅行をすると、どうなってしまうかは
自身にも分からない。
未体験のことだからだ。
もともと、時間旅行者は昔から居たようで
予言者と言われたり、神と言われたり。
果てまた、音楽の大作家であったり。
そういう人は、時間旅行の能力者であったのかもしれないと
訪ねて歩いていたMegとルーフィ。
彼らが、過去に旅して
音楽作家と遭遇し、彼らに閃きが起こった。
そんなこともあったくらいだから
他にも時間旅行者は居るのだろう。
魔法が使えない
それで、映写技師さんとの
デート(笑?)も、終わり。
でも、女優になれるかなー、なんて
めぐは、わくわくだった。
クリスタさんがお目当てとは言え(笑)
おまけだって、いいもん。
大きなスクリーンで、お芝居をして。
すてきなラブストーリー、スペクタクル。
かっこいいお話もいいな。
夢は膨らむハイティーンだった。
結局、その日の
アルバイトは、夕方まで
図書館に居てしまって。
平日の閉館は午後5時。
「さ、おしまい!」と、めぐは
クリスタさんに言って。
「おつかれさまでした」と、
クリスタさん。
そういえば、天使さんだった時は
すこし、幼いような感じに見える事も
あったのだけれども。
少しの間に、ずいぶんと
レディーらしい雰囲気になった。
映写技師さんが、ヒロインにしたくなるような
そんな女の子(笑見た目ね。中身は天使さんだから、男でも女の子でもない。でもそれば、人間も一緒だけど)。
になった。
「ルーフィさんたちは、どうしたのかしら」
と、めぐが気づく。
「お帰りになったのではないでしょうか。」と、クリスタさん。
だいぶ、時間が経っているから
そうかもしれないな、とめぐは思う。
書庫のほうから、主任さn。
主任さんに「おつかれさまでした」と
ご挨拶。
「やあ、ありがとう。おつかれさま」と
主任さんは、にこにこ。
「済まないね、甥がわがままを言って。」
とも。
「いいえ、レモネードを頂きました」
と、めぐは正直に。
「もっと、高いものを頼んであげればいいのに」と、主任さんも楽しそう。
「はい。あ、サンドイッチ頼むの忘れちゃった。」と、めぐはユーモア。
ははは、と、主任さんは笑って
「それで、あいつはなんて言ってた
?」と。
「映画に出てほしい、って。」と
めぐはそのまんま、言った。」
主任さんは、少し思案顔で
「そっか。それって、気に入ってるんだよ、きっと。」と、面白い事を言った。
映画好きが、映画に出てほしい、ってのは
心の中に君がいる、って事だから。
そんな事を、主任さんは言った。
主任さんも、やっぱりめぐたち
みたいな、いい子には
幸せになってほしいのだろう。
でも、自分がパートナーになる訳にもいかない(笑)。
そんな風景、主任さんは
自分から、そう思って。
かっこいい甥だったら、と
そんなふうに、思ってて。
甥の申し出を、受け入れた。
お父さんみたいな主任さんの、そういうところは
実は、めぐ好みだったりもする。
でも、分別のある主任さんは
それを、言葉にする事もない。
いい人だ。
でも、もし、恋する言葉を語れば
甥と、叔父は
恋敵?
いやいや、甥のお目当ては
クリスタさんだから(笑)。
カップル2つ、になるだけだ。
でも、めぐはルーフィを思っているから
それは、叶う事のない恋、に
なるかもしれないけれど・・・・。
その夜、家に帰ってから
ルーフィは、めぐに
魔法の、基本的な使い方を教えた。
時間旅行をするための、魔法陣。
慣れるまで、紙に書いて練習してね。と。
円を描いて、方位座標を描く。
それで、どこに行きたいか、を
念じ易くするのだ。
慣れれば、ルーフィのように
宇宙を目指し、空間に心で描いたりする。
「やってみて?」と、ルーフィは言う。
ルーフィの記憶では、めぐは能力を
持っていた。
それを、天使さんのために
封印していたのだった。
封印を解放するメッセージも
その、魔法陣に書いてある。
「わたし、できるかしら・・・・?」
いまのめぐは、魔法を使った事はない。
前の人生の、その経験は
忘れている。
「こころで思ってみて?」
と、ルーフィは言う。
それで、めぐは
なんとなく・・・思ってみた。
でも、何も起こらない(笑)。
はて?
