6話
「ペンダントを踏んだ……!?」
「家紋入りのペンダントを……!?」
大人たちは四人はロバートたち三人の行いを聞いて絶句した。
「はい、何度も踏みつけられ壊されました。彼らはペンダントを踏む行為を楽しんでいました」
「ロバート! お前は何をしているんだ!」
私は淡々と告げる。
今まで感情を見せなかった国王は、ついにロバートへ怒声をあげ怒鳴りつけた。
ロバートとレオは何がそこまで不味いのか理解していないようだったが、ドミニクは汗を額に浮かべていた。
「ち、父上? 何を仰って……」
「とぼけるな! 家紋とは何かはとっくの昔に教えていただろう! 答えろ!」
「は、はい……! それぞれの家にとって名誉と誇り重要なものだと学びました……」
「それを理解していて家紋を踏むということは家を侮辱することだということがなぜ分からないんだ……!」
そして他方では騎士団長はレオを怒鳴りつけている。
「レオッ! お前はどこまで人としての道を踏み外すせば気が済むんだ!」
ロバートとレオは顔を真っ青にする。
自分が勝手に他の家を侮辱していたことを理解したからだ。
「ドミニク! お前にはしっかりと教えたはずだ! 意味も理解していただろう! どういうことだ!」
ドミニクの父はドミニクに掴みかかり、怒鳴りつける。
ドミニクは冷や汗を流しながらしどろもどろに答える。
「あの……よく、見えなくて」
ドミニクの父がドミニクを殴る。
「黙れ! 見えなかったじゃ済まされないんだよ! しかもそれ以前に人としても問題だ! 人のモノを楽しんで壊すなど……!」
「怒りで我を忘れてしまって……」
ドミニクの父は襟を掴んでいる手をぶるぶると震わせた。
しかしすっと力が抜けて、襟を離した。
それはドミニクを完全に見放した目だった。
「……もうエドマンドの名を名乗るな。何があろうと絶対にだ」
「そ、そんな……!」
そこで国王が言葉を差し挟む。
「プレスコット公爵。まずは言わなければならないことがある」
父は落ち着いた声で返事をした。
先程からずっと心の中で静かな怒りを燃やしており、家紋を踏みつけられたと聞いて業火を燃やしているはずだが、それをあからさまに面には出さない。
まさに貴族として理想的だ。
「何でしょうか」
「どうか釈明をさせて欲しい。家紋を踏んだのは決して私たち家の意思ではないのだと」
「私からも、本当に申し訳ありません」
「私もです。息子がこのようなことをしでかして、申し開きのしようがありません」
国王を含む三人が丁重に謝罪を行う。
「……理解はしました」
理解しているのではなく、理解した。
つまり今、誠意のある謝罪を受けたことで敵意が無いことが理解できたということだ。
国王は玉座から降り、頭を下げた。
「私から言うのはおかしいと理解している。だが内乱で民草を巻き込みたくないのだ。どうか戦だけは回避して欲しい。そちらから出された要求は出来る限り呑むことを約束する」
目上の者が下の者に頭を下げている。
しかも玉座まで下りて。
これは国王にとっては相当な屈辱であるはずだった。
父は考え込んだ末、結論を出した。
「…………分かりました。ならば今回、三人の処遇はアリスに決めて貰います」
「ああ、分かった。どんな罰であっても受け入れさせると約束しよう」
ロバートたち三人は顔を真っ青にした。
今回の被害者である私に処罰を決められるなど、どんな目に遭うか分からないからだろう。
「まっ、待ってください!」
「それは流石に……」
「黙れッ! 貴様達のしたことを考えればこれでもまだ温いのだ!」
国王が一喝すると三人はその余りの気迫に黙った。
「ではアリス、望む罰を言いなさい」
「はい、お父様」
私はひと呼吸置くと、ロバートたちに望む罰を告げた。
「彼らには永久に牢獄へと繋ぐことを望みます」
「永久の投獄? 死刑や拷問でなくていいのか?」
「はい、ですが待遇は普通の囚人と同じにして下さい」
「なるほどな」
大抵の場合、貴族や王族の投獄とは一般のものと違う。
投獄といっても王都から離れた屋敷の中で生活したりと、温かい食事と寝床、そして本など娯楽が保証されている。
しかし普通の囚人と同じにするということは、それらは全てない、ということだ。
