表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

70/202

第070話 魔法剣

まだまだ激情を発散出来てないとみえる。果たしてイーデンは剣を抜いた。ドラゴン語を唱えると直径三十センチほどの魔法陣がイーデンの前にまるで盾のように現れた。


イーデンはその魔法陣に自身のロングソードを突き刺していく。つばのところでその手を止めた。肘を左右に張って剣を垂直に立てる。


魔法陣はつばに留まり、刀身は黄色く発光し、雷を帯びていた。魔法剣か。剣で戦うのなら座ったままでは失礼だ。俺は立ち上がり、背中のヒートステッキを抜いた。


イーデンは半身になり、左肩を前に出しつつ、剣を後方に大きく振りかぶる。刹那、渾身の一撃が放たれた。とはいえ、俺は強化外骨格を装備している。受け止めるべく踏みこんで、ヒートステッキをロングソードの軌道に合せた。


ロングソードとヒートステッキがクロスする。ロングソードはすでに金色こんじきを失い、ヒートステッキが接触している部分だけが赤々と発光していた。


ロングソードをヒートステッキが焼き切っているのだ。じりじりとヒートステッキがイーデンの剣に食い込んでいく。


イーデンの剣からの圧力が消えた。おそらくは、進んでも後退しても剣もろとも自身が斬られると考えているのだろう。だとしたら、イーデンのやることは一つ。やはり前蹴りが飛んできた。俺は後方に飛んでそれをかわす。当然、イーデンの剣を切断するのも忘れない。


イーデンは立ちつくしていた。握られている剣は刀身を三分の二以上失い、切断された方は床に転がっている。


ただの鉄だ。俺のスキルは直接触れているものにも影響を及ぼすのだろう。ならば魔法剣はヒートステッキの相手にもならない。


万策尽きたのかイーデンは膝を折る。そして、タガーを自身の喉元に突きつけた。もちろん、俺はそれを許さない。瞬時に間合いを詰めるとタガーを奪い、上から馬乗りになってイーデンを床に押し付けた。


イーデンは抵抗した。どうしても死にたかったのだろう、暴れまわった。これじゃぁ話も出来ないと一撃食らわせて眠ってもらう。


殴った勢いで飛んだ兜が床に転がっている。さらけ出された髭面の寝顔に正直ため息が出た。


俺に魔法が効くとか効かないとか関係なく、イーデンはごり押しにどんどん魔法をぶつけて来た。正常な頭であったら俺のカラクリはともかく、対処を考えたはずだ。


しかし、いいきなもんだ。まるでただッ子が泣き疲れて寝てしまったようだ。子供だったらかわいいが、寝ている男は髭面のおやじだ。


あとはこの髭面をどうするかである。俺としては気を失っているイーデンをこのままリーマンのところに連れていってもよかった。カールはここに居ず、イーデンもこのとおり。俺に打ちのめされて、もう立ち上がる気すら残っていまい。


戦い自体は終わったとみていい。だが、このままイーデンを連れて行くって訳にも行くまい。まずはこの自暴自棄を何とかしてもらわないと。それこそ、エリノアの思うつぼだ。


あらぬ疑いをかけられたのはかわいそうだとは思う。だからといって自邸に立て籠もることはなかろう。イーデンが罪人のままなら当然、妻のソフィアと娘のアリスは生きてはいけない。


カールはここに居なかった。イーデンはカールをかくまってはいない。妻子のためにも、やはりイーデンは自分の足でリーマンのところへ行き、釈明しなければならないのだ。





イーデンは意識が戻った。自分がまだ屋敷にいることに不思議がっている。話は終わっていないと俺が言うとイーデンは気力なくうなだれた。


もう話すことなぞ何もないという風である。そんなイーデンに俺は、夫人と娘のアリスがここに来ていると告げなければいけなかった。


イーデンはおそらく、妻子が上手く逃げていてくれていると信じている。タイミングとしては、婦人とアリスが王都から姿を消してから後の、この立て籠もりなのだ。


案の定、俺の言葉にイーデンは驚きを隠せなかった。やはり最後まで妻子と一緒にいた者達を信頼していた。


俺の王都での出来事とイーデンの顛末は幾つかの場面でリンクしている。例えば議会がカールからエリノアに鞍替えしたとか。それによって婦人とアリス、そして、俺も危機に瀕し、立場が違えども俺たち三人は同じ馬車でここに来ることとなった。


疑心暗鬼で、経緯がよく分かっていないイーデンを説得するには、俺がなぜアレクシス・チャドラーに勝てたのか、なぜ地雷を抜けてアンダーソン邸に入れたのか、そこに至るまでの全てを話さなければならなかった。


ただし、ローラムの竜王が死ぬとまでは言わない。カールがアーロン王に話した通り、他の大陸の竜王が攻め込んで来るとだけを告げた。それにパワード・エクソスケルトン、別名・強化外骨格。これを入手した経緯とそれがなんであるかも言わなかった。


古代兵器に執着するのはカールだけとは限らないし、事態を余計ややこしくする。しかも、それを説明するのに俺の素性、俺とキースが入れ替わったことをまことしやかに話さなければいけない。


ここはリーマン・バージヴァルに説明した通り、強化外骨格はローラムの竜王から与えられたってことにしておくべきだ。


ラキラ・ハウルについても今はまだ話せそうにない。セイトで皆とはぐれたところから端折はしょって、いきなりローラムの竜王に会ったって話すとしよう。だが、カールがクズ野郎ってことはきっちりと話しておかなければならない。



「面白かった!」


「続きが気になる。読みたい!」


「今後どうなるの!」


と思ったら☆、ブクマ、コメント、応援して頂けると幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