(笑)魔法、使えないの?
どうしちゃったんだろ
「確か、おじいちゃんのところに
行きたい、って思った時は・・・」
めまいみたいに、ゆらゆらした。
そう、めぐは言う。
ルーフィは「それなら、大丈夫だと思うけど・・・。」
と、魔法陣の書式を見てみる。
間違いはない。
封印も解放されている。
それなら、どうしてだろう?
どう思う?と、ルーフィは
わたしに感想を求めた。
「わたしにわかる訳ないでしょ」と
言いかけて。
そういえば、わたしがどうして魔法を使えるようになったのか?も
よくわからない。
「最初はさ、わたしって
ルーフィにくっついて跳んでたんだよね。」
と、思い出す。
それから「なにか、気掛かりな事とかない?」と
わたしは、めぐに聞いてみる。
「ないと、思うけど・・・・・。」
と、めぐは思案顔。
テラスには、夕暮れの風。
「まあ、手をつないで
飛んで行くのもいいけど・・・・・。」
と、ルーフィはちょっと、思案顔。
科学者のような、彼の思考では
たぶん、原因を類推してるのだろう。
・・・・・こころの奥で、自分でも
気づかないほどの、気掛かり。
・・・・・なんだろうなぁ(笑)。
ルーフィにも、ちょっとわからなくて
テラスから、2階に戻って。
自分の、ロフトへ戻ろうかと
思っていた。でも
思い直し、おばあちゃんのところへ。
おばあちゃんなら、何か
わかるかも。
そんなふうに、漠然と期待して。
階下に下ると、右手がおばあちゃんのお部屋。
扉は開いている。けれど
おばあちゃんの姿はなかった。
畑かな・・・・・。
ルーフィは思い、暗くなってた
畑の方を見た。
農機具小屋に明かりが点いている。
あっちかな?
裏口から、サンダルで
とっとこと、と
歩いていく。
おばあちゃんは、果たして
農機具小屋にいた。
「おや、ルーフィさん」と
おばあちゃんは、にこにこ。
その笑顔のムードは
めぐに、なんとなく似ている。
「こんばんは」と
ルーフィは、ごあいさつ。
その、ルーフィの顔を見て、おばあちゃんは
「魔法、うまくいかなかったの。」
と。
「ご存知でしたか」と、ルーフィ。
「テラスでお話してるから、聞こえちゃうもの」と、おばあちゃんはにこにこ。
「はい、それで、すこし・・・・・教えて頂きたいと思いまして。」と
ルーフィは、真面目に。
めぐが、気掛かりにしている事について
心あたりを尋ねてみた。
おばあちゃんは「・・・・そうねぇ。
めぐは、ルーフィさんがとっても好きだから・・・・その事かしら。
でも、ルーフィさんには・・・。
」
パートナーが決まってて。
そのパートナーは、めぐ自身の3年後と、同じだけど
違う世界の人。
名前も同じで、すがたかたちの
似ている、別の時空間の人・・・。
と、おばあちゃんは言う。
「恋の悩み、ですか」と、ルーフィは
直裁に言った。
それなら、魔法を使えるようになるのは・・・・・。
めぐが、自身の恋心と
向かい合わないと・・・・。
それは、神様のいたずらだったかもしれない。
めぐの恋心を、残しておく必然はどこにもなかった。
消す必要もなかったけれど(笑)。
それによって魔法の力が封印されたままになれば
魔法使いがひとり、この世に生まれなかった事になるけれど・・・。
気がかりな事。
ただの恋がそれほど気がかりか、と言うと
そんなこともないよ、と
めぐ自身は言う。
恋と言うよりも、無意識に思慕してしまう。
そういう恋愛は、かなり困った状態だ。
本人にも分からないところで、心が軋んでしまう。
古くからある類推的な精神医学では、それを原初体験のせい、なんて
類推する。
有名なビートルズのジョン・レノンが相談した、アーサー・ヤノフと言う
