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第二十二話「神の使命に逆らう者」

 セシルの前方から強い魔力反応を察知し、ヴェンデルは即座に彼女の前に転移して多重結界を張る。

 それと同時に強力な電撃魔術が襲いかかり結界に衝突して大きな音を響かせた。


 前方の上空にマグスが姿を現し、浮遊してヴェンデルたちを見おろす。

 その黄色の目はいつもと違って凍てつき、眼前の敵を食らおうとする殺気を放っていた。


「お前もかよ……何してるんだマグス!! しっかりしろ!」

「それはこっちのセリフだよ。君こそ神の使命を無視して何をしているの。それどころか神の意思に背いて僕らの邪魔をして、いったいどういうつもり」

「使命もなにも、俺ん(トコ)には何も来てないんでね。それに神の意思に全て従うことが俺たち神器の役割ってわけじゃない。考えの相違があれば反対はする。お前も、そうなんじゃないのか。命を傷つけて壊し消し去るなんて、どう考えても避けるべきだろ」

「……これは、アリシア様が望んでいることだよ。それより優先されるものなんてない。僕ら神器だって、ただの創造物に過ぎない。これは僕らの考えで曲げていいものじゃないんだ。邪魔をするなら、僕は君が相手だろうと手加減しないよ」


 マグスが魔術を放ってきてヴェンデルはすぐに結界で防ぐ。


 土煙が立ち込め、マグスはその中に入り一気にヴェンデルへ接近して真横に潜り込んだ。

 手元に魔法陣を展開させ、至近距離で魔術を放つ。


 ヴェンデルは煙に視界を奪われ防御できなかったが、セシルがヴェンデルを抱き寄せ結界を張った。

 しかし術に込められた魔力が強すぎて衝撃と勢いを殺しきれず、結界ごと二人とも遠くまで吹っ飛ばされる。


 二人はビルに衝突し、それでもまだ収まらずビルを貫通していくつも建物を貫き、その先の広場の時計塔の壁にぶつかって止まった。

 壁には大きく亀裂が入り、セシルの張った結界が高い音を立てて砕け散る。


「ッ、悪いセシル。ありがとう」

「どういたしまして。でも、完全には防げませんしたけど」


 二人とも肩を押さえながら地面に降りる。


 背中から骨の鳴る音がいくつも聞こえてセシルは眉を寄せる。

 大きな怪我とはいかないまでも、結界で防御しているのにマグスの術の威力が高すぎて衝撃と痛みが肉体まで伝わっていた。


 セシルがボロボロなのも、先までの戦いで彼の術の威力をゼロにできないからだった。


 マグスが広場まで来て二人に術を放ち、二人とも横に跳び避ける。

 周辺で住人が何人も隠れていたが、破壊音を聞いて恐怖で悲鳴を上げながら逃げ出していた。


 マグスは住人に向かって魔術を放ち、ヴェンデルとセシルはそれぞれ住人の前に転移して結界で攻撃を防ぐ。

 しかし結界に弾かれた魔術のエネルギーが建物にぶつかり、壁を砕いて瓦礫を降らせた。


 魔術を連射されヴェンデルも術を発動させて相殺するが、その度に周囲が破壊されて人々は瓦礫の雨に悲鳴を上げて逃げ惑う。

 ヴェンデルとセシルが住人に結界を張って守ってはいるものの混乱が起きていた。


「っ、ダメだ。ここは人が多すぎる」


 応戦するために術を放つことでさらに周囲が破壊され、周囲の人々に危害が及んでしまう。

 人口が多く狭い都市の中で神器同士が戦うには、あまりにもリスクが大きい。


 ヴェンデルはマグスを都市の外へ出そうと転移の魔法陣を展開する。

 しかしマグスが魔術制御の術で妨害をしてきて陣が消滅し、転移術が発動できなくなった。


 転移ができないなら外まで吹っ飛ばすしかない、とヴェンデルはマグスに急接近して強烈な蹴りを入れる。

 だがマグスは結界を張って防御し、衝撃が軽減させて都市内に留まった。


(マグスを外に追いやるのは不可能か……あの術をやられる前に、マギアとマギノスたちから引き離さなきゃならん)


 ヴェンデルは通信魔術を発動してマルテやファンファニフたちに繋ぐ。


『ファンファニフ、壊掃電車に乗って住人をマガノ・マテリアの外に避難させてくれ。パセリケパークなら結界も張れるし安全なはずだ。マルテとマギア、マギノス族はなるべく先頭車両に集めろ』

