「転生したらダンジョンの番人ミノタウロスのキン◯マだった件」
四人の同級生が織りなす青春群像劇!って書いたら怒られそうな物語です。
◇登場人物
町田さとる(マチルダ)…主人公、エロい
ナツ…ヤンキー女
林…関西弁の笑い上戸
トミー…唯一まじめ
「ギャハハハハ!」
林が腹を抱えて笑っている。おれはそんなに面白い発言をしたおぼえはないんだが……
昨日の夜、風呂に入っている時にビビっときた小説のタイトルを、ただコイツらに告げただけだ。
「おいマチルダ……お前さぁ、あたしが女だってこと忘れてんだろ?いきなり下ネタとは驚いたぜ」
ナツが軽蔑の眼差しでおれをで見やる。
「いや、おれは真剣に考えた結果、このタイトルなら間違いなく賞を獲れるとおもったんだよ!」
ナツからマチルダと呼ばれたおれ、本名『町田さとる』は、学校終わりの放課後、友達の『林』と『ナツ』と『トミー』と一緒に、某バーガーショップにて
高校二年生初夏の『だらけた青春』を消費している最中だ。
まだ腹を抱えてヒーヒーとわらっている林を横目に、富井がレモンティーにシロップを注ぐ。
「ナツ、あそこの小説投稿サイトはね、とにかく尖ったタイトルを付けて読者の目を引かなきゃ駄目なんだよ。マチルダがつけたタイトルはいいと思うよ。ただ、肝心のストーリーは?」
「アホか、んなもん、この万年発情期がちゃんと考えてるわけねーだろ」
ナツはポテトをひとつまみして、林が注文したナゲットのソースにそれをくぐらせた。
「昼休みにウチの教室に来て、真剣な顔であたしらに相談があるって言っておいて、開口一番『牛のキンタ◯』だぞ。バカバカしい」
ナツはソースをたっぷり付けたポテトを口に運ぶ。
そう、じつはこのおれ、町田さとるはとある小説投稿サイトへ自作の小説を投稿しようとしているのだ。
きっかけはトミーだ。コイツは半年前からそのサイトへ長編小説をほぼ毎日投稿していたんだが、最近になって読者が増えているらしく、以来トミーは調子に乗っている。
このまま固定のファンがつけば、いずれなんらかの賞を獲って作品が書籍化されたり、アニメ化されたりパチンコ化されたりするのも夢じゃないと話す。
そんなビッグドリームを聞かされてジッとしてはいられない性格のおれは、先週このサイトに登録、一晩で書き上げた会心の処女作『異世界で盗んだ野菜を、女勇者に(下から)食べさせたら結婚できた件』を投稿した。
しかし、おれの書いた物語はPVは6で止まってしまう。しかもその内の半分はナツと林とトミーだ。
悲運はつづく、おれの小説は運営から規約違反の理由で速攻で消され、その短い生涯に幕を下ろしたのだった。
「そもそも前回の、なんだっけ?……女勇者にアッチから野菜を食べさせる?つー話なんて、あは〜ん、とかいや〜ん、とかばっかり書いてあって中身スカスカだったんだぜ期待できねーよ」
ナツは足を組み直してソファーにもたれかかった。
「確かそうだったね。文法もめちゃくちゃだったし、小学生みたいに伏せ字無しで性器の名称を連発してた……それより林、笑い声がデカいよ。この店出禁になる」
トミーがバカ笑いしている林へ、ジュースを勧める。
「はぁー…はぁー…悪りぃ悪りぃ。おいマチ、お前の頭の中はエロい事で満たされすぎちゃうか?将来ハゲるで」
林は指で目に溜まった涙を拭う。
「エロい事で頭がいっぱいなんて、健全な高校生ならみんなそうだろう?」
「お前と一緒にするな」
三人から同時に突っ込まれた。
「む…まぁいい、ではお前らにこの物語の設定からおしえてやろう。まず、主人公は35歳無職、職歴なしデブハゲ引きこもりだ。そいつがある日、自室で突然心臓麻痺になって死ぬ…」
「ハイ」
話の途中でナツが手を挙げた。
どうぞ、とおれ。
「それは未来のお前の姿か?」
「違え!おれの将来の話しじゃねーわ!聞けよ」
ハヤミとトミーが噴き出した。
「死んだと思った主人公は、自分の体がブラブラと揺さぶられている事に気づいたんだ。目を開けて上を見るとなんと、牛の頭をした強靭な体を持つミノタウロスが!そして自分はミノタウロス体の一部になっているではないか!」
……
「ミノタウロスってさ、上半身裸で獣の皮で作られた腰巻きつけとるイメージやねんけど、アレって股間が蒸れてて臭ないんかな?」
「臭ぇに決まってんだろ、つーかよ、飯食ってる時にする話じゃねーかんな」
「マチルダ、玉ひとつだけなのか?それともふた玉とも35歳無職のモノなのか?」
トミーだけがおれの話をまともに聞いてくれている。
いいぞトミー!心の友よ!