お医者さんの説明だと
人生で初めて受けた経験が、心に影響を与えると言う
至極当然な事、なのだけど。
それは普通、心のストレスなどの説明に使われる。
今、アメリカのお医者さんもこの考え方に沿ってマニュアルを作り
DSM(精神分析マニュアル、と言う単純な名前の略)と言うその本は
しばし、法廷でも判定の根拠とされる存在になっていたりする。
恋もまた、心から見るとストレス(力)である。
めぐの心に、生まれて初めての経験。
どんな経験か分からないが、それが嗜好として
ルーフィのもつ、何かを好ませている。
無意識なのだけれども・・・・。
あるいは、生まれる前、もっと前の記憶を
めぐは、忘れないで持っているのかもしれない。
例えば、前世で魔法使いに関わりがあった、と言うような・・・。
「わかりました。とりあえず、僕らは一旦帰らないと
向こうの世界の僕たちが消滅してしまうかもしれないので
Megとふたりで戻れるか、どうか
考えてみます。」と、ルーフィはおばあちゃんに言った。
「そう。めぐともしばらくのお別れね。それだと。」と
おばあちゃんは、ちょっと淋しそうに。
「はい、お話をめぐちゃんにしてみます。」と、ルーフィもやや、悲しげ。
ほんとうは、一緒に行きたかったんだろうになぁ。....。手をつないで飛ぼうか?。
ルーフィは、そうも思った。
でも、普通の時間旅行と違って、次元を越える旅だし
Megの場合は、魔法の力を持っていたので
その、行き先を支えてあげただけ。
能力が封印されているとなると....。ルーフィ自身の能力で
めぐを飛ばせるか?は、難しい判断だった。
恋心
「恋心・・・・か」
ルーフィから、めぐの恋心が
集中力をリタードしていると聞いて。
「そういえば、恋すると
勉強ができなくなるとか・・・。」
学生の頃、先生が言ってたっけ。
女子高だから、女の先生も多くて。
そんな、ざっくばらんな話も
多かった。
男の先生とは違う、ちょっと言えないような話も(笑)
女同士ならではで。
楽しかった思い出がある。
「そっかぁ。」とルーフィは言う。
「なんかさ、その封印解除って
気合い入れるとか。魔法の杖持って呪文唱えるとかすれば
効くんじゃない?」と
わたしは、ちょっとユーモア。
「それじゃ漫画だよ」と
ルーフィも、そう言いながら
楽しそう。
「めぐちゃんだったら、かわいいかもね。」と、ルーフィも楽しそう。
「わたしはかわいくないのかー。」
と、わたしもユーモラスに。
「そんなことないけど」と、ルーフィも楽しそうに。
でも、魔法って
そういうふうに使った方がドラマチックでいいかも。
映像的にはね。
あの、映写技師さんも
ひょっとしたら魔法使いの映画を
撮影したかったのかな?
なんて、わたしは
楽しい想像をしたりした。
クリスタさんとめぐが
双子の魔法使いで、クリスタさんは
天使、めぐは人間で。
事件を推理しながら解決!
魔法で、封印解除!
ルーフィは「それじゃホントに
漫画だよ」と、大笑い。
いいと思うけど(笑)。
真面目なお話をしてても、どことなく
ユーモラスなのが、わたしたち。
でも、めぐは真剣だった。
「旅行にいけないの?」と。
がっかり。
ルーフィは「いや、そうじゃなくって。
とりあえず、僕らには時間がないから
先に、一旦帰って。
向こうの時間をリセットするんだ。
それから、めぐちゃんは
魔法を使えるように、集中力を
養ってから。
旅行するといいよ。
」と、ルーフィは言った。
めぐは、黙って聞いていたけれど
こころのなかには、不安が渦巻いていて
・・・・・・もう、会えないの?
