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第1章 第3話 三角関係

「いやだめだろ!」



 その場の雰囲気に流されそうになったが、すんでのところで踏みとどまれた。



「俺のことを尊敬してくれてるのはうれしいけど敬意と好意は違うしさ……今日会ったばっかだし、何より俺なんかのためにバレーを捨てる必要はないんだ。だからバレー部にもど……」

「うだうだ言いよーばってん……」



 オリヴィアに抱きかかえられた身体がベッドに押し倒される。そしてそのまま彼女の大きな身体が俺の身体を包んでいく。



「うちん方が力強かばいけんね……抵抗したっちゃ無駄ばい……!」



 駄目だ……顔が本気だ……! そして力が強すぎる……! 情けないとも思えないくらいにレベルが違う……!



「それともなんですか……? タイプじゃないとか言って振るつもりですか……?」

「いやそれはその……正直言えばタイプではないけど……」

「は?」



 いっだ! 押さえつけられた腕がまるで万力に締め付けられたみたいに……待ってマジで骨折れる!



「私けっこーかわいい自信あるんですけど……!? スタイルだって当然いいしバレーだって上手いし……!」

「いや……男としてはやっぱり自分より背の高い女の子は劣等感が……」


「はぁっ!? 148㎝よりちっちゃい女の子そうそういませんよ!?」

「150! 150㎝! 絶対に間違えるな!」


「でも中三の公式記録148.8でしたよね……?」

「の、のののの伸びたんだよ! 成長期なんだから当然それくらいは……」


「確かにわたしも一年で180㎝から182㎝まで伸びましたしね……」

「ああああああああっ!」



 コンプレックスを刺激されたことと劣等感が相まり。奇跡的に俺はオリヴィアの力から抜け出すことができた。ベッドから立ち上がり息を整えていると……。



「……はっ! ま、まずいです……! 今すぐこの部屋から出ていってください!」



 どういうわけか一転、オリヴィアは俺を部屋から追い出そうとしてきた。



「早くしないと同居人が帰ってきちゃいます!」

「同居人……? ああそれは確かにまずいな」



 翼防高校の学生寮は基本的に二人一部屋。俺の部屋は相方が退学したことにより一人部屋だが、入学したてならそれは起こりえないだろう。確かに女子の部屋に男子が入っているのはまずい。



「じゃあ俺はこれで……部活には行けよ。たぶん快く受け入れてくれるから……」

「あーもうむがづぐっ!」



 オリヴィアに別れを告げようとすると、部屋の扉が勢いよく開き方言の暴言が響いた。



「なんなのあいづら! リベロはいらねぇとかふざげだごと言って! マジ調子さ乗って……おらを誰だと思ってるのよ……! 猫又よ猫又! 中学ナンバー1リベロのこのおらを馬鹿にして……ぜってぇゆるさねぇ!」



 東北弁と思われる方言とは裏腹に、今時っぽい女子。セミロングの栗色の髪を編み込んでやたらとおしゃれしている。運動部が強いうちの学校には珍しいタイプの子だ。……うん? いま、猫又って言ったか……? でも記憶にある彼女とは……いやでも……!



小野塚花音(おのづかかのん)!?」

「え……伊達颯せんぱい!?」



 顔をはっきりと見て、確信する。間違いない。小野塚花音だ。まさか彼女がうちの学校に……うちのバレー部に入ってくるなんて……!



「えっ、ちょっ、まっ……ごほんごほん!」



 俺のことに気づいた彼女は顔を真っ赤にしながら手をわちゃわちゃとさせて咳ばらいをする。そしてさっきまでのイライラした顔を奥底へと封じ込み、にっこりと笑った。



「やだー、いるならもっと早く言ってくださいよぉ。かのんー、びっくりしちゃったぁ」



 そして猫なで声で俺へと近づき手を取ってくる。



「にしてもずいぶんイメチェンしたな……。前は黒髪でもっとその……もっさりしてたのに」

「ぇへへ。せんぱいと同じ学校に入ったからー、ちょっと気合い入れておしゃれしちゃいましたー。似合ってますかぁ?」


「うん……似合ってる。ていうかすごいかわいい……」

「わー、ほんとですかぁ? うれしー!」

「ああああああああっ!」



 コンプレックスに狂った俺と同じような悲鳴を上げ、オリヴィアの大きな身体が俺たちの間を裂いてくる。



「な……なんですか……お二人知り合いですか……?」

「まぁそりゃ……」

「なんせ一緒にベストリベロ賞を取った仲ですもんねー、せんぱいっ」



 小野塚花音。岩手のバレー県代表で、ポジションは俺と同じリベロ。そして俺が中三、彼女が中二の頃の全中でその年のナンバー1リベロに選ばれた同士。実際に話したことこそないが、お互い意識はしていたはずだ。



 そして何より、彼女の身長は146㎝。俺より、低い。なるほど……オリヴィアが俺を必死に追い出そうとした理由がわかった気がする。



「き……気を付けてくださいね伊達さん……。この子、猫被ってますからね……!?」

「えー? まぁちょっとはそうだけどー、オリヴィアちゃんより早い中一からのファンなのは事実だから。残念だったね、化け狐ちゃん」

「この……泥棒猫……!」



 九尾の狐と猫又。妖怪にたとえらえた二人の戦争が勃発した。

さっそくランキングに入れさせていただきました! ありがとうございます! かんっっっっぜんに趣味なので恐縮ですが、応援いただける限りはがんばりますので、ぜひぜひ期待していただける方は☆☆☆☆☆を押して評価とブックマークしていってください! あ、ギスギスはしないです。そういうのはつなガールの方でね……(2回目)

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― 新着の感想 ―
[一言] 方言女子な上に大きい娘と小さい娘とか癖が破壊されてしまう…
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