第44話・召喚!令嬢戦記ダイゴクドー〔ゲスト出演〕
中央地域──魔王城『マオーガ』からほど近い昼間の廃虚で、怪しげな召喚儀式が行われていた。
『術師軍団』の面々が見守る中。
天井が抜け落ちて、空が見える廃虚の中央に立った、官能的な格好をした女性の空間召喚師が手にした錫杖を怪しく光らせて。
目前の垂直に出現させた渦巻く召喚魔法円に向かって、召喚呪文を唱えた。
「我、召喚する来たれ! おぞましいモノ、汚れたモノ、虚栄心が満ちたモノ……我の呼びかけに応じて、その腐敗した姿を現せ」
魔法円が激しく回転をはじめて、円の中から不気味な呻き声と共に、甲殻ロボットの腕が現れた。
昆虫の脚を指のように加工した、腕の関節から茶色の腐汁がほとばしる。
周囲に腐臭が漂う。
《あ"あ"あ"……ぁぁぁぁぁぁ》
地獄から聞こえてくるような声を発する腕に向かって、女性召喚師が言った。
「行け……赤い不死身のガイコツ傭兵、カキ・クケ子を倒せ」
腕が魔法円の中に引っ込むと、召喚魔法円も消えた。
静寂がもどった廃虚で、空間召喚師が術師軍団に向かって両方を差し出す。
「望み通りに、赤いガイコツ傭兵を倒せそうな汚れたモノを召喚したぞ……約束の報酬をよこせ」
術師軍団の魔法使い、魔獣召喚師、死霊使い、呪術師たちは渋々顔で紙幣を空間召喚師に渡した。
異界大陸紙幣を受け取った、空間召喚師は紙幣を数えてから言った。
「少し足りない……飛び跳ねてみろ」
術師軍団の数人が、その場でジャンプすると硬貨がジャラジャラと音を立てた。
空間召喚師が、さらに報酬を要求する。
「あるじゃねぇか……全部よこせ、よこせねぇと……とんでもないモノを召喚するぞ、中央湖地域から」
その言葉を聞いて、慌てる術師軍団の魔法使い。
「わ、わかった全部出すから……変なモノは呼び寄せないでくれ」
布袋に入れた、集めた硬貨を受け取った空間召喚師は、一つ一つ数えて納得した笑みを浮かべた。
「確かに……また、御用があった時には空間召喚師協会は、年中無休ですから」
そう言い残して、空間召喚師の女性は、足下に発生させた魔法円の中に沈んで去っていった。
空間召喚師の気配が消えると、魔獣召喚師の男が不満そうな口調で、手品魔法使いに言った。
「術師軍団には、オレがいるのに……わざわざ、金銭を払ってまで空間召喚師に頼むコトは無かったんじゃなのいか……空間召喚師は、異世界大陸内にある特定のモノしか、召喚出来ないんだし……オレの魔獣を使えば、赤いガイコツ傭兵のカキ・クケ子だって」
「倒せないから……依頼したんだろう忘れたのか、もうすぐ甲骨サマの誕生日だ……各軍団が嗜好を凝らした誕生日プレゼントを用意している──赤いガイコツ傭兵の頭蓋骨で作った花瓶を、我ら術師軍団はプレゼントする」
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ハート型をしたピンク色の湖畔町──カキ・クケ子一行は、町から出られずにキャンプを続けていた。
石を積み上げた簡易カマドの上に乗せた、寸胴に入った温めているスープを木製のしゃもじで掻き回しながら、レミファが近くの岩の上に座るクケ子に言った。
「クケ子どのが悪いぜら……冗談でも異世界ラーメン店のスープ寸胴の中に潜んで、人骨ダシを出していたら……そりゃあ、店主も激怒するぜら」
「だからぁ、ずっと謝っているじゃない……軽いジョークだったって」
「ジョークでも、やっていいジョークとやってはいけないジョークがあるぜら……おかげで同じ味のスープを弁償するまで、この町に足止めぜら」
数日前──クケ子は、風呂代わりにラーメン店のスープを作っている、寸胴の中に入って煮込まれていた。
店主が仮眠をするために、店の奥に入って一時間の出来事だった。
「だいたい、なんでスープの出しになったぜら」
「いやぁ、あたしの骨体から出る人骨味のスープは、どんな味のスープになるかと思って」
レミファは、スープをかき回しながらタメ息を漏らす。
「仮眠を終わって、厨房に入った店主は寸胴の中で肩まで使ったクケ子どのを見て、腰を抜かして持病の腰痛が再発して休業ぜら……同じ味のスープを作って、弁償しない限りは町から出してもらえないぜら」
レミファは、店主から預かったスープレシピを眺める。
同じ味のスープを作るための、最後の食材を探して、魔矢使いエルフのヲワカと魔法戦士のガナは、森に入ったままだった。
「まったく、希少なキノコの〝マツダケ〟が生えてくるまでヲワカとガナは、森にある特定の木の前で待ち続けているぜら……それを、寸胴に入れて煮込めば、異世界ラーメンのスープは完成ぜ……」
突然、レミファのスープをかき回している手の動きが止まった。
レミファが呟く。
「何か来るぜら……この感覚は空間召喚師の波動ぜら……魔法円が開くぜら」
レミファの言葉通りに、魔法円が垂直に現れて中から腐臭が漂ってきた。
魔法円の中から、不気味な異世界ロボットの上体が現れた。
《あ"あ"ぁぁぁぁ……ぎょぼぼぼっ》
昆虫の甲殻と動物の骨格を細工した、異世界ロボット──関節や片目に、白いクモの巣状の菌糸膜の中から、茶色の液がハスの実状に見える不気味で醜悪な生体ロボットだった。
レミファの全身に、ポツポツと発疹が現れる。
「キモい、キモい、痒い、痒いぜら!」
全身を掻きむしっている、レミファが見ていると魔法円から出てきた。令嬢戦記ダイゴクドーの関節から、茶色の腐汁が噴き出した。
ぶひゅぅぅぅ……。
ダイゴクドーの背中側が開いて、ビキニアーマー姿で腐液まみれになって、意識を失い白目を剥いたシロガ家の令嬢──『シロガ・ネーゼ』が転がり落ちてきた。
ネーゼが、口からモザイク処理された、何かを吐き出しながら呻く。
「ぎょどどど……ゴボボボボッ」
それを見たレミファは、全身を激しく掻きむしる。
「痒ぃぃぃぃ! キモい! なんてことするぜらぁぁぁ! 三日三晩、煮込んできたスープが台無しぜら!」
スープの中には、飛び散った腐汁の白い断片が浮かんでいた。
召喚!おぞましき汚れた巨神~おわり~