そんな、気持ちが心の奥に。
そういう、別離不安のようなものが
めぐのどこかにあったりするのは
そういう体験、だれか、親しい人との
お別れとか、そんな記憶が
どこかにあったりするのかも
しれなかった。
そういう経験があったりすると
優しい気持ちになれたり。
思いやりを持てたり。
そんなふうに、ひとの気持ちは
出来ていたりする。
なので、捕え所のない
時間旅行の先にある、ルーフィとの
関係は
いかにも不安なものに、めぐには
思えたりしても、それは
仕方なかったりする。
しかし、めぐはそれを
言葉にする事もない。
言っても仕方ない。
そう、理論的に考える子、賢い子だったから。
旅立ち
わたしたちは、とりあえず
時間がなかったので
めぐが、魔法を使えるようになるまで
待たずに(笑)。
とりあえず、出発する事にした。
「じゃ、めぐ、残念だけど。」と
わたしは、もうひとりのわたしに
言葉を掛けた。
すぐにもどってこれるわよ。と
わたしは言ったけど、さて、いつになる事か
本当のところはわからなかった。
向こう側、わたしたちの世界では
ほんの一瞬、つまり
時間軸、空間軸を短く縮小して
そのエネルギーを、4次元的に変換して
時間旅行をした。
なので、向こうにある0次元の点になってる、わたしたちの実体を
3次元に戻す。
いま、ここにいるわたしはエネルギー体なのであるけれど
向こうで、3次元に実体化するだけの
エネルギーがないと、小さくなってしまう。
ルーフィは、とりあえず
ぬいぐるみに宿って、実体化を
避けているので
長く、滞在できている。
それはもちろん、魔法使いとして
わたしたちの世界では、居る事ができないから。
古く、16世紀ヨーロッパで
魔女狩りが起こったりしたように
いまの科学者に見つかったら
「研究のため」と称して
逮捕されちゃうかもしれない(笑)。
それを思うと、めぐが
来れないのは、安全のためには
いい事だ。
ルーフィは別にしても
かわいい女の子だと、注目を
得るのは仕方ないもの。。。
20世紀のドイツで、人魚を研究と言って
やっぱり女の子が捕らえられたりした事も
異端者が、好奇の対象になるって
事の表れで
まして、めぐみたいな女の子だったら・・・・
サーカスに売られてしまうかも(笑)。
「お世話になりました」
と、わたしたちは
めぐのおばあちゃん、おとうさん、おかあさんにご挨拶。
それぞれに、別れを惜しみ
残念に思っていたけれど
一番残念に思っていたのは、
やっぱり、めぐ自身だった。
わたしたちが、旅立とうとして
テラスに出て。
おばあちゃんのお土産一杯の
手提げ袋をぶら下げて(笑)。
来るときは手ぶらだったのにな(笑)。
「じゃ、行くよ」
ルーフィは、空間に魔法陣を描いた。
わたしには、光って見えるけれど
それは、ふつうのひとには見えないものらしい。
すう、と
ルーフィ、それとわたしは
その魔法陣を使って。
魔法の絨毯のように、飛翔した。
4次元の移動なので、加速感もまるでなくて
移動している実感もない。
瞬間に、空間自体が移動する感じ。
あの、三角屋根のお家も、草原も。
図書館も。
みんな、小さくなって。
高い空、お星様に手が届きそうなくらいの空。
そこまで昇った。
周りにあるものを、一緒に転送して
しまわないために。
地上のめぐは、その様子を見上げていた。
おとなしく、見守っていたけれども。
心は、叫びをあげていた。
「待って!」
その叫びが、めぐを集中させた。
めぐの周囲の空間が、ゆらり、と
陽炎のように揺らいだ・・・・・。
それからめぐの身に起こった事は、わたし、Megには
よく分かる体験だった。
時間と空間を最初に飛び越える時、とても不安な気持ちになって。
過ぎ去った時、開放感がある。
めぐは、集中力を恋のために欠いていた。
けれど、その恋の為に集中した。
それは、ちょっとルーフィにも思いつかない修行だった(笑)。
女の子の恋する気持は、それほど深いものなのね。
ルーフィは、その、めぐの異変にすぐに気づく。
