表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

息子が来ないのですが……




……ところで、私の息子はいずこ? さっきの集団の中にもいなかったぞ。声がしなかったもん。


 あいつはちょっとしたことで女の子より女っぽい声で悲鳴をあげるので、すぐにわかるはずなのだ。



「中学年女子いきまーす」


 ちょっと待て、階段を登る女の子たちの声にまぎれて、うちの息子の声が……。


「おい、さっさと来いや」

「無理だよぉ、俺には無理だよぉ」

「いーから登れやゴルァ、階段ほれあと三歩」


 この声。クラスのヒエラルキーのトップにいるボス(女子児童)が、息子の面倒を見てくれているらしい。というか、無理やり引きずってきてるっぽいな。


「ひゃぁあ無理だよぉおおおぉぉぉ」


 声が遠くなる。


「ちっ、あいつ逃げやがって」


 女子たちが「あいつチキンじゃね?」とぶーぶー文句を言いながら入ってきた。


 そんな彼女たち、最初の和室でちょっとはキャーとかワーッとか驚いたけれど、次のテケテケ人形バーンッの仕掛けでは本気で絶叫していた。


 あの、うちのお兄ちゃんからしたら「クラスの神であり、目を合わすことも恐れ多い」と言われているクッパみたいな女の子のボスが「キャーッ」と可愛い声を出したので、またゾクゾク~っ。


 ところが、先ほどの勇者からどうやって御札を見つけたか聞き出したらしく、


「御札ください」


 と私の周りに女子たちが群がった。おいおい、君たち、それはずるいよ。御札は自分で探すもの。さっきの坊やは特別なのだよ。


「御札くださ――ぎゃぁあああ」


 テケテケテケ……追い掛け回した。


 泣きながら外に出ていった女子に引き続き、上級生女子二人組。


 さすがに落ち着いていて、自力で何枚か御札をゲットし、階下で男子に自慢している声。


 だからだろうか、再び上級生男子がやってきた。


 さすがに、二年生が一人でチャレンジし、同学年の女子まで御札をゲットしたのだ。恥ずかしくなったのだろう。


 でも相変わらず団体で来やがった。もっと悲しいのはその団体にすら、うちの息子入ってないぞ!?


 ガクブルの男の子たちは、


「あのー御札、御札どこですか?」


 と言いながらも、今度はせっせと御札を探している。そのうちひとりが、突然走って私の後ろに回った。


(むっ、背後を取るなんて、なかなかやるな。後ろから蹴り入れるつもりじゃねーだろうな)


 一応、お化けにはお触り禁止である。


 私はグリンッと振り返ってカァーッ、シャーッと繰り返しながら、顔を近づけ、男の子を舐めるように上から下まで眺める。


(あれ、これ誰んちの子だっけ?)


 薄暗いランプの灯りでは、咄嗟に判断出来ない。少子化でだいぶ子供会に加入している人数は減っているから、一応顔だけは全員把握しているはずなんだけど。齢は取りたくない。それに、逆光になっていて、よく見えない。


「あった!」


 御札を探していた何人かが、嬉しそうに叫ぶ。私はハッとなって、慌てて他の男の子たちを四つん這いで追い掛け回した。


「うわぁあ、またきたぁああああ」

「俺まだ御札見つけてない」

「だめだ、捕まる、いいから逃げようっ」


 子供たちが戸口に走るが、私も出口まで、有り得ないスピードで追っていく。そりゃあもう、普段の私からは想像できないほど早く動いてやったわ。ぜーぜー。


 廊下の灯りが眩しい。入口と出口のちょうど真ん中に立っていた誘導役の役員さんと目が合う。


「……おつかれさまです」

「……いえ」


 若干気恥ずかしくなりながらも、パタンと和室のドアを閉じた。またホームポジションに戻ろうとして、あ、と思い出す。ひとり中に残ってたんだっけ……。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