放課後、教室、だらだら女子校生
放課後――。
教室を追い出された女子たちは、自然と「部活室」という名の避難所へ集まる。
と言っても、実態は「しゃべって笑ってお菓子食べるだけの部屋」である。
「おつかれー……今日も疲れた……」
「何もしてないのに疲れたとか言わないの!」
「いや、存在してるだけで体力使うんだって」
「酸素を浪費してるだけでしょ」
部室の机には、誰が持ってきたのかカントリーマアムとポテチと謎の塩せんべい。
「ちょっと、勝手に食べないでよ!それ私の!」
「えー、でももう袋開いてたし」
「開けたの私だから!開いてたんじゃなくて私が開けたの!」
「じゃあ開いたらみんなの物でしょ」
「強盗の理屈か!」
そんな騒ぎの横で、部長(という肩書きだけの人)が書類を広げている。
「……ねえ部長、一応聞くけど今日って部活何するの?」
「今それ考えてるから静かにしてくれる?」
「考えてるだけじゃん」
「思考という作業をしてるの」
「結果、何もしないのが作業なの?」
「そう、そういう部活だから」
「なんだこの部活」
新入りの一年生・木下も最近は慣れたもので、机に座るやいなやスマホを取り出して動画を見始めた。
「一年が率先してスマホいじってるけど大丈夫?」
「大丈夫でしょ。むしろここで真面目に何するの?」
「それもそうだ……」
「てかさ、うちらの部活名って何?」
「“文化研究部”って書いてあった」
「何研究してんの?」
「文化」
「……雑!!」
外は夕焼け、部室は笑い声、そして誰も帰る気配なし。
「そろそろ下校時間だってー」
「帰るのめんどいー」
「じゃあ泊まっていく?」
「先生に通報されるからやめろ」
「先生も一緒に泊まる?」
「やめとけ!」
結局、部室にだらだら居座るだけ居座り、閉館ギリギリで追い出される女子高生たちであった。