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【欠損奴隷を治して高値で売り付けよう!】破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します  作者: みんと
第二章

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第16話 エルド教


【side:とある教皇の話】

 

 私の名はガデンツ・ギルフォソンヌ。

 この国で一番大きな宗教である【イルマンヌ教】の教皇だ。

 今まで王様はこのイルマンヌ教を国教に据え、数々の有益なものをもたらしてくれていた。

 しかし、どういうことか。

 王様が崩御なされて、新しい若い王になり、国教を変えるなどという愚行に出られたのだ。

 なんと、巷ではエルド教などという得体の知れない宗教が、勢いを増してきている。


「ぐぬぬ……なんという……」


 私にはこの状況が気に食わなかった。

 このままでは、イルマンヌ教の築き上げてきた利権などが剥奪されてしまう。

 そこで私は考えた。

 禁断の呪術を使い、疫病を流行らせようと思いついたのだった。


「くっくっく……これでエルド教などという馬鹿はおしまいだ……」


 疫病を流行らせ、そのすべてを、エルド教のせいにしてしまうのだ。

 私は、エルド教の教会の周りの水路に、この疫病の種をまき散らした。

 そして、エルド教に近づくと疫病が蔓延するというチラシを作り、あちこちに貼るように指示した。

 これで、馬鹿な大衆はエルド教のせいだと思うだろう。 

 エルド教の評判が落ちれば、自然と王も愛想をつかすだろう。





【side:エルド】


「なんだこのバカげたチラシは……」


 俺は屋敷の壁に貼られていたチラシをはがし、ため息をつく。

 そこには、エルド教に関わるとろくなことがないなどという内容が書かれていた。

 まったく、無根拠にもほどがある。


 いやまてよ……だが、これを信じるやつがいないとも限らない。

 そこには疫病の原因がエルド教などというバカげた内容が書かれていた。

 もちろん、そんなのはデタラメだ。

 だが、最近実際に疫病が流行りつつあるという。

 このままでは、本当にエルド教のせいにされてもおかしくないのでは?


 もしエルド教のせいにされたら、王様の耳にもそれは届くだろう。

 そのせいで、エルド教の評判が落ち、俺がアルトに断罪されるようなことがあれば……。

 うん、あり得ない話ではないな。

 そんな未来はごめんだ。

 なんとしても、この疫病を解決させなければ……。


 俺はエルド教の評判を少しでもよくするため、無料で診断を行うことにした。

 俺は医者ではないんだけどな……まったく。

 だが日に数時間だけ、疫病にかかった人を回復魔法で治す時間を設けた。

 エルド教の教会で、毎日疫病の人を治療する。


 こうすることで、エルド教と疫病に関するネガティブな噂をとっぱらうという作戦だ。


 おかげで、むしろエルド教に改宗すると、疫病を治してもらえるといういい噂が広まった。

 よしよし……。





 疫病の患者を治療するようになって、エルド教にいくと疫病が治るという噂まで広まり始めた。

 よし、なんとかエルド教の評判は堕ちていないぞ。

 だが、おかしなことに、一向に疫病の患者が減らないのだ。

 治しても治しても、次の週にはまた患者でいっぱいになる。

 くそ、これじゃあ追いつかないぞ。

 俺は医者じゃないんだ。こう何度も患者にこられると、さすがになぁ……。


 ということで、俺は根本的な原因をしらべることにした。

 その方法は、奴隷を使ったものだ。

 何人かの奴隷を被検体にし、いろんな行動をとってもらう。

 その中で疫病にかかった奴隷の行動範囲などを調べて、疫病のもとを探るのだ。

 疫病にかかっても、すぐに治せばいいだけだしな。

 俺は奴隷たちを使って、疫病について調べさせた。


 すると、意外なことがわかったのだ。

 疫病にかかっているのは、主にエルド教の教会に出入りしている者に多い。

 おそらくは、教会の水路や井戸が原因と思われる。

 これは、エルド教のせいで疫病が蔓延しているという噂はあながち間違いでもなかったのでは?

 まずい、このままエルド教のせいにされたら、俺が断罪される未来が見える見える。

 俺は、水に向かって、回復魔法を使ってみることにした。


 すると――。

 水はあっというまに綺麗になって、汚染されていたものが浄化された。

 よし、これで大丈夫だな。

 おかげで、次の週からは患者がほぼいなくなった。

 これにて疫病は解決。

 だが、不思議なことに、エルド教の教会の水だけが汚染されていたんだよなぁ。

 俺はそのことが気になった。

 イルマンヌ教の教会も、近くに結構あるはずだが、そっちの水では疫病が発生しなかった。

 これはどうもおかしい……。


 ということで、俺は今回のことをアルトに相談した。

 アルトに調べてもらうことにしたのだ。

 すると、なんと驚くべきことがわかった。

 イルマンヌ教の教皇が、禁呪をつかって疫病を蔓延させていたのだという。

 イルマンヌ教は、今回の件で、アルトの機嫌をそこね、かなりいたい罰をうけたのだという。

 それだけじゃなく、信者たちもかなりの数減ったらしい。

 そして信者たちの多くがエルド教に改宗したそうだ。

 多くのイルマンヌ教の教会がとりつぶしになり、エルド教の教会に作り替えられた。

 なんか、結果として俺の宗教がまた大きくなってない……?

 気のせい……?





【sideガデンツ】


 私はイルマンヌ教の教皇。

 疫病をエルド教のせいにするべく、暗躍していたのだが……。

 なんと、どういうわけか、エルド教は一向に落ちぶれない。

 エルド教に関わると疫病になる、という噂を流そうとしたのだが……。

 なぜかその逆の、エルド教にいくと疫病が治るという噂が流れている。

 いったいこれはどういうことなのだ……。


 だが、まだ疫病は流行り続けている。

 私は楽観視していた。

 しかし、あるときから急に、ぱたりと疫病が流行らなくなる。

 まさか……。

 エルド教は、本当に疫病を治していたのか……?


