マー君
時は令和。場所は日本。
海に浮いた島国の中の小さな県。その中の町の1つ。町の中の一つの家。
その家にはごく普通の家族が暮していました。
家族は5人家族でした。
竹田和樹52歳。
職業、公務員。竹田家を支える大黒柱。普段は無口だが、優しい心を持っている。
竹田英子51歳。
職業、専業主婦。竹田家の家事をこなす頑張りもの。最近断捨離にハマっている。
竹田晴樹22歳。
職業、フリーター。竹田家のお調子者。短気だからすぐ怒る。人を笑わせることが好きな変な奴。
竹田陽樹19歳。
職業、フリーター。竹田家のしっかり者。普段は無口だが時々面白いことを言う。センス溢れる仕事人。
竹田マー君7~8歳。
職業、フリーター。竹田家の癒し。人懐っこくて頭のいい猫だ。好きなものは三ツ星グルメだそう。
2022年。2月12日。竹田家。
和樹は朝から夜遅くまで働いている。英子、晴樹、陽樹も今日は実家に帰ってアルバイトをさせてもらっているようだ。英子の親は林業を営んでいて、それを手伝い、お給料としてお金をくれるのだ。
マー君はそういう時、1匹でワオーン。と鳴いて過ごすという。
マー君は皿にいれられた安売りのキャットフードを食べて家族の帰りを待っていた。
2022年。2月13日。竹田家。
家族は昨日、一人も家に帰ってこなかった。マー君は心配に思った。これまでいなくなることはあってけれど、1日ずっといないなんてことは一度もなかったのに。しかし家にはカギがかけられている。自力では外に出ることが出来なかった。
2022年。2月14日。竹田家。
家族はまだ帰っていない。皿に入っていたキャットフードも食べあげてしまった。
お腹がすいて横たわっていると、ピンポーンと音がした。
ワオーン!やっと帰ってきてくれた。早く皆の顔を見て安心したい。
…しかしドアを開けて出てきたのは隣に住む小島さんだった。
小島さん
「マー君!良かった!あなただけでも無事で!」
マー君
「にゃーん!」
小島さん
「竹田さん一家が2日前亡くなってしまったの…。本当に残念だわ…」
マー君はこの時、人の言葉が分からなかった。
だけど小島さんの落ち込んだ表情、仕草、立ち方、話し方から皆に何が起きたかをマー君は理解することが出来た。
小島さん
「あぁ!!マー君!!」
マー君は小島さんの足元を通り抜けて走った。
大好きな、自分の家族に会うために。
途中で地元のテレビ放送の音が聞こえた。
テレビ放送の声
「先日、●●市で起こった4人が亡くなった事故ですが・・・」
途中で道を歩く人から不思議そうな目を向けられた。
町を行く人々
「猫だ」「猫が走ってる」「かわいい~!」
マー君は気づいたら病院の前に来ていた。
病院の中を駆け巡るマー君。職員から逃げていると、見知った顔を見つけた。
竹田家の母型の家族、磯野家の3人だった。
英子の父、母、長男、次男。
英子の父
「おぉ~マー君…。お前も来たんか~」
英子の母
「猫なんて今はどうでもいいわい…!きっとこれは夢じゃ!夢なんじゃ!」
英子の父
「あぁマー君。お前も見てやっておくれ。これがお前の家族」
英子のお父さんはマー君を優しく抱え上げた。
英子の父
「……最後の姿じゃ」
ベッドには4人の人が並べられていた。
和樹、英子、晴樹、陽樹。皆が目をつむって、ピクリとも動かない。
マー君は晴樹に猫パンチをしてみた。いつもだったらやり返されるのに今日はやけにしずかだにゃ。
マー君は陽樹の足に顔をこすりつけた。いつもだったらマー君!って言ってくれるのに、今日は言ってくれないんだね。
マー君は英子の・・・
マー君
「ワオーン!!!!!」
マー君は病院を飛び出した。
その後、磯野家がマー君を一か月以上捜したが、結局見つからなかったという。