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【欠損奴隷を治して高値で売り付けよう!】破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します  作者: みんと
第二章

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第4話 奴隷に事業を委託しよう★

 

 回復オーブを使えば、奴隷たちに事業を委託して、さらに効率化を進めることができる。

 そのことに気づいた俺は、他の信頼できる奴隷にも事業委託を進めることにしたのだ。


 俺はさっそく、アトリエで絵を描いてくれているルミナに声をかけた。


「なあルミナ。このアトリエをもっと拡大しないか……?」

「どういうことですか……?」

「ルミナ以外にも、絵を描いてくれる奴隷を増やすんだ。弟子をとってもいい。そして大規模なアトリエにして、一種のムーブメントをつくるんだ。ブランド化して商品を増やせば、きっとすごい売り上げになるぞ……!」

「なるほど……私は絵が描ければなんでもよいですが……それはたしかに、楽しそうですね。私も、絵描き仲間がいたらなぁ、なんて思っていました」

「そこで、そのメンバー探しをお前に任せたいんだ。正直、俺は絵のことはわからないからな」

「え……? 私がですか……? わかりました……」


 俺は回復オーブをルミナに渡して、奴隷市場へ行かせた。

 ついでに画材などは自由に見て買ってきていいと言ったら、喜んでいた。


 戻ってきたルミナは、何人かの奴隷を連れていた。

 どいつも絵の才能があるとルミナが認めた連中だ。

 もともと、絵を描いていた経験のある奴隷もいるらしい。

 みな安売りの欠損奴隷の中から選んだそうだ。

 

 目の見えなくなってしまった元画家や、利き腕を失って描くことをやめてしまった元画家などがいた。

 他にも、あまり経験はないものの、描いてみたいというものや、描かせたら案外才能がありそうな連中などを集めた。

 ルミナはそいつらに指導をしてやって、どんどん絵の技術を学ばせていった。


 すると、すぐに奴隷たちの絵は売れるレベルにまでなった。

 ルミナの絵は有名になりすぎて、今ではかなり値段がつり上がってしまっている。

 だから、ルミナの弟子の絵なら安く買えるということで、すぐに買い手がついた。


「よし……! これはいけるぞ……!」


 俺はこのビジネスがうまくいくことをすでに確信していた。

 ルミナは教えるのも上手だ。

 すぐにルミナのアトリエの絵は、『ルミナ派』だとか『奴隷派』なんていうふうに呼ばれ出して、一定の価値を持ちだした。

 そのうち、みんなで展覧会を開いてもいいだろう。


「よし、よくやってくれたルミナ。その調子で、どんどん新しいやつを治して、育てていってくれ!」

「はい……! ありがとうございます……! わかりました! 私も、仲間が増えてたのしいです……!」


 他にも、ある程度上達した奴隷は、絵だけじゃなく奴隷そのものを買いたいという貴族まで現れ出した。

 うちで専属の絵描きとして迎えたいと、何人か腕のいいやつが買われていった。

 絵だけじゃなく絵師そのものを迎え入れるということで、かなりの大金が動いた。

 俺もかなり儲かったし、奴隷たちにもかなりの額還元できた。

 ルミナはその金でさらに奴隷を買って、後任を育て、画材もたくさん新調した。


 これでうまく絵描きが育って巣立っていくサイクルができたな。

 あとは放っておいても、俺のところに金が入ってきまくるというわけだ……!

 俺は暇なときにコツコツ回復オーブを作って、蓄えておくだけでいい。


 まさに、これぞ資本主義だ……!





 ルミナの次は、料理人のローリエのもとを訪れた。

 ローリエにも回復オーブを渡し、後任を育ててもらう。


 ローリエは今ではうちの奴隷たちのまかないと、俺の食事なんかを作ってもらっている。

 しかし、奴隷が増えるにつれて、ローリエと今いる料理奴隷だけでは数が足りなくなっていたのだ。

 それに、今いる料理奴隷はどれも特に料理経験があるやつというわけではない。

 ローリエに直接奴隷市場に行ってもらって、見込みのありそうなやつを連れてきてもらったほうがいいだろう。


「ローリエ、お願いできるか?」

「もちろんです。エルド様!」


 ローリエは何人かの奴隷を買ってきた。

 そのほとんどは欠損奴隷だったので、回復オーブで治してやったそうだ。

 回復オーブの制作も自動化できればいいんだけど……さすがにそれは俺にしかできないよなぁ……。


 ローリエが連れてきたのは、料理の経験がある者から、初心者までさまざまだった。

 舌を失った元料理人、ローリエと同じく鼻がきかなくなった元料理人……手足を失った元料理人……。

 さまざまな人間が集まった。


 みな料理をさせてみると、それぞれに得意な料理を披露してくれたようだ。

 その中でも、パンを作るのが得意だという奴隷がいた。

 名前はキャンシーという、かわいらしい少女の奴隷だ。

 キャンシーは一日にたくさんのパンを焼いた。


 もともと、鉱山奴隷などの給料は、一日に一個のパンを与えられている。

 それが親父の方針だった。というか、この世界ではそれが普通。

 けど、そのパンは適当なまかない担当の奴隷が汚い手で焼いた、あまりおいしくない、ぱさぱさの硬いパンだったのだ。


 しかし、キャンシーの焼くパンは違っていた。

 ふわふわで、焼き立てのパン……みんなそれを巡って争った。

 その日の成果が大きかったもの順に、キャンシーのパンを手に入れられるというルールができたようだった。

 

 キャンシーの焼くパンだけじゃ足りないので、他の料理人たちにもパンつくりの講習会を開かせて、教えさせた。

 とくにローリエはさすが、すぐにパンの美味しい焼き方をマスターしていた。

 

 そこでローリエは、新たなパンを生み出したのだ。


「エルド様、試作品を食べていただけますか? まずはエルド様に食べてもらいたくて……」

「うん、わかった」


 それは、パンに、ローリエの得意料理『シンシャーニ』を挟んだものだった。

 シンシャーニはスパイスの効いた肉料理。

 名付けてシンシャーニサンドだそうだ。

 食べてみると、ふわふわのパンに、ジューシーな肉の汁がしみ込んで、めちゃくちゃ美味しかった。


 しかも、上質な小麦の香りに、スパイスの刺激のきいた香りが合わさって、なんともいえないハーモニーが生れている。


「これは……美味い……!」

「ありがとうございます……!」


 シンシャーニサンドは、すぐにまかないの人気メニューになった。

 その日成果を上げた奴隷だけが、このパンを手にすることができる。

 数には限りがあるからな。

 けど、そのおかげで、みんなかなり働くモチベーションが上がったみたいだった。

 先行投資は大成功だった。


 そのほかにも、料理人を増やし、パンのつくりかたを学ばせたことで、基本的なパンの質が底上げされた。

 だから、結局、みんなより美味しいパンを食べられるようになったのだ。

 それに前よりもパンの作り方を効率化したし、いっぺんに大量のパンを生産するようにした。

 そのおかげで、一日に奴隷に与えられるパンの量も増え、みんな喜んでいた。





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