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第182話 謎かけ

「しかし、キース。私はお前を許そうと思う。お前も私を許せ。これで貸し借り無しだ。ラグナロクに来い。そして、私に従え。決して悪いようにはしない」


俺は二度もお前に殺されかけたんだ。それとこれを同じにされてたまるか。


「この期に及んでまだだんまりか、キース。私はあまり手荒なまねはしたくは無いんだがな」


そう来ると思ったぜ。俺を脅すとなれば、まずはカリム・サン達からだ。俺には彼ら以外何もない。言いかえれば彼ら以外、俺を脅せる材料は無いってことでもある。


敢えて名指しを避けたところからしても分かる。カリム・サンらに利用価値があるかどうか、今俺は試されている。ここでちゃんと決着を付けなければカールのこころみはきっとエスカレートして行く。最悪、一人、また一人と消されて行く。


「分かった。ラグナロクには行こう。ただし、一月ひとつき待ってくれ。俺にはやらなきゃならないことが残っている。お前の所にはパワード・エクソスケルトンから信号が絶えず送られてるんだろ。一ヶ月後、俺のいる場所にミスティではなく、カリム・サンらの内、誰かを寄こしてくれ。全員の無事が確認でき次第、俺はお前の下に行く」


その時俺はこの世界にいない。カールをまた出し抜くようなことになるが、それでもカールよ、それはお前の望む結果と合致している。黙って俺の提案を受け入れろ。


カリム・サンらには申し訳ないと思う。彼らの内誰だか分からないが、俺の死体を見ることになろう。その誰かは、大体は見当が付く。だが、その役目を誰かがしなければならない。


そもそもカールは俺に死んでほしいのだ。俺が死んだと分かればカールもあの性格だ。カリム・サンらに無駄な労力を費やすことはなかろう。


ラグナロクのAIにしても俺が元の世界に戻ったら、キース・バージヴァルの生体電気により、その状況を即座に感知する。


もし、全てが上手く行き、一か月もたたない内に俺が元の世界に戻ったとしよう。誰かは迎えに来ることさえない。


それに迎えに来させるっていうのはそれまでの彼らの保険でもある。その時が来るまでカリム・サンらの安全は確保しておきたい。


「よかろう。ただし、約束を破った時はどうなるか」


ほっとしたぜ。それでいい、カールよ。どう転んでもお前に損はない。


「ああ。分かっている。しっかりとGPSで俺を追っていてくれ」


「お前に言われなくともそうする」


「ならよかった。で、ローラムの竜王が死ぬと誰から聞いた。そろそろ教えて貰ってもいいと思うが」


カールは、フフっと不敵に笑った。


「だから、この事実は私とお前、そして、エリノアしか知らないとさっき言っただろ?」


またこれか。ケルンでもこんな謎かけをされていた。ずっとこんな感じだ。こいつと付き合っているとすこぶるストレスを感じる。


「ピンとこないのか。頭の切れる男だと思っていたが案外普通だな」


カールは本心から詰まらなそうに、肘かけに肘突くとその手のひらに己の顎を乗せる。こういうところだ。心底、他人をバカにしている。


「ヒントを一つやる」


ヒント? やっぱり無理だ。こいつ、人をなぶっていることを自覚しているのか。


「忘れてはいまいか。私たちの他にまだ知っているやつがいることを」


えっ!? 


何言っている。さっき三人しか知らないと言っていたじゃないか。


いや、張ったりだ。こいつ、俺にカマをかけている。落ち着け、落ち着くんだ。普通にしていろ。やつは俺の顔色をうかがっている。ここで下手を打てばラキラはともかく、カリム・サンたちに飛び火してしまう。


「時間切れだな。こんな簡単な事が分からないのか」


マジ残念がっている。ポーズでも何でもなく本物のため息を吐いている。俺はポーカーフェイスでいることを心掛けていたが、もう我慢の限界だ。


カールには俺がイラついていのが分かったようだ。ニヤっと白い歯を見せた。そして、仕方ないなとぼそりと言った。


仕方ないとは己に掛けた言葉であろう。カールとしてもあまり俺を怒らせたくない。取り敢えずは俺を己の配下にしなくてはならないのだ。じらすのはここまでだと自分をいさめたのだ。


「答えは」


答えは?


「ローラムの竜王」


はっ! はぁ? こいつ、今、なんと言った?






俺は通信を切り、南西に向かっていた。賢いドラゴンの襲撃に会ってもルーアーが一つ残っている。サイレント・ギャラクシーもコントロール出来そうな気がする。


要は世界を覆うほどの魔法陣を何とかすればいいってことだろ。やってみないと分からないが、範囲を限定して使用する。あんな途方もない魔法陣は造らない。そのための王立図書館でもあり、魔法書の熟読でもあった。


七つ口のドラゴンの時は、やつの性根が気に入らなくて敢えて使わなかった。というか、それ以外に俺にはベストな戦略があった。


てこずったのは鎖の騎士がアンデットだとは思ってもみなかったからだ。鎖の騎士自体は俺の敵ではない。アンデットだと早期に分かっていれば使っていたのかもしれないが。


いいや、それはない。アンデットとドラゴンは対だ。アンデットと分かった時点でサイレント・ギャラクシーはもはやない。敵が二体居るんだ。それこそイクィバレント・エクスチェンジ、等価交換のかっこうの餌食だからな。


俺に残された猶予は一カ月。それまでにガレム湾に行き、創造者と話を付ける。でないと俺はカール・バージヴァルの手下になり下がってしまう。


カール・バージヴァルが言っていた。俺が王都を出立してゼーテで四者会談を行っているまでの間で、すでにやつはエトイナ山に行っていた。そしてそれは、当然エリノアの承知するところだった。



「面白かった!」


「続きが気になる。読みたい!」


「今後どうなるの!」


と思ったら☆、ブクマ、コメント、応援して頂けると幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。


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