Ep.2 村の幼馴染ルル
『≪録画≫』
――――俺の一日はこの言葉から始まる。
魔物が棲む森で俺は『動画編集』というよく分からない能力を持っている事を知った10歳のあの日から
もうすぐ成人になる14歳の今現在まで、この不思議な能力についてずっと研究してきた。
俺が住んでいるアルビス村には既に冒険者を引退して村の子供達や村を守る自警団の人達に魔法の指導をしてくれるルクセラ先生がいる。
ルクセラ先生のおかげで俺も≪炎渦≫という魔法が12歳の頃から使えるようになった。
ルクセラ先生の話だと人間の中には魔法の他に≪固有能力≫というモノを使える人間も極稀にいるらしい。
そしてその≪固有能力≫の持ち主はこのアルビス村もあるブルナーレ王国の王都に一度召喚されるらしい。
王宮専属の騎士団や魔導士団に入るか冒険者になって旅をするか、自身の出身地で生きていくかは本人に選ぶ権利が認められているという。
もうすぐ俺も成人の儀を迎えるので≪固有能力≫『動画編集』持ちである事が色んな人に知られるかもしれない。
王国に召喚されたらどうなるんだろ俺?...時間を止めれる能力があるなんて知れたら大変な事になる悪寒しかしない。
ちなみにこの4年間、≪固有能力≫『動画編集』について俺なりに研究した結果、最初に分かったのは
『悪戯行為にはこの能力は使えない』
という事。他にも色々わかりつつあるけどそれはまた今度。
この≪固有能力≫の存在を知った頃、つい出来心で時間を止めて悪戯しようと思ってしまった。
このアルビス村を守っている自警団の待機場所に常備されている鋼の兜や剣、盾が格好良くて一度だけちょっと拝借しようとしてしまった。
鋼の装備の代わりに大きなかぼちゃをくり抜いて作った兜と盾に、ゴボウの剣を作り、
時間を止めてすり替える悪戯をしようとした事があるのだが失敗した...
時間を止め、自警団の待機場所の小屋に忍び込んだ瞬間、≪固有能力≫『動画編集』により青白くなっていた周りの景色が急に黄色に変わり、
小屋に完全に入り込んだ瞬間には能力が解除されていた。
かぼちゃとゴボウの装備を持った俺は待機場所にいたその日の担当だった自警団の兄ちゃん達に見つかり
「...その装備じゃあ魔物は倒せねえな坊主。ぶははっ!!」
と大爆笑され、今でも俺の黒歴史になっている...
この悪戯で神様から授かったこの≪固有能力≫は悪用してはいけない事がわかった。
「ようパンキング小僧。毎日毎日自警団まで来なくていいんだぞ」
未だにあのかぼちゃ事件をいじるのは自警団の副隊長をしているルキール兄ちゃんだ。
ルキール兄ちゃんは俺の家の近所に住んでいるので子供の頃、遊んでもらった事もある。
「今日は何も無さそう?」
「ああ、今日は村で何か事件やトラブルがあったみたいな報告は無いな」
自分の≪固有能力≫の存在に気づいてからは陽が沈むかその前くらいに毎日自警団まで何か起きてないか聞きに行くようになった。
村に戻ってこない子供がいたりしたら俺の能力を使って探しに行くのだ。
「今日もパトロールしてるの?毎日毎日ご苦労様」
自警団のルキール兄ちゃんから何も無いと聞かされ自分の家に帰る途中だった俺に話しかけて来たのは
幼馴染で同い年のルルだ。この時間に会うと何故かいつも不機嫌だし。
「今日は何もなかったらしいからもう家に帰って寝るよ」
そう言った俺に対して黒髪の幼馴染ルルは不機嫌そうに言う。
「よくやるわね。何かあれば朝からまたやり直すんでしょ?」
それは外で話しちゃダメ!