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【欠損奴隷を治して高値で売り付けよう!】破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します  作者: みんと
第一章

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第20話 回復魔法を教えよう★


 アーデは俺の専属奴隷、つまりメイドのようなものだ。

 その扱いは、普通の奴隷とは全然違う。

 普通の奴隷たちは過酷な肉体労働が基本だが、アーデの主な仕事は俺の身の回りの世話。

 つまり家事とか掃除だ。

 俺はいつもアーデにお世話になっていて、本当に助かっている。

 

 それにアーデは俺が初めて自分で契約した奴隷ということもあって、思い入れ深い。

 こんな可愛い女の子に献身的に世話してもらって、うれしくない男子などどこにいる。

 俺はすっかりアーデのことが気に入っていた。

 それにどこかアーデには懐かしい感じがあって、はじめて会った気がしないのだ。


 そんなある日、アーデが俺にこんなことを言ってきた。


「お願いします、ご主人様! 私にも回復魔法を教えてください!」

「アーデが、回復魔法を?」

「はい! 私もご主人様みたいに、回復魔法が使えるようになりたいんです……!」

「どうしてまたそんなことを? なにか必要な場合は、俺が力を貸すが……」


 俺が使えるのだから、わざわざアーデが回復魔法を覚える必要はない。

 いや、待てよ……。

 もし俺になにかあって、回復魔法が使えない状況になったら……?

 まあ、そんなことにはならないに越したことはないが……。

 けど、万が一という場合がある。

 信頼できる人に、回復魔法を教えておくのは悪い手じゃないな。


「私も、ご主人様のように人の役に立ちたいんです! なによりも、ご主人様の役に立ちたい……! 私の手で、ご主人様のことをもっと癒してさしあげたいんです……!」


 まあ、アーデにはいろいろと、十分癒してもらってはいるんだけどな……。

 けど、確かにアーデの言うことは悪い提案ではないな。

 俺が不在のときでも、ちょっとした怪我ならアーデに治してもらえる。


「よしわかった。なら教えよう!」

「本当ですか!? ありがとうございます!」


 俺は自分がメルダに教えてもらったのと同じように、アーデに回復魔法を教えてやることにした。

 まずは蛙の腕を生やすところからはじめてみる。

 しかし、アーデがいくら唱えても、腕はまったく生えてこない……。


「うーん、ダメですねぇ……」

「おかしいなぁ……俺のときはこれでいけたんだけどなぁ……」

「それは、エルド様が天才だからですよ」

「そうなのかなぁ……」


 腕を生やすのは無理だとわかり、今度は簡単な傷で試してみることにする。

 傷を負ったマウスを用意して、回復魔法をかけてみる練習だ。

 しかし、今回もダメだった……。

 傷はいっこうにふさがらない。

 もしかして、アーデには回復魔法の才能がないのか……?


「私……全然だめですね……」

「そう落ち込むなって……」


 人にはそれぞれの才能がある。向き不向きというやつだ。

 俺には回復魔法の才能があった。

 けど、アーデにも他になにか才能があるはずだ。


「なあ、アーデ、ためしに俺にヒールしてみてくれないか? それでなにかわかるかもしれない。俺が身をもって体験すれば、きっとなにか感覚的な説明ができるかも!」

「わかりました……!」

「じゃあさっそく……」


 俺は、自分で自分に傷をつけようとナイフを取り出した。

 するとアーデは全力でそれを止めた。


「な、なにをするおつもりなんですか……!?」

「なにって、回復魔法の練習のために傷を……」

「や、やめてください……! いくら練習だからって、エルド様の大事なお身体……。私のために傷つけてしまうなど……」

「でもなぁ……傷がないと練習できないだろ?」

「大丈夫です。イメージトレーニングです。傷がなくても、とりあえず試してみましょう」

「お、おう。そうするか」

「えい……!」


 アーデが魔力を込めると、俺の身体がぽうっと光って、暖かくなる。

 すると、俺の身体がなんだか気持ちよくなってくる。


「もしかしてこれは……!?」



 

 

 アーデには意外な才能があったのだ。

 もちろん、俺みたいに手足を生やしたりはできない。

 だが、特殊な回復魔法の習得に成功したみたいだった。


「ライトヒーリング……!」


 アーデが俺の腰に魔法をかけると、俺はなんとも心地よい感覚に包まれる。

 そう、これこそがアーデの特殊な回復魔法。

 傷を負っていない部分にでも、余剰回復を与えることができるのだ。

 つまり、なにも怪我をしていないところにこの回復魔法をかけると、めちゃくちゃ気持ちよくなれる……!