 そんなある日、私の部屋に、王国からの使者がやってくる。

 居留守をつかったが、使者は無理やり中に入り込んできた。


「イルマンヌ教の教皇はいるか!」

「な、なんだお前らは……!?」

「貴様を疫病を流布した罪で逮捕する!」

「な、なんだと……!?」


 こうして、私の作戦は失敗に終わったのである。

 しかも、結果的にエルド教がさらに浸透する結果になってしまった。





【side:エルド】


 俺の元から冒険者として派遣している連中は、ドミンゴたちのときと比べて、かなり多くなっていた。

 ドミンゴに奴隷たちを鍛えさせ、数も増やし、かなり大規模な運営になっていた。

 奴隷の管理も、一部ドミンゴやオットーに任せて、組織化してあるのだ。

 俺たちは、冒険者ギルドの中で、クランと呼ばれるものを作っていた。


 クラン【エルドの剣】

 それは、うちで働く奴隷たちが所属する大規模な組織だった。

 クランというのは、パーティのさらに上のくくりみたいなもので、複数のパーティをとりまとめたものだ。

 クランの中では装備品やアイテムの受け渡しなどが盛んにおこなわれ、情報共有などもする。

 冒険者ギルドのなかで、うちのクランは2番目に大きなクランとなっていた。


 すると、うちの評判もそこそこになってくる。

 いろんなあることないことが噂されるようになった。

 クラン【エルドの剣】は、かなり報酬が美味しいらしいと。

 しかも、弱いやつでも、ある程度まで鍛えてくれるカリキュラムが充実しているだとか。

 武器などの貸し出しも充実していて、奴隷でも稼げるだとかなんだとか。

 ただし、そのメンバーは全員シュマーケン家の奴隷だという。

 そういうふうに、話題になっていた。


 そのせいだろうか――。


 うちの屋敷に、何人かの冒険者たちがやってきて、こんなことを言い出した。


「エルド様! 俺たちを、この家の奴隷にしてください!!!!」

「は、はぁ……???」


 普通に冒険者として働いているのに、こいつらはなにを言っているんだ?

 自ら奴隷になりたいなんてやつ、俺はきいたことがないぞ。


 だが、冒険者たちは頭をさげて、俺に懇願してくる。


「お願いします! 俺たちと奴隷契約を……!!!!」

「はぁ……?」


 とりあえず、話をきいてみることにする。

 そいつらの話では、どうやら彼らは低ランクの冒険者らしい。

 彼らの話では、ここに集まったものは、みな才能のない、万年底辺の冒険者なのだそうだ。

 だから、ろくに金ももうからずに、レベルもあがらない。

 みんなそんな生活に、うんざりしていた。

 冒険者以外の職につけるようなあてもない。

 だから彼らは、ここに来たのだという。


「お願いします! 俺たち、このままだとろくに稼げないんです。それなら、エルド様の奴隷になって、エルドの剣で稼いだほうが、いいんじゃないかって!」

「本気で言ってるのか……?」

「はい! エルド様の奴隷は、かなり待遇がいいって評判です。冒険者ギルドで噂になっていて、ききました!」

「うーん、まあ俺は別に構わないけど……」


 まあ、向こうから労働力になりたいと言ってきているんだ。

 別に、拒む理由もないだろう。


「言っておくが、普通に俺はお前らを奴隷扱いするぞ? それでもいいのか?」

「いいんです! あんなクソみたいな生活なら、奴隷のほうがましです!」

「よし、なら契約しよう」


 俺は、集まった底辺冒険者たち全員と奴隷契約を交わした。

 これで、勝手に人員が増えたことになる。

 もしかして、うちのクラン、かなり割がいいのか?

 まあ、よくよく考えてみると、他のクランよりも手厚くサポートはしているよな。

 雑魚でも、回復オーブでの修行で、そこそこのレベルにはなるし。

 大けがをしても、俺が回復してやれる。


 武器や防具は俺の金でいいものを用意したのを、貸出ている。

 生活費は全部こっちもちだし、後は稼ぎの2割がそのまま小遣いだ。

 2割といっても、上位の冒険者の収入なら、それなりの額になる。

 そう考えると、たしかに底辺冒険者をフリーでやるよりはいい暮らしができるのだろうか。

 よし、じゃあついでに、人員募集の張り紙でもしてみるか。


 俺は、条件を書いた張り紙を、屋敷の前に貼ってみることにした。


「冒険者奴隷大募集……! と、これでよし……っと」


 すると、かなりの応募者があった。

 奴隷になるというのに、みんなそれでいいのか……?

 募集者の多くは、浮浪者や職のないものたちだった。

 俺は彼らを、一気に雇い入れた。

 おかげで、俺のクランは一番の大規模クランになった。

 これで、さらに儲かりそうだ。





【side:街の人たちの声】


 エルドの貼った人員募集の張り紙に、人だかりができていた。

 そこには、低収入のものや、浮浪者、ホームレスもまじっていた。

 中には、ブラックな環境で働く職人や、普通の省庁で働くようなものもいた。

 彼らは、口々にその張り紙への印象を口にする。


「なんだこの高収入は……!」

「この好待遇、いまどきないぞ……?」

「なんだこの条件、最高の職場じゃないか……!」

「今の仕事より全然よさそうだぞ……!?」

「俺、マジで転職しようかな……」


 などと、エルドは気づいていないが、これはかなり魅力的な条件なのだ。

 そのくらい、困窮しているものは多かった。



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