表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【欠損奴隷を治して高値で売り付けよう!】破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します  作者: みんと
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/43

第20話 エピローグ「前世」★


「君の前世での大事な人なら、君のすぐそばにいるよ……?」

「え………………?」


 魔神デッカーの言葉に、俺は絶句した。

 俺が救えなかったあの人が、俺のすぐそばにいる……?

 いったい、どういうことなのだろう。


「さっき君の記憶を見せてもらっただろう? そのときに、気づいたんだよ。君はまだ気づいていないようだけどね……。いや、本当はもう気づいているんじゃないのか……? 今まで、気づかないふりをしていただけなんじゃ……?」

「な、なにを言っているんだ……」

「ほら、ようく思い出してごらんよ……」


 前世の記憶なんて、俺からすればもう20年以上も前のことだ。

 それに、俺はその記憶に重たい蓋をしていた。

 だって、あれは俺にとっては、とても辛い記憶だから……。

 だけど、あの人のことだけはどうしても忘れることができなかった。


 そう、俺の好きだった相手――。


 俺は自分の眠っていた記憶を思い出す。





 俺の名前は九条朔夜(くじょう さくや)

 日本で暮らす、普通の16歳……高校生だ。


 俺には好きな人がいる。

 彼女の名前は水瀬凛音(みなせ りんね)

 別に、俺たちは付き合っているわけではない。

 お互いに、おそらく相手を好きなのだろうという思いはあった。

 けど、それを口にして確かめることはしなかった。


 この関係が崩れてしまうのが怖かったのだろう。

 お互いに身寄りがなく、高校生だというのに一人暮らしをしていた。

 そんな境遇が似ているのもあってか、俺たちはとても仲良くなったのだ。


 俺たちはいつも、学校が終わると、街の外れにある古びたゲーセンに集まった。

 客も店員もいなく、廃墟と化したゲーセンには、一台だけ電気のついた筐体があった。

 どこから電気が来ていて、誰が管理しているのかもわからないそれで、俺たちはいつも二人だけで遊んでいたのだ。


 ためしにキスだけしてみたことがあった。

 けど、お互いになんだかくすぐったいねと笑いあって、それだけだった。

 そのときの話は、お互いに恥ずかしくて二度としていない。


 俺たちはそんな関係だった。


 けどある日を境に、凛音は学校にも、ゲーセンにも来なくなった。


 俺は特に理由を考えもしなかった。

 今思えば先生に尋ねるという方法もあったのだろうが、俺も学校にはもともとあまり行っていなかったし、先生との仲も悪かった。

 それに、尋ねたところで先生が素直に答えてくれたとも思えない。


 学校で俺は特に凛音と仲のいいそぶりを見せてこなかったし、先生も個人情報的なことは話さなかっただろう。

 凛音とは仲がよかったが、家までは知らなかった。

 ただ、彼女は身寄りがなく、マンションで一人暮らしだということだけ知っていた。


 次に彼女と会えたのは、その1年後。


 彼女は変わり果てた姿で俺の前に現れた。

 頭髪が無くなっており、脚は切断され、車椅子姿だった。


 そう、彼女は若くして白血病だったのだ。


 先生がようやくクラスのみんなにそのことを公表したのは、彼女が死ぬことになる1か月前。

 もう助かる見込みがないというのがわかったから、みんなに最後の別れをとでも思ったのだろう。

 まさか凛音がみんなに伝えてくれなどとは言わないだろうと思う。


 俺は……知るのが遅すぎた。

 いや、知っていたからといって、どうする?

 俺になにが出来た……?


 金もない、身分もない。ただの高校生の俺に。

 そもそも、俺は恋人でもなんでもなかっただろう……?

