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雨森弥太郎は騒がない〜真夜中に拾った少女〜  作者: 猫背族の黑
第二章『加速する違和感』
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■コンビニ _無名良品11/12/07:30■

「ナイナイ、私が選べば良いの?」


 俺はヤタにスリッパを差し出しながらこたえる。


「俺は女物は良く分らないないから。サイズも分からないし。ヤタがこの辺の『無名良品』コーナーから良さそうな物を選んで試着して決め手くれたら良いよ」


 店に一つだけある試着室の共用スリッパは大きすぎてブカブカだったが、床に直接立つよりはましだろう。

 

「気に入ったらその商標のバーコードだけよけておいて貰えたら良いかな。あとでまとめてレジに通そう」 

「あ…ナイナイ、その」

「どうしたの?」

 

 ヤタはもじもじしながら上目遣いで何かを訴えている。


「その…」

「その?」

「…お金」

「お金?」

「な」

「な?」

「…無い…よ?」


 なんだソレは。


 あえて狙っているのか?


 そんな風に言われたら男ならこう答えるしかない。


「ひ、必要な物だし、ぷ、プレゼントするよ。好きなものを選んでくれたら良いから」


 そこまで高額な物を品揃えしていない事を知っているから言える店員ならではの言葉である。


 衣料品を幅広く揃えているが、高い物で冬用のコートが1万円程だろうか。『無名』故に安さが売りらしい、庶民の味方で助かるブランドだ。


 しかし最初からプレゼントするつもりだったが、お金を払わせて悪いと思ってくれるあたりに好感が持てるな。


「わ、分かった」


 ヤタは目を輝かせて『無名良品』コーナーを物色しはじめた。季節もあわない貧相な格好をしていた理由も分からないが、やっとまともな格好ができるという喜びに満ちた瞳だった。


「少し店内見てくるから」


 一緒に衣料品を選ぶのは何だかプライバシーを覗くようで抵抗があり一度離れる事にした。ヤタからの返事はなかったが、ヤタなら仕方が無いだろう。


 時間外労働ではあるが職業病で商品の陳列が乱れている場所を手直しながら現在の状況をまとめるためにも考えを巡らせた。


 『ニュータウン・ニュー新宿』略して『ニュースリー』はバブル期に誕生したベッドタウンだ。海岸線に面した一部の山を切り崩して造成された坂の街に、整然と家々が並んでいる。


 バブル期当時は都心まで電車で70分という事と、景観が良い立地を謳い魅力的な街だったらしい。しかしバブル景気も終わり、国の出生率が下がっている現在『ニュースリー』の人口も下がる一方で残念ながら『ニュースリー』近隣の発展にまでは至らなかった。


 バブル期当時は駅前に幾らか店もあったらしいが今ではどの店舗にもシャッターが降りて寂しい街になってしまっている。


 そんな『ニュースリー』に生活インフラとして誘致されたのがコンビニ『365-one year-』だ。


 あえて駅から少し離れた場所に街が誘致したコンビニ『365-one year-』は一般的なコンビニの2倍程の大きさで、生活インフラを支えるために通常のコンビニでは置かない商品を取り揃えていた。

 

 その筆頭商品が『無名良品』シリーズなのだが…。


 なんだろう、記憶違いだろうか。手直ししていると記憶に無い商品が幾つかある。うちの店ってこんな商品置いてる店だったか?


「ナイナイ、ちょっときて」


 ヤタの声が試着室あたりから聞こえてきた。


 なんだろうか?

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