『……了解』

『ヴェンデルさんはどうするんですかッ? 私も援護に』

『ダメだ』


 マルテが心配そうに声を上げるが、その言葉を遮りすぐに却下した。

 彼女自身も、神器を相手に自分は力不足だとは思っていたため眉を下げ奥歯を噛み締める。


『た、確かに神器と戦うのに私の力は劣るかもしれませんが』

『違う。逆だ』

『えっ……?』

『お前は魔力が多すぎるからこの戦いには向いていないんだ。マグスと戦うなら、魔力が多いと不利になる』

『それってどういう……』

『ッ、説明は後だ。街の皆を頼んだ』


 マグスが炎の魔術を連射し、ヴェンデルは通信を切って術を発動させて相殺した。


 マグスが接近し、セシルは間に割って入り風の魔術でマグスを後方へ吹っ飛ばす。

 ヴェンデルの隣に並んで氷槍を構えるが、彼は手を横に出し制止した。


「ここは俺一人に任せろ。セシルも避難誘導を頼む。ここにいる奴らを駅に連れて行ってくれ」

「けど神器の相手を一人でするのは厳しいですよ」

「大丈夫だ。こっちよりマルテたちの方に神器が一人いた方がいい。それにお前も分かっているとは思うが、マグス相手に神器の多対一の方が危険すぎる。アレが来た時に防ぎようがない」

「……分かりました」


 セシルは視線を下げ、ためらいながらも承諾の意を返す。

 ヴェンデルが前に出てマグスに攻撃をしかけて意識をそらし、その間にセシルは周辺にいる住人の避難を始めた。


 マグスが術を放ち、ヴェンデルも術を発動させて相殺する。

 即座に次の魔術が襲いかかって来て上に飛躍して回避した。


 術が地面に衝突し、爆音をとどろかせて地面に大きな穴を生む。


 ヴェンデルは穴を見て眉を寄せた。

 先ほどまで放たれていた術よりも確実に魔力量と破壊力が増している。


 マグスが炎の魔術を撃ち、結界で防ぐが威力を押さえきれず建物に叩きつけられた。


「いっでェ……」


 結界で守っていても体に衝撃が伝わってくる。


 背中を押さえて苦い表情で体を起こし、顔近くの土煙を払って小さくため息をついた。


(本気でかかってきてるな。疑似魂もない状態でコイツとやり合うのは危険すぎる)


 土煙が晴れないなか上空からマグスが炎魔術を連射してきて結界を複数張って防ぐ。

 辺りに火の粉が舞い、建物や草木を燃やし尽くして眩しく赤の光を広げていく。


 ヴェンデルは攻撃を防ぎながら、普段人間討伐をする際に使っている統治会のシステムを起動させた。


〈Sシステム起動。接続を開始します――接続が遮断されました〉


 脳内に女性の声が聞こえてくる。

 しかし正常にシステムへ接続できず、声がエラー状況を伝えてきた。


〈異常を検知、システムダウン中。魂の剥離、および凍結保存ができません。しばらく時間をおいてから再度コネクトしてください。管理権限所有者は至急、エラーコードの確認及びメンテナンスを行ってください。またシステムの消却要請を受理しました。消却にはおよそ一日かかります。停止する場合は、今から十時間以内に停止処理をしてください〉


 ヴェンデルはシステムの消却要請と聞いて眉を寄せ、マグスを見上げた。

 この混乱した状況でそんな要請を出す者は、彼しかいない。


 Sシステムを使えば魂が強力な術によって凍結保存され、疑似魂を持つことで神器に襲われて死んでも何度でも蘇ることができてしまう。

 その逃げ道を絶つためマグスはシステムを全消去しようとしていた。


 疑似魂が使えずヴェンデルは眉を下げてため息をつく。


「……疑似魂なしで戦うのは初めてか。俺も死にたくないから極力避けさせてもらうが、そうなると都市の復興作業はかなり時間がかかるな」


 苦笑いするヴェンデルに向かってマグスが光の魔術を放つ。

 ヴェンデルが回避し、術は建物を破砕し地面を抉って跡を刻んだ。


 次の魔術を放つまでの隙をついてマグスに電撃魔術を撃つが、彼は結界で弾き飛ばす。

 弾かれた電撃が街を穿ち、火花を散らして爆発を起こした。


 轟音と眩しい光が絶え間なくあふれ、瓦礫の雨は降った瞬間に術に打ち砕かれていく。

 黒や茶色の煙と鼻を突き刺す異臭が入り乱れてその場を支配していた。



 遠方からでも聞こえる破壊音を背に、駅には都市の住人が大勢集まっていた。

 パセリケパークに乗って都市の外に避難しようにも収容人数に限界がある。


 パセリケパークは他の機械種と連結して結界の防御魔術を共有してそこに住人を乗車させていく。


 住人情報と照合し、マグスとヴェンデル以外の全員が乗ったのを確認して発車しマガノ・マテリアの外へと避難した。


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