同じ軌跡で追って来るエネルギー体は、魔法使い同士なら
雰囲気、で分かる。
「めぐちゃん。」と、ルーフィが言うので
わたしも気づいた。
でも....すこし座標がずれているみたい。
わたしたちの後を追っているにしても
宇宙船でも、コンピュータでもない。
渡来鳥のような、感覚と
あとは、魔方陣での座標設定が頼りだけど
わたしが失敗して、めぐの時空へ行ってしまったように
この時のめぐは、魔方陣を使わずに飛び出してしまった。
地図を持たずに航海してしまったのだ。
「どこへ行くんだろう」と、ルーフィは
めぐに話しかけようとしたが
時空間を移動している間は、言葉は通じない。
念じて告げるのだけれども
その方法を、まだ、めぐは覚えていなかった。
2D
わたしたちは、元の世界に戻った。
来た時の、あの
カフェのテーブル、同じ時間。
どうやら、間に合った。
「めぐちゃんは?」と
ルーフィは、わんこのぬいぐるみ姿に戻って。
トートバッグの中で話している。
グラスの氷が溶けない時間。
つまり、ほんの数秒しか
こちらの世界は動いていない。
その間に、わたしたちは、あんな
160ページも(笑)旅をしてきた。
「長い旅だったけど、めぐはどこに行ったのかしら?」
ルーフィは、量子コンピュータのデータを見て「ここには来ていない。」
そう言って。
「じゃ、どこに行ったの?」と
わたしは、気持ちの焦りを感じ・・・。
ルーフィは、少し考える。そして
「こちらの時空間に達していないなら、まだ向こうに居ると思った方が妥当だろうね。」と。
「怖い事になってないかしら。」と
わたしは心配。
大丈夫、と
ルーフィは笑顔で
「自分の意思で飛んだのだから、望まないところには行かないと思う。
ただ、座標がずれて
変なところに下りたのだろう。
最初、ここから君が飛び立った時に
めぐちゃんの世界に、間違って下りたように。。」
なるほど・・・・めぐとわたしは似てるのね。
同じひとだもん(笑)。
それにしても、どこに??
ルーフィは「すぐに戻ってみよう。
とりあえず、ここじゃあ時間が経つと
0次元になった僕らが、ゴミに混じって
捨てられちゃうと困るから(笑)。
0次元モデルを、君のお部屋にでも
置いといて(笑)。
」
と、ルーフィは言った。
とりあえず、僕は戻って見る。
そういって、ルーフィは空間に消えた。
その頃、めぐは・・・・。
大好きな図書館の、インクの匂いに囲まれていた。
気づいて、見上げると。
見慣れた図書館の天井が見える。
「どうしちゃったの?」と
めぐは記憶を辿る。
夜、ルーフィさんの後を追って飛び出した。
それで、飛んでいるうちに
ゆきさきが、わからなくなった。
気づいたら、こうなっていた。
図書館は、見慣れた場所だけど。
天井が、大きく感じる。
それに、インクの匂い。
暗いところを見ると、閉館時刻を過ぎているらしい。
なぜ、天井が見えるの?
よくわからずに、周りを見回す。
めぐは、床、昼間クリスタさんと
子供達と本を読んだ
あの小部屋に居るらしい、と気づく。
でも、なんとなく変だと思ったのは
床から動けない。
よくよく、見回して見ると
それは、巨大な紙に「ゆきのひとひら」と印刷された
絵本の表紙・・・・・。
と、思ったのはめぐの勘違い。
紙が巨大なのではなく、めぐが
小さくなって
「ゆきのひとひら」の
絵本の中に、2次元化して移動したのだった。
「どうしよう・・・・?」
めぐは、魔法使い。
だけど、修業中。
だから、こんな事になってしまった。
「ルーフィさんの後を追ってしまって・・・・。」
ちょっと後悔した。
でもそれは、めぐの心が
勝手に動いてしまったから。
好き、なんて気持ちは
自分ではどうしようもないもの。
悲しくなってしまって。めぐは
心細さからか、落涙した。
2次元の絵本に、旅行してしまった。
時間は変わっていないので次元旅行と言うんだろう。
「ゆきのひとひら」は
好きなお話だけど、でも
その中に入ってしまって。
帰る方法も分からない。
そんな、心細さから....。
