■宿_警告/11/12/15:10■
小綺麗な男を先頭に街を歩く。
目的地が決まった安心感で先程まで気にしてなかった建物や人々の服装などを見ていると、異世界に来ているという実感が少しずつわいてきた。
ただ、お姫様抱っこをしているヤタを見るとその実感はたちまち消えてあまりの現実感の無さに全てが夢なのではないかとも思えてもくるが、腕の疲労だけがこれは現実だと語ってくれる。
「お客様、もしかして『ブライ』に来たのは初めてですか?」
「『ブライ』って、この街の名前ですか?」
「おや?ご存知ありませんでしたか。
てっきり観光でいらっしゃったのかと思いました」
「観光ですか?」
「そうです。
『ブライ』は『勇者様』が降り立った始まりの街なのですよ。うちの宿もそのおかげで大きくなりました。『勇者が初めて利用した宿』がうちなので」
「なるほど、それは人気になるでしょうね」
「本来ならこういった客引きはしないのですが、先程あった爆発騒ぎのせいで宿泊のキャンセルが出たのです、それで酷くお疲れなお二人を見かけ声をかけさせてもらったのです」
「それはありがとうございます。ところで、その爆発とは?」
先の戦闘による爆発の事だろうか。
「大きな爆発が起こっていたのを知りませんか?
敏感なお客様はそれで宿泊を取りやめたほどの爆発だったのですけど」
「ええ、知りませんでした。しかし、それはなんというか、この街は危なくないんですか?」
「おそらく爆発は勇者様御一行によるものです。先日勇者様が数年ぶりにお越しになり、この街を出て仲間になったという三人の女性を紹介頂きましたので」
…何そのハーレム展開。女の敵?
「その女性達って勇者様の恋人なんですか?」
「いえ、仕事仲間と言われてましたね」
「そんな隠さなくても、どうせ同じ部屋に泊まったのでしょう?仕事仲間なわけないじゃないですか」
「『魔法使い』『僧侶』『騎士』の皆様には個室を用意しましたから、お客様の考えているような事は無いかと」
「勇者様を勘違いしていましたね…」
勇者の弱味でも見えてくるかと思ったが今の所は一応潔白だな。
しかし『騎士』だと?俺がヤタから聞いたのは確か『盗賊』だったと思ったのだが、記憶違いだろうか?
「その時に戦闘が近々この付近で行われるかもしれないと注意されていたのですよ、事前に連絡が無かったら今ごろはきっと大慌てでしたよ」
ハッハッハッ!と笑う男に愛想笑いを返す。
「もしかして勇者様達はつい先日まで泊まってたんですか?」
「ええ、勇者様が泊まるに相応しいのはうちくらいのもんですから」
ふむ…勇者達が…。
「さて、ご苦労様でした。こちらになります」
「え、ここって…」
「驚かれましたか?うちの宿は通称『ロック砦』という難攻不落の警備がうりの宿でございます」
いやいやいや、ナイナイナイ…。




