Ep.1 時間が止まった!?
「うわああああ!待った!待った!ストップ!!ストップ!?」
俺の名前はレック。ブルナーレ王国の中にあるアルビス村に住むまだ10歳のただの村人だった。
アルビス村の近くにある森には魔物が棲んでいると言われていて、子供だけでは絶対に入ってはならないと言われている森だった。
馬鹿な俺はその鬱蒼とした森の中で育っている木の実や果実を遊び気分で採りに来てしまった。
そして今俺の目の前にいるのは狼の魔物、ブラウンウルフだった。
俺の姿を見るや否や、勢いよく襲い掛かってくる茶色い狼に腰を抜かしてしまい動けない。
叫ぶ事しか出来ずにもう駄目だと目を閉じる。
「.......?」
目を閉じたまま一向に狼に噛まれたり体当たりされたような感覚がない。
そうっと目を開けると正に目の前に口を開けた狼がいた。
「うわああああああぁぁぁあ!?」
眼前の狼の迫力に再び腰を抜かしてしまった。
すっかり体が竦んで動けない俺だったが、時間が経つにつれ狼も全然動いてない事に気づく。
「...どういう事?」
動かない狼の周りを一周してみるがブラウンウルフは全く動かない。
周囲を見回すと俺の右側に青白い画面が浮かんでいる。
「なにこれ?動画編集画面...?」
『動画編集』という言葉を初めて知る。
もしかしてこれのおかげで時間が止まっている?
とりあえず目の前のブラウンウルフからかなり距離を取る。
狼から離れるようにずっと後ずさりしていると何かにぶつかった?
振り向くと青白い薄い壁のようなものがありこれ以上は下がれないようだった。
狼との距離は30メートルくらい?
この程度の距離だとすぐに追いつかれてしまいそうなので、ブラウンウルフの背後にある大きな岩の上でポジション取りする事にした。
岩の上で青白い画面をよく見ると『編集終了?』と書いてる場所があった。
そこを触ると目の前の青白い画面も壁もなくなり時間が動き出した。
再び動き出したブラウンウルフは俺に襲いかかった勢いのまま、向こうの方へ行ってしまった。
「助かった?...」
それにしても今の現象はなんだったんだろう?
狼や獣は匂いにも敏感だしさっきのブラウンウルフや他の魔物にすぐに見つかるかもしれない。
不用意には動けないので岩の上でもう一度、さっきの時間を止めれた能力が使えないか試してみる。
「たしかあの時は、『待った待った!ストップストップ!!』って言ったよな?...」
強く念じながら「ストップ!」という言葉を発した瞬間、再び辺りが青白くなり、それと同時に鳥の鳴き声や森の木々の葉が重なる音も聞こえなくなった。
上空を見上げれば空を翔けている黒隼も全く微動にしていない。
どうやらこの青白い妙な空間の外の時間も止まっているようだ。
そして俺の右側にはあの動画編集画面。
「これって俺は時間を止めれるって事?」
...なんかとてつもない能力を手に入れた気がする。
この日はこの時間を止めれる能力を小まめに駆使しながら魔物のいる森から村へ帰る事にした。
この不思議な力の事に気づいた日から月日は流れ、俺がもうすぐ成人の15歳を迎える少し前――――。
「ねぇレックってその固有能力でやらしい事、本当にしてないでしょうね?」
村の幼馴染は俺の能力を知っていた。