不当な裁判の幕開け
偉大なるChatGPTの力により、7年ぶりに更新しました。
事件の2日後、桂澤恵一は「テロ対策特別措置法違反」の罪で起訴され、帝国特別裁判所の法廷に立たされていた。
「被告人は、前に出なさい」
裁判長に促され、恵一はおずおずと証言台の前に立つ。
その空間は、裁かれるべき正義の場というより、何か巨大な力に支配されているかのような異様な雰囲気に満ちていた。傍聴席には帝国国防軍の高官たちが整然と並び、その一人一人が冷たい視線を恵一に注いでいる。
恵一の活躍により、東北地方は奇跡的に大惨事を免れたはずだった。驚くべきことに、死傷者はゼロ。建物への損害も一切ない。しかし、事件の翌日、桂澤宅の玄関先に現れた帝国特殊警察を名乗る黒服の男たちは、恵一を犯罪者として、連行した。
「では、被告人桂澤恵一に対する テロ対策特別措置法違反被告事件の審理を始める」
裁判長は、厳かに開廷を宣言した。とにかく、正直に事実を述べれば、無罪放免となるはず――恵一はそう思っていた。
「被告人桂澤恵一、証言台に出なさい」
恵一は両手に手錠を掛けられ、震える足取りで証言台へと向かった。その姿は、帝国という巨大な機構に押し潰されようとしているかのようだった。
「被告人、氏名を述べなさい」
「か、桂澤恵一です」
「生年月日は?」
「帝暦24年11月2日です」
「現住所を述べなさい」
「青森県弘前市非魔導産業創造特区エリアBです」
「最後に、職業を述べなさい」
「む、無職、ではなく高校生です」
無意味な人定質問に、もどかしさが募る。やましいことは何もしていない。しかし、恵一は終始言い知れぬ不安を感じていた。
「検察官、起訴状を読み上げなさい」
色白で陰気臭い検察官は、見かけによらず明朗な声で、はい、と返事をすると、起訴状を読み上げた。
「公訴事実。被告人は,帝暦41年4月28日午前10時00分ころ、青森県弘前市非魔導産業創造特区エリアB所在の県立弘前北高校において、同高校のバックアップ用電源として配備されていた魔晄発電機2基を爆破。現に同人ほか1268名が在学する鉄筋コンクリート造4階建校舎に火を燃え移らせ、建造物を焼損した。以上の事実についてご審理願います」
恵一は起訴状の内容を聞きながら愕然とした。恵一にとってどれも全く身に覚えのない事であった。隕石の落下を防いだ自分が、どうしてテロリストとして扱われているのか理解できない。
「では、この起訴状に基づき、被告人に対するテロ対策特別措置法違反被告事件の裁判を始める。尚、本審理は、帝国国防軍の要請に基づき、特別裁判として執り行う。特別裁判では、黙秘権は認められない。質問に対して、回答がない又は回答が不明確な場合、公務執行妨害罪と見なす。分かったかね?」
初老の裁判長が威圧的な目つきで恵一を睨む。我が国では、帝国国防軍は様々な超法規的特権を許されている。その一つとして、特別裁判を行うことが可能である。恵一は、今更そのことを思い出したかのように、目を白黒させながら「ひゃ、ひゃい」と答えた。
「検察官、冒頭陳述を行いなさい」
裁判長の指示で、検察官が一歩前に出て、法廷全体に響き渡るような声で話し始める。
「この事件は、帝国の平和と秩序に対する深刻な脅威を示すものです。被告人桂澤恵一は、未登録の魔導を行使し、魔晄発電機を意図的に破壊。これにより建物を焼損させ、多くの人命を危険に晒しました。さらに、被告人の行動は計画的であり、その証拠として現場に残された魔導の痕跡と、不審な通信記録が確認されています。よって、被告人が無実であるとの主張は到底受け入れることはできません」
検察官の声には確信が込められており、傍聴席からはざわめきが漏れる。
