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第26話『愛の再会と、新しいパンの匂い』

侯爵邸の庭。


幼女の肉体は倒れ、元の姿に戻ったアベルを、リナは震える腕で抱きしめた。


「アベル……」


「俺を、呼んでくれたのか」


俺は、リナの腕の中で、呪いからの解放を実感した。


「怖かった。貴方が私を殺しに来る、その瞬間が……」


「ごめん。怖がらせた。もう、大丈夫だ。俺は、もう、お前を傷つける道具じゃない」


ルークは、侯爵の遺体を一瞥すると、複雑な表情を浮かべた。

「ひとまず、この街から離れよう。ここはもう、危険だ」


ルークは、低い声で言った。

「もう一秒たりともここにいられない。

侯爵の遺体が発見されれば、捜査網はすぐリナにたどり着く。

リナは侯爵の計画の協力者だった。」


俺たちの目的は、もはや世界の正義ではない。


―――ただ、生きること。


俺たちは、朝日が昇るまで、庭の隅に隠れることにした。


ルークは、「証拠は残せない」と呟き、衛兵に見つからないよう、透明化を維持しながら、周囲の様子を警戒した。



夜明けが来た。


俺は、東の空から昇る、新しい命の光を浴びた。


この朝日のように、体の中から暗い影が消え去ったのを感じた。


俺たちは、ルークの助けを借りて、侯爵邸から脱出し、そのまま街を離れる決意をした。




それから数ヶ月。


俺たちは、誰も俺たちのことを知らない、静かな港町で暮らし始めた。


アベルは、パン屋を開いた。


以前と違い、俺のパンは「魂が入っている」と評判になった。

なぜなら、俺はもう「機械」ではないからだ。


毎日、リナが焼きたてのパンを頬張り、笑ってくれる。

俺はその笑顔を見ているだけで、以前の絶望を、すべて許せる気がした。


リナは、今も侯爵邸での悪夢に魘されることはあるが、呪いによる激痛に苦しむことはなくなった。彼女のギフトは、「秘密を守る」という目的を果たした後、静かに体から消えていったのだ。


温かいパンの匂い。

リナの優しい笑顔。


俺たちは、システムが支配する世界の片隅で、ささやかな幸せを手に入れた。

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