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第1章 第5話 化物VS人間

「何してんの?」



 ついに眼前にオリヴィアが迫ってきたその時。聞きなれた、ここにいるはずのない声が部屋に響いた。



「……鈴木」



 俺がその名を呼ぶと覆いかぶさっていたオリヴィアの動きが止まり、振り返る。そこにいたのは俺のことを散々いびっていた女子バレー部の同級生、鈴木。それに部長や監督までいる。



「そういえば鍵閉めてなかった……」



 花音のつぶやきがこの状況をそのままこの状況の説明となる。だがわからないことが一つ。レギュラーに、レギュラーかつ役職持ちに、監督。どうしてここまでの重鎮が揃っているのか。



「ちょっと……レシーブの練習を……」

「あっそ。でもちょうどいいや」



 俺の釈明を軽く流し、部長が俺たち三人にそれぞれ紙を手渡してくる。俺には退部届。オリヴィアには入部届。そして花音には、記入済みの入部届。ようするにオリヴィアには部活に入れと言い、俺と花音には部活に来るなと言っている。



「言いましたよね。わたしの推しをいじめる人がいる部活には入らないって」



 俺から離れたオリヴィアが入部届をビリビリに破く。いや、それよりも。



「花音を入れないってどういうつもりですか?」



 ……まさか。まさかあれが本気だったわけじゃないよな。わずかにかつての馬鹿げた言葉が脳裏によぎったが、そのまさか。初老のおっさん監督はあの言葉を大真面目に口にした。



「リベロなんてゴミ、うちの学校には必要ない」



 少し離れたところで紙が折れるくしゃっとした音が聞こえた。なるほど、これが部屋に帰ってきたばかりの花音が荒れていた理由か。



「リベロは守備専門。攻撃どころかまともなトスも上げることができない、低身長を救済するためだけのゴミみたいなポジション。うちのバレー部には必要ないんだよ」

「なに言ってるんですか……!」



 その言葉に立ちふさがったのは俺でも花音でもない。体格に恵まれた天才、オリヴィア。



「既定のネットを挟んで行う以上、バレーにおいて絶対的なのは身長! その点君は素晴らしい。ぜひうちのバレー部に入ってほしい。もちろんスポーツ推薦枠として学費の免除は掛け合って……」

「話になりません。帰ってください!」



 ある意味誰よりもレシーブの重要性を理解しているオリヴィアが三人を追い出そうとするが、俺と花音は何も言えなかった。監督の言葉が間違っていないことを、俺たちも理解しているからだ。



 バレーは身長が命。リベロが低身長の救済枠というのもあながち間違った話じゃない。レシーブが全員できるという前提ではあるが、リベロ不要論だって実際に議題にはよく上がるものではある。



 ま、いいんだそんなことは。そんなことは今さら、どうでもいい。



「ちょっと待ってくださいよ」



 俺の制止に振り返ったのは鈴木だけ。これが俺の立ち位置。せいぜい一人止めるのが精一杯。



「あ? なに? お前みたいなゴミに構ってる暇ないんだけど。それとも女の子がいるから調子乗っちゃった?」

「ま……そういうことだよ」



 リベロだとか退部だとか、そんなのはいいんだ、どうでも。



「かわいい後輩の前なんで。ちょっとくらいはかっこつけさせてもらう」



 向こうの主張は何としてでもオリヴィアを引き入れること。俺と花音の話は言ってしまえばついでだ。オリヴィアという二重の意味での超大型新人の入部と比べればたいした問題じゃない。そこに交渉の余地がある。



「俺としてもオリヴィアにはバレー部に入ってほしい。この才能を腐らせるのはもったいない。オリヴィアはどう思う?」

「そりゃあ……入りたいですけど……。でも伊達さんをいじめるような部活には入りたくないですし、レシーブを馬鹿にするのも論外です」

「ということで提案だ」



 この交渉は間違いなく通る。こいつらは俺たちのことを何も理解していないからだ。



「俺、オリヴィア、花音の三人対そっちのレギュラー六人でバレーをしよう。負けた方が勝った方の言うことを聞く。それでどうだ?」



 俺の提案に鈴木たち三人は顔を見合わせ、そして笑った。



「冗談でしょ!? 確かに九尾は天才だけど、お荷物を二人抱えた状態で私たちに勝てるとか本気で思ってんの!?」

「じゃあ決まりでいいんだな?」

「いいよいいよそれで! その代わり私たちが勝ったら九尾は奴隷。あんたらチビゴミ二人はバレー部に関わらないでね」



 笑みをこらえきれない鈴木たち三人。だが俺は冷静だった。それはオリヴィアも花音も同じ。



 こいつらはせいぜい県上位止まり。全国という舞台に踏み入れたことがない。だから知らないんだ。今の学生バレーには妖怪がいることを。



 九尾の狐。猫又。ついでに鎌鼬。俺たちについた妖怪の異名はただのあだ名じゃない。



「で、ありえないけどそっちが勝ったら何してほしいの?」

「「決まってます」」



 化物。そう恐れられ、煙たがれた二人の後輩が俺の代わりに答える。



「バレー部はわたしたちがもらう」

「それとせんぱいへの謝罪。忘れないでくださいね?」



 魑魅魍魎跋扈する地獄を住処にする妖怪が、今ここに顕現する。

ごめんなさい! 誰も興味ないかもだけど……需要ないかもですけど、バレー編! 2話だけやらせてください! いや本当にウケは悪いんでしょうが……どうしても抑えられなかった……。


それでも期待していただける方はぜひぜひ☆☆☆☆☆を押して評価とブックマークで応援してください……! お願いします……!

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― 新着の感想 ―
[一言] スポーツ題材の作品でスポーツ要素が無かったらそれはスープの無いラーメンの様な物では? バレー回楽しみにしてます。
[良い点] ヒロインが全くブレずに主人公につくので気持ちが良いですね バレー部の話でバレーの試合があるのは当然ですね(笑) [気になる点] 作劇上やむを得ないかとは思いますが、とても強豪校とは思えない…
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