月曜日
プロローグ
AIが働くオフィス。
議事録は整理され、チャットや通知は更新され、タスクは淡々と完了する。
人の手はほとんど必要なく、光と音、コピー機の動作だけが空間を満たす。
誰の名前も、誰の意識も、もはや必要ない。
存在は消え、残るのは決まったリズムと無人の景色だけ。
全ての存在も、静かに薄れていくかもしれない。
朝、定時の5分前に出社する。
誰もいないはずのフロアには、すでに空調が働き、照明が点き、コピー機がスタンバイしている。
人間よりも先に仕事の準備が整っている。
それが、オフィスの仕事だ。
席に着くと、昨日の議事録が自動で整理されている。
AIが要点をまとめ、SLACKには「確認お願いします」の通知。
確認とは、承認ボタンを押すこと。考えることではない。
それが、オフィスの仕事だ。
昼休み、同僚と話す。
「最近、業務効率化が進んでるね」
「うん、仕事が減った気がする」
「でも、忙しいよね」
この矛盾に誰も疑問を抱かない。
それが、オフィスの仕事だ。
午後、クレーム対応のテンプレートを選ぶ。
「ご不便をおかけして申し訳ございません」
この一文が、すべての感情を代弁する。
本音は、どこにも書かれていない。
それが、オフィスの仕事だ。
夕方、退勤前に「今日の成果」を報告する。
成果とは、タスク管理ツールのチェックマークの数。
その中に、自分の意思はない。
それが、オフィスの仕事だ。




