■草原_丘/11/12/10:50■
少し小高くなっている場所を目指して俺とヤタは歩いた。
360度見渡しても山が見当たらない草原、モンゴルの遊牧民がいてもおかしくなさそうなイメージだ。
木々も見当たらないので生物がいればこちらからも丸見えだし、敵からも丸見えになるだろう。
歩いていると暑くなってくるが、季節というものがあるのか分からないが、春くらいの気候に思えた。
「ナイナイ、とりあえずここがこの辺りで一番高そうだけど、何かいるか探せない?」
「ええと、そうですね…」
俺はリュックから『ペットボトル』を取り出し、梱包していた『無名良品の双眼鏡』を開封した、念じるだけで自在に操れ、コンビニで大量に梱包したため今では特に違和感もなく使用できる。梱包と開封をする際に音がしないのはゲームと違って何だか味気ないので脳内で『ヒュルン』と付け加える。
しかし、本当に便利でありがたい。ここまで自在にアビリティが使えるのはトクさんの『祝福のキス』により梱包のレベルがMAXになったからだと思
…う…思い出すと吐き気が…。早く忘れよう。
「双眼鏡を使います、ちょっと待ってて下さい」
返事が無いいつものヤタに戻っている事を確認しつつ俺は双眼鏡を使い周囲を調べる。使い始めてすぐに普通の双眼鏡では無いことに気付いた。
ん?なんだこの双眼鏡…シルエットが浮かぶ?草に隠れているウサギの様な生物のシルエットが見えるぞ。な、なんて便利な…。
俺はとにかくこのチートな双眼鏡を使って人や街を探す事にした。
「どう?何か見える?」
「うーん、ウサギっぽいのしかいませんね…」
「空は見てる?」
「え、空ですか?太陽を見たらダメなんじゃ…」」
「そこは調整して」
「ですよね」
ヤタに言われて双眼鏡を空に向ける。太陽に注意して空を探すと鳥を確認する事ができた。
「鳥がいま…ん?あ、あれ?」
なかなか大きな鳥だが何か違和感を感じる。
「なに?」
「見ます?」
双眼鏡から顔を離すと肉眼では豆粒サイズで良く分からない事が分かり、まだかなりの距離がありそうだ。ヤタに双眼鏡を差し出し方向を示す。
「…ナイナイ、あれは『ズー』」
「ズー?聞いたこと無いです、知ってるんですか?」
双眼鏡を覗く姿のヤタに問う。しかし、横顔を見ていると心が奪われそうになるな…ダメだダメだ、性別も分からないし、吊り橋効果でそんな気になってるだけだ。
気を引き締めないと、風が吹き始めた事を今感じた様に油断してはならない。
「説明している暇は無さそうかな。
とにかく見つかる前に逃げないと」
「え、逃げるんですか?まだあんなに遠…っうわ」
突風が駆け抜け、少しよろめく。
あわててヤタの顔からズーへと視線を移すと声を失った。
「見つかった…」
豆粒サイズだったズーは双眼鏡で見ていたサイズですぐそこまで迫っていた。




