第19話『秘密の共犯者、二重の鎖。』
侯爵様が自分の真のギフトを知ってから、屋敷の空気はさらに冷たくなった。
侯爵様の憎悪は、私ではなく、私を通して暴かれた「凡人であるという事実」に向けられていた。
―――私は、侯爵様の最も深い恥を知る、生きた証拠となった。
その翌日、侯爵様は私を再び書斎に呼び出した。
昨日の激しい逆上とは違い、その顔は異常なほど冷静だった。
「リナ、お前を殺すのは容易い。だが、せっかくのその"能力"を無駄にするのは惜しい」
侯爵様は、机の上に一枚の紙を広げた。
そこには、政敵であるデュカス公爵の顔写真と、複雑な計画の図が描かれていた。
「貴様の能力は、ギフトの仕組みを知るということだ。公爵家は代々強力な防御ギフトゆえに、我々侯爵家を追い詰めてきた」
侯爵様の計画は、リナのギフトを利用し、公爵の「防御ギフト」の弱点を見抜いて暗殺するという、周到で冷酷なものだった。
私は、必死に抵抗を試みた。
「そ、そんな恐ろしいこと、できません! 」
私は必死で拒絶の意思を伝えた。
侯爵様は冷笑を浮かべた。
「できないだと? 結構なことだ。だが、暗殺計画に協力せねば、貴様の命はない。もしこの計画が失敗すれば、口封じのために貴様は、あの暗殺者に殺された、と偽装されるだろう」
侯爵様は、私の「秘密の共犯者」という立場を逆手に取った。
「公爵を暗殺すれば、貴様は私の「秘密の協力者」として、侯爵家で安全な地位を得られる。拒否すれば、貴様は「システムの敵」として、明日にも処分される」
侯爵様の脅迫は、私の心に、アベルの呪いとは違う、別の冷たい鎖をかけた。
(アベルの秘密を知っていることすら、もう恐怖ではない。今、私が直面しているのは、自分の命と、アベルが救おうとした人間の命だ)
私は、侯爵の計画のキーパーツとして組み込まれてしまった。
―――十六夜の夜。侯爵邸の陰謀が、アベルとリナの運命を、再び交差させようとしていた。
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