第24話『執行と裏切り、泡となる叫び』
この話には出血を想起させる描写があります。
苦手な方はご注意ください。
侯爵邸の庭。
ルークは、急速に酔いが醒める身体を必死に叱咤していた。
(くそっ! なぜ酔いが急に抜ける!?)
彼はリナを掴み、裏門へ向かおうとした。
だが、体がわずかに透明化の制御を失い、影が揺らぐ。
その瞬間、侯爵邸の屋根から、石畳を蹴る、けたたましい音が響いた。
幼女暗殺者―――アサシンだ。
白銀のナイフの冷たい輝きが、十六夜の月光を反射して、侯爵邸の庭を一瞬で照らした。
「リナ、逃げろ!」
ルークはリナを突き飛ばし、透明化のギフトを維持しながらアサシンの注意を引こうとした。
だが、アサシンはルークを無視し、無機質な瞳でリナを追う。
「誰だ!?」
公爵邸へ向かおうとしていた侯爵が、庭でアサシンとリナが対峙しているのを見て、驚愕の叫びを上げた。
「貴様! リナだ! この女が公爵暗殺を企てた張本人だ! 私を巻き込むな!」
侯爵は、自分のプライドと命を守るため、リナを『単独の悪人』として売り渡した。
アサシンの動きは、音速だった。
侯爵の言葉が終わるより早く、侯爵へと肉薄したアサシンの手から、白銀のナイフが閃く。
侯爵は、「何が起こったのか」を理解する間もなく、胸を貫かれた。
「あ……ぐ……っ!」
鉄を熱したような独特な匂いと共に、侯爵の目には、最悪のギフトを持つ凡人として死ぬという、激しい絶望が浮かんでいた。
侯爵の執行。
それは予知夢の通りだった。
(止めろ! そこで、終わるんだ!)
俺の喉は、泡立つような叫びを上げようとしたが、「システムに逆らうな」という、体に刻まれた呪いがそれを許さない。
―――喉の奥で、熱い叫びが、音もなく泡となって弾ける。
侯爵が倒れるのを確認したアサシンは、感情の一切ない無機質な動きで、迷いなく、次にリナへと歩を進めた。
リナは、侯爵の裏切りとアサシンの冷酷な接近に、恐怖で一歩も動けない。
アサシンの足音が、一歩、また一歩と、俺自身の鼓動を刻むように、リナに近づいていく。
俺の視界の中で、リナの恐怖に歪んだ顔が、どんどん大きくなっていく。
(やめろ! やめろ! 俺の愛する人を殺すな!)
アサシンの小さな手は、ナイフを振りかぶる。
俺の意識は、愛する者を殺す道具として、その瞬間を強制的に見せつけられていた。
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