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長澤瑞樹②

「全然繋がらない。番号変えられたか…」


数分粘ったがさっぱり電話は繋がらなかった。元々彼女は連絡を頻繁に取るのが好きではなかったが、電話には必ず出てくれていたのに。


「今頃新しい彼氏とよろしくやってんのかなぁ…はぁ、」


落ち込みかけていた時に着信音が響いた。はっとしすぐさま電話を取る。


「もしもし!まりな!」


「はぁ?まりなって誰よ?もしかして浮気してんの?」


相手はまりなではなかった。つい3日前から付き合い始めたばかりの彼女、竹原夏菜子からであった。


「夏菜子、ごめん、間違えた。まりなは、その、昔の友達だよ。妊娠したって聞いたから驚いて、それで早とちりした」


「ふーん、まぁいいけど。てかさ、この後会えるよね?なんか飲みたい気分だから付き合ってよ」


酒を飲むのは好きだ。しかし、今は元気に彼女と飲み明かしてイチャイチャする気分ではなかった。


「ごめん、今日忙しくてちょっと疲れてて。また来週でいいかな。絶対埋め合わせするから、」


「えー!瑞樹が飲み断るなんて珍しい。……まぁ、今日は許してあげるけど、次は朝まで付き合ってもらうからね。じゃあ、瑞樹おやすみ。愛してる」


「うん、俺も愛してるよ。おやすみ。」


通話ボタンを切る。


いつにも増して自分の表情と言動が合ってなかったと思ったが、残念なことに彼女に愛を囁くときでさえ顔面の筋肉は全く機能せず、まるで能面のようであった。



「俺想像以上に未練たらしいなぁ。あいつに振られた時、うまく受け入れて昇華できてたと思ったのに」





彼女との出会いは3年ほど前だ。浮かない顔をして俺の店に来た彼女のことが気にかかって、一杯奢ったのだ。彼女は美人で、尚且つ憂いを帯びた雰囲気が一層魅力的で、やましい気持ちがなかったといえば嘘になるが。


店の閉店後に一緒に飲まないかと誘ったら、意外にも了承してくれて、その後一緒に朝まで飲んだ。お堅そうな見た目に反して無防備で危なっかしかった。今思えばその当時の彼女は何か自棄になっていた部分があったのだと思う。

その後付き合って関わってみて分かったが、彼女は想像以上に真面目で臆病な性格であったから。


きっと心の隙間に上手くつけ込めたのだと思った。普通だったら、彼女のような人が俺のような遊び人と付き合ってくれるはずがないからだ。



いつの間にか彼女に本気になっていた。


彼女は俺のそんな様子に気づくたびに、

「私は結婚はしないつもりだから」

と牽制をかけてきた。


よほど俺の前の男との恋愛が応えていたのだろう。俺も彼女とは結婚できなくても、ただ一緒にそばに居られればいいと思っていたから、結婚も考えていなかった。


彼女は俺には煌びやかに見えた。結婚というものに踊らされず自分の考えを貫く彼女が、すごく魅力的で、大好きだった。

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