裁判長が冷ややかな声で問いかける。
「被告人、この起訴状に対して異議はありますか?」
恵一は恐怖を押し殺しながら、勇気を振り絞って答える。
「お、俺は、何もしていません!隕石が落ちてくるのを防いだだけで、校舎も無傷だったのであります!」
しかし、その答えに裁判長は苛立ったように指を鳴らした。その合図で黒服の男たちが現れ、恵一の肛門に電極を差し込んだ。直腸の奥深くに異物の存在を感じ取り、恵一はうっ、と微かな唸り声をあげる。
「被告人、今一度聞く。この起訴状に異議はありますか?」
「あります!お、俺は――」
言葉を言い終える前に電極から高圧電流が流れる。
「うぎゃああああ!」
身を切り裂くような激痛に、恵一はもんどりうって証言台から転げ落ちる。プスプスと音を立てながら、恵一の肛門から煙が上がる。その無惨な姿を前にしても、裁判長の表情は微動だにしない。
「被告人、もう一度立ち上がりなさい。そして、質問に答えなさい」
恵一は苦痛で歪む顔を何とか持ち上げ、再び証言台に戻る。検察官が冷たく質問を続ける。
「被告人、事件当日、校内で魔導を使用したことを認めますか?」
「俺は……使ったかもしれません。でも、それは隕石を防ぐためであって……」
またしても電流が流れる。
「ブヒィいいいいいいいいい!」
恵一は耐え難い痛みによろめきながらも、必死で立ち直ろうとする。
「被告人の行っていることは、的を得ない。次は弁護人に聞く。公訴事実に何処か間違いや言い分はあるかね?」
「被告人は、事件への関与を認めております」
眼の前で繰り広げられる悪夢のような光景が俄には信じがたかった。裁判長、検察官は愚か、弁護人までが結託しあっていることは火を見るよりも明らか――これは紛れもなく茶番である。
「否定します!!!!」恵一は、朦朧とする意識の中、必死で抗った。
裁判長は、チッと舌打ちをした。
「次の質問です。未登録の魔導を行使することは違法だと知っていましたか?」
「そ、それは知っていました。でも、みんなを助けるためには致し方なかったんあります!」
再び電流が走る。
「ぐふぅううううううううう!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!)」
度重なる電撃に耐え切れず、ついに恵一の肛門括約筋は制御を失い、腐りかけた堤防が崩れ去るように、その内容物を激しく解き放った。瞬間、ドロドロとした液状の不快さが勢いよく溢れ出し、激しい破裂音とともに法廷内に広がる。異臭はまるで腐敗した泥沼の底から湧き上がる瘴気そのもので、酸味と腐敗した有機物の刺激が混ざり合い、鼻腔を容赦なく襲う。湿り気を帯びた悪臭がねっとりと空気にまとわりつき、逃げ場のない濃厚な悪夢を全員に押し付けた。
しかし、誰一人として声を上げる者はいない。声帯は奪われ、息をするたびにその臭気が喉奥にまで染み渡り、沈黙を強制されているようだった。顔を顰め、目を逸らしながらも、空間に漂うその圧倒的な存在感から逃れる術はなく、全員が臭気の中で自らの生を呪っているかのように見えた。法廷内の全ての音が、臭気に吸い込まれるように消え去り、ただその忌まわしい臭いだけが、支配的に空間を満たしていた。
「最後の質問です。あなたが魔晄発電機を破壊した痕跡について、説明できますか?」
「そ、それは誤解です! お、俺は発電機には触れていません!」
その瞬間、またしても電流が恵一を襲う。
「助けてええええ!」
恵一の絶叫が法廷に響き渡る中、裁判長が冷たく言い放つ。
「最後にもう一度聞く。被告人、事件への関与を認めるか?」
裁判官の冷徹な声が法廷に響き渡った。その音は、鈍い鉄槌のように恵一の胸を打つ。
