『幼児化の部屋』
幼児化:身体が子供になること。または態度や性格が子供のように振る舞われること。
「うわっ! なんだこれ!!」
「私達、今度は子供になったみたいだね。見た目は子供だけどあなどっちゃいけないよって話かな?」
「なんか、今日のテーマが幼児化らしいな」
「テーマだからって私達が幼児化するなんて……こんなことが可能なら、そのうち魔法も使えるんじゃないかな?」
「なんでもありすぎるだろ。詰め込み過ぎると嫌われるぞ」
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「けど、ここまで小さくなると何もすることがないな」
「そうだね。幼稚園児だもんね。あ、スモッグ着てみる?」
「は? なんだよ、スモッグって」
「ほら、あの水色のやつだよ。幼稚園児が着てるやつ。アニメとかでよく見ない?」
「……却下する」
「えー、幼児化の基本って言ったらスモッグだよ~~。第一、幼児化したのに来てる服も同時にちぢむってどういうことなの? ここは服が元のサイズで身体だけ小さくなるロリコンへのサービスシーンなのに!」
「やめろ。犯罪者予備軍を増やすな」
○○○○○○○○
「しかしあれだな。ここまで景色が違うと、大人が巨人に見えそうだな」
「昔はそう見えてたんだね」
「せっかく幼児化したんだから、何かした方がいいのか?」
「この身体で出来ることなんて、鬼ごっこくらいしか思いつかないよ」
「……疲れることはパスで」
「本当に身体だけ子どもになったんだね」
「考えてみろ。子供の頃ならいいかもしれないが、中身はそのままなんだ。恥ずかしくて全力疾走なんてできないだろ」
「そうかな? 私はいつだって全力疾走できそうだけど」
「……」
「あ、いま失礼なこと考えた?」
「ああ。こいつは頭脳も子供だったんだなって思い出した」
「そこははぐらかそうよ!! なんで包み隠さないの!?」
「包み隠すほどの事でもないだろ。これまで散々、露呈させてんだから」
「……こ、こんな子供ヤダ」
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「お兄ちゃん、昔はそんなんじゃなかったのに。どこで道を踏み外したのさ」
「道なんて踏み外してないだろ。髪も染めてないし。ほれ、黒のままだ」
「……言い方を変えるよ。お兄ちゃん、どこでそんな大人びた性格になっちゃったの!?」
「元からだ」
「違うよ! 小学校の頃とかは泥だらけになって遊んでたもん!」
「……ふっ、受験が俺を変えたのさ」
「ありがちだけど、お兄ちゃんには当てはまらないよ。受験だって楽に受かるところ選んだでしょ? おかげで私は、大迷惑したんだから」
「大迷惑って、お前が一緒の学校選ぶからだろ? もっと確実に入れそうなところ受ければよかっただろ」
「お兄ちゃんと一緒になれないじゃん!!」
「人生の岐路を、そんな私情で選ぶな」
「お兄ちゃんにだけは言われたくないんだけど……」
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「しかしあれだな。こうして言い合いしてるけど、傍から見たら幼児の言い合いなんだよな」
「……なんか、あれだね」
「そうだな。すごく子供っぽいな」
「けどこれがわかるってことは、俺達も大人になったんだな」
「外見は幼稚園の年少さんだけどね」




