第18話『最悪のギフト、侯爵の逆上。』
侯爵様の瞳は、期待と渇望で爛々(らんらん)と輝いていた。
護衛のギフトを正確に見抜いたことで、侯爵様は、自分の偉大なる才能が証明されることを完全に確信している。
「さあ、リナ! 私に触れろ! 私に眠る、一族最強の防御系ギフトを、世に示してやるのだ!」
侯爵様は、自ら私の手を掴み、強引に自身の左肩に押し付けた。
―――私は、もはや抵抗できなかった。
侯爵の肩に触れた瞬間、私を襲ったのは、激しい恐怖だった。
そして、私の脳裏に、侯爵様の「ギフト」が流れ込んできた。
(……嘘)
私の思考は、一瞬で停止した。
『雨の日』『洗浄能力』『洗濯物』『向上』。
「防御系」どころか、「戦闘系」ですらない。
それは、侯爵様が忌み嫌う「凡人」の、最悪のハズレギフトだった。
「どうした、リナ? 驚いたか? 私のギフトは、想像を絶するほど偉大なのだろう?」
侯爵様は、興奮で息を弾ませている。
私は、顔から血の気が引くのを感じた。
この真実を口にすれば、私の命はない。
私は、必死に言葉を選ぼうとした。
「まだ発現していない」と誤魔化そうとした。
「その、侯爵様……私は……私はまだ、詳細が……」
「嘘を吐くな!」
侯爵様の顔が、激しい怒りで歪んだ。
そして、とうとう口に出してしまった。
「洗濯……だと? 私は……洗濯能力だと!?」
侯爵様のプライドは、粉々に打ち砕かれた。
「う、嘘だ! リナ、貴様、嘘を吐いているな! あの護衛の能力は正確だった! 貴様は私の才能を嫉妬し、貶めようとしているのか!」
侯爵様は、怒りのあまり、私の肩を乱暴に掴んだ。
「私の体を……あの汚らわしい、凡人の血が流れているというのか!」
侯爵様は、自身のコンプレックスの源泉を暴かれたことで、完全に理性を失っていた。
そしてその瞳には激しい憎悪が宿っていた。
(知ってしまった……侯爵様の最大の秘密を、私だけが知ってしまった……!)
私は侯爵様の口封じの対象となった。
そして、その憎悪の炎は、私を巻き込む、新たな暗殺計画へと姿を変えるのだった。
【毎日20:10更新予定】
【作者よりお願い】
どうか以下のご協力をお願いします。
・★評価ポイント
・ブックマーク
・ご感想(一言でも構いません。執筆の励みになります!)
引き続き、物語の絶望の先に進みます。よろしくお願いします。




