姫様のおっしゃる合い言葉って3択だったし覚えてない
「あれ? ……これは、アレか!」
交通事故で死んで、ゲームの世界に転生した。
学生時代に物凄く熱中したRPGの中にいる。
至って平凡な展開。
俺 の 常 識 で は !!
少々特殊な状況は、これ?
この場所、ラスボス手前の部屋。
武器防具の独特な構成、変な色。
鞄の中身、アイテムの種類と数。
ふむ、間違いない!
「前世で、最後のセーブデータだ」
強くてニューゲームを地で行く展開。軽く魔物を斬って、魔法で焼き祓ったら、感覚は掴めた。鞄を叩いてアイテム使用。所持数は手に持ったら総数表示。
「完全回復薬997個? 勝ったな」
前世で頑張っといて良かったぁ!
あとは簡単。
『囚われの姫君』を牢から解放。
姫から鍵を受け取り、最終決戦。
よし!
「姫様」
「その声は!」
「はい。 ……ケツプリン丸です」
前世で子供の自分のセンスが許せない!
なんでこんな名前にしたの?
ゲームばっかりやってたらバカになる。
この握り拳で教えてやりたい。
「合い言葉を!」
「……は?」
「生贄として攫われる私に、助けに行く、絶対に扉は開けるなと。力強い御言葉を支えに籠城しておりました。あの夜、囁きあった愛の言葉。ケツプリ様なら答えられます!!」
籠城! 魔王の城に、ね。
ケツプリが名前って思った~?
思い出したぞ、ここでセーブした理由。
別エンドが無いか、一通り試したんだ。
上から順に流れ作業で。
喫緊の課題が増えた。
愛の言葉?
合い言葉、読んでない。
「あのぉ、3択問題にできませんか?」
「なりません!」
毅然とした態度。
さすがはお姫様。
詰 ん だ ?
こっち来て小一時間、落胆は無い。
ここから引き返したら、どうなる?
レトロゲームの世界。
ラスボス直前から、徒歩で戻る人?
想定外なら、バグる可能性がある!
無事に帰還できたら?
不安ばかり口にする村人達。
後ろめたい過去を引き摺り、定住。
溶け込めるか不安要素が多すぎる!
「ケツプリ様」
「あ、はい?」
姫は姫で渡す前提のキャラ。
厚い鉄扉の向こう、声だけの相手。
待ち人ケツプリン丸と確信してる。
が。
「もしや」
魔物の甘言とか別問題になった。
疑問を抱くのは至極当然。
姫が疑っているのは誠意!
「お忘れなのですか?」
愛 だ ……
「覚えてるわけ無ぇだろ」
3頭身キャラの、愛の囁き。
記憶に無い。
転生人生おじゃんになった。
か ち ゃ り
「ケツプリ様を信じておりました!」
「あっ……今ので正解?」
「これが鍵です」
正真正銘お姫様。
想い出補正じゃない!
メッチャ可愛い~!!
「さぁ魔王を!」
「うっわ怖ッ! 魔王は3頭身じゃないのぉ?!」
「ヨクキタ ニンゲン…
「すごい魔法ずどーん!」
「グワアァア!」
「ケツプリ様ぁ」
「姫! 片時も忘れず…
「いけしゃあしゃあと!」
「ぐわあぁあ!」
2人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ
めでたし めでたし ♪
さしえ:© だいずさま




