■草原_魔法/11/12/13:08■
前に進むほど黒と赤の焼け焦げた景色が広がり恐怖という感覚が意識されるなか、アレクサンドリアの機械音声とヤタの詠唱の声が重なる。
「23.24――」
『風神シナツヒコ、盟約に従いその力の一端を―』
ヤタに指示されていたあたりに到着すると敵らしきシルエットが初めて見える、あれが魔法使いか?
複数人いるわけでは無いようだが、双眼鏡はリュックの中にあるので確認できない。
「25.26―」
『解き放て、全てを巻き込む暴風は―』
3m先あたりに赤く光るピンポン球くらいの球体が現れる。
「雨森!そr―!」
「ヤタを信じて!こっちに!」
「28.29―」
『意志を持つ全ての者を封じ―』
「ええい!ままよ!」
「30秒をお知らせします」
『ただそれを―』
草むらに隠れていたゴンさんが走ってくるのが横目で見えた。
そして少し遅れて敵の『魔法使い』が操る赤い球体がまるでポップコーンが弾けるようにバスケットボールサイズへと変化する。
赤と白が混ざったようなその球体は瞬時に周囲の熱を高温へと変えてゆくようで顔にヒリヒリとした痛みを感じる。
球体の表面はまるで薄い膜のように光り、今にも弾けそうだ。
『受け入れるのみ』
『Pi!!』
『暴風怒涛!!!』
球体が弾け、全てを灰にする程の炎が俺たち3人に迫ると同時にヤタの振り下ろしたビニール傘の柄の部分から凄まじい風が巻き起こる。
風は炎と非常な相性が良く、球体から発生した炎はヤタの作り出す竜巻に取り込まれると広範囲に撒き散らしていた熱量を天へと集めていく。
『火災旋風』
先程までの火柱より3倍は天高くあがっている気がする。
熱もそうだが、吸い込まれそうなそれを見ているとまるで生きた心地がしない。
気がつくとゴンさんが俺の両足を持って地に伏せている。飛ばないようにという配慮かもしれない。
ヤタの持つビニール傘の先が引火した。
可燃性のある物を杖にするべきでは無かった。
傘が引火したせいか竜巻を制御しきれなくなったようで、竜巻は敵の方向に向く事無く先程までゴンさんが伏せていた草むらを灰燼へと変えていく。
「ナイナイ、プランB」
「はい!」
俺は口を軽く開ける。
「ぐ…」
ヤタは傘を持つ右腕をふらつかせながら、左手を使い俺の口にソレを入れる。
『Pyurororo!!』
俺はソレを吹いた。
「あっ!悪魔の笛やん?!」
ゴンさんの驚く声とともに周囲は赤に包まれていった。