 俺は、彼女に踏み入ることができなかったんだ。

 そんな俺が、なにいっちょまえに後悔してんだよ……。


 俺は、どうするべきだったのか今でもわからない。


 先生から事の真相を告げられて、俺はすぐに病院に向かったのだ。


 凛音とふたり、病院の外の芝生で、会話をした。

 俺は車椅子を押していた。


「なんで……言わなかったんだよ…………」

「言えないよ……。だって、私、こんなになっちゃったんだよ? あんなに可愛かったのに……」

「知るか……。お前は今も可愛いって……」

「こんななのに……?」

「関係ねーよ。馬鹿」

「ふふ……ほんと、あんたって私のこと好きだね」

「ああ、ずっと好きだった……」

「うん、知ってた……」


 なんだ、知ってたのか。


「私も……ずっと好きだったよ。今も好き」

「うん、知ってた」

「なんだ、知ってたのか」

「俺たち……いうのが遅すぎたよな……」

「うん、なにもかも……」


 俺は、凛音が亡くなるまで毎日病院に通った。

 けど、彼女はよくなるどころか、日に日に悪くなる一方だった。


 俺たちは何度も愛を伝えあった。

 それだけが、生きる頼りだった。

 

「ねぇ、結婚してくれる……?」

「もちろんだ。俺が18になったらすぐにしてやる」

「あーでも、そのころには私、生きてないかもね。先生、桜はもう見れないって言ってたよ?」

「バカ、そんなこと言うな。俺が地球温暖化を進めてでも見せてやるよ」

「ふふ、じゃあ間に合わなかったら来世で結婚しようね?」

「うるさい。今すぐする」


 その夢は、叶わなかった。


 桜を見るのを待たずして、凛音は死んだ。

 俺は泣いた。

 地球上の水がすべて枯れてしまうんじゃないかというほど、泣いた。

 けど、彼女は……時間は帰ってこなかった。


 彼女が眠るその横で、俺も睡眠薬を飲んで、そのまま自殺した――。

 

「私が死んだらさ……一緒に死んでくれる……?」


 そう言った彼女の手は、声は、震えていた。

 死ぬ間際に彼女が言った言葉だ。


「ごめん、やっぱ今のなし。あんたは死ぬほど長生きして。それからこっちに来て。絶対だよ? そして、生まれ変わったら、絶対に私を見つけて――」


 今思えば、それは彼女の初めて見せた弱さで、つよがりだったのだと思う。

 俺はその約束を守れなかった。

 彼女がいない世界を、これ以上見ていたくなかったのだ。

 


 


 ――だから、俺はそんな辛い記憶に、蓋をしていたのだ。


 生まれ変わった直後は、思い出すことすらなかった。

 今、魔神ダッカーに言われて、すべてを思い出した。


 そうだ……凛音!

 俺は凛音に会わなければいけない。

 俺は、凛音に会うために、もう一度生まれ変わったのだから……!


「アーデ……! アーデ――凛音……! 凛音……!」


 俺はアーデの元へ走っていた。


「凛音……! お前、凛音なんだろう……? 俺だよ、俺……! 朔夜だよ……!」


 俺がいきなりそう言うと、アーデは――凛音はすべてを察したようで、


「朔夜……くん…………?」

「ああ、そうだ……! 凛音……!」

「朔夜くん……! 朔夜くん……!」


 俺たちは涙を流して、抱き合った。

 その日は、この地球上の水がすべて枯れてしまうんじゃないかというほど、二人で泣いたのだった。


 俺は……俺たちは、最初から気づいていたのかもしれない。

 素直になるのが、遅すぎたのかもしれない。

 俺たちは、いつもそうだった。


 過ぎ去った時間は、戻ってこない。

 前世に戻ることはできない。

 けど……これからの未来を二人で作っていくことなら、できる。

 

 俺の救いたかった女の子は、アーデだった。

 今度は、ちゃんと救えたのだろうか…………?




 





リメイク版という私の勝手にお付き合いいただき

ここまで読んでいただきありがとうございました


読者の皆様に、大切なお願いがあります。


もしすこしでも、

「面白そう!」

「続きがきになる!」

「期待できそう!」


そう思っていただけましたら、

ブクマと★星を入れていただけますと嬉しいです!


★ひとつでも、★★★★★いつつでも、

正直に、思った評価で結構です!


広告下から入れられます!

テンションが跳ね上がって最高の応援となります!

何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
この話いいですね、途中でハーレムものになるのかな とか思いながら見てたんですけど、一人の女性をちゃんと愛して幸せになるって好きですわ、そういう話も好きなんですけど こういう 辛く 愛っていうの も大好…
唐突感が強いのでもう少し膨らませても良いかな?って思いました
前世の分も幸せに。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