「認めるのであれば、今後の処遇については温情を持って考えよう。しかし、否認するのであれば、その限りではない」
威圧的な視線が恵一を貫いた。裁判官の目には、ただ無機質な冷酷さが宿っていた。その一瞬、恵一は法廷の空気が凍り付くような感覚に陥った。息苦しさを覚えながら、彼は自らの罪状がもたらす重圧を全身で感じていた。
頭の中では過去の出来事が走馬灯のように駆け巡る。隕石の恐怖、命を救おうとした自分の必死の行動、そしてその結果としてのこの裁判の現状――すべてが脳裏をかき乱し、恵一の内心を蝕んでいく。
ついに、恵一は観念したように顔を上げた。涙と汗、そしてどこかで滲んだ鼻血が頬を伝い、法廷の床へと落ちる。彼の表情には、怒りや抗議の影は一切なかった。ただ、深い後悔と絶望だけが滲んでいた。
「認めます……」
声は震え、蚊の鳴くような小さな音だった。それでも、恵一は懸命に口を開き続ける。
「皆様にご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした……!」
彼は体を大きく折り曲げ、額を法廷の床に押し付けた。土下座――それは、彼にとって最後の抵抗であり、唯一の懇願だった。小さな音を立てて床に滲む涙と鼻血が、その哀れな姿をより一層際立たせる。
法廷内の空気は重苦しさを増し、誰一人として声を発しない静寂が広がった。その静けさは、まるで恵一の謝罪を嘲笑するかのようだった。裁判官は高い席からその姿を見下ろし、わずかに眉をひそめた。その表情には、侮蔑と軽蔑がはっきりと表れている。
「温情を請うとは、滑稽なことだ」
裁判官はそう呟くと、傍らに置かれた書類を無感情にめくった。その手の動きには一片の同情も感じられない。
恵一は何度も心の中で叫んだ。どうしてこうなったのか。自分はただ人を助けたかっただけだ。それでも、その思いは誰にも届かない。この場所では、彼の行動はただの過ちとしか映らないのだ。
裁判官の冷ややかな目は、彼の小さな希望を打ち砕く鋭利な刃となり、無情にも彼を見下ろしていた。その視線には容赦のかけらもなく、まるで彼の存在そのものを否定し、絶望の深淵へと突き落とす冷酷さが宿っていた。法廷内の空気は凍りついたように沈黙し、恵一の心の中には、崩れゆく世界の残響だけが響き渡っていた。
あわやここまでか――誰もがその結末を覚悟した瞬間、突然、法廷の扉が重々しい音を立てて開いた。その音は、張り詰めた空間を鋭く引き裂き、雷鳴のように響き渡る。全員が瞬時にその音に反応し、緊張した視線を一斉に扉の方へ向けた。静寂を引き裂いたその音は、運命の歯車が新たに動き出す前触れのようだった。
そして、扉の向こうから現れたのは、一人の青年だった。漆黒のローブを纏い、金糸で縫い込まれた桝岡家の家紋が威厳を誇示するように煌めいている。彼の足取りは揺るぎなく、まるで嵐を切り裂く船のように堂々としていた。ローブの裾が揺れるたびに、青年の存在感が波となって広がり、法廷内の重い空気を一瞬にして塗り替える。
その瞳は鋭く、裁判官を正面から射抜いた。法廷内に漂っていた絶望と恐怖をかき消すように、その姿は光そのものだった。彼の登場はただの偶然ではなく、運命そのものが呼び寄せたかのような必然に思えた。まるで天地を揺るがす嵐の中、闇を切り裂いて現れた救世主――その気配に、誰もが息を呑み、時間そのものが止まったかのように感じられた。
「その審理、少々お待ちいただけますか?」
桝岡京介の毅然とした声が法廷に響き渡る。その瞬間、場内の空気が一変した。彼の背後には帝国大審院の公式書状が輝いており、その圧倒的な存在感が場を支配する。




