■浴場_パリカー/11/12/17:30■
「へぇ、自慢するだけあって良い感じね」
「こんなに広くて豪華なのは落ち着かないかな」
「…(1番落ち着かないのは俺なんですけど)」
俺達はあれから女性スタッフに案内されて例の個室浴場に来ている。
浴場には美術館にあるような裸体の男女の彫刻が設置され、それぞれが持っている水瓶のようなものからお湯がとめどなく溢れていた。
しかも部屋全体が何故か明るい。
蝋燭も見当たらないのに昼のように明るいという良くわからないシステムだが、魔法の世界だからなんでもありなんだろうと納得しておく。
「2人がいてくれてラッキーだったよ、悪魔は女性と認めないとか言われて亜人か混浴のみって言われて困ってたんだ、弱いものイジメだよね」
「パリカーを見た目で判断したの?
普通に悪魔って分からないよ?その人間凄いね」
「…(確かにそうだ。パリカーは角も無ければ翼も無かったな、というか悪魔でも客として迎える既に、事が異常な気もするが)」
「ほら、これ」
「なるほどね」
「…(なるほど?)」
「普段はベルトに見立てて腰やお腹に巻いてるんだけど、熟練した従業員にはわかるみたい」
「普通に可愛い服に見えたよ」
「あはは、ありがと」
「…(んん?
ベルトを身体に巻き付ける?
まさかシッポがあるの?
もしかして男の感覚では何のためのベルトか意味不明という位置にしていたあのオシャレベルトがシッポだったのか?
細くて黒くてツヤツヤして…先が矢印のように尖ってるベルトがシッポだったとか信じられん)」
「ナイナイがもぞもぞしてる?」
俺は腰に巻いたタオルを調整して壁のシミに視線を集中する。ダメだダメだ、あっちを向いてはダメだ。
「あはは、ほんとだ。私のシッポが気になったのかもね」
ヒュンヒュンという風切り音が聞こえる、これはシッポ?
「…気にしてま」
「ナイナイ、にごん」
「…ごほん」
男に二言は無いという呪いの言葉のせいで俺は下手なことを言えなくなっていた。
「そうそう、嘘はいけないよ〜。それにしても、その赤いのって元からじゃないんだね。てっきりお仲間かと思ってたけど。角でもはえてきそうじゃない?赤鬼とかさ」
「え、縁起でもない」
「ねぇ、ヤタ。
二人で赤いの洗ってみる?案外落ちるかも」
「…」
俺達はパリカーの『こんなに広いんだから一緒に入っても端と端にいれば問題ないよ〜』という言葉にのせられて全員がタオル1枚の姿で浴場にいた。
俺としてもヤタの性別をあわよくばハッキリさせるチャンスだと思ってその提案に乗ったのだけど、ちょっとパリカーが想定外過ぎた。
ヤタが腰に巻いてるのか胸元から巻いてるのかすら確認できるチャンスが無い程にパリカーの恥じらいの無さが俺には目の毒だった。
いやいやいや、無理無理無理。
パリカーがヤタの隣にいるからもうそっちは完璧に向けないんだよ…。
「ちょっと、そういうの止めてくだいよ。俺の心臓が痛いです」
「なによぅ、普通喜ぶでしょ?」
「いえ、遠慮しときます」
「それならヤタをあらおっと」
「私も遠慮」
「遠慮はいらないよ〜」
パリカーにされるがままのヤタのうめき声が聞こえるが俺にはそれをどうにかする手段がなかった。
「なるほど、これが3本目の…」
「あぁ、それは」
「大丈夫大丈夫」
「…(3本目!?
ヤタガラスといえば3本目の足だけど、ヤタには3本目なんか無かったはず!な、何なんだ!?)」
「へぇ〜これはなかなか」
「パリカー、ダメ」
「だいじょ〜ぶ」
「…(ちょっと!3本目詳しく!!)」
俺は二人の会話に集中すると頭に血が上るのを感じた。
「あ…」
水が跳ねる音が聞こえた…。




