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普段はパン屋見習いの俺、十六夜だけ神の操り人形で幼女暗殺者になる  作者: 夜久 リナ
第一章 『凡人、神(システム)の絶対性を知る』
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第7話『無敵の盾、愚かな希望の賭け。』

数ヶ月が過ぎ、俺は「凡人」であることを諦めた。


新月の夜に見た「予知夢」の人間を、十六夜の夜に「神の操り人形」として殺す。

この数ヶ月で、俺のギフトの法則は確定した。

俺は、システムに選ばれた『代行者』であり、その判断は絶対だ、と。


だからこそ、俺は無気力になった。

抵抗は無意味だと知ったからだ。


しかし、その法則が、先日の新月の夜に、初めて崩れた。


夢に現れたのは、見知らぬ悪人ではない。


「……あ」


柔和な笑顔を浮かべた、上品な紳士。

孤児院に多額の寄付をし、街の誰からも「聖人」と呼ばれる男。

パン屋の常連でもある、慈善家のカウント・ヴァレリウス伯爵。


「―――ッ!」

悪夢から跳ね起きた俺は、混乱していた。


(嘘だ……なんで、あの人が?)

バルゴは「害虫」と呼ばれるほどの分かりやすい悪人だった。

だが、ヴァレリウス伯は違う。


俺だって、彼に恩がある。


まだ見習いだった頃、俺が配達中に荷車をひっくり返してしまった時、通りかかった伯爵は嫌な顔一つせず、粉まみれになった俺を助け起こし、荷物を拾うのを手伝ってくれた。

あの時の温かい手に俺は救われたのだ。


システムは、間違っている)

俺の「怪物」は、あの善人まで殺そうとしている。


冗談じゃない。

俺は初めて、システムへの「抵抗」を決意した。



翌日、俺は酒場で情報を集めた。


だが、ヴァレリウス伯の黒い噂など、どこにもなかった。

ルークですら

「あの人を疑うなんて、お前どうかしてるぞ…」

と呆れる始末だ。


物理的な抵抗は無意味だ。

これまで、自室の窓に板を打ち付け、自分の腕をベッドにロープで縛り付けたこともあった。

だが、アサシンはロープを引きちぎり、窓板を蹴破って「任務」を遂行した。


―――ロープは、皮膚が裂ける寸前まで腕に食い込んだあとを残し、窓板は、ただの木屑と化した。

どれだけ抵抗しても、俺は死体システムに、優しくされることすらなかった。


ならば―――ターゲット本人に「警告」しよう。



数日後、パン屋にヴァレリウス伯がやってきた。


俺は意を決して、声をかけた。


「……あの、伯爵。妙な噂を耳にしたんです」


「ほう、なんだね?」


「『十六夜の暗殺者』が……その、あなたを狙っている、とか」


伯爵の柔和な笑顔が、一瞬だけ、凍りついた。

だが、彼はすぐにいつもの笑みに戻った。


「……はは、怖い噂だ。だが、警告に感謝するよ、アベル君」

「安心したまえ。…そうだ、念のためその夜は、街で最強の護衛を雇うことにしよう。『ギデオン』を」


その名前に、俺は息を呑んだ。

ギデオン。通称『アイギス(神の盾)』。

酒場の噂で何度も聞いたことがある。

彼のギフトの『雇い主の近くで、戦闘力が飛躍的にアップする』は、無敵の護衛と呼ばれる。


「……! それなら、大丈夫だ」

俺は、心の底から安堵した。


(よし……! 警告が効いた。あのギデオンが守るなら、いくらあの“怪物”でも無理だ)

俺は、初めて「システム」に勝てると、希望を抱いていた。



十六夜の夜。

アベルは月を眺めていた。

今回はロープも板も使わない。


(今夜、ギデオンが“怪物”を止めてくれる)


俺は、この数ヶ月で初めて、希望と安堵を抱いた状態で、眠りについた。

【毎日20:10更新予定】


【作者よりお願い】

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引き続き、物語の絶望の先に進みます。よろしくお願いします。

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