■街_金貨/11/12/14:45■
「「「「「うぉぉおおおおお!!!!」」」」」
凶悪な男の叫びに呼応するように周囲の客が全員立ち上がり雄叫びを上げ始めた。
客はそれぞれ手にジョッキを掲げると、勢いよくジョッキをぶつけて回る。テンションの上がりすぎた乾杯はジョッキの中身を盛大にぶちまけ、辺り一面がアルコール臭に包まれていった。
これは飲まなくても匂いだけで酔うぞ…。
「すぐに持ってこさせる、ゆっくりしてくれ」
「あ、ああ。よろしゅう」
呆気にとられるゴンさん。
いつものヤタ。
嫌悪感を顔に出すパリカー。
「金貨一枚にこれだけの価値があったんですね」
「あ、ああ…ちょっと想像してたんと違ったわ」
「ねえ、店の客に奢る事になってるのおかしくない?」
「俺達4人で金貨一枚分の価値ある商品を出せないって事でしょ?」
「それにしたって断りもなく…いや、あったわね」
「あー、そういえばゴンさん言ってましたね『男に二言は無い』って。そういえばあの時なんでヤタ笑ってたの?」
「雨森ちゃん、笑いは説明するもんやないで、感じるもんや。説明したらそれはもう笑えないんよ」
「は、はぁ」
「そういうこと」
ヤタは何故か腕組みをして頷いている。結局何だったのだろう。
「ちょっといいかな?」
ゴンさんの隣にはいかにも冒険者ですといった風貌のオヤジが立っていた。
「話の最中にすまない、一同を代表して礼を言わせてもらえないだろうか?
私はこの街のギルドマスターをしている『ヤマダ』だ。旨い飯と酒をありがとう」
ゴンさんの隣にはいかにも冒険者ですといった風貌のオヤジが立っていた。
ん?ヤマダ?ヤマダダ?
「いやいや、気にせんといて」
「悪いのだが立場上そういうわけにもいかんのだよ。それに奢ってもらっている身で悪いが、ひとつお願いもある」
「なんです?」
「ここにいる皆が貴殿らを見たことが無いと言っている。
楽しく飲める場を作ってくれた事は本当にありがたいのだが、相手の事を何も知らないというのは何か企みがあるのではないかとも疑ってしまうのだ。
例えば何かの『陽動』に使われている…などとな。
面倒をかけるがどうか皆に一言飲んでも良い大義名分をくれんか?」
「なるほど、そういう事なら」
ゴンさんは席を立ちひとつ咳払いをする。ヤマダダと話しているのは注目されていたようで周囲の視線はゴンさんに向けられていた。
「俺はゴンといって、パーティーリーダーや」
「「「え?」」」
「これから命を失いかねん大きな仕事をやる。だから少しでも楽しい時を過ごしたい。俺達と一緒に楽しく飲んで騒いで欲しい。今日は俺の奢りや!乾杯!」
「「「「「うぉぉおおおおお!!!!」」」」」
「「「「「ゴーン!!ゴーン!!」」」」」
店内は今までより大きな喧騒と濃いアルコール臭に包まれる。
「はぁ…最悪ね、悪いけどさっきの金貨1枚もらえない?」
「良いですけど?」
もともとはパリカーのものだったので特に気にすることなく渡す。
「明日の朝には戻るから」
「え?ちょっと」
パリカーは金貨を受け取るとすぐに消えていた。
「ナイナイ…気持ち悪いかも…」
「ええ!?」
アルコール臭にあてられたヤタが青い顔をしていた。




