表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

第2話 入学式

 転生だと気が付いたところで、御曹司でもイケメンでも天才でもない俺は、ただひたすらに自分の人生を恨みながら、スマホゲームをしているだけだった。


 そんなこんなで四月。

 入学の季節。

 私立テンペスト学園は、名前からは想像できないだろうが、ただの普通科高校である。

 しかし、そこはゲームの世界。

 普通であって普通ではない面々が集う高校でもある。


 端的に言えば金持ち学校であるが、そのキャラクターの濃さがすごい。

 乙女ゲーなので、女性キャラはモブキャラが目立つが、男性キャラはイケメン多数である。髪の色も、赤や青や金や緑……大丈夫か、日本? と思うが、この世界ではそれが普通だ。


 まあ、俺も二度目の人生だし、転生前の記憶もある。

 高校生とは程遠い、二十代の社会人だった。それもブラック企業在籍数年目。たいていのことは受け入れてみせよう。


 ちなみに一度目の人生の最後は――あれ、一度目の人生の俺は、最後、どうしたんだっけ? 死んだ……のか? だから転生したはずだよな? 記憶が曖昧だ。覚えていることは多々あるが、最後だけぼんやりしている。


 まあいいや。起きてしまったことは仕方がない。

 現実問題として、テンペスト高校の入学式に参加している俺に、現実以上に必要な情報など存在しないのだ。


 現在、入学式は生徒代表の挨拶に移行中。

 入学テストで一番良い点数を取った生徒が、壇上へ向かって歩き始めた。

 周囲がざわつく。

 それも当たり前のこと。


 イケメン比率の高い体育館の中で、ひときわ目立つ、メインキャラクターの一人。

青い髪の一年、高身長、超絶イケメンの男子高校生。

 名を『あおい 四季しき』。

 クール系キャラクターだが、ストーリーを進めていくと、熱血な部分や、案外、甘えん坊な部分が出てくるという人気要素の持ち主である。

 さらには超金持ち一家の長男。国内トップのお菓子メーカーの御曹司である。


 ざわついていた体育館だったが、葵四季が口を開き始めると、皆が呼吸音さえ気にするかのように静かになった。

 女子生徒なんかは目がハートになっている感じだ。

 男子から見たって、魅力的だものな……。


 涼やかな声を聞いていたら、ゲームのBGMを思い出してきた。

 そういや、声優の声、そのまんまだ。

 この世界、なかなかすごい。


「それにしても……俺、あんなイケメンを攻略済みってことなんだよなぁ……」


 甘えてくる男子高校生の記憶を持つ、元サラリーマン・現ボッチ確定男子高校生。

なんか複雑である。


 周囲からひそひそ声。


「……なんか、あの男子、ぶつぶつ言っててキモイんだけど。四季様の声が汚れる」

「やめときなよ。目、つけられるよ」


 聞こえてるからな!?

 ボッチ確定なのは覚悟のうえだから、いいけど、JKからの攻撃は思いのほか心理ダメージがあるようだ。

 記憶が戻ったせいで、気分は女子高生に虐げられるサラリーマンだし。


 ディスってくる女子の顔を見たい気もするが、後々面倒くさいので、大人の余裕(必死)でスルー。


 動揺する心を落ち着かせるために、逆に落ち着きなく視線を右へ左へ動かすと―目の端に女子が一名映った。


 俺はこの少女も知っている。

 このゲーム――プリンス・プロジェクトにおける主人公だった。


 つまり、これからイジメられ、そしてプリンスたちに救われる予定であるはずの、女子高生である。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