3次元、立体の世界から
2次元、平面の世界に移動しているので
1次元分のエネルギーが変換される。
つまり、平面同士の移動は可能と言う事だろう。
めぐは、その事に気づいているのかどうか...?。
絵本の表紙のところに、自分が立っていて。
涙がこぼれて、本の僅かな傾きに沿って
流れるのをめぐは見て。
本がよごれちゃう.....。
それを、ハンカチ-フで拭おうとして、気づく。
「平面の上なら動けるわ....。」
それなので、このままでは
誰かに見つかってしまうと思って。
絵本の次のページに移動した。
平面ー平面の間なら、めぐは3次元の世界から来たので
その -1次元のエネルギーで移動できる。
その事に気づく。
1ページ目は、雪雲の上で、スノー・フレイクが目覚める場面だった。
その、雪雲の上に、めぐは、ぽよん、と降りた。
天使さんが見たら、微笑むかもしれないような愛らしさで。
ほんの少し前、悲しみに暮れていためぐは
楽しさでいっぱいになった。
「ご本の中の世界にふれるのも、楽しい」
そう、絵本の中に入ってみたら。
好きな絵本の事を、子供たちに
楽しくおはなしできるかも。
そんなことを思うと、ここにいるのも
そう悪くないかな、なんて思ったり。
最初のページでは、おひさまも風も、ゆきくもも。
みんな、生まれたてのスノー・フレイクさんに
ごあいさつ。
そんなシーンだったのですけれど
その、みんなのうちのひとりに
めぐ、も加わって(笑)。
「はじめまして、スノー・フレイクさん」と、めぐはごあいさつ。
スノー・フレイクも、にこやかに「はじめまして、わたしはゆきの、ひとひらです。」
めぐも、にこやかに「わたしは、まーがれっと。みんなめぐ、って呼ぶの。
となりの世界から来たの」
もちろん、この会話は絵本を読む人には見えない(笑)。
スノー・フレイクは、楽しそうに「いい旅をなさってください」と言って
雪野原に、ひらひらと舞い降りて行きました。
めぐは、「いつか、このことをちいさな子にお話してあげたいな」なんて
思いながら。
舞い降りていくスノー・フレイクを目で追って。
どこまでも続く雪の原、丘の上の大きな木。
粉雪と一緒のスノー・フレイク。
雪雲の上から、それを見ていて。
もちろん、2次元のお話なので
舞い降りていく絵、なのですから
めぐも、その雪の原に降りて行きたくなりました。
「えい!」
魔法も何も要らないのです。
雪の原に、雲から飛び降りても
何もおこりません(笑)
それはそれは、不思議な事でした。
ゆきのひとひら
スノー・フレイクの後を追って
雪の丘に飛び降りためぐは、ごきげんでした。
大好きな本の世界に入れるなんて。
先行きの不安とか、そんなものも
この時は忘れています。
丘の上の、大きな木の向こうから
ゆきうさぎさんが、ぴょこぴょこ。。
丘は、まーるくなっているので
スノー・フレイクさんに会う前、めぐに会っていたのです。
そちら側は、絵本には書いてありませんけれど。
ゆきうさぎさんにも、「こんにちは」と
めぐは、ごあいさつしました。
ゆきうさぎさんは「ごきげんよう」と
ながいおミミを、ぴょこぴょこしました。
「どちらから?」と
ゆきうさぎさんは、話し掛けてきたので
めぐは、びっくりしました。
絵本では、お話はできなかったのに・・・・。と思っていると
「そう、あなたは魔法使いさんね。
それで、コトバがわかるのね。」と
ゆきうさぎさんは、言います。
めぐは驚いて「魔法使いさんが、
絵本の中を旅するのですか?」と
尋ねました。
すると、ゆきうさぎさんは、
「はい、時々会いますね。
カードを集めてる魔法使いさんとか。魔物を追っている方とか。」
魔物、と聞いて
めぐは、ちょっとどきりとしました。
・・・・・昔の事かしら。
いえいえ、それは絵本のような
物語の中の事。
ルーフィさんが働いてくれたし
神様が粛正して下さったので
この世界は、もう魔物は居ないのです・・・・・。
「魔法使いさんは、どこから帰っていきましたか、ご存知ないですか?」
と、めぐは
