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4話

「ですから、私は罪人ではありません。私はやっていないと何回も──」

「くどい! 何回王族である俺に対して嘘をつくつもりだ! こうなったらもう──」


 ロバートは私の声を遮り怒鳴る。


 まさかまた私刑をするつもりなのか。

 私が息を呑んだとき、私の前に三人が飛び出した。


「やめてください! アリス様はそんなことをしていません!」

「本当は私たちがフィオナさんを虐めていたんです!」

「罰するなら私たちにしてください!」


「は?」

「なんだ、お前ら?」


 ロバートたち三人は困惑していた。


「あ、あなた達……!」


 私は慌てて三人を庇おうとする。

 そんなことをしたら、ロバートたちに何をされるか分からない……!

 しかしそれは三人によって遮られた。


「アリス様! 私たちはもうあなたがこれ以上謂れのない冤罪を受けることが我慢ならないのです!」

「そうです! 全て私たちのせいなのに……!」

「王子! フィオナさんを虐めていたのは私たちなんです! アリス様は私たちを庇ってくれていただけなのです!」


 三人は私を庇いそう主張すると、ロバートたちは目に見えて動揺し始めた。

 三人の話が真実であるならば、無実の人物に公衆の面前で冤罪をかけ、あまつさえ暴行を加えていたことになる。


「な、何を馬鹿なことを……」

「だと、するとオレたち……」


 ドミニクは三人の言葉を認めたくないのか無理矢理笑いながら顔を背け、レオは額に汗を浮かべながら過去に行ったことを思い出そうとしている。

 そんな中、ロバートだけは違った。


「っ! いいや認めないぞ!」


 頭を何度も振ると私を睨みつける。


「アリス! 貴様が嘘を吐けと言ったのだろう! それにそいつらを庇っていたなら同罪じゃないか!」


 その言葉にドミニクとレオはハッとなった。


「そうですね……。ええ、黙っていたのなら同罪だと考えるべきです」

「そ、そうだな! そうと決まればコイツらをまとめて全員罪人なんだから裁いてやる必要があるよなぁ!」


 ロバートの言葉で息を吹き返したかのように元気を取り戻した二人は、またもや私刑を行おうと発言した。

 そしてロバートはそれに同調した。


「そうだ! やれ!」


 ロバートの合図と共にレオは鞘から剣を抜いた。


──そして、私は驚愕した。


「なっ……!」


 レオが鞘から抜いた剣には、刃があったからだ。

 つまり、レオが持っているのは真剣だ。


「学園に武器は持ち込み禁止のはずです!」

「オレは騎士団長の息子なんだから持ち込む権限があるんだよ! フィオナを虐めた罪、今すぐに後悔させてやる!」


 そんな馬鹿な話はない。

 いくら騎士団長の息子だからといって武器の持ち込みは越権行為だ。


 しかしそんなことを非難しても今の状況は変わらない。

 目の前の凶器を持った人物はびくともしない。


 私は恐怖を覚えた。


「ハッ、死なないように加減はしてやるよ!」


 レオそう言って剣を大きく振りかぶった!


 その時。


「やめてください!」


 横から声が挟まれる。

 レオは剣を振り下ろすのを中断し、私たちも声の方向を向いた。


 そこにいたのは。


「フィ、フィオナさん……?」


 学園を去ったはずのフィオナがそこには立っていた。


「フィオナ!」


 ロバートはフィオナの姿を見るとフィオナの名を叫び駆け寄った。


「どうしたんだ? 何日もお前の顔を見てなかったから心配したんだぞ。っ、そうだ! フィオナ、あいつらに虐められてたんだろ? 何ともないか?」


 ロバートは心配そうにフィオナの体に傷がないかどうか確かめた。

 レオとドミニクもフィオナへと駆け寄る。


「大丈夫か!」

「フィオナさんっ!」


 もう私たちには目もくれずにフィオナだけを見ている。


「お前がアリスに虐められて学園を追い出されたって聞いて心配したんだぜ! 今お前を虐めた奴らを懲らしめてやるからな」

「ええ、あなたに卑劣な手で傷を負わせた彼女たちに容赦は必要ありません!」


「……」


 わいわいとロバートたち三人に声をかけられているなか、フィオナは黙っている。

 そしてポツリと呟いた。


「何ですかあの傷は……」

「え?」


 ロバートは素頓狂な声をあげる。


「アリスさん……っ!」


 するとフィオナは私の名前を叫んで走り出した。

 そしてレオに殴られてできた頬の傷へ手を当てる。


「なんでこんな酷い傷が……!」

「ちょっと冤罪で……」

「なっ……! 酷すぎですそんなの!」


 私はチラリとレオを見ながら答える。

 するとフィオナは振り返りレオを睨みつけた。


「いかなる理由があろうと女性に手を上げる騎士は最低です!」

「そっ、それはフィオナがアリスに虐められてたって聞いてカッとなって……」

「はぁ!?」


 そしてフィオナは眉を寄せて言い放った。


「私はアリスさんに虐められてなんかいません!」


「「「え?」」」


 ロバートたち三人は何を言われたのか理解できていないようだった。


「私はアリスさんに虐められたことなんて一度もありません! これはアリスさんに対する冤罪です!」


 私の無罪を主張するフィオナにロバートは汗をかきながら尋ねる。


「し、しかしそこの三人がフィオナを虐めていたことをアリスは黙っていたのだろう? なら、同罪じゃないか……」

「それはすでに両者の間で和解が済んでいます!」


「嘘だろ……」

「まさか本当に……?」


 レオとロバートもフィオナの言葉を聞いて、私に冤罪をかけていたことを悟り始めたようだった。


「冤罪をかけた上にこんな暴力まで振るったんですか!? 王族といえど立派な犯罪ですよ!」


 フィオナはロバートを責める。

 するとロバートはとんでもないことを言い始めた。


「いいや、嘘だ! アリスッ! お前がフィオナにそう言うように脅しているんだろ!」

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