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ぞうりうり

作者: イッコ


 ゆきがふるさむい夜のことです。山をこえて村へやってくるおんなのこがいました。おんなのこはしもやけであかくなった手にふうっと息をかけあたためました。しかしそんなあたたかさも息をふきかけたしゅんかんにきえてしまいます。それでもただくちびるをかみしめてあるきはじめました。

 おんなのこは毎日山をこえて町へいきます。そしてまっくらになるころにおんなのこがすんでいる村へともどるのです。おんなのこにはかぞくがいません。おとうさんもおかあさんもびょうきでなくなってしまったのです。だからといっておんなのこはひとりぼっちではありませんでした。町にはしんせきがすんでいるのです。しんせきはぞうりやをしていました。おんなのこはおとくいさまの家にぞうりをうりにいったり町中をあるきまわりぞうりをうったりしています。そのため町の人はおんなのこをぞうりうりとよびました。しんせきはおんなのこにいつでもやさしい人でした。だから今はだれもいない家をはなれいっしょにすもうといってくれました。しかしおんなのこは下をむいて首をふりました。おんなのこはおとうさんとおかあさんがすんでいた家がだいすきだったのです。

 おんなのこは大きないっぽんすぎの下の小さな家にすんでいます。家についたおんなのこはいろりにひをつけました。まっくらだった家はあかるくなりました。そのときです。だれかがおんなのこの家へやってきました。

「すいません。だれかいますかあ?」

おんなのこが外にでてみると、おとこのこがたっていました。さむいだろうとおもったおんなのこは家にいれました。おとこのこはみのとかさをみにつけていました。家にはいりそれらをとるとおんなのこははっと目をみはりました。おとこのこにはしっぽがついていたのです。おんなのこはクスっとわらうとおとこのこはふしぎそうに首をかしげました。

 ふたりはいろりのそばにすわりました。そとはまだゆきがやみません。それどころかきつくなってきたようです。かぜもときどきごおとうなりごえをあげています。その音におんなのこは外のさむさをおもいだしブルッとからだをふるわせました。

「ねえ。こんなさむいのにどうしてこの村まできたの?」

「…きのうは日が暮れるまであそんでかえった。おうちにかえるとね。とうちゃんもかあちゃんもみんなじゅうでうたれてしんでた。それでね、かあちゃんのはなしをおもいだしたんだ。かあちゃんたちのせいかつがくるしくなったときにこの村の人はしんせつでたすけてもらったって。だからぼく、たすけてもらいたくて…。」

おとこのこはうつむきました。

「そうかあ。それじゃあすむところがないのね?」

おとこのこはうなずくと、おんなのこはうれしそうにいいました。

「だったら、これからこの家にいっしょにすもうよ。」

おとこのこはおどろいた顔からえがおへかわり、「ありがとう」といいました。おんなのこはあたしこそ「ありがとう」といいたいと思いました。だっておんなのこにまたあらたなかぞくができたのですから。

 それからふたりはねむることにしました。いろりのあかりをけした家はまたまっくらになりました。ふたりのたのしそうなおしゃべりもいつのまにか幸せそうなねいきにかわっています。そのころにはゆきもおとなしくなっていました。くものあいだからはまんまるい月がかおをだしています。おんなのこの家はやわらかいひかりにつつまれました。そしてさむそうにゆれてつぎの日のことです。いつまでたっても町へやってこないおんなのこをふしぎにおもったしんせきの女が村へやってきました。おんなのこの家にいくと女は「ぎゃ」とさけびました。そう、そこにはほほえむきつねとおんなのこがつめたくなっていたのです。


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