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雨森弥太郎は騒がない〜真夜中に拾った少女〜  作者: 猫背族の黑
第一章『真夜中の少女』
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■アパート_自室/11/11/24:44■

 少女誘拐という言葉が脳裏に浮かびながらも玄関に裸足の少女を迎え入れる。


「ちょっと待ってて下さいね」


 ひとまず全室の電気をつけエアコンを入れた。


 俺が住んでいるのは1つの居室とキッチンスペースで作られているいわゆる『1K』という間取りだ。田舎だからか風呂トイレ別の『セパレート』なのを個人的には気に入っている。


 部屋は8畳あり一人暮らしには十分だが、二人では少し窮屈だろう。


 そういえば親以外で初めての来訪者だな。


 さて、どうするか。

 

 この寒い中どれくらいあの寒そうな格好でいたのか分らないが、ダウンコートを着込んでいた俺でも寒いのだ。身体の芯まで冷えていてもおかしくはない。


 とはいえ雨に濡れた同級生を連れ込んだわけでもあるまいし、見ず知らずの異性を風呂に入れるのは犯罪の臭いがより濃くなるだろう。通りすがりの名探偵に犯人に仕立てられるのも気分が悪い。


 個人的にはまだ俺の行動は善意のうちだと思っている。お腹が空いている画伯におにぎりをあげるようなものだと。


 バカな事を考えながらハンドタオルを水道で水に濡らし、軽く絞ってレンジにかける。


『Buuuuuu』


 部屋に機械音が響き渡る。

 少女は玄関に立ち尽くしており相変わらず無言だ。今のうちにコンビニで買っていたものを整理する。


『冷え切ったおでん』

『エナジードリンク』

『食パン』

『ハム』

『ポッキー』


 今日はポッキーの日だと言うことで、そういやゴンさんに無理やり買わされたな…。

 

 片付けながら横目で確認するが、やはり少女だ。

 一体何歳なんだ?自慢じゃないが女の事はからっきし分らない。最近の小中学生でも化粧をされていたら年代を間違える可能性があるとハッキリした自信がある。


 よもや、都会で良く聞く美人局とかそういう恐ろしいハニートラップではないだろうな…。


『Tinn!』


 気を取り直してレンジで温めたハンドタオルを取り出す。


「あちちちち」


 左右の手に放りながら温度調節。


「お待たせ、これで足をふいてから入ってきて。

 そしたら奥の部屋で適当にくつろいでくれてたら良いから。あとは、…熱いから気をつけて」

「…ぁ」


 少女は俺の手からハンドタオルを受け取る。

 ちょっとした悲鳴が聞こえたのでよほど冷え切っていたのか、皮膚が薄いかのどちらかだろう。


 ひとまず意思疎通ができる事を確認した俺は安心し、ダウンコートをハンガーにかけてキッチンに立つ。


 さて、次はメシか。


 いやいやいや?

 …一体俺は何をやっているんだ。



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