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雨森弥太郎は騒がない〜真夜中に拾った少女〜  作者: 猫背族の黑
第二章『加速する違和感』
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■アパート前_路上/11/12/05:40■

「結界ってどれくらいの範囲なんです!?」


 アパート2階から周囲を見渡すが特に変化は見られない、俺は外に面している階段を慎重に降りながら背負っているヤタに聞く。


「この建物の敷地くらい」

「え、ちっさ!」

「静かに…大きければ良いものでは無いんだよ」


 耳元で不機嫌そうな声で囁かれる。


「何故です?」


 何だかゾクゾクする、緊張感か寒さか、耳元で囁かれたせいかは分らない。


「規模が大きいと結界を張った違和感が伝わりやすくて見つかりやすいんだよ。結界は対象物を隠す感じのものだよ」

「つまり結界が破られたって事は…近くに?」

 

 階段を降りきった所で視界にそれは映り込む。


「ぎ、ぎ、ぎ、ぎ、ぎ」

「あ」


 人型バッタを見つけて声が漏れる。

 バッタはこちらに気が付かずにアパート1階の端部屋にむけて前脚を振り下ろした。


 響き渡る轟音とともに玄関が破られるのを目にするが、何とか声を出さずに耐える。ヤタを背負っている事もあり無様な姿は見せられないと思った。


「後ろにもいるよ、気付かれる前に素早く敷地から出て」


 ヤタのおかげでアパート両端にバッタがいる事がわかった。2階から探索されていたら脱出不可能だっただろう。


「わ、わかりました」


 足音に注意しながら俺は道路を目指した。


「…くしゅん」

「わわ、わ」


 ヤタのくしゃみが耳を刺激する。つい情け無い声が漏れる。


「ぎ!ぎ!ぎ!ぎ!ぎ!」

「…ごめん、見つかったみたい」

「は、走ります!」


 俺はとにかく前に進む事を意識した。


『Byunn!!』


 後から風を切る音が聞こえ、前方に影が降ってくる。


「飛んだ…のか」


 バッタなら飛んでも不思議じゃない、脚力においてはまず負ける未来しか見えない。


「かまわずに走り抜けて」

「で、でも」

「良いから」

「う、うわぁぁぁあ!」


 俺は前方のバッタを横切るつもりで走る。


 バッタが前脚を構える、俺は一度アレをしかけられた記憶がある。アレは避けられないだろう。


 その時、ヤタは右腕を上げて何かを振り下ろした。それは使用済の割り箸だった…。

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