 癒しの効果が半端ないのだ。


「きもちぃいいいいい…………」


 アーデに身体中をマッサージされながら、ヒーリングしてもらう。

 すると、身体がとろけるような感覚に包まれて、めちゃくちゃ気持ちがいい。

 まじで溶けちゃいそう……。

 俺の回復魔法とは全然性質が違うが、これはこれで便利だな。


 これなら、めちゃくちゃ安眠できそうだ。

 疲労回復にはばっちりだな……。

 アーデに疲労回復してもらえれば、俺も一日に使える回復魔法の回数がさらに増えるかもしれない。

 永久機関が完成しちまったなぁ~~~!!!


「あ、エルド様……ここ、硬くなってます。いまほぐしますねぇ~」

「あ、ああ……頼む……」


 アーデは俺の身体のこっている部分を重点的に攻める。

 マッサージとヒーリングがあわさって、めちゃくちゃ気持ちいい。

 

「ああ~~~めちゃくちゃ気持ちいい~~」

「ふふ……よかったです。私も、エルド様のお役に立ててうれしいです!」


 




 それからも、アーデは頻繁に俺にヒーリングをかけてくれるようになった。

 おかげで、俺はさらに以前よりも忙しく動けるようになって、かなり商売に時間をさけるようになった。

 ある日の夜のこと――。


「エルド様、無理しすぎです……」

 

 アーデが俺の額に手を当てる。

 

「え?」

「最近、ずっとお忙しいでしょう? 毎日、たくさんの奴隷を治療して、お仕事もして、休む暇もなくて……。私はずっと、それが気になっていました」

 

 そう言って、アーデはぎゅっと俺の手を握る。

 

「……ご主人様には、ずっと元気でいてほしいんです。私の、たった一人のご主人様だから」


 ……そんなことを、誰かに言われたのは初めてだった。

 いや、違うな。前世も含めて、こんなふうに自分を気遣ってくれた人なんて……いなかった。


「わかった……。無理しすぎるのはやめるよ……。ありがとうな」

「ええ、今夜はこのまま、私のひざの上で寝てください……」

「ああ…………」


 俺はそのまま、気持ちよくて寝てしまった。

 寝ぼけていたのかわからないが、夢の中で、アーデに名前を呼ばれている気がした。

 しかも、その名前は「エルド」じゃなく、前世の名前――「九条 朔夜(くじょう さくや)」だった。


『さくやくん…………会いたいな…………』


 おかしいよな。

 アーデが前世の俺の名前なんか知っているはずがないっていうのにな……。

 きっと、俺が寝ぼけてて夢を見たんだろうな。

 ていうか、前世の名前なんて、さっきまで俺も忘れていたくらいだ。

 どうして、今そんな夢を見たんだろう……?





 もう一つ、意外なことがあった――。


「アーデちゃん、その魔法、俺にも試してくれないか?」

 

 ある日、冒険者のドミンゴがアーデに頼んだ。

 

「あ、はい! もちろんです!」

 

 アーデは嬉しそうにドミンゴに近づく。

 その瞬間、俺の心が妙にざわついた。


「待て」

 

 無意識に声を出していた。

 

「……エルド様?」

「いや……その、アーデの魔法はまだ不完全かもしれないだろ? 俺で試してる途中なんだから、他のやつに使うのは後にしろ」

「……そ、そうですね!」

 

 アーデは納得してくれた。


「す、すみませんエルド様……奴隷の身分で出すぎた真似を……」


 ドミンゴも謝る。なんか、俺が謝らせたみたいで、少し申し訳ないな……。ドミンゴは悪くないだろう……。


「いや……大丈夫だ……」

 

 だけど、なんで俺はこんなにイラついているんだ?

 それを考えたとき、ハッとした。

 まさか俺は……アーデが他の男に触れるのが、嫌だったのか?


 俺としたことが、まさかメイドに本気になっているっていうのか……?

 いや、まさかな……。

 

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