ゆきうさぎさんに聞きます。
ゆきうさぎさんは、にっこりとして
「絵本のページから、いきなり
飛び出して行くの。
来る時も、あなたのように。」
と、ゆきうさぎさんは
おそらを見上げました。
遠い、遠い宇宙は
2Dなので、果てがあるのです。
めぐたちの宇宙は、3Dなので
果てはありません。
どこまで真っ直ぐ進んでいこうとしても
必ず曲がってしまって、どこかに行ってしまうのです。
その、曲がってしまったところに
4Dの、別の宇宙があったりします。
人はそれを、ホワイトホールとか
ブラックホール、なんて言ったりして。
歪みの境界は、魔法でないと
飛び越える事はできないのです。
Take on me
その頃、ルーフィは
時空間を飛び越えて
元の、めぐのいる世界に
戻った。
「どこにいるのだろう?」
魔法を使っているなら、雰囲気で
わかる。
量子コンピュータを使って重力測定をする。
そうすると、、3次元の空間と
重力場が違っているところ、そこに
次元の違う場所、つまり
魔法使いが居る可能性がある。
そう推理しながら、上空を飛んだ。
ハイスクール、駅、港。
もう夜遅く、寝静まった町は
風も睡っているかのようだ。
図書館のあたりに、わずかに
異なる重力場を発見した。
かなり軽微なものであるが。
「・・・・なんだろう?」
ルーフィはそこに下りてみようと思った。
しかし、入り口には鍵が掛かっているし
セキュリティーのカメラに写ったりするのも、ちょっと困る(笑)。
どうしようかな・・・・・・と
ルーフィは、飛びながら考えた。
めぐは、ゆきうさぎさんとお話をして帰れるヒントを貰った。
3次元に実体化すれば、ここを出られるんだ。
とはいえ、その方法は
まだ知らない。
丘の向こう側で、スノー・フレイクさんと
ゆきうさぎさんが、心を通わす様を
見ていた。
もちろん、丘の向こう側なので
絵本には書かれていない。
ゆきうさぎさんは、丘の頂きの
こちらがわに、戻ってきた。
絵本のストーリーでは
スノー・フレイクは
うさぎさんに元気を貰って
心温まる、そういうところ。
優しいゆきのひとひら、もうひとりの
スノー・ウィに出会って。
仲良くなる、そんなところを
丘のこちらがわから窺い知った。
もちろん、ゆきのひとひらだから
スノー・フレイクも、スノー・ウィも
男の子でも女の子でもないんだけど
めぐは、女の子なので
その、スノー・ウィを
青年のようにイメージして見ていた。
絵本のなかのお話では
その、スノー・ウィは
スノー・フレイクと恋をする。
やさしくエスコートされて。
めぐは、そんな様子を見ていて
しあわせっていいな、と思う。
めぐ自身は、なぜか、ルーフィを好きになって。
ルーフィは優しい。お父さんみたいに。
それはそれでいいのだけれど・・・・。
スノー・ウィが、スノー・フレイクを愛するように
あたしだけを愛してくれないかしら。
でも、ルーフィのパートナー、Megは
実は、ルーフィの世界で言えば、マーガレット、つまり
Meg自体の3年後と相似な3次元モデル(笑)と言う訳なので。
運命のいたずら、かしら。
魔法使いでなかったら、ルーフィがMegと出会うこともなかったし
めぐと出会う事もなかった。
から、次元を超えて3人が出会う事もない。
そういう恋の方程式の帰結も、ない(笑)。
絵本の中では季節が過ぎて、春がやってきて。
スノー・フレイクと、スノー・ウィは
愛しあうカップルになっていった。
でも、雪解けの季節が来て。
ふたりは、溶けていってしまう・・・・。
「ありがとう」と、スノー・フレイクは
スノー・ウィに言いました。
きらきら六角形の、雪の結晶だった
ふたりは、まるい、水玉になります・・・・。
めぐは、涙ぐんでしまいます。
ふたりが、手をつないだまま
ふたつの水玉になり・・・・。
ふるさとの丘を、清らかな流れに乗って
雪割り草の小川を。
春のおひさま、きらきら。
めぐは、感涙します。
愛。
すてきな気持です・・・・。
そう思うのは、めぐが恋しているから、かもしれません。




