君の頭
君シリーズの五作目です。
君ってさ、いつも帽子を被っているよね。
年がら年中、被り続けているね。
いつ見ても帽子が濡れているから気になるんだよね。
擦れ合う音がしているのも気になっているんだよね。
僕も擦れ合う音がしているだって? まぁ、僕は毛むくじゃらだからね。擦れることだってあるさ。と言っても毛むくじゃらなのは年に十数回程度だけどね。
それにチクチクして痛いだって? でも寒い日には暖かくて良いでしょ? まぁ、君は寒い方が好きだろうけどね。暖かすぎると肌が渇いてしまうから。
獣らしさは良いだって? 獣そのものだけどね。君は肌がツルツルなのが良いところだよ。たまにぬめぬめしているけどね。
次のデートの時には帽子は被らないでほしいな。どうしてかというと君の頭を覚えていないからだよ。帽子姿の君ばかり見ているからね。
帽子を被っていなければ君の頭がどんなだったかすぐに分かるからね。
何を怒っているんだい? 本当に愛しているのかだって? もちろん僕は君を本気で愛しているよ。
頭を覚えていないのにだって?
だから、君の頭を思い出すために、次のデートは帽子なしでお願いしたいんだよね。
今からもう一度デートしようだって? まぁ、いいけど。
それじゃ、帽子は外してくれるかい?
ああ、そんな頭をしていたね。
すっかり忘れていたよ。
やっぱり君はそっちの方が似合っているね。
ねぇ、僕の愛しい河童さん。
――えぇ、私の愛する狼男さん。
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