『裏切りの部屋』
裏切り:一種の騙し。信頼の度合いが強いほどに強烈なものとなり、中にはトラウマを生むケースもある。
『私、あなたの事がずっと前から……!』
『ま、前から?』
ズブシャ!
『え……?』
『ずぅっと、憎くて仕方なかったの』
ドサッ!
『はっ、馬鹿みたいに鼻の下伸ばして……私は、あなたをずっと殺したかったのよ! きゃはははははははは!!!!』
○○○○○○○○
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
「な、なんだなんだ!?」
「お、お兄ちゃん……震えが止まんないよ」
「どうしたんだ?」
「こ、このアニメ、昨日レンタルしてきたんだけど……表紙とか学園ラブコメなのに、内容はただのグロアニメなんだよ!」
「……どんまい」
○○○○○○○○
「しかし、見事に裏切られたな」
「もう、トラウマだよ……。だって表紙これだよ? どこからどうみても爽やかな学園ものにしか見えないよ」
「表紙詐欺だろ。よくあるんじゃないか? こういう期待してない裏切りって」
「言われてみれば……こっちとしては正統派ラブコメが見たかったもん」
「まあ、この場合はギャップとか通り越して詐欺レベルだけどな」
「お兄ちゃんは、こういうことある?」
「あるぞ。大抵、騙された時はホラーが多いよな」
「あ、わかるかも。私ホラー苦手なのに」
「俺も苦手だ。どうもホラーを見たいと思えん」
「……! お兄ちゃん、私達って相思相愛だね」
「愛はない」
「えー」
○○○○○○○○
「でも裏切りってプラスの場合とマイナスの場合がありそうじゃない?」
「例えば?」
「うーんと、絶対に裏切らないと思っていた仲間が裏切るんだけど、それには深い理由があったとかだと、燃える展開だよね!」
「そうだな。確かにそのケースはプラスだな。逆に、絶対に裏がありそうなキャラが裏切った場合は驚きもないか」
「こう考えると、裏切りって嫌な響きだけど、全てが全てそうとは限らないんだね」
「だな。作者の意図を予想して読んでいたけど、それを越えて面白い展開になる。これは完全にプラスの裏切りになるから、結局は作り手の技量ってことか」
「あ、そうだ」
「どうした?」
「常々気になってたんだけど、この作品に裏切り要素ってあるのかな?」
「ないだろ」
「え、即答!?」
「それらしい描写はあるかもしれないけど、裏切る展開なんてないな。そういう作品だから」
「そう言われると返しようがない……で、でも少しはあるんじゃない?」
「例えば?」
「え!? そうだなぁ、この部屋が実は実験のために作られた部屋で、私達は様々な実験の道具にされてるとか」
「どんなSF展開だよ。そんなのあっても却下だ。賑やかで楽しい作風が売りなんだから」
「売りって……そんなに盛んにマーケティングされてないんだよ、この作品」
「まあ、確かにな。他の作品に比べると報告に名を連ねることもないか。どうなってんだ?」
「きっとあれだよ。作者が読んでほしいって思ってないんだよ」
「読んでほしくないってありえないだろ」
「そしたら、どうして?」
「……多分、紹介するの面倒なんじゃないか?」
「あ、それだね」
「俺達は、そんな作者の気のいい裏切りに期待するしかないみたいだな」