「ハッ!そうだ、いい事を思いついたぜ!玉はふたつだから、もうひとつは別の転生者って事にしよう!ひとつ屋根の下、いや!ひとつ袋の中で共存するんだ!知らんヤツと!」
林は、今度は声をださずに大口を開けてヒクヒクと笑った。
おれの天才的な閃きを笑うとは無礼なヤツめ。
「マチルダいいね!できれば恋愛要素も欲しい!袋の中の生活を共にするのは女性ってことにしたらどうだ!」
トミーも天才だった。
「なんだそりゃ。その女、前世でどんだけ悪い事したんだよ。可哀想すぎるだろ」
ナツは呆れて笑っている。
おれはシェイクをひと啜りしてから更に思いついたアイデアを発表する。
「ヒロインの名前はタマ美だ!二玉は袋の中で股間の匂いに耐えながらミノタウロスの子種製造に励む。劣悪な環境に苦しみ、作る喜びを分かち合った二玉は当然のように惹かれ合う!これは女性読者が好きな展開だろ?」
「男女が同じ作業を通して心を通わす展開か…いいね」
「どない思う?ナツ」
「あたしがタマ美だったら即日舌を噛んで死ぬわ」
「ちなみにミノタウロスはダンジョンの最下層にいるボスだ。
めっちゃ強い。勇者パーティを一度全滅させるんだよ。それで性欲旺盛なミノタウロスはメンバーの女僧侶をだな……」
「言わせねーよ!アホか!」
ナツのツッコミは容赦ない。
「さすがに二回目はアカン。アカウント消されるわ」
「どうしてもエロに走りたいのか?マチルダにはあのサイトは合わないんじゃないか?」
う〜ん、駄目か…
「では逆ならどうだ?ミノタウロスは勇者パーティに倒される。そして性欲旺盛な女戦士に逆に襲われる…てーのは!?」
……少しの沈黙の後、ナツの口から意外な言葉がでてきた。
「その女戦士は人間と動物のハーフ……ケモナーだ」
ナツはしたり顔で俺たちに向けて指をパチンと鳴らした。
「マジか!?ナツも天才だったのか!」
「ええやん、乗った!女戦士はバニーちゃんで頼むわ!」
「で、ど、ど、どんな種族の獣なの!?」
俺たちは身を寄せ合ってナツの次の言葉を固唾を飲んで待った。
「それは、……」
「ゴリラだ」
「アホか!」
「解散、解散や!」
おれと林はガクッと首を落としてテーブルを軽く叩いた。
「ふたりとも、ちょっと待て!まだだ!まだ希望を捨てるな!ナツ!ゴリラと女戦士の対比を教えてくれ!」
トミーは食い下がった。
「お前それでええんか?」
「ゴリラだぞ!メスゴリラ戦士だぞ!?」
たとえ1%でもゴリラが入った女戦士は嫌なんだが、トミーのその目にはまだ光が宿っている!
マジかよトミー…
ナツが薄笑いを浮かべ、トミーにこう言った
「トミー…その女戦士はな……9:1でゴリラだ」
「ぐふっ!」
トミーは口からレモンティーを吐き出してテーブルに倒れ込んだ。
「トミー!」
「死ぬな!トミー!」
ナツめ、なんて酷い事を、おれたちの純情を弄びやがって。
「さぁ〜てと、6時になったぜ。あたしはバイトあるからそろそろ帰るわ」
ナツは両腕を上げて上半身を伸ばすと、バッグを拾い上げて立ち上がった。
「じゃあな、童貞ども」
シシシと笑ってナツは先に店を出て行った。
「ホンマ、ナツは悪い女やで」
「おい、トミー起きろ、帰るぞ」
ふたりでトミーを起こして、おれたちも店を出た。
店の外はまだ明るい、日はまだ落ちていない。
もうすぐ夏がくる。今年の夏もコイツらと一緒に過ごすんだろうな……
と、おれは空を見上げておもった。
おわり
なんか、色々すいません。
迷走しています。
別のお話ですが、連載もやってます。興味があれば是非。
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