温かい食事も寝床も娯楽も無い牢屋に永遠に繋がれるということだ。
それは地獄以外のなにものでも無いだろう。
国王はそのことを理解したようだった。
「ふむ、確かに廃嫡は確定事項であったし、内戦を引き起こしかけた重罪人であることを考えればそれが妥当だろう」
「ええ、そうですね」
「私も異論はありません」
国王たちが頷いているとそこにロバートが口を挟んできた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「普通の囚人と同じって……牢屋に繋がれるということですか!?」
「そんなの余りにも酷すぎる!」
「……」
国王たちはそんな三人を無言で見つめていたが、無視した。
「さて、ではそのようにしよう」
「ちょっ……何で無視するんですか父上!」
「俺達は息子だろ!? 何とも思わねぇのかよ!」
「そうです助けてください!」
国王たちは呆れてため息をついた。
「息子……? 何を言っている」
「お前はもう息子ではない」
「いま廃嫡となりましたからね」
「っ!」
国王たちはもうロバートたちを自分の息子だとは思っていなかった。
向けられた冷ややかな目を見て確信した。
このままでは本当に牢屋に一生繋がれてしまう。
ロバートは必死に辺りを見渡し、フィオナを見つけた。
「フィオナッ!」
ロバートはフィオナへと駆け寄る。
「助けてくれ! お前が最後の頼りなんだ!」
「そうだ! 俺達の仲だろ?」
「あなたが困っていたとき何度も助けてあげたじゃないですか!」
ロバートたちは今更フィオナに助けを求めた。
「触らないでください」
しかしフィオナはロバートたちの手を冷たく振り払った。
フィオナも国王同様、冷たい目を向けていた。
「ずっとあなた達のアプローチが鬱陶しかったんです」
そう言われたロバートは一瞬傷ついたような顔になって、──次の瞬間牙を向いた。
「お前ッ! このアバズレめ!」
「恩を忘れたのかこの売女!」
「何度も助けてあげたのに!」
ロバートは怒りながらも、活路を見出そうとぎょろぎょろと辺りを見渡す。
そして私を見つけた。
「アリスッ! 今まですまなかった!」
「今までのことは全部謝る!」
「私達の非を認めます!」
さっきまでの怒りはどこにいったのか、ロバートたちは役者顔負けの演技力で私に謝ってきた。
言葉の節々から「自分は悪くない」と思っているのがバレバレだったが。
私は床に膝を突いて許しを乞うロバートたちを上から見下ろす。
「お前に冤罪をかけて婚約破棄したことも認める! だから」
「冤罪で婚約破棄して申し訳ない、ですか?」
「そうだ! 俺を許して──」
「今更もう遅いです」
「……え?」
「それではさようなら」
私はニッコリと笑ってそう告げた。
ロバートたちの表情が絶望に染まった。
「連れて行け!」
国王の命令と共に衛兵がロバートたちを拘束し、牢屋へと連れて行く。
「い、嫌だ!」
「離せ!」
「助けて! 誰か助けてください!」
ロバートたちは悲痛な叫びを上げながら衛兵に連れられて行った。
◯
そして、その後王家から正式に私の名誉回復が行われた。
王家からの正式な発表とロバートたちが廃嫡されたことにより、私が冤罪であったことはすぐに学園中へと広まった。
プレスコット家は今回の事件により三家から莫大な慰謝料を得た。
また、プレスコット家は政治の中枢を握るポジションを大量に獲得し、結果として王家に比肩する程の権力を手に入れることとなった。
牢屋につながれたロバートとレオとドミニクがどうなったのかはもう知らない。
しかし風の噂では発狂したとか、何とか。
私は学園を卒業したあと、父の仕事を継ぐために学びながら毎日を生きている。
父には早く誰かと結婚するように言われているが、まだ誰かと婚約する気にはなれない。
いつか結婚したいと思えるような人が現れると良いのだが……。
そう言えば最近お見合いの話が来ているらしい。
何でも他国の王子からだそうだが……どんな人なのだろうか。
私は少しだけ期待に胸を膨らませながら返事の手紙を送った。
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